変調
不格好に繰り出される腕を僕は半身になって避けながらすれ違いざまに斬撃を浴びせる。一瞬辺りを見回し左手から迫ってくる一団は無視して後方で出遅れている一体にロックオン。瞬時に間合いを詰め一撃で切り伏せる。僕が移動したことで吸血鬼たちは方向転換を余儀なくされ小回りの利かない一体が出遅れる。迫りくる吸血鬼たちの横合いをすり抜け孤立した一体をしとめる。
三度目ともなればだいぶ吸血鬼との戦闘にも慣れてくる。複数をまとめて相手するのではなく孤立してる一体に狙いを定めて、最小限かつ最短の動作で一体ずつ撃破していく。例え数で囲まれようと一対一を繰り返すと考えればさしたる問題ではない。
負担が減れば周りを見る余裕が生まれる。
「ロビン、そっちはどう・・・っ!」
少し離れた場所で戦う相棒に声をかけようとして、絶句した。
「ああ、もう終わったぞ。」
そう言って振り向く姿は血にまみれ白い装いが真っ赤に染まっていた。とはいえ目立った外傷があるわけではない。これはすべて返り血だ。
よく見るとロビンの足元には血だまりが広がっている。そして転がっている吸血鬼の死体は一つとして原形をとどめていない。まさに皆殺しといった有様だ。
その凄絶な姿に見入っていると背後から『死』の気配。
「しまっ・・」
とっさに振り向きざまの斬撃で迎撃しようとするが、間に合わない。可能な限り身を引いて致命傷だけは避けるよう試みる。
直後、閃光のごとき刺突が吸血鬼の頭部を貫いた。
ブォンッ!耳元でなった風切り音に思わず身をすくませる。正面から相対していたとしても見切れたかどうか分からない。洗練されとフォームと練り上げられた魔力による身体強化に裏打ちされた神速の刺突。
当然まともに食らえばただでは済まない。レイピアの切っ先が吸い込まれるように吸血鬼の眉間をうがち、皮膚がはじけ頭蓋がひしゃげ血液と脳漿をぶちまける。
「うっ・・・」
さすがに吐き気がこみあげてくる。咄嗟に手で口元を覆った。
「油断するなよ、悠一。」
しかしロビンは何事もなかったかのように淡々と次の獲物に狙いを定める。
一体は先ほどと同じように頭部を爆砕された。
一体は胴体を上下真っ二つに寸断された。
一体は滅多刺しにされてひき肉のようになった。
鮮血が舞い、肉をうがつ生々しい音が響く。腕が飛び、足が飛び、首が飛ぶ。
「お、おい。」
僕はロビンの肩をつかんだ。
明らかにやりすぎだ。吸血鬼を無力化するには魔法を無効化するだけで事足りる。物理的なダメージはほとんど必要ない。
掴んだ肩から小刻みな震えが伝わってきた。様子がおかしい。
「なんだ、悠一?」
ロビンの声音や表情はいつも通りだ。それがより不気味な違和感を覚えさせる。
「具合でも悪いのか?お前、何か変だぞ。」
「何言ってるんだ?むしろ調子がいいくらいさ。」
「それはそうなんだろうけど・・・」
確かにロビンの動きはいつもより速く正確だ。けどそういうことではなくて、何かかが明らかにおかしい。
その何かをうまく言葉にできず僕は言葉に詰まった。
お読みくださりありがとうございます。楽しんでいただけたら幸いです。




