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ピアレスアドベンチャー  作者: 竜夜
1章 吸血鬼討伐編
33/53

叛意

 僕らのやり取りなどお構いなしに吸血鬼は襲い掛かってくる。先行してきた一体をロビンは振り向きもせずにレイピアで貫いた。


「話はあとだ。今はさっさと吸血鬼どもを皆殺しにするぞ。」

「ああ・・・そう、だな。」


 瞬時に意識を先頭へと切り替えたロビンに対し僕は生返事を返す。彼の言う皆殺しというフレーズが異様な響きをもって胸に引っかかる。


 なるべくロビンに戦わせるべきではない。僕は戦い方を変えた。一体ずつ確実にではなく多少のリスクは無視してまとめて一気に。


 吸血鬼の集団のなかに突貫しあえて包囲させる。エクスカリバーをを腰だめに構えて右足を軸に旋回。円周上の敵をまとめて薙ぎ払う。絶生拳:旋刃。範囲重視の威力が低い技だが今の条件ではこの上なく威力を発揮する。


 だがすべての敵をしとめられたわけではない。倒した吸血鬼の後から第二波が迫る。薙ぎ払う。第三波薙ぎ払・・・いきれない。


 うち漏らした一体が懐に入り込む。あわてて間合いを取ろうとするが間に合わない。両腕で首をつかまれ人外の膂力で締め付けられる。足が地面から離れより絶望的な心地になる。


「ぅ・・・ぁ・・・」


 僕だって伊達に鍛えてはいない。首周りのなけなしの筋力で精一杯抵抗し、敵の手首をつかんで何とか引きはがそうと試みる。


 しかし単純な力の勝負では勝てなかった。少しずつ力が入らなくなり意識が遠のいていく。


 ドサッ。


 危うく三途の川を渡りかけた寸前で。僕は地面に投げ出され尻もちをついた。見れば吸血鬼の肩から上が吹き飛び腕と胴が泣き別れしていた。


「油断するなと言っただろう。調子が悪いのはお前のほうじゃないか?」

「おう、助かった。」

「まあ、とりあえずこれで全部か。いったん拠点にもどるか。」


 首に纏わりついた腕をのけながら助けてくれたロビンに礼を言う。しかしどこか機械的な返事になってしまったのは否めない。戦闘は終わったがまだ胸にもやもやしたものが残っていた。


「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」


 帰路の間、無言の時間が流れる。先ほどの戦闘の光景が頭にこびりついて離れず何を話せばいいか分からない。一方ロビンはまっすが前を見て歩いており声をかけてこない。


「いい天気だな。」

「は?」

「いや、忘れてくれ」


 初対面かっ!いや初対面だとしてもよっぽどコミュ障のきりだし方だなっ!


 心の中で自分の言動に突っ込みを入れていると、魔法で周囲を定期的に探っていたロビンが不意に立ち止まった。


「ん?どうし・・」

「隠れろ。」


 ロビンに促され建物と建物の隙間に入って息をひそめる。


「何かあったのか?」

「待ってろ今おまえにも遠見をかける。"彼方へ至る目を"」

「うぉ!」


 急に視界に移る景色が一変し、驚きのあまり素っ頓狂な声をあげて後ろに倒れこむ。


「はじめは少し違和感があるだろうがじきになれる。」


 ロビンの言う通りピンボケしたようにはっきりとしなかった視界が徐々に鮮明になってくる。


 数十人、下手したら百人近い規模の人の列だ。年代も格好も様々だが、誰一人として私語をする者はおらずどこか厳粛な雰囲気で歩いている。先頭にはローブをまとい、ひと際豪奢な衣装をきた者が二名。男と女が一人ずつ。王都で会った教会関係者はセラだけだが彼女の装いを少しおとなしくしたような格好だ。


 その一団の進行方向的に今僕らが隠れている場所もそのうち通過するだろう。


「おそらく次の被験者たちだろうな。連中、また吸血鬼を増やすつもりだ。」

「こんなに早くか?」

「そもそも俺たちみたいな存在が想定外だったんだろうな。おそらく今教会にはほとんど吸血鬼がいない。」

「だとすると、攻め入るなら今か。」

「そうだな。だがその前に、これ以上吸血鬼を増やされたら面倒だ。ひとまず住人たちを解放するぞ。」


 腰に刺したレイピアに手をかけロビンが闘志をみなぎらせる。だが僕はその手を押さえて彼を制止した。


「ちょっと待ってくれ。それは僕一人でやる。お前は周囲の警戒に当たってくれ。」

「伏兵ならさっきつぶしただろ?わざわざ警戒しなくても・・・」

「いいから!念には念をっていうだろ。」


 少し語気を強めて無理矢理説得する。ロビンは少しいぶかしむような顔になったが結果的に引き下がった。


 ロビンの言う通り伏兵の心配はほとんど必要ない。僕の懸念は別にある。脳裏によぎるのは先ほどの戦闘。あの静かで激烈な殺意が生身の人間に向けられたとき一体どんな惨劇が生まれるのか。想像するだけでも恐ろしい。


 不意打ちは狙わず道のど真ん中に立ちエクスカリバーを抜いて待ち構える。 


 やがて人の波と形容すべき一団の姿が見え始め、お互いの姿がはっきり見えるようになったところで集団は足を止めた。


「貴様、何者だ!」

「さあね。通りすがりの反逆者だよ。」


 ローブの男の誰何にてきとうに答えて僕は先制で切りかかった。男も戦いと無縁ではないらしい。瞬時に懐から短剣を抜き放ち切り結ぶ。


「貴様か。偉大なる神の戦士を殺して回っていると言う狼藉者は。」

「はんっ、何が神の戦士だ。僕ならそんな神様ごめん被るね。」

「おのれぇ、セレス様を愚弄するかぁっ!」


 挑発半分、本音半分の僕のセリフに男はすさまじい激昂を示した。身体強化を全開で発動しとてつもない速さの踏み込みとともに短剣をつきこんでくる。


 どんなに早くとも動きが単調で簡単に見切れる。迫る切っ先をエクスカリバーの腹でうける。そしていったん引き込んで体制を崩させた後カウンター気味の膝蹴りを食らわせる。ローブの男はよろめいてふらふらと後退した。


 だが油断はできない。後方でもう一人が詠唱を終えていた。短剣を持つ男の動きを視界に収めつつ魔法を切り裂くためにタイミングを計る。


 一条の雷閃が放たれた。


「あばばばばばばばば。」


 直後短剣を持つ男が奇声を上げてたおれた。


「なに?」


 状況が飲めない。誤射かあるいは油断させる罠か。とりあえずローブの女に剣を向ける。


「待ってください、私は敵ではありません。」


 ローブの女は両手をあげて敵意がないことをアピールする。

 

「あなた方は行って構いませんよ。もう用はありませんから。」


 そして列をなしていた集団を解散させる。困惑しながらも町の住人たちはぞろぞろと去っていった。。


「お会いできてうれしいです。反逆者さん。」

「どういうことかな?」


 女は両手をあげたまま友好的な笑みを浮かべる。突然襲い掛かってくることはなさそうなので僕は剣を下して率直な疑問を女にぶつける。


 僕が対話の姿勢を見せたことで女はホッと息をつくとともに腕を下した。そしてあまりに予想外なことを口にした。


「申し遅れました私はヘレン。あなたと同じく教会に叛意を持つものです。」

お読みくださりありがとうございます。楽しんでいただけたら幸いです。

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