51 フロンティアにて1
51 フロンティアにて1
大戸の東にある開拓村の中、仮設の冒険者ギルドにやって来た。中は狭い割に相変わらず賑わっている。取りあえずまずは受付に移動する。
「華代さん居るかな? 用事があるんだけど」
「あ、朧ちゃんですね。ちょっと待っててください」
受付嬢が、というかさっき飲み物を持って来た微妙な割烹着鎧の人だ。バイトかな?正規ギルド員っぽくない。いやいや、こういう人が寧ろギルドの重鎮だったりするのかも?
「ようこそ朧殿、そちらに届けに行こうと考えてたのだが……ご足労痛み入る。これがここ周辺の地図だ」
この周辺の地図を受け取った。軽く流し見ると、地形、建物などが簡単に書かれている。
有用な植物、気にかけるべき魔物などがそこそこに書かれている。順次書き込みをした痕跡が残っている。最新版を複写した物のようだ。この世界の印刷は活版印刷では無く、魔法で行われている。原理的にはレーザープリンターみたいな感じである。
ともかく、これで当てもなくぶらぶらと彷徨って迷子になったり同じところを何度も通る心配は無くなった。まぁ探知魔法を使えば良いんだけど、それはそれで具合が悪いからね。
探知するよっ!
結果『ウルフ、ウルフ、ウルフ、ヴォルフ、ウルフ、ウルフ…』
あ^~ワンワンするんじゃー。
と、満遍なく探知されてしまってどれが重要か分からない事が多い。お目当ての薬草を探す時もかなりの煩雑さがある。
地図の有用性をピックアップしようとするのだが、正直、無くてもいいかな~、いやいやそんな事思っちゃダメだ。これは皆が測量と偵察、調査を重ねた努力の結晶。うん、探知は添えるだけにしよう。
「ありがとう華代さん。じゃあ早速、外に行ってくるね」
「承知した。大丈夫と思うが、道の無い所を行くと危険だから気を付けて欲しい。危険な場所と魔物は地図に記してある。何かあったらここに、では御免」
忙しそうにして、華代さんは奥に戻って行った。
さて、行きますか。ツカサの居る村の近くの山とかなんかありそう。ギルドを出る時に声が掛かった。
「朧先生ですよね?俺は、調査採集の依頼を受けたので一緒にどうですか?」
ツカサと初めて出会った時と同じような感じだな。いかにも人当たりの良さそうな顔立ちだがどこか険しさのある、軽装で大剣の剣士風茶髪の青年がそう切り出してきた。
「ん?マルタからの学生さん?私の行く場所はちょっと危ないかもだから、付いてこない方がいいよ」
あ、この青年、ディルジールに殴り飛ばされていた青年だ。結局、一匹狼してるのか。一人でやってくのは厳しいと思うんだけど…でもこっちに来てるって事は実力試験は合格したんだよねぇ。
「君、一人で活動しているの?名前は?」
「俺はクラドと言います。基本はソロプレイヤーで、たまに野良パーティーで渡り歩くのが好みですね。万能型の大剣使いなので、足手纏いにはならないと思いますよ」
こやつ、根っからのゲーマーだな、なんとなく親近感がある。ユニークスキルは【効率化補正】で、無駄なく行動ができるよう補正が入るスキルの様だ。
確かにゲーマー、効率厨らしいスキルだ。あぁ、なるほど。経験値がたくさん入るように効率化されて一人になりやすいみたいだね……凄い可哀そうだ……。
ある程度強くなるとパーティーで行動した方が効率が良くなるから、やっとパーティーを組めるようになったという事かな?そこまで補正に強制力はないみたいだけど、本人がそれに気づいてないと結構影響が大きそうだよね。
私と組めと、スキルが無意識に告げたのかね。なんて中二チックな生き方してるんだろうかこの青年は……連れて行こう。
「……依頼内容はどんなの?」
「これです」
ふむふむ、山に入って珍しい植物や鉱物、洞窟の有無、魔物の有無などを軽く調べて、何かあったら持ち帰る依頼だ。指定範囲は私が丁度ぶらぶら散歩しようとしていた付近だ。
「ねぇクラド君。いつも直感とかで行動してる?」
「え?先生、そんな事まで分かるんですか?最近なんか自分が主人公のTAS動画見てるみたいなんですよね。なんか歯磨き後回しにしたら、宿屋の女将さんがまかない出してくれたりとかするんですよ」
(※注釈※ TASは端的に言うと、ゲームを最短の時間で攻略するように気が狂ったように工夫する事です。マリオ最短でクッパ倒す為にルート選別、ジャンプのタイミングとか延々と吟味してく感じです。)
「そこまで違和感はないんですが……。意識を強く持たないとサバサバすると言うか…昔やってたゲームの癖が出ると言うか……」
「じゃあ意識を強くもつのだ青年よ。気づいたら魔王になってましたとか笑えないことになるのは嫌だろう?」
毎度おなじみの精神魔法をクラドに掛ける。
「あ、なにか実家に帰ったような開放感が…あぁ^~~ん」
「なんっ……いくぞっ!」
コイツいきなり泣きだしたっ!! 幼女に泣かされる青年とかどんなプレイなんだよ。さっさと連れ出す。見世物じゃねーぞっ!オラオラ。さっさと村の出口に向かう。
「朧ちゃん、そっちの男、大丈夫なのかい?」
「開放感があったらしいよダイジョウブ、通るよ?」
「あ、うん、ドウゾ。夜には帰ってくるんだよ~」
「落ち着いたか?クラドよ」
「マジで大自然なんですね~、すげー、レガフロがこんなに作り込まれてるなんて……」
なに、その今さっき異世界に転移してきたよ~みたいなウブな反応。
「あ、あれ、薬草ですよ。確かハイポーションの素材になるやつ」
こいつ、ウチで飼うのも悪くないスペックあるな。覚えとこう。
ささっとうーたんも動員して薬草を採集しておいた。点々と残しておくのがマナーである。
途中からシエラにおんぶしてもらいつつ、山にピクニックへ。
スズカも居るよ。クラドへの警戒心が凄くて基本は無言だけど。見定め中かな。
地図の細かく埋まってないあたりに到着。一応魔物などの危険が無いかどうかは探知魔法で確かてみたが、野生動物くらいしかいない。
ん?【キックラビット】、こいつ魔物だね。こんにちは。三匹居たが、こちらを視認した瞬間一目散に逃げ出した。一匹が木の根に足を引っかけて転んだ。
グシャッ
そのまま岩に頭から突っ込んで嫌な音がした。反応は無い。ただの屍の様だ。
「……」
「せめて採集してやるか、うーたん、宜しく」
「う~」
な、なんだかな~。その後、その周辺でキノコやら草やら石やらを適当に集めつつ森林浴していた。ちなみにエルフはハーブの香りがするらしく、キモイ虫は私に寄ってこない。
「朧先生、もっと私に匂い擦り付けてくださいっ!」
ゴスゴス
「スズカ、痛い、痛い」
スズカは虫がかなり嫌いらしい。私も嫌いだね。
クラドは結構いけるらしい。【金剛兜虫】とかいうのを素手でキャッチしてた。うーたんはゴムいので虫もこれをスルー。
シエラはうん、虫除け要らず。寧ろシエラが虫除けだ。シエラから逃げ遅れ、接近してしまった虫は死んだ振りをしている。異世界の虫は芸達者だな。……良く見ると半分くらいは本当に死んでいた……。




