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45 大戸12

45 大戸12


 ツカサ達を送り出した。お店のカウンター側にあるソファーにグデーンと座り込む。幼女だからうずうずしちゃうのか、座ってるだけなのはなんだか暇。シエラでも労ってみるかな。


「シエラー、肩叩いてあげる」


「…お願いします、お嬢様」


 シエラが正座の踵を立てた姿勢で私の前に座る。


『トンットンットンッ…』


 全然肩凝ってないよシエラ…。まぁこういうのは気持ちが大事です。


『トンットンットンッ…』


 ひょっとしてこれ打撃力足りてない?揉みに移行する。


『グッグッグッ…』


 握力も足りてないかな?やっぱり凝ってないのかな~?


『グッグッグ…プルプル…』


 貧弱過ぎたか……。まっ!いうてエルフは将来性抜群だからね。いつかシエラの肩をヒィヒィ言わせてやる。私はそう心のメモ帳に書き込んだ。


「ごめん、シエラ、ほぐせないみたい」


「いいえ、ありがとうございますお嬢様」


 もう、うい奴めぇ。そんな満足そうに言わなくてもいいんだよ。今度はシエラが私を長椅子に横たえて私を揉み解していく。


「うっ、ん~~、いっ、う~、あ~そこぉ~、ぬぉお~ん」


 あっあっダメだぁ~シエラはテクニシャンだったのか、そんなに凝ってないと思っていた幼女の体だけど、グリグリと解されていく。


「ふぅ、ふぅ、ありがとう、シエラ」


 全身の筋肉を解されて、長椅子に脱力した姿勢でグデーンとなってしまった。うっ、私なんか気持ちよさに抵抗しようとして汗掻いてる。抵抗は無駄で私は全身ほぐされちゃった。もうお嫁にいけない。はずかしいよう。

 でも、シエラなら、ぃぃょ♡……そうこうしていると……

 

『う~?うーうー!』


 うーたんから念話符での念話が飛んできた。マルタでお買い物中の青うーたん達からだ。どうやら私に会いたいという人が居るらしいので、こちらに判断を仰いで来た様だ。暇だし呼びつけられてやるかな~


「うーたん達、留守番宜しくね」


 店番を任せ、再びマルタへ。…銀の塔の玄関までやってきました。


「うー」


「こんにちは朧さん、アポイントメント無しに押し掛けてしまった非礼をお詫び致します。私はマルタ商業ギルドのギルドマスターをやらせて頂いている、ユーノ・グラスという者です」


 中肉中背に見えて神官風と中華風を折半したような嫌みの無い趣味の良い柄の服の、内側にインナーマッスルを隠し持ってそうな20台後半に見える、緑髪を七三に分けた、老執事のかけていそうな片眼だけの眼鏡をかけた、インテリ風の顔立ちの商業ギルマスが来た。


 あーなんかまた面倒臭いなんやかんやが始まるんだな。なんやかんやは、なんやかんやぁ!


