新たな仲間
ロビンと少し話した後、僕らは宿に戻ってきた。
宿の主は大変恐縮した様子で、新しい部屋はもちろんお詫びの品まで用意して今回のことを口外しないよう頼んできた。冒険者用の宿といえども、いや、だからこそセキュリティの不備が知れ渡るとまずいらしい。
「で、なんでお前は当たり前のようについてきてんだ?」
一通り荷物の整理を終えた後、ごく自然にベットでくつろぐ黒髪の少女に半目を向ける。
「今まで怪物に取り込まれていたのに身寄りなんてあるはずないでしょ。それともあなたは行く当てのない女の子を放っていくつもり?」
少女―レミアは子供に道理を説くような口調で悠然と言ってのける。
「それならギルドに保護を求めればよっかただろ。だいたいなんであんなとこにいたんだよ。魔王の精霊とかいってたけど・・・」
レミアの上から目線な物言いにはイラっとしたが、僕は努めて冷静に先ほどからの疑問をぶつける。
「それがよくわからないのよ。」
「どういうことだ?」
それこそよくわからないレミアの返答に僕は眉を顰める。
「十数日ほど前かしら、何もない荒野で目が覚めたの。なぜそこにいたのか、今まで何をしていたのか、そういった記憶は全部なくて、ただ自分が魔王の精霊であることだけは自然と認識できた。それでとりあえず辺りを徘徊していたら何者かに襲われて気づいたら怪物のなかにいたの。」
本当によくわからないようでレミアは頤に指をあて頭の中をかき回すようにしながら要領を得ない説明をする。少し苦しそうに記憶を引き出そうとする姿からは嘘やごまかしの類は見当たらない。
「そういうわけだから、自分の身元説明もできそうにないしあなた達についていくことにしたわ。」
「いや、勝手に決めるなよ。」
ケロっと表情を戻してレミアは当たり前のように宣言する。が、この得体のしれない少女を仲間に引き入れるのは承服しかねる。
「もう、そんなこと言わないでよ。本当に行く当てがないんだから。」
しかしレミアも簡単には引き下がれないのか、ベットから降りて這い寄ってくると、甘えるように正面からしなだれかかってくる。
「お、おい。」
「なんだかあなたは他人のような気がしないの。それに私、結構役に立つわよ。戦闘はもちろん夜の相手としてもね。」
キスを迫るような距離から上目使いで見つめられつやっぽい声で囁かれる。水晶のような瞳に魅入られ思わず欲望に負けそうになる。しかしその直前でレミアの背後から伸びた手がその黒瞳を隠しそのままレミアを引き倒した。
「みぎゃ!」
「ご主人様から離れてください。」
つぶれたカエルみたいみたいな声を上げて引きはがされたレミアに代わって引きはがした張本人であるルリが領有権を主張するかのようにぼくの膝の上に座った。
そして結構強めに打った頭をさするレミアにビシッと指を突き付けて、たからかに宣言した。
「ご主人様と寝るのは私の役目です。勝手に横取りしないでください。」
いやできればお前も別の布団で寝てほしいんだが。あと、この展開でそのセリフは違う言い回しに聞こえるだろ。
僕がどう突っ込むか迷ってるうちに、案の定誤解したレミアがガクッとその場に崩れ落ちた。
「まさかもうそこまでいってる二人だなんて。」
「待て待て誤解だ。今のは普通に寝るって意味で・・・」
「でーもー・・・」
僕が何か言いつくろう前に、一瞬で復活したレミアが挑戦的な笑みを向ける。
「さっきの悠一、私に対してちょっとドキッとしてなかったかしら?」
「そんなはずありません。とにかく金輪際ご主人様に近づかないでさい。」
「あらあら、大事なご主人様を取られるのが怖いからって無理に遠ざけようとしなくていいじゃない。そりゃあルリちゃんってちょっと子供っぽいっていっていうか色気がないから不安になるのもわかるけど。」
「別にそういうわけでは・・・」
「じゃあ私が一緒にいても問題ないわよね?」
「好きにしてください。」
おいレミア色気どうこう言う前にお前もルリと体型そんな変わらねえだろうが。むしろさっき触れた感じだとルリのほうが大きいし。と僕は心の中だけでつぶやいた。
ていうかルリ、気づいてないみたいだけど完全に乗せられてるぞ。それだと同行を認めることになってないか。
「フフ、というわけでこれからよろしくね。」
「はぁ、ま、仕方ないか。」
ルリを口車に乗せまんまと言質を取ったレミアが艶然と微笑む。その毒気のない笑みからはすくなくとも悪意のようなものは感じられない。寝首を掻かれるようなことはないだろう。
こうしてなし崩し的に新たな仲間を迎え入れたのだった。
にしても数十日前か。
レミアが目覚めた日と僕らがこの世界に来た日。この奇妙な符合がほんの少しだけひっかかった。
また、大変長らくお待たせしてしまってすいません。
しばらく投稿し続けられると思うので暇つぶし程度に読んでいただければ幸いです。




