反攻
叛意?裏切り?教会から?状況が呑み込めず返答に詰まる。
「話を聞こう。」
僕が黙り込んでいるといつの間にか物陰から出てきたロビンがかわりに答えた。
「ようやく訪れた変化だ。不意にする手はないだろ。」
勝手に話を進めるのは悪いと思ったのか、軽く意図を耳打ちしてきた。
「ひとまずの信用を得られたようで何よりです。」
「まだ信用したわけじゃない。」
「そうですね失礼しました。」
まだ警戒心を残したままとげとげしい態度をとる僕に対してもヘレンは慇懃に応じる。
「一か月ほど前のことです。この町にノーラス皇国からある男が派遣されてきました。来るべき魔族との戦争に備えとある魔法の実験をすると。誰もが神の尖兵として戦う力を得ることができると聞き私も最初は心が躍りました。しかし実際に施された術を見て私は恐怖を抱きました。」
ヘレンの語り口は抑揚が少なくどこか機械的な印象を受ける。
「私は疑問に思いました。これはほんとに神の意志なのかと。私にはあの男が神の名を免罪符に使ってるように感じられました。そんなときです吸血鬼が倒されたという知らせを聞いたのは。」
そういうパターンか。彼女は神というよりその名を騙っていることを疑っているようだ。
だがヘレン一人ではどうすることもできずただ疑念を胸の内にくすぶらせているときに僕らが現れた。
ヘレンは興奮を抑えるかのように胸を押さえながら続ける。
「私は震えました。よもや私のほかにも同じを疑念を持ちそして事を起こせるものがいたなんて。実際にお会いして確信しました。神の意志に背くものが教会の人間と渡り合える道理はありません。あなた方こそ真に神の意志を体現せしもの。どうか私にも協力させて下さい。ともにあの男の欺瞞を打ち砕きましょう。」
一通り語りを終え胸に当てていた手を差し出してくる。
「どう思う、悠一?」
「嘘はついてない、と思うけど・・・。」
僕が見たところでは呼吸や仕草に嘘をついている兆候は見られない。だが何か嫌な予感がする。言い知れぬ不安を感じて歯切れが悪くなる。
「協力するって具体的にはどうするつもりだ?」
「教会には通常の出入り口と裏口のほかにもう一つ、緊急避難用の隠し通路があります。そこから教会に侵入し吸血鬼の術者を暗殺しましょう。」
淡々と段取りを話す様子にも不自然な要素はない。ヘレンから敵意を感じることはない。けど好意も薄いような気がする。もともと淡白な性格なのかもしれないがそれが少し不気味に思えた。
だが具体的にどうこうというものでもなく・・・
「わかった、案内してくれ。」
「おい、ロビン。」
「どちらにしろそろそろ教会に攻め入る予定だったんだ。正面から突入しなくていいのは好都合だ。それにもし罠だとしても教会と総力戦をするという状況はさほど変わらない。」
「それはそうだけど・・・」
少し早計なようにも思えたがロビンの論は一応筋が通っている。明確な反論ができず僕はしぶしぶ沈黙で肯定の意を示す。
「話はついたようですね。それではついてきてください。」
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