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ピアレスアドベンチャー  作者: 竜夜
序章 物語の始まり編
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地下牢での死闘

 僕はポケットから針金を取り出して少女を戒めている枷の内一つの鍵穴に差し込んでカチャカチャとやる。すると十秒程度でカチャリと音をたててあっさりと枷が外れる。あれ、何で僕こんなに自然と開錠できてるんだろう?そして何故そのための針金をポケットに常備してるのだろう?いつものごとくあいつのせいだろうが、もう考えるのも面倒臭くなってきた。まあ、あいつの犯罪にしか使えなさそうな教えがこの世界では割りと役にたっているのでここは素直に感謝しておこう。


「どうして?」 

「ん?お前が助けろって言ったんじゃん?」

「でも・・・その・・・良いの?」

「僕が助けるって決めたんだ。だから、助けてるよ。」


 そうこうしている間に全ての枷が外し終えて少女が自由になる。しかしよほど長くここに閉じ込められていたのかすぐ床に崩れ落ちてしまった。恐らく立つのもままならないのだろう。仕方なく僕は少女に背を向けてしゃがんだ。おんぶをする体勢だ。少女は少し戸惑ったあと小さく「ありがとう。」と言って僕の首に手を回した。


 背負ってみて分かったが少女はちゃんと背負えているのか不安になるくらい軽い。本当にろくな扱いをうけて無いようだ。


「お前、思ったよりひどい状態だな。ここを出たら取り敢えずないか食べに行こうか?」

「いいん・・・ですか?」

「ん?何で敬語?」

「その、恩人ですから。」

「ふーん、まあ良いや。ん?・・・ああヤバイ。」


 少女と話している間に僕の耳が四、五人の足音をとらえた。ほぼ間違いなく巡回の騎士だろう。鉢合わせたくないので、急いで外に出ようとするが遅かった。


 ちょうど騎士は扉の前に来ており実に見事なタイミングで鉢合わせた。


「あんたは、神徒の騎士団の・・・」


 騎士たちは少しの間戸惑っていたが僕の背中の少女と開けられた扉と適当に捨てられた閂や鎖やひしゃげた南京錠をみてすぐに状況を察したようでほぼ同時に剣を抜いた。


「これはどういうことです?地下牢に無断で侵入しただけでなく、大罪人の逃走を幇助するとは、いくら神の使徒でも許される行為じゃないですよ。」


 騎士の一人が慇懃無礼な態度で詰問してくる。相手が魔力0の僕だからなめてるのか。


「おいお前らこいつらをとらえろ。」


 どうする?ここでおとなしく捕まればあとで静乃辺りが助けてくれるだろう。だが、少女はどうなる?少なくともさっきの部屋に逆戻り、もしかしたらもっとひどい目にあうかもしれない。チラリと少女の様子を伺ったら少女は諦めたように項垂れていてその表情は絶望に染まっていた。もし僕が見捨てても少女は恨むことはなく自分の運命として受け入れるのだろう。これはそんな諦念の顔だ。


 きっと今まで想像絶する苦しみを味わってきたのだろう。諦めた方が楽だと、本気で思ってしまうくらいに。でもだからこそ僕はこの娘を見捨てるわけにはいかない。助けると、そう言ったのだから。


 応戦する構えの僕に騎士は少し驚いた様子だったがすぐに気勢を取り戻し、


「かかれ!」


 隊長の合図と共に隊長を含めた3人が剣を構えて僕に踊り掛かり、残り二人が半歩下がって詠唱を開始した。詠唱をすれば魔法の威力と精度を高めることができるがその分発動が遅くなるしタイミングも読まれやすくなる。だから何人かが前衛として相手に襲いかかり時間を稼ぐと共にタイミングを読む余裕を与えないようにするのだ。騎士たちがとったのは教科書に乗ってるような定石通りの陣形。ありきたりだが使い古されてる分効果はお墨付きだ。どうやらなめてはいても手を抜くつもりはないらしい。


