30 エルサル正教国9
30 エルサル正教国9
[朧幼女]『っと、まぁそういうわけだ』
[理の神]『いやいやどういう訳ですか?』
[朧幼女]『覗き見とかしてたんじゃないの?』
[理の神]『いえ、私はこれでも結構忙しいんですよ。一日24時間では足りないくらい』
[朧幼女]『え、そりゃすまない。では簡潔に、悪魔の軍が、今私の居るこの町に押し寄せてきて魂を数万程奪ってくようだ。予定ではおおよそ四カ月後らしいが、阻止できるか?』
[理の神]『…』
[朧幼女]『き、聞いてる?』
[理の神]『…なるほど、なるほど~、やってくれますね、悪魔の分際で!』
[朧幼女]『で、大丈夫か?』
[理の神]『はい、先手を打つ事で悪魔の軍勢を事前に鎮圧できますね。戦争幇助、準備罪的なのが適応できます』
[朧幼女]『もう全容分かっちゃったの?結局どういう話だったわけ?』
[理の神]『そちらの世界で言うと……ゲームサーバーのバージョンアップとかあるじゃないですか。その時に隙をついて情報漏えいしちゃう感じですかね?』
[朧幼女]『いや、あんまり分からん』
[理の神]『今年この世界に来る魂が数万くらい。この世界のルールで正当な理由なく魂を奪う事はできないんですけど、それは魂の総数で管理しているんですよ。だから、数万までなら一時的に発覚されずに魂を奪うことができるんです。マイナスにならないですから』
[朧幼女]『セキュリティーホールみたいなものだな』
[理の神]『それに近いですね。もう異世界から来た魂の分も更新したので、魂を取りにくる事は絶対にできません。ついでに個別の魂も紐付けして情報の再更新をしてます』
[朧幼女]『なんでそんな大事な事してないんだ』
[理の神]『魂を奪ってもすぐに発覚しますし、そんなことをして、どうなる事でもないので一年毎に管理してるんですよ』
[朧幼女]『怠慢だなー』
[理の神]『正直な話、そこは私の担当じゃないんですよね~……』
[朧幼女]『どっかの大臣みたいな事言いやがって、これだからお役所仕事ってのは…』
[理の神]『面目ないです……。異世界からの魂の流入の件での天界のお仕事のなんやかんやがあまり上手く行ってないんですよね。
部署間の横の繋がりがギクシャクしてまして。新しい事始めたけど普段使わないシナプス繋いでるからもたつくって言うかぁ……』
[朧幼女]『ひょっとして天界で部署毎に派閥争いみたいなのしてたりするのか?理の神派閥みたいなのあるん?』
[理の神]『そこまででは無いですけど、仲が悪い同僚が居て、その間のやりとりが上手くいかない感じです。いや、私は結構歩み寄る方ですよ?神職に就くのは総じて司る分野に突き抜けた存在ですから、そもそも協調性とかそういう概念が無い者ばかりでして……。例えば地球のマスコット枠のペンギンさんが暑い暑い、氷溶けてるよ~っ!て思っても、人間は冬は寒い!ってガンガン暖房回してて意思疎通できないしそもそも出来るとも思ってないでしょ。そういう感じですね』
[朧幼女]『なるほど?わからん。ん~、アメリカ人の友達が居て、なんかニュースに載っていたアメリカ人知ってるかって聞いても、いや知らんがなってなる感じ?アメリカ人は皆ネットで連絡付く仲良しじゃねーよって、なるような?』
[理の神]『そんな感じです。ともかくもう安心ですよ』
[朧幼女]『本当か?悪魔は来ないし、人も死なないんだろうな?』
[理の神]『本当ですよ。悪魔の目的も判明しました。というか今、制圧しました。魔界で制圧完了です』
[朧幼女]『天界の住人ってホント仕事が早いのな、それで悪魔は何してたの?』
