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ピアレスアドベンチャー  作者: 竜夜
序章 物語の始まり編
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朝の一幕

 異世界に来て二週間ほどがたった。けれど魔族との戦闘は一度もない。


 「地上に降りてきたばかりで、この形代に慣れてない。」という設定で訓練期間をもうけてもらったのだ。一之瀬なんかはすぐにでも出撃したそうだったが、さすがに止めた。何も準備せず戦場にでるのはあまりにも危険だ。


 ここで、僕らの教官を務めてくれるのが王国内でも精鋭中の精鋭、王室親衛騎士団団長、テオング・クエース。


 この人結構ざっくばらんな性格で、一応神の使徒という設定の僕らにも最初からため口だ。あくまで教官らしくということらしい。正直いい年したおっさんにペコペコされても気持ち悪いだけなのでセルドより接しやすい。


 他の騎士や兵士、それに王国民ともある程度打ち解けそれなりに馴染んできてもいる。異世界生活は思ったより順調と言えるだろう。


 寝ぼけ眼を擦りながら朝食のために食堂に赴くとすでに何人か来ていて友人同士で談笑している。食事は全員揃ってから神徒の騎士団の面々だけで摂ることになっているので待たせた人に少し申し訳なくなりながら隅っこの席につく。


「おはようございます、先輩。」

「おー、静乃。朝からやたら元気だな。」


 静乃が友達との会話を切り上げてまで律儀に挨拶をしにきた。対して僕の返事はなおざりだったが僕とこいつのなかなので大丈夫だろう。


「うぅ、やっぱり素敵。毎朝先輩の寝起き姿を見られるなんて最高。」

「ん?何か言った?」

「い、いえ、何でもありません」


 急に顔をそむけて何か呟いたと思ったら今度は顔を赤くして何重にもぶれるくらい手を振って何かを否定している。一体なんなんだ?まあこいつの奇行はいつもの事だから気にしないでいいや。


「にしてもお前、何でそんな元気なの?僕、眠すぎて死にそうなんだけど。」

「実はあんまり眠れてないんですけど、魔力の修行をしてから何だか体に力がみなぎってるんです。」

「はあ、いいな、魔力。僕もほしいよ~。」

「大丈夫ですよ!魔力なんてなくても先輩は凄く強いじゃないですか。この前だって『剣士』である僕を剣術で打ち負かしたじゃないですか。」


 僕が落ち込んでるふりをすると(魔力がないことについては初日に立ち直ってる)静乃は健気に励ましてくれる。本当に良い後輩だな。取り敢えずなでなでしてやると静乃はくすぐったそうな、でも嬉しそうな微妙な表情をする。


 ちなみに『剣士』とはこの世界でつけられた静乃の二つ名だ。異世界転移してきた僕らには『神徒の騎士団』という明らかに即席な名前がつけられ各々に雫から二つ名がつけられている。何でつけたのか聞いたらやけにキリッとした表情で「その方がかっこいいからに決まってるでしょ。」とか言われた。そう言えばあいつオタクだった。


 ここで代表的なメンバーの二つ名を紹介しておこう。


 まずは『神徒の騎士団』団長の一之瀬優真。彼の二つ名は『英雄』だ。これは一之瀬が魔法、剣術問わずあらゆる面において秀でているのでその特性を一言で言い表せなかったから。と、思って本人は鼻高々だったが名付け親にこっそり聞いた真の理由はあいつが使ってた携帯がau のものだったかららしい。駄洒落かよ!まあ、最近そういうCM やってるけども。


 次にその親友である浜野隆一。こいつは身体強化で普通に殴り合うだけの脳筋チンパン戦法なので『愚者』。その戦い方だといずれ大型の魔獣にぐしゃ(・・・)っとつぶされてしまいそうだ。


 次に僕によく突っかかってくる速水先輩。この人は毒を調合する魔法を得意としてるので『蠱毒』だ。ただでさえ意味わかんない性格なのに能力まで嫌らしいな。そのうち孤独(・・)になってしまわないか心配だ。まあ、彼には二人の子分がいるので大丈夫だろう。


