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26 エルサル正教国5

26 エルサル正教国5


 さて、私はどーしよっかな。教会、礼拝堂とかどんな具合か確かめたいが、ミサやら行事で使うだろうし今回は遠慮しておこう。

 教会は静かな時に行った方が雰囲気あって良いに違いないので、次の機会ということで。

 外出するにも午後いっぱい使って中途半端になりそうだから、今日はそのクルセイダーとやらでも見物しようかね。


「まりー、クルセイダーってぴかぴか服着てたりするの?」


「そうっすね~。エルサル教のシンボルを装備にでかでかと描いたキラキラ装備っすね」


「魔王とか倒しにいくの?」


「魔王は無理っす。良いところ、魔王軍の幹部クラスの部隊と格好だけやり合えるくらいですかね~。魔王と戦える人間は勇者パーティくらいっすかね。勇者でも魔王となんとか戦いになるレベルっすね。まず勝てません」


「普段はなにしてるの?」


「有事の時以外は年中演習っすね。エルサル正教国は人間の国には友好的なので、人間が大多数な中央大陸では大人しいっす。魔物や魔族の脅威が近くに現れれば倒しに行きますね。でもクルセイダーが動く前にケリが付いてることがほとんどなので、出番はあんまりない感じっす」


「マリーも魔族だよね?大丈夫なの?」


「大丈夫っすね。私はアカデメイアの身分で守られているっす。害のない魔族なら冷遇されつつも黙認されてる感じっすね。見た目がアレな魔族は手酷く迫害されちゃったりしますけど」


「へぇ~」




 クルセイダー、星字軍、がどんなものか見学に学校の運動場までやってきた。

 そこにはいかにも、これぞ聖騎士という装備の一団がいた。男女同じくらいの比率で来てるようだ。

 今は触れ合い体験みたいなのをしている。別に動物園でもなくエッチな方でもなく、個人で魔法を教えていたり、実演したり、…または木剣で稽古をつけてもらったりもしている。稽古の方はイケメンで細身に詰まった筋肉質の王子様風の男が剣の構え方なんかを教えていた。もちろん女学生は手取り足取りで稽古されて腰が入っていない。古典的だが非常に有効な勧誘方法と言える。