[理の神]『ズバリ、邪神の封印解除です。封印を解くのに沢山魂が必要で、数分ほど魂をレンタルする予定だったみたいですよ』
[朧幼女]『邪神って今は居ないんじゃなかったっけ?前任の邪神か…それと魂を生贄にするんじゃなく?』
[理の神]『ええ、昔の邪神ですね。魂は出力装置として借りるだけです。エネルギーは悪魔達が頑張って補うつもりだった様ですね。この世界の法則的で、他者が他人の魂を消費することはできません。だから基本的に魂を奪われることは無いハズなんですよ』
[朧幼女]『つまり、暗証番号の分からないクレジットカードを盗むようなものなんだな?』
[理の神]『そうですそうです。今回悪魔達は変則的な裏技みたいな事をしてきたから、意表を突かれてしまったという形になります。物質世界に来る為に溜めた大量のエネルギー、儀式に使う為に溜めたエネルギー、アイテム、魔法陣の類も全て接収ないし破壊しました』
[朧幼女]『おお、悪魔達の身柄は?』
[理の神]『一旦拘束ですね。弱い悪魔なんかは制圧時に蒸発したみたいです。幹部連中が少し残ってればいいですし、今から尋問です』
[朧幼女]『え、蒸発ってなん?こわぁ…。それで悪魔の件は解決した?』
[理の神]『ええ、やる事は悪魔の尋問しか残ってません。それで、貴方とノイル君の事なんですが』
[朧幼女]『うん、そっちも調べたか。それで?』
[理の神]『特にどうにもならないですね』
[朧幼女]『うん?ノータッチってこと?』
[理の神]『そんな感じです』
[朧幼女]『ふわっとしてるな。時間操作は違法だとか、なんちゃらかんちゃらと一悶着あるかと思ったが』
[理の神]『…』
[朧幼女]『どうした、私的には天界と対立フラグが立つかどうかが不安なんだが』
[理の神]『こ、今後とも良しなに…』
[朧幼女]『はい?』
[理の神]『ちょっともうわかんないです。私もう帰っていいですか?ダメですか?ダメですよね~』
[朧幼女]『あー、貴様、私にあんなことやこんなことしようとしただろ』
[理の神]『ひぇっ、ちょっとこっちに変な敵意向けないでください。刺さってます。今、私の体になんか槍が、イテテ、いやぁ、ちょっと本格的に朧ちゃん調べようと思ったんですよね』
[朧幼女]『大丈夫かお前、ぐちゃぐちゃ音してるぞ』
[理の神]『これ完全に挿入ってますよね?槍です、槍。それもヤバそうな奴ぅ~、朧ちゃんが想像する最強の槍は~!?』
[朧幼女]『え、これ念話だよね?大丈夫か?工事現場みたいな音してるぞ? んー、グングニル?って、なんか手元にすっげえ槍が出現したんだけど』
[理の神]『ふぅ、それ、時空魔法のアイテムボックスにしまってくれます?』
[朧幼女]『はいはい、で、私を調べたのがなんとかかんとかって』
[理の神]『うっ…もうその話やめません?』
[朧幼女]『なんか不安になるじゃない』
[理の神]『落ち着いて、怒らないで聞いてくださいね。またなんかこっちに飛んで来るんで…』
[朧幼女]『善処する』
[理の神]『…前々から思ってたんですが、どうも朧ちゃんを構成してる精霊の一つが天界由来っぽいので、ちょくちょく調べてたんですよ』
[朧幼女]『ふむふむ』
[理の神]『で、天界から来た何か、とまでは分かったんです、でも結構よくある事で、それ以上はわからなかったんですよ。天界って神秘主義なのでまぁその程度と思ってたんですが』
[朧幼女]『ああ、そうらしいね』
[理の神]『で、今回の件で、まずはノイル君にですね…苦しまない人生をあげようと思ったんですが、できませんでした。因果を辿ると朧ちゃんでした。今回の件でノイル君が時空魔法習得を決意した事件が解決します。だから、普通の転生者としての人生を送って貰えばいいかと思ったんですが…』
