28 エルサル正教国7
明けましておめでとうございます。
28 エルサル正教国7
昨日はサバゲーみたいな鬼ごっこをやって寝たんだったか……修道院の一室で目覚めた。
昨日は元気いっぱい運動したからか、少し筋肉痛っぽい。ネグリジェをシエラに着替えさせてもらう時に体がバリバリしていた。
「ぬぉおん」
子供は筋肉痛になりにくいからそこまででもないけど少し辛い。筋肉痛はある意味肉体的ダメージ、回復魔法で痛くないくらいに回復させた。完全回復させたら折角の超回復の機会なのに筋肉が付かないかなと思い中途半端にしておいた。でも私はもう成長止まってるんだよね。
朝食の時間は寝過ごしていたらしい。朝食兼、昼食にしよう。
「半端な時間だけどご飯どうしよう?」
大人数で食事が出る所は時間を外すと食いっぱぐれるんだよね。しかしなんの事はない。余った分の食事は一時保存され、寝坊しても取り置かれた分を食べられるらしい。シエラが取りに行ってくれた。
トントンとノック音、
「宿舎係のジュリアです。お食事とお部屋の清掃に参りました」
そういう人が来たらしい。別にシエラが居れば良いと思うけど、こういう所の仕組みに逆らっても良いことは無いよね。
「どーぞ~」
ガチャリと扉が開いてジュリアさんが入ってくる。20歳前後くらいだろうか、ゆるふわウェーブで金髪のバインバインのシスターだ。完全にそういうプレイのデリバリーサービスかってくらいけしからん。
こういうのってどうかと思うんだよね。そこまで徹底しておいて、いざ手を出すと完全にこっちが悪くなるんだよね。なら芋っぽい服着とけよって。
なんならスカート履いてるJKに近づいてただけで痴漢扱いされるすらある。いやいや、触るどころかパンツすら見てないんだけど、同じ息吸ってたからみたいな?そんな事ってある?でもスカートはやめんな。それは制服で義務なんだ。可能性が大事なんだ。ぐぬぬ、これは永遠に答えが出ないな。
寝起きでそんなことをボケーっと考えてる間にシエラとジュリアさんが私をテーブルまで運んで食事を私に取らせていた。全自動であった。
なんだかよく分からない攻防を繰り広げていたらしい。スプーンに乗せる種類とか量とか、金属食器は当りが堅くてダメとか。ちゃんと私の食べたい方を出せとか。さっきのはこっちのスプーンに向いてたからこっちで良かったんだとか、口の端から少し零れたのは持って行き方が悪いだとか。
シエラは技巧派的なやり口で攻めてくる。スプーンを動かしたり、口への持っていき方、刺激でするっと無意識に口を動かす感じ。カラダは正直なのを良いことに無理矢理?やる感じ。
ジュリアさんは雰囲気とかで包み込む様に攻めてくる。歴戦の手練れ母性的なのがヤバくて赤子を捻るように意識を引いてくる。声色だったり所作だったり、熱いスープふーふーだったりだ。あ、ママだーって本能に訴えかけてくる。
私は介護プレイで遊ばれていた。脳みその回転数が上がってきた私は告げた。
「ひとりで食えるわ!」
二人から食器を引ったくってもしゃもしゃと食べ進める。そんな顔してもダメだぞ。
さて、今日は何をしようか。学園の外を観光…ということで乗合馬車に乗り込む。辻馬車ではなく、ダイヤ運行している。午前に二周、午後三周みたいなざっくりした感じだけど。
馬二頭で引く小型の馬車で、普通の馬車の様に中が見えない造りにはなっていない。現代人の乗り物感覚で窓とかありそうな部分が吹き抜けている。座席は長椅子が配置されている。御者さんは一人、中で乗客の相手をする人が一人、派遣の形なのか、警備っぽい人が二人立って居て、後は乗客のようだ。巡る場所が主要機関や大きい所の為か、近所の人というよりも通勤、観光という雰囲気の人達が多い。
「はい、おふたりさんで3銅貨ですよ」
気の良さそうな、ガタイのいい髭のおじさん車掌にお金を渡して乗り込む。後で分かった事だが、この馬車は大人二銅貨、子供一銅貨で、乗る時に運賃を支払う形の様だ。最大収容人数は…頑張れば12人くらいかな?今は私とシエラを入れて6人である。
