表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ピアレスアドベンチャー  作者: 竜夜
魔族襲来編
47/53

ルリとレミア

 しばらくして馬車は交易都市リビルに到着した。


 交易都市リビルはエルシアナ王国、アレクサス王国、カイザ帝国の3国にまたがるような位置にあり、人や物の移動が日々盛んに行われている。いわば物流や交通の拠点である。


 ここにきた目的はもちろんエルシアナ王国外に出ることだ。おそらくエルシアナ王国は神徒の騎士団から裏切り者が出た事実を隠蔽しているので国外に出てしまえばとりあえず大っぴらに捜査することは難しいはず。エルシアナ所属ではなく人類全体の希望である神徒の騎士団は国境を越えて追ってくるだろうがそれはむしろ望む所だ。捜査の人手が減れば落ち着いて情報収集に専念できるようになるだろう。


 当初の予定では王都脱出時と同じように森なんかを通って密入国するつもりでいたが、ロビンに止められた。普段から人の往来が多い正規ルートの方がかえって怪しまれにくいとのこと。人を隠すなら人混みの中ということだ。それに手配書が出てるわけでもないので無理に危ない橋を渡ることはない。そういうわけで普通に商人の護衛依頼を受けて冒険者として堂々と入国することにした。この手の依頼は魔獣討伐などである程度の実績がないと受けられないが、衆人環視の中で魔竜をボコボコにしたのでその辺は問題なかった。


「コヒー商団のエリック・コヒーと申します。今回は我々の依頼を受けていただきありがとうございます。道中はよろしくお願いします。」

「冒険者のユーリです。お任せください。たとえ魔竜が出ても蹴散らしてやりますよ。」


 営業スマイルを浮かべながら今後鉄板になるであろう営業トークをして差し出された手を握る。ちなみにユーリというのは僕の冒険者としての名前だ。ロビンは事前に神徒の騎士団の情報を入手していたからあんまり不思議がってはいなかったが冷静に考えてこの世界の一般人に如月悠一と言う名前はそうそういない。偽名と言うとお尋ね者感が増す気がするが、ロビン曰く冒険者が本名以外の名前を使うことはそう珍しいことではないらしいのでどちらかと言うと芸名みたいなノリだ。疾風怒濤のクライトスみたいなのもいるらしいし。


 商人と聞いて恰幅のいい黒髭のおっさんをイメージしていたが実際に対面したのは眼鏡をかけた細身の青年だった。まあそう言ういわゆる大商人的な人はギルドなんかに頼まずもっとちゃんとした傭兵を雇うか私兵を持ってたりするものなんだろう。


「頼りにしています。出発は明後日の明け方ですのでそれまでゆっくりしてください。」


 依頼人との顔合わせも終えて僕たちは街に繰り出した。


 それにしても活気のある街だ。多種多様な店が立ち並ぶのはもちろん通りにも露店がずらりと並んでいる。商店街というよりお祭りのような雰囲気だ。また道がレンガで分離されており歩道と車道の区別があるだけでなく車線も分けられている。それくらい馬車や牛車の交通量が多いのだ。なんでも世界一人が集まる街とのことだが、その評判に恥ない賑わいっぷりである。


「せっかくだからいろいろ見て回るか?」


 僕は少し苦笑しながら先ほどからずっとうずうずしている少女に水を向ける。するとルリがバッと振り向いた。


「いいんですか!じゃあ私あれが食べたいです。」


 そうしてキラキラした目をして1つの屋台を指し示す。どうやら綿飴のようなものを作ってるらしい。


「わかったよ。ほら、買ってこい。」

「はい!ありがとうございます。」


 ルリは数枚のアルミ硬貨と鉄硬貨を受け取るとピューんと音がしそうな速さで屋台へかけていく。いい子だから何も言わなかったが街に入った時からずっと物欲しそうな目で屋台を見ていたからずっと楽しみにしていたのだろう。


「おい、こら走ると危ないぞ。」

「全く子供なんだから。」

「お前は行かなくていいのか?」

「行くわけないでしょ。子供じゃあるまいし。」


 無邪気にはしゃぐるりの姿を見てレミアが呆れたようにため息をつく。


「それに私まだあの娘のこと認めてないから。」

「認めるってなんだよ。」

「分かってるでしょ。あの娘の力のことよ。」


 レミアは横目でキロリと睨みつけるように視線を向けてくる。


「あれは恐ろしいものよ。あの娘の善意も悪意も関係ない。一度暴走したらどうなるかわからない。そういうものよ。」

「分かってる。だから次は暴走しないように細心の注意を・・・」

「どうやって注意するのかしら?」


 その問いに対する答えを僕は持ち合わせていない。そもそもどういう条件で暴走するのかすらわからないんだ。とめ方なんてわかるはずもない。あるとしたら・・・


「もし、その必要があると判断したら私がルリちゃんを殺すわ。」


 レミアが酷薄な笑みを浮かべてその答えをくれる。人を殺すということに何の斟酌も感じないとでもいうかのように、むしろ良心(そんなもの)をもつ人間を嘲笑うように。魔王の精霊と彼女は名乗った。その名に恥じない冷酷な様相でからかうような目を向けてくる。