[朧幼女]『ほむほむ、で本音は?』
[理の神]『いやはや、時間跳躍の類は天界の倫理的に困るんですよね。因果が複雑になって、あとで何か作業する時に面倒なのです。普通の人間がそれをすると特段に。だから幸せな人生で保障しようかと思いまして…』
[朧幼女]『それ、パラドックスは起きない?』
[理の神]『大丈夫です。そういう矛盾のしわ寄せは全て天界の神秘を担保にして処理されるので…』
[朧幼女]『でも、ダメだよ。この平和はノイルが血肉を削って成し遂げたものだ。本人がどうしようもなく忘却を願ったのならともかく、他人が都合の良いように改竄して無かった事にするのは違うよ』
[理の神]『まぁ、そう朧ちゃんが思っているので、この件で因果の親である朧ちゃんがノイル君を保護してる状態です』
[朧幼女]『ふむふむ』
[理の神]『で、いよいよこれは朧ちゃんの強さの秘訣みたいな物、力の由来とか来歴、性質を調べようと思ったんですよね』
[朧幼女]『で、あんなことやこんなことしようとしたと?』
[理の神]『一応仕事の一つなんですよ。ちょっと勘弁してください』
[朧幼女]『仕事で幼女にあんなことやこんなことしていいの?私、なにも悪い事してないのに』
[理の神]『ごめんなさいごめんなさい、ちょっと落ち着いていただけますでしょうか?』
[朧幼女]『またなんか飛んできた?』
[理の神]『いや、さっき朧ちゃんのご機嫌スカウターを急造したんですが、ちょっと危険域に入りかけてました。…それでですね、私は理に強い神なので、今の朧ちゃんに限りなくイコールな存在をですね、シミュレートしました』
[朧幼女]『うん』
[理の神]『まずは、ほっぺをですね、ぷにってやってみました』
[朧幼女]『うん』
[理の神]『次にですね、さすさすしました』
[朧幼女]『うん?おさわりか』
[理の神]『だんだん力を強くしたら、何?って顔で見て来たので、思いっきりバシーンってしました』
[朧幼女]『幼女になんてことを…お前の思いっきりってビンタとかそんなちゃちな代物じゃないきがするんだが…それで?』
[理の神]『そこでシミュレートできなくなりました。その時に、なんでしょうかねあれは、『映像』というものでなるべく相手の精神にショックを与える類の物に変質しました』
[朧幼女]『ふむふむ』
[理の神]『もう一回シミュレートしたんですがね、もう朧ちゃんじゃなかったんですよ。ソレを見て隣に居た天使が発狂しました。それでちょっと中断して、まぁ色々な方法で調べようとしたんですが無理だったと…』
[朧幼女]『ふーむ、めっちゃ強い守護神?』
[理の神]『そんな感じですかね、調査中止です。 あっあっ!できればですね~それは想像しないでください。 ちょまっ!優しい感じの!優しい感じのしゅごしん想像して!かわいいかわいいかっこいいかわいい、そうっ!そうそうそう……おーらーい、は~い、おっけーでーす』
[朧幼女]『で、私とノイルは今後放置なの?』
[理の神]『はい、特に朧ちゃんは天界の他の神々からも隠匿します』
[朧幼女]『おまえ、それでいいのか?』
[理の神]『いいんですよ。そういうわけで朧ちゃんのあまりにもかけ離れた現象は全て魔法だった。という理屈をあてがいます』
[朧幼女]『よし、イイゾ!よきにはからえ』
[理の神]『朧ちゃんがまともな人でほんと良かったですよ』
[朧幼女]『できた幼女だろ? それで、他に何か変な事はしてないだろうな?』
[理の神]『特に変な事はしてないですね。逆に、また何かあったら連絡してくださいね』
[朧幼女]『おう、悪魔の件ありがとう』