 その子分である健堂櫂は音を増幅させて攻撃する技を得意としてるので『処歌(しょうた)』。佐藤翔太は自らの意思で味方を支援・強化する魔法が得意なので『加意(かい)』。お気づきでしょうか。健堂()は『処歌(・・)』で佐藤翔太(・・)は『加意(・・)』なのだ。お前ら好きだね、そういう反転現象みたいなやつ。


 こんな感じで色んな二つ名をつけてる雫さんだが、自分には『賢者』とかいう二つ名をつけてる。そんな雫に「お前、成績中の下だろ。」と、つっこんだら三日で習得なさった水属性最上級魔法、乱発激流槍群ウォーターレインフルバーストを撃たれてまじで死にかけた。まあ、あいつは一ページごとに魔方陣が刻まれた本型のグリモアと呼ばれる武器を使うので戦闘スタイルは賢者っぽくなくもない。だからもう何も言わないことにしよう。


「よお、如月。魔力を使えないお前がよくノコノコと俺たちの前に顔出せたな。」

「あ、速水先輩。おはよっす。」

「ちょっとは傷つけよテメェ!!」


 静乃の頭をなでなでからほっぺぷにぷに移行していると背後から速水先輩が声をかけてきたので僕は快く挨拶をするとなぜか怒られた。なので「?」って顔をすると、


「いや、?、じゃねぇよ!分かってる?俺はお前の事けなしてるんだよ?普通は傷つくなり怒るなりするとこだろ!?」

「いや~、今日も先輩の突っ込みが冴え渡りますね。」

「だからなに普通に楽しそうに会話してんだよ!いい加減反発しろよ!」

「でも、最近僕に話しかけてくるのって静乃と雫を除けば先輩ぐらいじゃないですか。」


 そう、最近僕は『神徒の騎士団』のみんなから無視されて孤立気味なのだ。それでも露骨ないじめにあってないのは単純な理由、僕の方が強いからだ。それはちょっと魔法が使えるようになったからって調子にのって喧嘩売ってきた目の前の先輩方(三馬鹿)によって証明されている。


 みんな地の魔力が半端じゃないから基本的な魔法を覚えたてだけで戦車みたいな火力と防御力を得られるのだが、僕がガキの時からフミ姉に教え込まれた武術はそれをも凌駕する。「私の教えを吸収すれば戦車にも勝てるぞ。」とか真顔でのたまっていたフミ姉の妄言はあながち嘘ではないのかもしれない。


「あ~、何か頭痛くなってきたな。というわけで今日の訓練は休むから、団長の一之瀬にはそう伝えといてくれ、静乃。」

「あ、先輩、また仮病で訓練サボる気ですね。」

「ほう、この俺に恐れをなして逃げる気か?如月。」

「ダメですよ、ちゃんと訓練に参加しないと。」

「ええ、良いじゃん別に。そんな事しなくても僕強いし。」

「二人ともスルーかよ‼」

「おーい、ちゃんと速水さんの相手もしてやれ、如月。」

「そうだぞ、速水さんはこう見えて学校でろくに会話してくれる人がいないからお前に相手されないと寂しくて死んじゃうんだぞ。」

「お、お前らなに変なこと言ってんだよ。ちょっと黙ってろ。」


 横で大騒ぎしてる先輩方(三馬鹿)は無視の方針でいこう。


「先輩が強いのはよく知ってますけど、だからって今の強さに胡座をかいてたらすぐに追い抜かれますよ。」

「静乃の分際で僕を追い抜こうなんて百年早いんだよ。」

「ごまかさないでください。とにかく、今日こそは絶対参加してもらいますからね。」

「はいはい、気が向いたらね。」

「参加する気ないでしょ!今日という今日は本当に首に縄をつけてでも訓練場に連れていきますよ。」

「うおっ、危な。本当に縄を取り出すなよ。そして首につけようとするな。」


 静乃がどこからともなく取り出した縄をひょいひょい避けるが、努力家の静乃は最近マジで強くなってるので結構ギリギリだ。


 そんなこんなで今日も楽しい一日が始まるのだった。

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