街の広場で母娘が乗り込んできた。娘はあまり体調が良く見えない、やせ細った9歳程だ。とりあえず全快にしてしまってもいいのだが、私はそういう無償の治療行為を出会いがしらにして世界を行脚して回るタイプでは無い。まずは母の方と会話でもしてみるか。
「お姉ちゃん元気ないよ、どこか具合悪いの?」
「あらこんにちは、そうねぇ、この子は生れつき体が弱くて、度々教会で見て貰っているのよ」
「ケホッケホッ…わたしはアウレ あなたは?」
「わたしは朧っていうの」
真理の魔眼で詳しく観察すると、症状の原因が判明した。魔法適性がとても低いがその割に魔力が多い為、自分の魔力から悪影響を受けているのが原因のようだ。
「アウレおねーちゃんは魔法使ったことある?それか魔道具とか」
「ないよ。私、魔法が全然使えないの。教会の神父様は、この体質は魔力の溜まりすぎが原因だって言ってた。魔道具も色々試してみたけど、自分ではなんともできなくて…」
「どのくらいの頻度で教会に行ってるの?」
「一週間に一回くらいかな?」
ちょっとその教会に付いて行ってみるかな。観光ついでに。ということで教会前で降りた。
「朧ちゃんは何しにきたの?」
「うーん、れーはいかな?」
そこまで大きくないは教会だ。
中はシスターが多めで、神父は数名と言った所か。回復魔法がある手前、教会は医療機関としても機能している。
野戦病院の様にはなっておらず、治療目的の人は他の目的の人の邪魔にならないように、個別の部屋へ通されるみたいだ。私は本堂の方を観光に行くと言い母娘と別れる。母娘に完璧な隠蔽の元で監視の魔法を仕掛けておく。
神父とシスター、母娘で個室に入って普通に診察後に、相手の魔力を吹き飛ばす魔法を使って娘の魔力を吹き飛ばしたようだ。私の監視魔法には影響を及ぼしていない。診察料金は銀貨2枚だった。かなり安い。一度真面目に心配顔でお金は結構ですよって言うあたり、神父もシスターもこの母娘から金を取るのが忍びない、という顔であった。
ふーむ、よかった変な想像があたらなくて。変な想像とはもちろんアレである。想像の場合の診察風景はこんな感じである。
[母]「こんなこと!神様がみていらっしゃいますよ!」
[ゲス神父]「格安で娘さんを診てあげてるじゃないですか、別に、私は止めても構わないんですよ?」
[母]「うぅ、あなた、ごめんなさい…」
[ゲス神父]「そういえばそろそろアウレちゃんもおおきくなってきましたね」
[母]「お願いします、娘だけは許してください!なんでもします!なんでもしますから…」
的なやつである。この教会は問題無い様だが、そういう事が十分に起こり得る状況だったと思う。
身近にそういうのは見過ごせないので少し視察に来たと言う訳だ。
これは教会もこの母娘を診察してもメリットは無いだろうし、アウレちゃんは治してしまっても構わんだろう。
「あ、朧ちゃん」
「アウレおねーちゃん、大丈夫だった?」
「うん、神父さまにみて貰って良くなったよ!」
「せっかくだから、一緒にお祈りしてこ?」
「そうね、教会にきたんですものね……」
そうして二人でお祈りをする。アウレちゃんが神聖な気分になっているうちに、体に良く練った魔力を流し込み、体を循環させる。
「アウレおねーちゃんが良くなります様に~。そうだ、これあげる!私の大好きな桃ジュース。体調がよくなるんだよ?」
「おぼろちゃん、ありがとう! あれ、なんか体がすっと軽くなったみたいな…」
これで大丈夫だろう。いかにもな笑みを浮かべる女神像に、「キサマ、ドヤ顔で立ってるだけで崇拝されるなんて楽な仕事だな」と内心罵倒し、「じゃあね~おねーちゃん」と言って別れる。
さっき乗った馬車と同じ方向に行く馬車を待って、そして乗り込んだ。
今年もよろしくお願いします。




