25 エルサル正教国4
25 エルサル正教国4
食事が始まると、食堂が俄かに騒がしくなっている。これだけ多くの人が集まっているのに無言で食事をしていたら非常に不気味だったので、そういう教義じゃなくて良かった。
「ここのご飯はこういう感じっす。間食や外食もOKですが、お金が掛からないし皆こうして集まって食べるんですよ~。朧ちゃんは授業とか受けてみます?神学とかありますよ、もちろんエルサル教の神学っすけど」
あー、本当に"いる"神の神学ならまだしも、実際に神から虚構であると言われたエルサル教の神学、それをぶつくさと唱えられたら開始5分で寝る自信がある。わいは前科持ちやぞ?おっ?
「私は別にいいかな~、神に祈るとかもよく分かんないし、建物とか像とか、めずらしいもの見たい」
「そうっすよね、ミサとか見てもピンと来ないだろうし…後ここで見て面白そうな物と言えば…教会と礼拝堂ですかね。小さくて地味っすけど。あとは星字軍の演習とか、聖歌隊とか見ごたえあるかもですね~」
「せいじぐん?異教徒をやっつける兵隊さん?」
「そんな感じっす。普通の国の軍隊とあまりやる事は変わらないっす。ここを卒業してからそっちに行く人も居るのでそういう訓練もしてるんですよ。軍に入っても後方での治療ばかりでしょうけどね。 お隣に男女共学のアカデメイア学校があるので、そちらで本格的な演習なんかもしてるっすね。
星字軍のエリートさんはクルセイダーとか呼ばれてるっす。回復魔法と神聖魔法の使い手で女性がクルセイダーになると聖女と呼ばれてちやほやされるみたいなので、みんな結構狙ってるんですよ~」
聖女と聞いてぴくっと食べる手が止まる。
「朧ちゃん、聖女さま、興味あるっすか~?」
…更に聞いた話を統合すると、…この国では宗教的に凄い女は聖女と呼ばれ、そこそこの数が居るらしい。女性で、予言や信託をもたらす聖職者、見眼麗しい聖職者、魔法の得意な聖職者、聖歌を美しく歌う聖職者などで、特に飛びぬけた者は聖女と呼ばれるとのことだ。要は権威付けの称号みたいなもんだろうね。訳分からん役職作ると格好付くからね。
捨て駒に切り込み隊長とか特攻隊とか名前付けると途端に地位が高く見えるじゃん?時間帯責任者とか、てんちょーとか、考えると悲しくなってきた。聖女と言えば名実ともにしっかりした役職だろうし悪くも無いだろう。
見る分には良いが、私は聖女にはなりたくないな。ご利益があまり期待できない割にしがらみがドンドン増えて窒息していくに違いない。
年増な教育係のシスターに「シスターオボロ、そのような無作法は神がお許しになりませんよ?」とか。大司祭とかに「私と聖女の子ならさぞかし○○な子が生まれるだろう。ぐへへ」「聖水をとるお時間でちゅよ~?」とか。よく分からん自称勇者に「僕とパーティーを組んで魔王を倒そう!」からの性処理係……などなど、不幸なフラグ生える事森の如し。見えてる地雷職です。本当にありがとうございました。
「その予言って当たるの~?」
「もちろん当たることも外れることもないふわっとしたやつっすね~。どちらかと言うとお告げとか神託ですかね~。最近のお告げでは『近く、大いなる不浄な存在が現れよう。しかし人類が手を取り合いエルサルを信仰すれば自ずと道は開けよう』とかそういう感じっすね」
予想通りすぎて特に落胆はない。私はここに神を確かめに来たわけではなく、神々しさを感じに来たわけだし、如何にハリボテだろうと見た目が良ければ大丈夫だ。逆に何かしらの神パワーがあったらその方が嫌である。
例えば男女がホラースポットに来るのは完全にデートに来ているのであって、ガチもんの化け物がコンニチハしたらドン引きである。だが私は思うのだ。リア充ども、爆ぜて死ね!コンニチハ、死ね!オバケもきっとそう思っている。
なんだか真剣に信仰している方々に申し訳なくなってきた。でも信仰はその人の自由やん?だからゆるしてください。
「御機嫌よう、シスターマリエーラ」
明るい金髪、赤味のある茶色の眼、少し褐色の肌、ツインの三つ編みのおさげの12~14歳くらいに見える女の子が話しかけてきた。
「御機嫌ようっす、シスターエルメーナ」
こいつ、「御機嫌ようっす」って言ったぞ。まぁ、結構な頻度で幼女言葉を忘れる私が何か口を挿むこともないね。
「そちらの子は見かけたことが無いですが、こちらで新しく?」
「うーん、体験入学、みたいな?」
何だその曖昧な回答は。しかし自分で考えても謎だ。ごめんね、お遊びでなんちゃってコスプレで紛れ込んでてごめんね。こうやって申し訳なく思っているのを利用して信徒させる気だな。やっぱ同調圧力って凄いわ。ここは場所も人も宗教一色だからな~。だが私はくっしない!
