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ピアレスアドベンチャー  作者: 竜夜
1章 吸血鬼討伐編
36/53

狂人

ガキンッ!


 割り込んだロビンのレイピアと剣が打ち合わされ、金属どうしの衝突する音が響く。


「ウアァァァ!」


 ヘレンは奇怪なうめき声をあげ血走った目で無理矢理に剣を押し込む。ロビンは無理に抗うことなくいったん後退して難を逃れた。


「吸血鬼・・・」


 呆然とつぶやく。先ほどまでの機械的な印象から打って変わって、力任せな戦いぶりはここ数日戦ってきた吸血鬼そのものだ。


 だがヘレンとは普通に会話が成立していた。それなのにこの豹変ぶりは一体?


 思考を巡らせていると視界の端で何かが立ち上がった。首なしの男が襲い掛かってくる。


「こっちもかっ!」


 反射的にエクスカリバーで切りつけた。男の体を操っていた魔法が解かれ今度こそ動きを止める。その間にロビンがホワイトストライクでヘレンを倒していた。


「どうなってるんだ?こいつら今までと違う。」

「技術とは日々進化するものだよ。」


 聖堂の奥から一人の男が姿を現す。丁寧にまとめられた銀髪に年齢を感じさせるしわの刻まれた顔。右手に奇妙な形の錫杖を握り、猛禽のような眼光でこちらを睥睨している。


「私とてただいたずらにこの真化の瞳の被験者を増やしていたわけではない。試行錯誤を重ね命令を聞くというだけでなく会話や魔法、剣術といった高度な技術まで習得させるに至ったのだ。」


 錫杖を掲げながら男が自慢げに語る。続いて男が錫杖を地面に打ち付ける。それを合図に聖堂の入り口と奥から何人もの騎士や修道士、否、吸血鬼の集団が現れる。


 完全に退路をふさがれ取り囲まれた。だがここまでは想定の範囲内だ。


「僕が先行する。ロビンは魔法で後ろのやつらを・・・」

「モォォォォォォォォロォォォォォォッッッッッックゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!」


 突然ロビンが絶叫をあげ憎悪のこもった目で男にとびかかる。


 当然吸血鬼たちがそれを見過ごすはずもなく、男に侍っていた内の五体がロビンに襲い掛かる。


 だがロビンは吸血鬼たちには目もくれず一心不乱に男を目指している。両者の動きが交錯しあわやロビンの体が引き裂かれようとした刹那、吸血鬼たちの動きが止まった。


 何の比喩でもなく本当に空中で動きがピタリと静止したのだ。そのまま吸血鬼たちの体は慣性の法則でロビンの脇を通り過ぎる。


「は?」


 不可思議な光景に目を疑う。たまたま足元に転がってきた一体が冷気を放っていた。それで起きた現象を把握する。


「凍った、のか?」


 吸血鬼の体は一瞬で冷凍されていた。しかも火の手があるこの場においても全く解ける気配がない。だがロビンが魔法を使ったようには見えなかった。


「死ねぇぇ!」


 ロビンが男の眼前に迫りレイピアを振りかぶる。レイピアも冷気を帯びているのか白い靄をまとっている。


 ここでも魔法を使ったようには見えない。つまりこれは、異能。


 靄を突き抜けレイピアが男の喉元に迫る。


「ほぉ、私の名を知ってるのか。何者だ?」


 男---モーロックは眉一つ動かさず素手でレイピアの切っ先をつかんでいた。その体は宇宙を内包したかのように燦然ときらめく深紅の光に包まれている。


「お前は覚えてないだろうなぁ!吸血鬼に変えたやつのことなんてよぉ!」


 ロビンが叫ぶと同時に地中から氷塊が出現しモーロックの体を吹き飛ばす。さらに氷柱を発生させ壁にたたきつけられたモーロックを縫い付ける。


「エインヘリヤルだ。偉大なる神の尖兵となった誉ある者たちをそのような大昔の俗語で呼ぶな。」


 モーロックの戯言を無視してロビンが追撃する。身動きの取れないモーロックをレイピアが貫く、寸前に異形のうでがレイピアを止める。


 どこからか現れたのっぺりとした異形がロビンの攻撃を防いでいた。


「あれは・・・」


 見覚えがある。さらわれたルリを助ける際遺跡にいた謎の怪物だ。


「子供は小さく非力だ。エインヘリヤルとなってもそれは変わらない。だがなによりも無垢な魂を持つ。それを真化の瞳でこの通りより強大な戦士、いや、天使が誕生するのだよ。まだ成功率は低いがな。」


 つまりなんだ、こいつはこの怪物を作るために子供でさえも犠牲にしたってのか?それに状況からみてその入手経路はあの犯罪組織。


「なんだよそれ、そんなの明らかに悪じゃないか。」

「与えられた役割をこなすだけでは二流。より大きな成果を上げてこそ真の信徒だというわけさ。この成果を献上すれば私も権能を賜り大司教となることができる。ふふ、ふははははははは!!!!」


 本性を現すようにモーロックは哄笑をあげる。


 いかれてる。こいつは人を何だと思ってるんだ。感覚が、倫理が、違いすぎる。


「黙れ。貴様の野望などどうでもいい。俺がここでぶっ殺す。」


 狂ったように笑うモーロックにロビンが再度刺突を放つ。だが当然天使がそれを阻む。


「邪魔だぁっ!」


 ロビンが縦横にレイピアをふるい天使に切りつける。だめだ、そいつに普通の攻撃は効かない。


 だが僕の予想に反して刃が触れた場所が凍結していき天使はあっけなく細切れになった。


「隙だらけだ、ぞっ!」


 天使を倒した直後のロビンの腹にモーロックのこぶしが突き刺さる。ロビンの体がくの字に折り曲がり吹き飛ぶ。聖堂の壁に激突し砂塵が舞う。ずるずると壁を伝って、足先が地面に触れるとぐったりとうつぶせに倒れ、それっきり動かなくなる。


 

 


 

 

 

 


 


 

 


お読みくださりありがとうございます。楽しんでいただけたら幸いです。

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