 試しに何人か魔眼で見てみるが、冒険者で言うとDからCランク、隊長でBランクくらいだと思われた。装備がしっかりしているからか能力値が高めだ。


「そう、…あそこにいるちっちゃい子なんかが戦場に取り残されていた時に、冷静に救出できるくらいに場数を踏む頃にはクルセイダーになれるかな?」


 む、護衛対象のダシにされたようだ。そうこうしてると…



「今日は、シスターマリエーラ。この前のアーネイロ遠征の時は大変助かりました」


「ちっす隊長さん。たまたま目的が一緒だっただけですよ。あそこは修行に良いっすからね。あー、おたくらはガチであそこの前線を押し上げる気でしたっけ?」


 ……


 謎多しアーネイロ大陸に行ったと申すか。隊長さんとの会話が終わったところで聞いてみる。


「マリー、アーネイロ大陸って漁村しかない無人の大陸じゃないの?」


「そう伝わってる事が一般的だけど~実はちょっと違うっす。ん~、ここでは説明しにくいっすね」


 マリーは周囲に顔も向けずに言う。周りには熱心にクルセイダーを見る女学生が多い。そう言う時は念話魔法に限る。隠蔽も掛けて発動し、クルセイダーどうしの見世物試合を見ながら念話する。


~~~~


[朧幼女]『では、詳しい説明頼む』


[闇夜の死]『おわ、念話っすねこれ、ここまで見事な隠形、さすが朧ちゃんっす。あとなんか凛々しい』


[朧幼女]『アーネイロに行ったんだって?』


[闇夜の死]『って、私の名前が芸名になってるじゃないですか~。…行きましたよアーネイロ。あそこはっすね~、この世界で野生化して強くなりすぎた魔物の流刑地なんすよ。ヴァルキリーっていう戦闘特化の天使に捕獲され、あそこに放り込まれるっす』


[朧幼女]『それってもしかして世界のバランスを崩すレベルの魔物なのか?なんで殺さないの?』


[闇夜の死]『いつか役に立つかもしれないからと、あそこで切磋琢磨させているとか聞いたっすよ。蠱毒みたいな感じっす。行って来た私から言わせてもらうっすけど、アホみたいに強いっすよ』


[朧幼女]『そんなとこに人が行ったらヤバない? というか魔物出てこないの?ぶわー飛んできそうだけど』


[闇夜の死]『あそこで人が死んでも漁村で復活するんですよ~。結界よりも高度な何かで不思議空間が出来ているっぽいっす。大陸から脱出しようとする魔物がいると、空から槍っぽい物が超高速で飛んできて、魔物の魔核を破壊してくっす。影写しの術で間接的に見ただけっすけど』


[朧幼女]『その漁村は安全なの?魔物の喧嘩の余波とかで蒸発しそうだけど』


[闇夜の死]『一応安全っすね。魔物には耐えがたい空間になっている様で滅多に中に入って来ないっす。試しに弱っている魔物を持ち込んでみたら灰になったっす。あと人が漁村で死んじゃうと、今度はその前に行った都市やら町やらに送られますよ。たまーに流れ岩が飛んできて事故死する人とか居るっすからね。一定期間漁村に居ると魔物の呻き声などが響いて来て精神に異常をきたして錯乱するようで、定期的にアーネイロから帰る必要があるっていうコワイ所ですよ~』


[朧幼女]『なにそれ、ほんとに怖いね。魔大陸なんかよりも魔境な予感』


[闇夜の死]『アーネイロの方が確実にヤバいっす。復活する結界が無かったら誰もいかないっすね。私も前回行った時に二回殺られたくらいっす』


[朧幼女]『マリーってかなり強いよね。殺られるって相当だと思うけど…』


[闇夜の死]『正面切って戦うと瞬殺されるレベルがうじゃうじゃしてるっす。わたしは隠密と撤退戦の修行で行ってるくらいっすよ。たぶん魔王とかが行ってもサクッと死にますね』


[朧幼女]『クルセイダー達はそんな地獄によく行くね』


[闇夜の死]『ホント無謀っすねぇ~。漁村を出るとかなり瘴気が濃くてヤバいっすからね。心身にバッドステータス、魔法とスキルの発動が難しくなるっす。ただ、光系統の魔法はすんなり発動ができて効果もまともに出るから、方陣を組んで神聖装備で神聖魔法で結界を作ってガッチガチのレイド組めばなんとか対抗できるっぽいっす。それでも強い奴が来るとあっという間に全滅するっすね…。

 恐怖体験と強敵相手の実戦経験を積む訓練なんですーこれも神から与えられた試練だーとか言って泣いてたっすね。世間的な体では、遙か昔、エルサル神がアーネイロに世界を滅ぼしかけた魔物を封印した。特は現代、神の結界も時の流れに綻び始めた。世界の危機!エルサル神の使徒クルセイダーが度々調伏に遠征し、結界を重ね掛けしている。世界は平和!ということになってるっす。もちろんそんな事はないっす』


[朧幼女]『ふむふむ、化け物ランドなのか。こっちは死なないし楽しそう。鬼ごっことかスニーキングミッションとかできそう。パニックホラーなアトラクションとしては優秀だね。そして可哀そうなクルセイダーェ…』


[闇夜の死]『朧ちゃんにはかなり刺激が強すぎると思いますよ。見た目もかなりグロテスクに進化した魔物が沢山いるっすよー。もうスライムとか真っ黒ドロドロで体から手足を何本も生やして、ギョロ目を沢山ぱっちりさせて、すごい数の牙をカッチャカッチャしながら追っかけてくるっすよ。あまりにも瘴気が濃くて、魔物も魔法やスキルは難しいみたいで肉体的にキモ強くなってるっす』


[朧幼女]『おー、マジで化け物ランドじゃん!』


[闇夜の死]『え、朧ちゃん、慰安旅行で来たんでしょ?なんでそんなにテンション高いんすか?』


[朧幼女]『遊園地と来たらお化け屋敷に行きたい派なんだ』


[闇夜の死]『シエラでもドラゴンにならないと勝てないレベルですよ?それでも不意を突かれるとたぶんあっさり逝くっすよ?』


[朧幼女]『それやっぱ怖いな、ちなみに殺されると装備とかどうなるの?』


[闇夜の死]『死後一時間くらいで漁村に戻るっす。装備は消耗品以外は出て行った時と同じで復活できるっす。ただ――あそこの魔物は他の生き物を獲物としてしか見てないので生きたまま食われ始めたり、犯されたりしちゃうっす。自決用のアイテムが欠かせないっす。死に損なったらサイアクっすね』


[朧幼女]『うっわ~行きたくなくなった』


[闇夜の死]『ふぅ、よかったっす。シエラの前でそんな事言い出したらたぶん監禁されますよ』


[朧幼女]『ありえるなーそれ。愛されてるな~わたし……』


[闇夜の死]『……ちょっと窮屈に思ったら私と隠居しましょう。私なら朧ちゃんをのびのび自由にしてあげられるっす』


[朧幼女]『記憶に留めておこう』


~~~~


 ひと汗流したクルセイダーの隊長がまたこちらにやって来た。

「それで、シスターマリエーラ。一か月後にまたアーネイロに遠征に行くことになったのですが、今度も我々と一緒にどうです?」


「それは一か月後になってみてからじゃないと何とも言えないっすね~。行く時はこちらから出向くので大丈夫っすよ~」


 だいぶ良い印象を女学生達に与えた星字軍のクルセイダー達が帰って行った。話を聞いた後は、キラキラ装備も哀愁漂う煤けた背中に見える。……がんばれよ~。私は助けられないけど~。

アーネイロ大陸はジュラシックパークとかクトゥルフのイメージです。

ゲームではサバイバルモードでドキドキするスコアアタックです。

そのうち挑戦者の描写が入るかもしれませんね (;´・ω・) コワイ!

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