「そうですの、姉妹はお決めにならないのですか?」
なんだろう、その関係。お金を払ってのプレイの一種だろうか。あ、プレイって祈りの方です(意味不明)
「朧ちゃん、どうするっすか?あ~、姉妹ってわかんないっすねたぶん。え~とですね…」
マリー曰く、仲の良いシスター同士のコンビの事を特にそのように『姉妹』と言うらしい。
年齢、あるいはシスター歴が離れている者同士が組んで生活することのようだ。何かの先輩、後輩が組んで、その何かをやる関係だな。
ここでは礼儀作法とかお祈りとかそういうののことだろう。RPGやよくある小説で冒険者ギルドに来た初心者に付くベテラン冒険者の様に、この修道院ではお姉様が付くんだろう。で、乙女ゲームの様に先輩ドリルにいぢめられるんだ…。さっきチラッと金髪ドリル見つけたけどシスター服は似合わないなー。
「あんまり学校に居れないから…たぶん迷惑かけちゃうから…」
「…まぁ!そんな顔をしてはダメですよ。大丈夫ですよ、少しだけの関係でもいいんですよ」
上手く断ろうと思ってたのが逆効果だったのか、やたら食い下がって来た。この娘、メガネかけさせたらゼッタイに委員長だ。学校あるところ、委員長あり。
「今日の午後は授業がないですし、少しお話しましょう?」
ふえぇ、委員長につかまってしまったようだ。昼食を食べた後、再び食堂の二階の机を囲んだ。
委員長の他にも、ドリルツインテール(流れるようなフラグ回収)、お姫様(ぽやぽや~ってしてる)、ボーイッシュな長身(宝塚に居そう)、八重歯の似合う元気っ娘(吸血鬼ではない)が押しかけてきていた。
テレ↓レ→レ↓レ↑!委員長は仲間を呼んだ!
[委員長]「こちらの子が朧ちゃんです」
[ドリル]「キャー^^かわいいですわぁー」
[姫]「お人形さんみたいですわね。しかもエルフさん、ですね^^」
[ボーイッシュ]「こういう子は手厚く守らねばなるまい^^」
[元気っ娘]「あんたの部屋から夜な夜な喘ぎ声聞こえてくるのはなにしてる?、そんな奴には任せられないよ」
[ウルフボーイッシュ]「ちがう、あれは妹がどうしてもほてってほてって、このままでは夜の街に逃亡してしまう、助けてほしいと懇願されて仕方なくだなぁ…」
[ドリル]「貴女、そう言って今回で何回目ですの? 前の妹なんか禁断症状が出てたらしいですわよ?」
[委員長]「不潔…しかもかわいい子ばっかり…天罰が下りますよ!」
なんかもの凄い危険な気がしてきた。特にあの長身に捕まったら最後、『おねーさま~、おねーさま~』しか言えなくなるに違いない。震えてきた。
[姫]「私のお部屋にきます?」
姫が自然な流れで私を膝に乗せる。おっぱいがデカいな。当たってますよ。姫はこの中で一番安全そうだ…いけない、これは怖い刑事と優しい刑事のアレだ。妥協しそうになった。ええい、邪教とどもめ、去れ!
「わたし、もう部屋に住んでる。シエラと一緒」
[パー姫]「お菓子も沢山あるから大丈夫ですよ?モンブランがおすすめですよ~^^」
[チラッと元気っ娘]「誰かが色々教えてやんなきゃいけないしなー、あたしがしっかり面倒みるよ」
元気っ娘が一番マシに見えてきたな。いや、行かないけど。
[ツインヘッド・ドリル]「作法なんかは私が一番ですわよ?どうかしら?殿方の扱い方から義妹の責め方まで幅広く…」
[やっぱり委員長]「ここは委員長の私が責任を持って預からせていただきます」
姦しい…しかもこいつら、まるで話を聞いてない。
シエラもマリーも対処に困る状況の様で手を出せないでいる。マリーはどうしようか考えているのか思案顔、シエラはたとえ相手が一般人の女子であっても強硬手段を決意しそうな域に入りつつある御様子。まずい。
「わたし、シエラがいいの!シエラァ~、すき~」
ここはシエラを『っぽ』してクールダウンさせながらいやいやする作戦だ! ぱー姫から飛び降りて、シエラに向かおうとする。が、脱出できなかった。私の体の前でガッチリ固定されている腕がほどけない。
「し、シエラ~」
[ぱー姫]「あら、ごめんなさい」
ぱー姫が離してくれた。すたっと降りて、とことこ足早にシエラの下へ、ひしっ
「お嬢さま、お嬢様!」「シエラ~」
あー、やっぱりシエラが一番だわ~。ふぅ~~。
私とシエラの愛を見せつけられたからか、姉妹を組む話は有耶無耶に出来た様だ。一安心である。
三々五々、その後は自由参加のミサとか、クルセイダーの人が学生に職業アピールに来るので見に行く、などに分かれていった。アカデメイアはその国の政治や軍からはほぼ独立してるために、求人しにここまで来るという事だろう。
普通この文明レベルなら新卒というリソースは国が独占するからな~。求人があるのは健全の証だね。