「ていっ。」


 だからその綺麗な黒髪から覗く額にデコピンしてやった。


「痛っ。何するのよっ!」

「お仕置き。」

「何よ!私は本当のことを言ってるだけよ。」

「それは分かってるよ。」


 次の瞬間レミアは顔をクシャリと歪め今にも泣き出しそうな顔になる。先程の悪魔のような雰囲気はどこへやら。すねたように唇を尖らせる。


「分かってる?分かってるけど気に入らない、かしら?でもあいにく、私はこういう冷酷な女なの。」

「冷酷な女、ね。」

「そうよ、軽蔑したかしら?」

「じゃあ聞くけどなんでお前がルリを殺す必要があるんだ?」

「は?」


 レミアは鳩が豆鉄砲を喰らったような顔になる。なんでそんなことを聞くのか分からないといった様子だ。


「それは、ルリちゃんが暴走するかもしれないから・・・」

「だから、それでなんでお前が(・・・)ルリを殺すことになるんだ?逃げればいいだろ。ルリが暴走したとしてそれを止める義理や責任がお前にあるのか?」

「それは・・・」

「分かってる。」


 ぽんっとレミアの頭に手を置いて、その瞳を覗き込む。


「僕のためだろ?」


 レミアは目を大きく見開き、表情は困惑の色に染まる。


「なんでそんなふうに思えるのよ?」

「あんなに泣きそうになって心配してくれる奴のこと信じられないわけないだろ。」


 正直まだこいつに胡散臭さがあるのは拭えないし、遭って間もない僕のことをどうして守ろうとするのかという疑問も残る。


 けど泣きそうになって僕を呼ぶ声と目を開けた瞬間の安堵の表情が脳裏に焼き付いている。あれはきっと嘘じゃない。


「そう思うんなら少しは私のいうことも聞きなさいよ。」

「それに関しては善処する。でもルリを殺すのはやめて欲しいかな」

「何よ全部わかってるみたいなこと言っといて、結局ルリちゃんの方がいいんじゃない。」

「なんだよその言い方。」


 拗ねたように唇を尖らせるレミアに困惑するしかない。そこにルリがやけに大きな綿飴を持ったルリが戻ってきた。


「はい、どうぞ。ご主人様の分です。

「おお、ありがとう。」


 大きいと思ったら複数買ってきてたのか。


「それと、はい、レミアさんも。」

「え?私も?」

「もちろんです。」

「ありがと。」

 

 満面お笑みで差し出されて、レミアは気まずそうに受け取り、おずおずと口にした。


「いい娘だろ。こいつ。」

「わかってるわよ、そんなこと。」


 レミアは頬を赤らめて罰が悪そうにそっぽを向く。


「レミアさん、レミアさんあっちに面白そうなものがありますよ。一緒にいきましょう。」

「わかったわよ。ちょっと、引っ張らないで。」


 レミアの手を握ってルリがまた別の屋台の方へかけていく。その様子を微笑ましく思いながら僕も後を追った。


 その後はいろいろなものを食べたり、射的やヨーヨー釣りなんかの遊びで露店を満喫したり、服や小物などのショッピングを楽しんだり、途中遊園地のようなエリアがあったので魔法で動くタイプのアトラクションをいくつか体験したり、主にルリの気の向くままに街を散策し続けた。


「次はどこにいきましょうか?」

「はぁ、一体いつまでまわるつもりなのよ。」

「そういうお前もなんだかんだ言って楽しんでるじゃん。」

「ど こ が よ!振り回されてつかれ果てているようにしか見えないでしょ。」


 そう思ってるならその繋いでる手を振り解くなりすればいいのに。先ほどからルリが何かを見つけてはレミアを引っ張っていく構図が続いているがその原因は間違いなくガッチリ繋がれた二人の手だ。が、言わないでおこう。


「あ、あそこで占いをやってる見たいですよ。」

「だから、引っ張らないでってば。」

 

 ルリが向かう先には水晶が置かれたテーブルの前に座ってる黒装束の女性?といういかにもな占い師だ。その顔はヴェールでよく見えない。ただ横に「占い 一回2コム」という看板がデカデカとあるせいでちょっとやすっちい。そのためかあんまり人がよりついてない。


「すみません。占いをして欲しいんですけど。」

「ふふ、随分と楽しんでるわね観光かしら?」


 怪しげな見た目とは裏腹にしたげなお姉さんのような口調だ。フレンドリーなのはいいけど占い師としては原点ポイントじゃないか?


「まあ、そんなところです。」

「別に私は楽しんでないわよ。」

「あらあら素直じゃないわねそんなにたくさんの荷物を抱えてるのに。」

「これは、ルリちゃんと悠一が無理やり・・・」

「あらそのブレスレットお揃いかしら?仲がいいのね。」


 これ占い師というよりただの世間話したいおば・・お姉さんじゃん。


「それにしても活気のある街ですね。まるでお祭りみたいです。」

「お祭りみたいというか。お祭りそのものよ。」

「そうだったんですか?」

「あら、知らないの?千年ぶりに英雄召喚が起こったのは知ってるわよね。そこで召喚された神徒の騎士団が近々このまちに凱旋パレードをするのよ。」


 へぇ、神徒の騎士団がこの街に来るのかぁ。・・・ヤバくね?


 









 


 


 

お読みくださりありがとうございます。

また日が空いてしまい申し訳ありません。次の投稿がいつになるかわかりませんがなるべく早くあげられるようにします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