53 フロンティアにて3
53 フロンティアにて3
お散歩から帰って来ました。強そうな魔物には遭遇しなかったのはシエラのおかげ。完璧従者で融通が利かないけど、やっぱりシエラは良い子。
「俺はギルドに報告あるので」
「私も行くよ。素材とか持っててもしょうがない物多いし」
「えぇ?、朧先生、後々使えそうな物ばっかりじゃないですか。何か作ってみましょうよ」
スズカって片付けられない系女子タイプかな?お嬢様育ちは生活力無くてイカンよ。素材はすぐお金にするのだ。でもお金貰ってもなぁ……。
「ん~、華代さんが欲しがる物は卸してくから、残りは持ち帰る。で、ど~う?」
ギルドに入るとツカサ達一行が居た。運送任務を終えた様だ。
特に面白い事も無く素材を買取してもらった。薬草類、毛皮、食料、鉱石関係が品薄らしい。取りあえず薬草類と魔物の兎の素材を買い取ってもらった。
「では僕たちは開拓村の方に行ってますので」
ツカサがわざわざ私に告げてきた。
「気を付けていってらっしゃい~」
特に付いて行ったりはしないよ。少し期待してたみたいだけどね。それにしても、ツカサ一行は事を急ぎ過ぎているきらいがあるな。
遠征演習の一環で来ているんだから、学校で行うボランティアくらいリラックスしてもいいとは思うのだが…
自分のボランティア風景を思い浮かべる。それは流石に怠け過ぎかな。
「ツカサ、根を詰め過ぎるとよくないぞ~、ほどほどに頑張るのがいいと思う」
「…心配してくれてありがとうございます。僕、体動かすの好きなのでこのくらい大丈夫ですよ。むしろ楽しくて」
本当か~?ツカサって自分に厳しそうだから信用ならんが…まぁ、団体行動してれば大丈夫かな。
一行の背中を見送った。
おしっこソムリエのクラドは大戸の方へ帰って行った。スキルの精神汚染は弱まっているはずだが……私のおしっこ舐めたことでなんか究極進化したりしないでねお願いね。
そして私の店に戻ってみるとツカサ一行が居た。
回り込まれてしまった!だとっ!
なんかアイテム補充かなー?会計のうーたんの立ってる脇にある子供椅子によっこらせっと。ふぃい。
「おやおや……いらっしゃい。ここは道具屋さね。色々置いとるよぉ。ィイーッヒッヒッヒィ!」
「先生、俺、剣が欲しい…」
折角私が完璧な魔女の道具屋さんのセリフ言ったのにガン無視されてリュウゲンがバスケしそうな調子で言った。
そこらで遊んでる幼女と違って?忙しいんじゃ?さっさと物売れよこのNPC風情がっ!って心の声が聞こえる聞こえる。ママかなしいよ。およよ。
「え、つまりどゆこと?普通に買い物?」
普通に話を聞く。どうやら、開拓のお手伝いでそこそこの報酬が出たので、パーティーの装備の強化に来たらしい。
「ウチに良さそうな大剣はないんだよね~」
「頼む、朧先生。俺に、強い剣を!」
リュウゲンがぬわっと私に迫って来た。ワイルド系イケメン面である。
「わっ、わかったよぅ」
ちょっとビビった。私先生だよ。威厳あるんだよ!
「で、ご予算は如何ほどで?」
「今回は俺の剣にほとんどつぎ込んでいいんだよな!?」
「え?装備新調分だよね?」
「あたしの矢とかも補充しないとだし」
「道具類も整えておかないと、その、困っちゃいますよ……?」
「……白金貨6枚」
「いやぁ、流石にそれは無理」
「白金貨3枚くらいにしときなさい」
「道具類は金貨3枚あればなんとか…」
……。
「朧先生、白金貨4枚、金貨5枚で頼む。後で高い高いしてもいい、こき使ってくれてもいい。どうか良い剣を俺に…」
ん?いま何でもするってニュアンスの事言った?合意とみてよろしいか?
ヤバいこいつ必死すぎぃ、顔が近いんですよぉ。
「分かった分かった。ご奉仕価格でお値段据え置きにしておくから」
私の適当な文句にリュウゲンの眼が陰る。え?なにかダメだったか?
「い、良い剣作るからそんな顔しないでよちょっと怖い」
やっとリュウゲンの顔がまともになった。コイツこんなに脳筋だったっけ?
