40 大戸7
40 大戸7
林の中に入った。埴輪お面がこちらを視認している様子はない。山を背にし、我々は全員で廃村の方を見る。…どうやら埴輪面は村から出てこないみたいだ。大戸のある方をジッと見ている。上空に広がっていた透明な円盤が端から垂れるように村を包む。まるで巨大な鳥籠だ。
「追ってこないみたいだな」
大剣を後ろに構えたまま正面を向いて相手の出方を見つつディルジールが呟く。
「追ってこないみたいだし、早く帰ろう」
私が提案する。
「距離さえ空ければ大丈夫そうだ、もう少し様子を見ておこう。追撃をしない以上、このマスク野郎は野放しになる。せめて行動ルーチンを把握しておきたい」
危機を脱して一息ついたからか、まだまだヤル気じゅぶんの又郎さん。
このお面が里に下りてくる事も十分あり得るし、もう少し様子を見てみるか。もしかしたら埴輪面が油断してくれて、倒せるかもしれない。慢心かもしれないが保険はある。
『「あっ … っぼ」』
村の中に獲物が居ないことが分かったのか、村を覆っていた透明な壁が引いていく…。
突然、オルナルドが動き出した。
「全員、俺の後ろに飛び込めっ!」
え? はい? 戦士の勘って奴かな。従おう。
埴輪面の口からビームの様に透明な触腕がものすごい勢いで出てくる。大戸へと延びる道にある木や土が――あらゆる物が掘削される。掘削された土砂は端からお面の口へ飛んでいく。
そのまま埴輪面が回頭してくる。このままだとこのあたり一帯が薙ぎ払われてしまいそうだ。
みんな指示通りにオルナルドの後ろに飛び込むように集まる。
「きゃっ」
エリカがこけた。それを見越してたかのように華麗に後ろからデルハルトが抱え上げてオルナルドの元へ駆け込む。さすが体育会系の引率の先生である。うーたんの機動力のある私は、殿の方で脱落者が居ないか見てたが杞憂になってくれた。
≪此の門の在る限り――キャッスルゲート≫
埴輪面はさっき上空に出していた透明な構造体を再利用する形でビーム状にしている様だ。外側の面は前へ、内側は面の口へと流動するストローみたいな物らしい。
心配になったので防御を重ねる為に、オルナルドの前面に障壁符を二枚投げ飛ばして障壁を張る。うーたんもそれに合わせて障壁符を二枚投げ入れる。
『ギャキィーーン、ギャリギャリギャリ』
ほぼ一瞬で障壁四枚を抜かれたうえに、オルナルドの盾と埴輪面ビームとの接触でエネルギーが爆発する。
力場が金属をぶつけ合うように火花が散っている。埴輪面はこちらを補足した様で、ビームを鞭の様にしならせて、今度は反対方向からオルナルドの盾に触腕を叩きつける。
『ギャキィーン』
また往復する。
『ギャキィーン』
『ギャキィーン』
『ギャキィーン』
「もう、持たないっ!お前らは後ろの山の方向に逃げろっ!」
盾を唸らせながらオルナルドが言う。お前それ完全に死亡フラグじゃねーか… その身代わり人形は国庫から出てるんだぞ、お前がここで身勝手に死ぬと残機が減る。つまり…
「私が次元障壁を張る。その隙に交代して全員で逃げろ」
≪隔絶する壁は何も通さない――ディメンションウォール≫
埴輪面は攻撃態勢につき行動阻害の呪怨は唄っていないようだ。詠唱魔法が発動できた。
腕は次元障壁に阻まれて音もなく止まる。次元魔法の中でも魔力消費の低い魔法を選択したのだが、魔力消費が激しい。持って20秒くらいかな。
オルナルドがなんとも言えない顔で私を見る。ヘルムが吹っ飛んで濃い金髪青目で鼻が高いダンディー系イケメン顔でこちらを覗く。そして踵を返して山の方へ走って行った。
案ずるな、ここでやられるとは限らんよ。私のの気合を察してか、腕の無いキングうーたんと普通うーたんも私の後ろに控えて残る。
「そろそろ魔力切れるよ、次のインパクトの後に特攻だね。…ぶっ壊れたら角二本おまけしたげる」
キングうーたんに私のハンマーを渡す。
『ブォン』
口から腕ビームが摩擦ゼロで次元障壁の面を通過する。うーたんが走る。往復でビームが一薙ぎ。縄跳びの様にうーたんとキングうーたんが飛び跳ねて回避する。そのまま加速しながら駆けて、埴輪面の元まで詰めた。
「うーっ」「ううーっ」
接近後、うーたんが槌を振るう。
『ガキィーン』
透明な短い方の腕に阻まれる。
『ガキィーン』『ガキィーン』『ガキィーン』
キングうーたんが走り込んだ勢いを乗せてそのまま槌を縦に回転しながら打ち込む。三回程殴りつけたあたりで、反作用で空中に浮く。
「あっ」
埴輪面の腕が振るわれ、うーたんの槌が削り取られる。やっぱダメか…作戦Bだ。
『シエラ、聞こえる?』
『はい、お嬢様』
『茶キングうーたん目がけて爆弾をカタパルト射出できる?制御盤のモニターで操作できるから見て』
あの角にはマーカー機能が付いているので目印になる。
『はい、可能でございます』
『では、村を吹き飛ばすくらいの威力、急ぎでッ』
うーたんがそのまま拳を叩き込むも腕に阻まれ、次いで胴体を薙ぐ。そのままうーたんは吹っ飛ばされてしまう。キングうーたんが上空から槌を打ち下ろす。腕で阻まれるが、上手い具合に埴輪面に掠る。
埴輪面はキングうーたんを脅威に感じたのか、両腕で挟む様にキングうーたんを圧殺しようとする。
この段になって、口から出ている長い触腕は動かなくなって地面に横たわっていた。…この朧うーたんだけでも逃がそうか。
私はうーたん達の最期は見ずに、山の方へ駆けて行った。
数十秒して、後方からとてつもない轟音が響いて来た。熱波が背中を叩く。
付喪神の宿ったお面は何を思ったのだろうか。それなりにドラマがあったには違いない。
だが、高次元からの存在に滅びを言い渡された。解放の時である。もう、おやすみ。
村を破壊し尽くす爆炎に晒されてなお、お面は存在していた。かなり接近しての爆発であった物の、堅く小さい物を破砕するには至らない。
爆風に吹き飛ばされるお面は遙か彼方より飛来する槍に貫かれた。魔物としての崩壊が始まる。その槍はこの場に居る何者も知覚出来なかった。
安定のマーカー&爆破
爆弾はシエラがどこからか用意したのか、それとも道具屋に置いてあったのか…
槍はフルスペックのグングニル。必中必殺の炎の槍。この世の視覚情報はイデアの影。イデア界にある生命はいとも簡単にこの槍に貫かれ、燃え尽きる。貴方は幸運なことに、この槍の影を見る事が出来るかも知れない。
という感じのエレナちゃんの槍です。エレナちゃんの殺意に反応して飛んでいきました。