「商マスさん、私になにかご用?」


~~~~


 私はマルタの商業ギルドのマスターをやっているユーノ・グラス。

 昨日は女主人の道具屋と雑貨屋と食料品店、武器屋、防具屋、鍛冶屋等々で、また娘に店番を任せていた店舗から買い叩く程ではないにしろ安値で生活必需品を中心に買い占めた謎のゴーレム、『うーたん』についての情報がギルドに上がってきた。


 策謀の糸を繰る手癖の悪い貴族や、郊外の洞窟などに潜んでいる盗賊の市場介入を疑った私は調査を開始した。

 店の女主人や留守番の娘に事情聴取をしたところ、

「可愛かったからつい負けてしまった」

「残った品も買ってくれた」

「力仕事を手伝ってくれた」

「肩を揉んでくれた」

「鳴き声がかわいい」

 などなど、女心を上手く掴みつつの買占めだとわかった。


 わたしはこの『うーたん』なるゴーレムの主人の目的が非常に気になったので、各種ギルド等に照会してみた所、冒険者ギルドとアカデメイア学園に籍を置く『朧』というエルフの少女が主人だと言うことが分かった。ゴーレムの首輪に彫られた文字と一致している。

 都会で社会的に溶け込み俗事に積極的なエルフは少ない。


 なにか、特別な思惑や目的があるのだろう。


 私は更に追跡して調査を進めた。


 結果、『朧』というのは通称で、本名はエレナ・ルビーライト、六歳の少女だという事がわかった。父親はダイン・ルビーライト。名門の高位ヴァンパイア家『ブラッドショット』の三男である事が分かった。母親はユミル・ルビーライト。『エルフの森』で魔道具の流通を牛耳っている大家のルビーライト家、その御令嬢だ。


 ここまで調べるのに商業ギルドのテレパスの魔道具で構築された通信網で調べて六時間ほどかかった。

 更に、エルフ少女エレナは嘗て『氷雪月華』と呼ばれていた冒険者『シエラ』をなぜかメイドとして侍らせていることも分かった。

 シエラはこれまでアカデメイアに隠遁していたことから、少女エレナはアカデメイア学園とも密接な関係を持っていると推察される。


 そうして重要人物としてマークしていた所、今日の午後、色違いの『うーたん』が再び市場に姿を現した。この時点で数十体の『うーたん』が存在していることになる。警戒していた為にすぐに補足することができ、接触したと言う訳だ。


 目の前には少女…いやこれはもう幼女だろう。とても市場介入、それ以前にまともに商売が出来そうではない。

 つまり、普通の少女だと思って接してはならないだろう。慎重に目的を引き出さなければならない。

 

「朧さん、私は今日、マルタで生活用品が短期間に買い占められているという情報を聞きつけてやってまいりました。そちらのゴーレムがマルタの市場で、食糧や魔道具などの基幹的な物資の買占めを行った事は確認しております。間違いありませんか?」


「え?うん。うーたんに道具を買ってきてもらったよ?」


「はい、それでですね、商業ギルドでは国から認可状を貰った上で、市場の安定を包括的に維持する任と優先権がある事はご存知でしょうか?」


「え、えと、ご、ごめんなさい、知りませんでした……」


 少女エレナが動揺しながらうつむく。銀の髪が前にサラサラと傾く。可愛らしい魔女の帽子は背中に流しているのか少女の顔が良く見えている。

 叱られた少女のような反応だ。私が虐めているような気分になる。が、演技の可能性もまだ捨てきれない。


「まずは、マルタでの売り買いについての確認をしたいと考えています。商品でも書類でも構わないので、何か帳簿など、売買の内容が分かる物はお持ちですか?」


 既に何を幾らで買ったのかをほぼ網羅した書類を私は今持っている。虚偽の申告をしたり、物品が不自然に増減したりすればそこから目的も透けて見えてくるだろう。

 悪徳商人や害虫貴族相手に有効な手だ。別にウソをついても罰則は何もないのだが……後ろめたい事をしている人間は焦り、ボロを出す。さてどう出る?


「えっと、えっと…その、もうけっこう売れたり、他の場所に運んであったりして…帳簿も取ってなくて…うっ、ごめんなさい、ごめんなさい…うっ…うぅう…」


 ついに泣き出してしまった。潤んでいた橙の眼から涙がポタポタと頬を伝って下に落ちていく。顔が泣き顔に歪む。これが演技とは考えられない。この少女を表にして裏で誰かが……


「……」


 あっ、心臓がとまってしまうかと思った。少しちびってしまっている。シエラがもの凄い形相でこちらを睨んでいる様な気がする。顔は能面の様なのだが、眼が……死神のような眼だ。死神に会ったことは無いが……。


『キィーーーン』


 耳鳴りがしてきた。商人は態度で屈したら終わりだ。……もう少しちびった。


『ギィーーーン』


 体が震えてくる。心臓がバクバクしながら不整脈になっているのが自分でわかる。嫌な汗が背中を中心に全身に広がる。ちびる。下着が濡れたのが分かる量だ。


 シエラが私の股間に目を合わせて、ゴミを見下すような目線で射貫いてくる。


 …私の尊厳と矜持は失われたのだ。私はなんて矮小な人間なんだろうか。

 自分の欺瞞的な正義と好奇心で幼女を言葉で嬲る変態の屑じゃないのだろうか…。心臓の鼓動が急に大きく、ゆっくりになっていく。罪は贖わなくてはならない。




 そうだ、死のう。




「あ、あぁ、ごめんね。エレナちゃん。わたしはどうしようもないゴミ屑で変態かもしれない。気持ち悪いよね、今から死んでくるネ」


「ぐすっ、ううぅっ…え?どうじだの?」



 ――気づけば、ロープを学園の木に括り付けている所を衛兵に取り押さえられたところだった。


~~~~

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