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49 マギ・ロゴス1

一方そのころみたいなやつです。正直この話要りますぅ?と思わなくもなくなくない?感じ。例によって良く分からん描写を追加しました。

49 マギ・ロゴス1


~~~~


 天界は今日も平和ですね。天界ともなると平和は天候の様な物ではなく、創るものですねぇ。

 私は城と神殿が合体した様な巨大な建物の主であり、神であり、そして今は書類を見ています。


 私は世界の測量などを担当している神で、ひたすら調べものと情報整理をする毎日です。しかも雑用も多い。寧ろ雑用がメインです。


「ん~」


 全く疲れてないけど、そもそも疲れない体だけど、疲れた人間のするような所作をとります。手を組んで伸ばして背筋を伸ばす。人間であれば上半身の筋肉を解し、血行を良くする行為のはずです。

 いつからだったか、私は人間の模倣を良くする様になりました。人間の情報を効率よく拾うには、人間的な行動様式を取るのも無駄ではないでしょう。人とはなんでしょうかね。勿論知り得る、あらゆる知識はあります。ですが全てを知るとその上で分からなくなるんですね。

 1+1=2ですがなぜそうなのか。生き物はなぜそうあるのか。物理法則は何故そうなのか。色々と考えます。


「あ、ありがとう」


「…」


 ダリアが無言で紅茶を持って来てくれた。この一杯の紅茶の抽出時間は5分34秒。茶葉は大きい物を使用していますね。


「ダリア、もう少し、50秒程早く抽出を切り上げると良いでしょう」


「は、はいっ、そう致します」


 下界で活動する天使は人間の行動様式を学ばなければならない。ダリアを従えてもう数千年。人間よりも人間を理解していると言えるでしょうか。

 でも駄目なんですね。天使は天使。人、それ自身でなければ、内から見て分かることがどうしても分からない。1+1=3と間違えてしまった子供の心は私にはもうわからない。間違えた時の感情や劣等感やそういう物が分からなくなっていく。間違えて分かる事もある。分かるから間違えることもある。ダリアだから分かることがある。子供だから分かることもある。そういうチャンスを逃さず観察し、蓄えていく。それが大事。



「でも、この紅茶も良いんですよね。味があります。さて、今日の私の仕事はこれで終わりです。ダリア、今日の下界の様子はどうですか?」


 ダリアが姿勢を正して私に近づき、報告してくる。


「魔王の遠征軍は東列島の北から南下中です。人間への害意は無い様で、戦闘を避ける傾向にあります。装備と道筋から判断して、目的は新天地の開拓でしょう」


 ペラ、ペラ、ペラ。


「魔物と魔族の急激な活性化はありません。集団移動なども起きてません。

 アーネイロとパンドラスターはいつも通りです。

 人間の動きに目立った物はありません。

 異世界からの転移者の死者は8名です。全員、条件を満たした為に死亡を回避、あるいは転生予定です」


「いつも通りですね、条件は偶発的死亡ですか?」


「はい。細かい条件を読み上げますか?」


「いえ、いいです。他に大きな出来事はありますか?エレナちゃん以外で」


 パサッパサッ。


「特に、無いみたいです」


 エレナちゃんの様子は私が常に監視しています。重要人物ですからね。今もこうして… あれ、感情測定器の桁が一つ違うような…。



『「タイムロック、フェイトロックを検出。カウンターマジックを実行しました。制圧に失敗、解析に失敗。起点の座標を転送します」』


 天使であるダリアは時を止められていますね。カウンターマジックの実行報告を確認すると、やはりエレナちゃんだったみたいですね。


≪『「マギ・ロゴス」』≫


 膨大な情報が私に流れ込んでくる。私はこれを神の権能で制御、整理する。自力でもなんとかなるんですが、疲れるんですよね。


 ふふ、エレナちゃん抜かりましたねぇ~。


 そんな大きい魔法を発動するなんて、私に解析してほしいと言っているようなものですよ。神は寛大とは言え、私に槍を突き刺したこと、忘れてませんからね!


 さて、いよいよエレナちゃんの中に居る神の尻尾を掴める…私は取りあえず下界のエレナちゃんの周囲を結界で覆い、神装ヴァルキリーを差し向ける様に指示しながら解析結果の整理をする。ダリアのロックを神力で解除する。


「っは、もうしわk―」


「いいから。天界装備をして下さい。場合によっては私も行きます」


 情報解析の整理が完了した。この魔法の因果の元、神の名は「采配の神」。神の発揮する権能で最強とも言える実行力を持つ。七代前の「采配の神」の様だ。あれ、七代前の采配の神はどんな神だったか?――


『カチリ』


 常にシミュレーションしている予測世界の5秒先で因果を上書きされた。タイムロック中での体感で5秒だ。私は、5秒後に上書きされる。私にはこれに抗う術はない。


≪『「マギ・カリュクラス」』≫


 私の思考が疑似無限大に加速した。体感時間で10000倍にする。これで因果を変えられるまでに13時間程の余裕が生まれた。


