47 大戸14
47 大戸14
エレベーターで10階に登っていく。近代的な分厚い箱で出来たエレベーターではなく、もっと簡素な造りをしている物である。動力さえ用意できれば比較的容易な技術ではあるよね。安全性は大丈夫だろうかと不安になるが、やっぱり手間には替えがたいから乗るんだけどね。
「こんにちは、ミス朧」
「え?、シーゼルが何でここに?」
シーゼルが私のフロアの玄関ホールで待っていた。さっき私に熱視線を注いでいた生徒も居る。日本人的な美人さんで黒髪に艶のある人だ。目も黒い。洋服を着てても似合ってるな……。
「こちらの生徒が朧先生に会ってみたいと。私もミス朧の工房を見てみたかったので押しかけてしまいました」
勉強を理由に?女子生徒を理由に?幼女の家に?押しかけて来た感じ?なるほど?
「こんにちは、朧先生。わたしはスズカと言います」
「こんにちは、取りあえずあっちにどうぞ」
応接間に案内して、シエラにおもてなしの準備をしてもらう。最近分かったがシエラは家事はそんな得意でもない。特に料理は上手くない。何処からともなくシノビの様にメイドさんが来て手伝って居るよ。あとうーたん。
ちょっとこっちで時間潰し過ぎな気がするんだよね。東列島の開拓先遣隊の様子が気になっている。まぁ問題があったら念話が飛んで来ると思うし大丈夫かな?
「ミス朧、研究はどんな事をなさっているのですか?やはり魔法式の開発でしょうか?」
開幕それかよ。もっと今日はぽかぽか陽気だねとか、そういえば最近おいしいお菓子が手に入ったので持ち寄りました。どーぞお納めくださいとかさぁ。
「いや、魔法の研究は全然やってないかな…」
「なんと!、てっきり東列島で大魔法の実験をしているとばかり…」
「普通に道具屋をしてるだけかな。あ、でも魔道具の爆弾で魔物の居る村を更地にしたりしたよ」
「魔道具の爆弾ですか。炭鉱の発破、視界の通らない原生林の魔物の掃討などに良く使われますが、村を爆破とはなかなか斬新ですね。普通は魔法を打ち込むと思いますが…」
シーゼルがなにやらぶつくさと考察し始めた。やっぱりこいつは魔法バカだね。イケメンなのに勿体ない。コイツはほっといて、スズカさんと会話しよっと。
「スズカさん、私に師事して何を学びたいのかな?私はこれから東列島で雑貨屋がメインの生活になるから、ここで魔法研究をしたいと言われてもちょっと都合が悪いんだけど……」
「私は魔法と魔道具関係の勉強がしてみたいです。朧先生は魔法言語に詳しいと聞きましたので、その方面から勉強していこうと考えています。お邪魔にならない様にしますので、どうか傍に置いてください」
「うーん、じゃあ私のお手伝いをしてもらおうかな。アイテムや魔道具を作る予定もあるから、勉強にもなると思う」
「ありがとうございます。朧先生、これから宜しくお願いします」
「はい、よろしくね~、スズカ」
私は幼女だが、先生に挨拶するように接してくれた。そして握手をした。どう考えても立場が逆なんだよね。なんとも言えない気分になる。
先生って呼ばれると嬉しいけど、ちょっと幼女としても扱ってほしい~みたいな。
「……」
シーゼルが羨ましそうな目でこちらを見つめている。
「…シーゼルってこの塔で研究始めてるよね。確か9階だっけ?」
「はい、魔法を専攻している学生と一緒に研究をしています」
「火魔法が得意みたいだけど、どの属性を研究してるの?」
「今は火魔法ですね。学生達は魔法に寄らない火の性質に深い知識を持っている様なので、そこを上手く生かして火魔法を改良したりしてます」
おー、なるほどなるほど。科学知識と魔法知識が合わさって捗りそうじゃん。ぜひ頑張ってほしい所だ。時間は掛かりそうだが、将来的には良い魔法式ができるんじゃないかな?なんとなく。
「教科書の魔法はまだ改良の余地があるよね。研究応援してるよ。頑張ってね~」
「はい!無駄のない美しい魔法式を作って見せます!」
シーゼルに『東列島に付いてく』とか言い出させると面倒だからね。とりあえず研究へのモチベーションを上げさせる事が出来てひと安心と言った所か。落ち着いて来たら相手をしてもいいんだけどね、また今度です。
「じゃあスズカ、さっそくだけど行こう。ちょっと用事があるからね」
「先生、学園の転移門は地下にあるのでは?」
「こっちからも行けるのだよスズカ君。まぁ付いて来て。またね、シーゼル」
「はい、行ってらっしゃいませ、ミス朧」
論より証拠。スズカを連れて実験区画へ移動する。
「この扉の右側を押して向こう側に行けば東列島に転移できるよ。私に続いてね。シエラは最期に付いて来て」
そうこうして手早く東列島のうーストアの制御室にある転移門に転移した。ちなみに買い物に行ったうーたんは既に収納してあるので三人だけが転移門を通る。
「す、すごい!こんなにあっさりとワープするなんて!」
お、めっちゃ驚いてる ういういしいのぅ~。
「ここが私の道具屋さんだよ。あっち側が居住スペースで、そっち側がお店スペースね。取りあえずお店側に行ってみよう」
お店側に移動する。まだツカサを含む先遣隊は帰ってきて無い様だ。不測の事態が起きてないことを祈ろう。さて、うーたんを出して、お店の品物を整理させる。店番をしていたピンクうーたんも混じってなかなかいい雰囲気の店内である。ゲームっぽい。ぐぅかわ。かわいいうさぎさんがもふもふうごいてるんですよ。
「この兎さんかわいいですね」
「うーたんって言うの。強くてかわいくて頭も良いウサギさんだよ。仲良くしてね」
「へぇー、外見はモフモフでも、中身はゴツゴツなんですね。宜しくね」
なん、最近の若いのはシニカルな含みを混ぜるからいかん。意図せず言ってたりするんだよね。うーたんは全部優しさで出来ているんだよ。
「うー、うぅうーうー」
スズカは早速うーたん達と挨拶を始めた。
「まずは色々な魔道具を見てみようか、ポーションから聖剣まであるから好きに見てみて。分からないことがあったら聞いて~」
何をどう教えていいか分からない!
ので、とりあえず聞かれたら答える方式を採用する。後はなんか魔法に関連したお手伝いをちょこちょこしてもらえばいいんじゃないかな~、…適当な先生でごめんねマジで……。
「朧先生、ポーションってそもそも魔法が関係あるんですか?傷薬との区別がいまいち付かないんですが…」
「ポーションが魔法のアイテムなのは、主にこの溶媒の特殊性が理由かな、ここに溶けている成分、効能を被使用者に瞬時に反映するのが魔法の効果ってこと」
「おー、なるほどです。じゃあアイテムボックスは…」
「それは容器に空間魔法を書き込んだ魔道具で……」
たまにはこういうのも悪くないかな。暫くそうしてスズカと一緒にアイテムと魔法について勉強した。