 隊長が剣を上段に構えて振り下ろす。僕は相手と相手が持つ剣から『死』の気配を読み取りその軌道から逃れるようにバックステップ。隊長の剣は見事に空振り同時に隊長も大きく体勢を崩し隙が生まれる。一対一ならここで蹴りの一発でもいれて終わりだが向こうは複数人。すぐさま別の兵士がフォローに入る。隊長もそれが分かってるからリスクの高い攻撃をしたのだろう。


 二人の騎士が交互に切りかかってくるのを『死』の気配を読みながらひょいひょいと避けて一先ず距離をとる。同時に後衛の詠唱が完了し音すら置き去りにする雷の槍と散弾のように広がる氷の針が迫る。だが、その時既に僕は相手から放たれる『死』の気配を読み取りその軌道と交わらないように身を逸らしていた。結果、雷だけでなく氷の散弾の尽くが僕をとらえられず虚しく後ろに流れる。


「「何っ!!」」


 これに騎士たちは狼狽の声を漏らす。しかし、それを未熟と評すのは些か酷だろう。それほどまでに彼らの魔法は強力だった。


 そもそも人の反応速度を遥かに凌駕する雷の槍を避けるのは不可能に近いし、軌道を読んで避けようにも氷の散弾が逃げ場を無くす。広い場所なら全力で横に逃げれば運良く回避できるかもしれないが、この狭い地下牢の廊下では絶対に回避できない。なので魔法障壁を張って防ぐしかないが魔力0の僕にはそれも無理。よって僕はこのコンボをどうにかするのは不可能というのが彼らの常識だ。


 だが、彼らは見誤っていた人間の本当の限界(・・・・・)を。


「ちょっとだけ本気出すからさがってて。」


 狼狽えて動きが止まっている兵士は無視して背中の少女に声をかける。少女を下ろして安全を確保してから僕は臨戦態勢を整える。


ーーー絶生拳ぜっしょうけん:獣


 深呼吸を一つ。体の力はむしろ抜いて意識を全神経に張り巡らせる。命の危機において感じて、考えて、動く、それでは遅すぎる。ゆえに自分にせまる『死』を想起しその瞬間に反射で動く。また戦いの中の『死』を強く意識することで人体の生存本能、火事場の馬鹿力を人為的に引き出す。死中の獣の如く知覚は加速し、体は限界を超えた力を酷使する。


 フミ姉仕込みの体技。僕の生を絶たんと迫る『死』を認識しそれを避ける。反対に自分の持つ『死』を敵の生を絶つ技に変える。


 概して絶生拳。


 僕は腰を落とし腕を引き張り詰めた弦のごとく極限の緊張で力をためる。


音速戦技(ソニック)!」


 そして叫ぶと同時に、いや、その声すら置き去りにして一気に開放。円環状の衝撃を生みながら騎士の一人に右こぶしを当てる。肩当を吹き飛ばし余波で騎士は車にでも轢かれたかのようににふっ飛んだ。


「剛槌!」


 続いてすぐそばにいた騎士に左手でそっと触れる。ただそれだけで先程の騎士と同じようにふっ飛んだ。


 音速戦技(ソニック)は自ら全身を締め上げるように力をためた後、両足の踏み込み、体幹を軸にした捻りとして一気に解放し、さらに腕自体でも加速、それらを無駄なく連動させ極限まで速度を上げる技だ。打撃の先端の速度は音速に到達する。


 剛槌は地についた足を起点に体内で力を伝達させ触れた対象に直接衝撃を与える技。はたから見たらそっと触れてるようにしか見えないがその実とてつもない威力で相手を吹き飛ばす。


 瞬時に二人を無力化され兵士たちは完全に連携を崩されたようだ。各々が好き勝手に剣を振り魔法を唱え、無茶苦茶に襲いかかってくる。


 だが、我を忘れた相手を制圧するなんてもはや作業だ。瞬時に残りの兵士の意識を刈り取り、それと同時に強化された聴覚が複数の足音をとらえた。激しい音に他の兵士が様子を見に来たのだろう。


 兵士たちはそれほど脅威でもないがいつまでも戦い続けるわけにはいかない。増援が到着する前に僕は少女を連れ地下牢を全速力で駆け抜けた。

お読み下さりありがとうございます。引き続きこの小説をお楽しみください。

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