 ふぅ、まさか天界と神の因果をも操るとは…恐れ入りました。因果の書き換えの条件を見ていく。


 ダメですね。事細かに因果を操作されてしまうため、抜け道が見いだせない様になってます。特に理系の神の行動制約が厳しい。私がこの事実を持ち越すことは不可能な様ですね。流石は元同業者です。というか、たぶんこれ何回も因果書き換えられてますよねぇ…。七代前の『采配の神』について私あまり詳しくないですし、書類も見たことないですし…


 ふーむ、偶発的に無意識にこの魔法を使わせないで、かつ天界の関係者がこの事実を知らない状態を維持したまま、上手く事を運ぶには…


 そこまで考えて気づいた。私が前に腹に槍を刺された時、私はどうエレナちゃんに接したのか…確か、『特に朧ちゃんは天界の他の神々からも隠匿します』と言いましたね。記憶ではそうなってます。


 ちょっと可笑しい事言ってますね、私。普通はその権能を何とか封印したり、抑えたり分離すると思うのですが……たぶんここでも書き換えが起こってたのでしょう。


 その時の私は、たぶんダリアを使ったと思います。なんだかよく分かりませんが、ダリアがエレナちゃんをビンタしてますし。あれはいい情報サンプルをゲットできましたね。


 今後はダリアがエレナちゃんの傍にずっと控えてくれれば突発的なこういう事態は減少するでしょうし、これは常日頃思ってる事ですね。

 もう今のダリアは装備整えようとしてるし書き換えられてしまうから使えないか。何もできないとは悔しいです。もっといい場面に遭遇したかった物ですね。


 それにしてもこのやり口。盤上をひっくり返せるにも関わらず、チェスの駒をルールに従ってわざわざ動かして完封するような、性格の悪いいやらしさを感じる。エレナちゃんの趣味じゃないですね。私と同質の性格の悪さ。


 今は舐めていればいい。隙を見せた時に覚悟しろ。


 ……もーエレナちゃん、くちゃくちゃにして観測したい。それで内側に潜んでいる采配の神を引きずり出してひたすら思考ループに陥れて洗脳したいですよ。せめて、ここにエレナちゃんが居て、実際時間で30秒あればなんとかなるのに……。




 後13時間何しようかな。




 私は暇つぶしに様々なシミュレーションをして過ごした。


 エレナちゃんに良く似たエルフの幼女を計算上に再現する。普通の幼女ね。


 ……。


 別段得られるものは無い。1+1=2であり、3になったりしなかった。


 私は陰惨に殺され、今なお苦しみ続け、死に続ける少女達の横で考えていた。


 それは唐突に表れた。私の感情の中から、このような事をありありと計算し考えている自分は、禁を犯し、呪い殺される想像として急速に形作られる。


 少女の死体は世界で最も悍ましい恐怖を喚起する怨念そのものであるかのように姿を変えていく。


 計算上の物であるがそれをやめても脳裏から消えない。人間が寝る時に頭に音楽が流れて寝れない現象の様に。それは呪いの様にリアルに、計算リソースを食いながら膨れ上がりあっという間に絶望の世界を作る。……。


 再起動した意識の中で、文章としてそれを見る。要はクラッシュレポートの様な物だ。


 多少は得られる物があった。どこまでも万能なその能力、思想であっても検閲し介入してくる非常識さ。

 はぁ~。でも楽しい。あからさまなそれは良い目標だ。


 ……・。


 全リソースを本体に。天界の維持、周辺の知覚などに割いていた分が戻ってくる。


 自身の最強の装備、最高のコンディションを現出させる。


 おおよそ人一人分の思考能力分をパーティション分離してエレナちゃんを再現する。


 それはエルフの可愛らしい幼女という情報を元にとても荒い解像度の映像として表れる。顔を見れば顔が良く見える。


 ロンギヌスの槍で腕を刺す。


「うっ、理の神、どうして?痛いよ……」


 この槍に刺されたものは生きている限り、血を流し痛みに叫びを上げるという概念的な神槍だ。


 普通はあまりの痛みに意味のある会話などできない。


 血は出ない。


 この槍のリソースの方が、エルフの少女に割いている計算リソースより遥かに大きい。


 ここでは、リソースの多い方が優先される。具体性のない、想像上の最強の剣はそこら辺の見慣れた木の棒に武器として劣る。


 エレナちゃんへの計算を停止する。


 それはそこに、まだいる。


 ロンギヌスの槍で何度も突き刺す。


「臆病者、やっとでてきたか」


 少女の身体はクレヨンで描いた黒に赤い穴の空いた物に成る。


 ソレは私の知覚と聴覚のリソースに乗り替えた様だ。生き物は物理現実を見ているのではない。物理現実を、感覚器からの信号を映像や音声として想像上に再現しているに過ぎない。それは計算に還元される。要はリソースだ。サルには黒板に書かれた文字は少し変な風景として見える。人にはそれは文字として見える。見えるというのは理解を含む。


 神の眼にはその真偽が映る。


「私は消えたか?居るだろここに。さぁ始めよう」