ふむ、ユニークスキルが【剣の道】だからかなぁ。剣技に優れ、剣の性能を引き出すのが上手いらしい。文字通り生命線が一本だから真剣にもなるよね。特に痛くも無いし、常識的な範囲で出血大サービスするか。
「じゃあまずは型を決めるから、外に行こう」
外にでた。茶キングうーたんとリュウゲンに硬いゴムで作った様々な形の剣を渡してチャンバラさせる。
「フッ、フッ、シャーァアッ」
ヴォンッ
「う~?うぅーうぅー」
シュババババ
ブンッ ブンッ ガッ ガガガガッ
うん?うーたんは剣もお上手ね。両手に簡素な形の直剣を持って軽やかにリュウゲンの猛攻をいなしている。
リュウゲンも素人とは言えない剣捌きだ。剣が空気に震えている。かなりの速度を出しつつ軸のブレない体運びである。こりゃ良い剣があれば強くなりそうだね。
「はぁっはぁっ……」
「どう?なんかしっくりくる奴あった?」
「はぁ…どれも…そこそこに扱える。強いて言えば…手数の二刀流か…火力の両手剣…かな」
確かにね…その後も色々と話し合った結果。複合型の剣にしようと言う事になった。
口で説明が難しいが…対照的な両刃の剣が二本で、分離して二刀流の細剣、合わせて両手持ち大剣、柄を向かい合わせにして合わせて…なんだろう?まぁ、主にその三つの形態を取れる様にした。
分離した一本の剣の、両刃の片方は細く鋭い角度、もう片方は厚く鈍い角度になっており、柄の方は機械部分で刃が短くなっている。先端はシンプルに出刃包丁みたいになっている。機械部分は丈夫さと将来性を考慮してある。何か付け加える事も可能だ。取りあえずゴムで作った試作をリュウゲンに渡す。
「お」
ブンブン
「おおっ」
ブンブンブン
「っは!」
ブォーン
気に入ったようで何より。こういう剣はマジ浪漫。私もうずうずして来た。
素材は何にしようかな…オリハルコン、はやりすぎか、アダマンタイト…も魔王城でドロップする様な剣だしなぁ……まぁミスリルかな。
……総ミスリルの剣だってめっちゃ高いんですよぉ?たぶんこれ通常価格ですと白金貨1000枚。
『ハハハ、ケニー、僕はそんなにお金無いよ』
『安心してくれマイケル、今回はなんと、通常はこのソード一本で価格白金貨1000枚の所、白金貨5枚!! ん!?間違えた!!白金貨4枚と金貨5枚だー!!』
『『ワォーー』』
『すごいよケニー、僕はなんてラッキーなんだ!!』
『おっとぉ、じつはこれだけじゃないんだよマイケル!、今回!、さらにっ!もう一本ソードを付けて、なんと、お値段据え置きぃーーだぁーーーー!!』
『『クレイジーッ!!』』
『『キャーーッ!』』
パチパチパチパチパチ
ヒューッヒューッ
……壮大な脳内コントを繰り広げて、その割にはさっさと作った。丁度お店のガラスの材料が余ってたので流用しました。
銘は【陽炎】にしておいた。小さく『朧』と打っておく。剣が透明なので陽炎というのはなかなか良いネーミングかなと思った。
まさかコンビニのガラスと同じ素材とは思えないカッコよさである。魔剣や聖剣にある様な、強力な特性や付加効果は無い。
しかしこれでもかなりチートな武器なんだからね。機械部分に魔法符を入れておくことが出来る。ミスリルは魔法と相性がいいので、符を上手く使えば魔法剣として使う事も出来る。応用力は聖剣魔剣よりも良いんじゃないか?
いやはや、浪漫だ。これは浪漫だ。
「うぉぉおーーーー、先生、ありがとう!!ありがとう!!」
リュウゲンがマイケルになっていた。
君もまたマイケルだね。
リュウゲンも浪漫の分かる奴だったか。正直かっこいいね。私も五本は欲しいとさえ思う。これで最後だから!!っといいつつ続くゲームシリーズで七番目くらいのあの剣もほんと好き。これはそれに見劣りしない出来だね。
「朧先生、俺、この剣で頑張るからっ!」
「うん、頑張ってね、でも命を大事にね」
すっかり熱い脳筋になったリュウゲンを含む一行を見送った。しかし君ら、暫くは建設業だよね。がんばれ~。




