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ピアレスアドベンチャー  作者: 竜夜
1章 吸血鬼討伐編
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救える強さ

 高らかに名乗られた称号に僕は困惑するしかない。


「魔王の、精霊?なんだよそれ?」


 精霊という存在なら知っている。


 万物には外界に干渉するための実体と、存在を独立させるための霊力がある。(魔力はこの二つの中間にあるといわれている。)


 それはなにも物質だけではなく「火が起こる」とか「風が吹く」といった現象にも当てはまることだ。こういった現象の霊力を抽出し形を与え契約して使役する術を精霊魔法という。


 そして、精霊が存在を保つには契約者から魔力の供給を受ける必要がある。だから魔王の精霊なんてあり得ない。

 

「魔王は大昔に討たれたはずだろ?なのになんで・・・」

「そんなことより、どうしてあなたはこんなところに一人でいるのかしら?腕試しにしては無謀すぎるわよ。」

「あっ。」


 少女改めレミアの呆れたような物言いに当初の目的を思い出す。


 レミアに関しては不可解なことが多いし、敵か味方かも分からない。だが今は一刻も早くルリを助け出さねば。


 一応、レミアを警戒しながら僕は中央の小屋に踏み込んだ。


 まず、目に入ったのは粗野な外套を纏い口元を布で隠したいかにも荒くれものといった風貌の四人の男達。部屋の奥には一ヶ所にかためられた拐かされたとおぼしき少年少女達。その中にはルリもいた。


 その怯えきったような表情を見たとき僕は全身の血液が沸騰するような感覚がした。


「お前らが、ルリを。」


 自分でも驚くくらい低く冷えきった声が漏れ、ほとんど条件反射で一人目の男に飛びかかっていた。


 半ば理性を失っていながらも無意識に繰り出されるフミ姉仕込みの拳撃。その衝撃は一切突き抜けることなく男の身体を襲い刹那のうちにその意識を刈り取った。

 

「くそっ!!」

「てめぇ!!」

「この野郎ぉっ!」


 一人がやられたことで我に帰った男達が一斉に剣を抜き三方から同時に襲いかかってくる。


「遅すぎる。」


 前方から切りかかってきた男を蹴り飛ばしながらバックダッシュし、抜け目なく後方にまわった男を裏拳で殴り倒す。最後に右側から迫ってきた男の剣の腹をエクスカリバーでしたたかに打ち据え粉々に砕いた。


「ひっ!」


 剣の破片が頬を掠め男が腰を抜かす。僕はとどめを刺すべく剣を振り上げた。


「た、助けて。」

「・・・何故生きて帰られると思う?」


 殺す、殺す、殺してやる。


 男の情けない命乞を無視して、聖剣を握る手に一層力を込める。そして一思いに振り下ろす、


「ダメです!」


 寸前、小さな力に阻まれた。見ればルリがその華奢な体をいっぱいに使って僕の腕にしがみついている。


「どけ、ルリ。」 

「嫌です。この人を手にかけたらご主人様は変わってしまいます。私はそんなの嫌です。」

「どけと言っている。どかないなら・・・」


 力ずくでもと言おうとして僕は口をつぐんだ。ルリがその瞳に大粒の涙を浮かべていたから。そしてその瞳に映る自分がどれだけ恐ろしい顔をしているかに気づいたから。


「ご主人様はとってもお優しいお方です。誰かを救うことのできる強さを持ったお方です。勝手なのは分かっています。我が儘を言っているのは承知しています。けど、どうかお願いです。いつまでも、私の大好きなご主人様でいてください。」

 

 冷や水を浴びせられたような気分だった。


 僕はルリを守ると決めたはずなのに、その僕がルリを泣かせてどうする。こんなの本末転倒じゃないか。


「すまない、ルリ。」


 僕は剣をおさめできる限り優しい声音で謝罪した。


 いつか誰かを殺めることになると思っていた。戦いとはそういうものだしその覚悟もしていた。


 けど、ルリの涙を見ていると、その覚悟がいかに浅く身勝手なものだったか思いしる。人を殺すことでなにか大切なものを失ってしまう。ルリが信じた自分から遠ざかってしまう。そんな単純なことにも気づけていなかった。


「誰かを救うことのできる強さ、か。」


 小さく口のなかで転がすようにルリに言われた言葉を反芻する。そんな大層な人間じゃないと思いながらも、悪くない気分だ。


「悠一っ!」


 突然、入り口の方から焦ったような声が聞こえたと思うと、息を切らせたロビンが駆け込んできた。その後冒険者らしき男女八人がぞろぞろと入ってくる。


「一人で行くなって言っただろ。」

「悪い、待ちきれなくて。」

「外にすごい数の魔竜の死体が転がってるんだけど、あれ全部お前の仕業じゃないよな?」

「さすがにそれはないよ。それをやったっぽい化け物は倒したけど。」

「え、それって更にすごいことじゃ・・・まあ、無事でよかったよ。」


 軽くやりとりをかわしたあと、ロビンが指示をだし冒険者達が手早く荒くれ者達を取り押さえ子供達を保護する。


「それじゃあ僕はもう帰るよ。」


 その様子を見届け、帰路につこうとするとロビンに肩を掴まれて引き留められた。


「悪いけど、ギルドに移送するまでは付き合ってくれないか?でないと、お前の分の報酬が降りないからさ。」

「もう、疲れたからいいよ。別に金に困ってる訳でもないし。適当に山分けしてくれ。」


 迷宮の強行突破に異形との激闘、ついでに誘拐犯たちとの戦闘もあって正直すぐにでも倒れてしまいたいくらいだ。わざとらしく疲れてますアピールをするとロビンも無理に引き留めることはなく「最後に一つだけ、」と付け足した。


「お前に頼みたい仕事があるんだ。明日の正午、ギルドで会えないか?」

お読みくださりありがとうございます。

今回は戦闘シーンは薄めですがその分キャラ達の心情に焦点を当てることができたと思います。

なんにせよ楽しんでいただけたら幸いです。

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