 どう考えても現実の生き物ではない形のそれは確かにそこに映る。


 どんな神の武器を使おうとも、空間を消そうとも、ブラックホールに落とそうとも、視界のレイヤーに在るように不出来な絵のままゆっくり大きくなってくる。五感を切り替えても、閉ざしても。思考を切り替えても再び見ればそこに居る。


「臆病者に私は倒せない」


 それは圧倒的なリアリティーのある情報量として私の前方に現出する。エルフの幼女。無表情だが、嗤っている。アルカイックスマイルだ。笑顔のお面を被っている様な顔。手には聖剣ヒノキボルグ。


 カルキュラスカノンによる必中演算で射撃する。圧倒的情報量で空間を上書きして轍を無に帰す球体が彼女の身体を通過し、消す。

 骨を見れば、その生き物は死んだ事が分かるように、直撃した事を観測すればそれは消滅しているはずだ。


「いつからお前は目端が利くと錯覚した?まるで闇雲に石を投げているようだな」


 光の束が天から降り注ぎ、それを上から押し潰すように飲み込んでいく。


 まるで重なり合う別次元に居るかのように、彼女は何事もなく光の柱の中から歩いて来る。


「世界は、まぁ、そうだな。お前の身体とよく使う剣くらいは認めてくれるんじゃないか?ほら、一流の冒険者は剣を自分の手足の様に例えるだろう」


「……」


 試しにお気に入りのピアノを弾いてみる。情熱的な戦いの旋律を凄い早さで演奏する。


 白銀の剣と漆黒の剣がハンマーに叩かれたかのように急加速して少女を次々切りつけ、貫く。それは至高の旋律。満身創痍となり血を流す聴衆は、何故か痛みを感じず、夢見心地の中で聞き惚れる。命の危機により集中し、或いは死に逝く中で最高の体験をする。


「えぇ……、チートみたいな武器使ってんなぁ……。それ近接武器なわけ?」


「そうですね。見ての通り」


 このピアノは奏者が弾いている間、演奏を止めることはできない。聴衆は満足したものから寝ても良い。席を立ち、旋律の届かない場所へ行っても良い。


「まぁいいだろう」


 彼女は身体の損傷など無かったかの様に木の枝を振るい、鍵を弾いていく。


「……」


 彼女は演奏に合わせて鍵を弾き、私の背からヒノキの棒を差し込んだ。


 私の胸から棒が飛び出している。


「どうした、演奏やめなくても良いんだぞ」


 神になる前は良かった。今の私にはこの武器は適さない。別に殴られても演奏に支障が無いからだ。逆に、血染めのドレス、悲劇の奏者は美しくすらある。


「それがお前の剣か」


 私は愛用の細剣を逆手に背中の後ろの空間を刺し貫く。手ごたえがある。


 彼女は胸に剣を生やし、崩れ落ちる。


 私は自分の胸に刺さった棒を引き抜く。


 私の愛用の神の剣と言えど、一発で倒せるほど彼女は甘くないはずだ。


「おまえは、どう、おもうんだ……」


 彼女は完全に死に逝くそれだ。可憐で、無垢で、何も罪のない彼女を、私は愛用の剣で確かに刺した。


 彼女は涙を流しながらも、今日一番の元気な、八重歯の見えそうな笑顔で、口から血を滴らせながら、女の子すわりして俯き、静止する。


 眼に光は無い。




 剣を引き抜く。血が飛び散り、どさりと倒れる。

失禁し、血だまりに屍が横たわる。


 痛いほどの静寂が訪れる。



「あ、ああっ!ああああああああ」


 私は私の罪から逃れられない。私を呪う私から逃れられない。


 あれほど計算上の演算結果であっても理不尽に凶悪でぼやけて掴みどころがない彼女は、私にはどう考えても現実に思える状態であっさりと死んだ。私が殺したのだ。


 殺してみたらどうなるか、などという理由で殺したのだ。殺せてしまったのだ。想像上で殺したので無罪とはならない。

 そもそも現実と区別のつかない演算上で殺しても殺した本人の主観による罪は変わらない。


 後になってそれが空想や夢と分かったら初めてそれに分かる。醒めなければ事実。そういう物だ。



『むやみに弱者を痛めつけてはいけない』


『君を泣かしたのは君なんだ。それは、見えなかった罪を自覚したから』


『君の魂はそれを覚えているかもしれない』


『願わくば、君が優しく健やかな心を持てるように』


『時間だね』


~~~~


基本、登場する神は人間の心を持った、比較的話の分かる奴です。


①野良猫いても無関心。必要あったら処分する神。神にとって猫と石ころの区別があんまりない。

②野良猫いたら子猫弄って殺したり、隣り合うガラスケースに入れて片方は手厚く世話してみるとか、精神のあるものとして構うのがCoCの邪神など、人の想像する神

③野良猫は何考えてるんだろうと探り、こっちの野良猫は意地悪で自己中だから助けないとか、こっちの猫は健気で思いやりがあるから助けるとかが、宗教や物語で出てくる神。


基本③の神ね。時折②ね。天動説と地動説に近いかな。よく考えられる神の定義が既に人中心に考えているわけですが。だいたいそんな感じでw。

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