最初の町2
「た、大変です!」
駆けつけた青年はひどく憔悴していた。ギルドの職員がどうにかなだめて事情を聞き出そうとしたが見た方が早いというので、青年に導かれてギルドの兵士や冒険者等がこぞって外に出た。そして誰もがそこにいた怪物に顔を青ざめさせた。
全長五メートルもの巨躯に瞳孔が縦に割れた瞳。雄々しくも禍々しい竜がその牙で鉤爪ではたまた口から吐き出す熱線で町を片端から蹂躙していく。
「うっわ、なんだあれ?」
「竜型の魔獣、通称魔竜です。並の攻撃では傷ひとつつけられないほど固い鱗と圧倒的な攻撃力を持つ上に鳥型の魔獣のように自由に空中を飛び回ります。最強の魔獣といっても過言ではありません。ふつうは遺跡の深部にしか棲息してないはずなのに・・・とにかく早く逃げないと。」
「逃げるって何処に?まだ補給も済んでないのに。」
「でも、どうすれば・・・」
「決まってるだろ。戦うんだよ。」
先程のロビンとの邂逅で不測の事態ではあったが既に『獣』になれている。戦う準備は万全だ。僕はベルトに引っ掻けていたエクスカリバーを引き抜いた。
『敵対勢力:竜型魔獣 戦闘力:27 危険度D
開放率:14% 状態:オールグリーン』
僕の戦意に呼応してエクスカリバーがその機能を発動させる。そして僕は足をたわめて剣を中段に構えて突進の準備をする。
「猪突!」
僕は足のバネを一気に解放してほぼ地面と水平に跳躍。その後体当たりじみた勢いで魔竜にエクスカリバーを突き込んだ。魔王殺しの聖剣は竜の鱗さえも易々と貫きその奥の肉を穿つ。まともなダメージを与えたことで魔竜の意識が僕に向いた。
魔竜が咆哮をあげながら左右の鉤爪を降り下ろす。思わず竦み上がってしまいそうな威容だが僕は『死』の気配とエクスカリバーの予測線によって正確にその軌道を見切った。
「三爪!」
エクスカリバーを横凪ぎに振るって鉤爪を迎撃し、更に左右からの連続切り下ろしで反撃。隙がない技な分傷は浅かったが魔竜を怯ませることは出来た。
「独楽斬り!」
反動を利用して上体をギリギリまで捻ってからの渾身の回転斬り。溜めが必要な分威力は絶大。魔竜の胴をかなり深く切り裂いた。
しかし魔竜もやられっぱなしでは終わらない。体を捻ることで両断を避けるのと同時に独楽斬りの勢いで体が流れてしまった僕の後ろを取り口内に熱線を準備する。
まさに起死回生の一手。だが熱線の溜めに一秒かかる。それは『獣』でアドレナリンを強制増幅させ知覚速度を引き上げたいまならギリギリ間に合うか。
「螺旋!」
まず右足を軸に回転しその勢いのまま今度は左足を軸に回転。それを繰り返して半回転の間に何度も加速して一瞬で振り向いた僕は熱戦の準備で忙しい魔竜の隙だらけの眼球にエクスカリバーを突き立てようとした。しかしその直前で突風が吹き荒れ魔竜を吹き飛ばした。更に魔竜の周囲の地形が変化し即席の檻となって魔竜を拘束した。
「手伝ってやろうか?」
突風が吹いてきた方向に眼を向けるとロビンがそう言って不適に笑った。これに僕もニヤリと笑みを返す。
「邪魔にならない程度に頼む。」
「お前こそ足枷にだけはならないでくれよ。」
そんな減らず口を交わしている間に魔竜は檻を破壊して上空に飛び上がった。そして剣は届かず魔法でも充分な威力で攻撃できない安全圏でさっき不発に終わった熱線を溜める。
これに対しロビンは焦ることも臆することもなく迷わず僕に向かって走ってきた。ロビンの意図を察して僕も体勢を極限まで低くする。
「昇り竜!」
充分に助走をつけたロビンは僕の直前で跳躍し、僕はエクスカリバーを逆手に持ちかえてその足裏に対空剣技を放つ。エクスカリバーの腹を足場に僕の剣技の威力を吸収したロビンは魔竜と同じ高さにまで跳躍しレイピアによる連続攻撃を放った。
あのレイピアも相当の業物らしく竜鱗を易々と貫きまたしても熱戦は不発になった。しかし魔竜は尚も諦めず空中で身動きがとれないロビンを丸呑みにしようとその口を開いた。
その時には僕が音速戦技の応用で魔竜の背後に飛び上がっていた。魔竜は咄嗟に尻尾を鞭のように叩きつけて迎撃するが、
「狼牙!」
僕はエクスカリバーを左から右に次いで右から左に薙ぐ、武器破壊の二連剣技で迎撃し尻尾を切り落とした。
「縦刃・四方!」
更に僕は無防備な背中へと剣を降り下ろし、次いで尻尾の残りにつかまり逆上がりをするように股をくぐり抜けざまに切り裂き、そして爆転のように体勢を跳ねあげながら腹を斬りつけ反対の手でロビンを掴む。最後に脳天に渾身の一撃を叩き込み頭蓋を割り砕く。
僕の四連撃をまともに喰らっても魔竜はしぶとく暴れまわった。僕は技後硬直でうまく動けない。だがまだロビンがいる。
「レッドピアス!」
砕けて中身が剥き出しになった魔竜の脳天にロビンが魔法で燃え上がらせたレイピアを突き入れる。内側から内臓を焼きつくされて今度こそ魔竜は絶命し、地に落ちた。
一瞬重力がなくなったような感覚がした後、グシャっと肉のつぶれる音ともにもはや原型を失った魔竜をしり目に着地する。
「凄いな。ここまで誰かと動きが噛み合ったのは初めてだよ。」
戦いが終わりロビンが感慨深げに呟いた。確かに初対面だったのにやたら連携がうまくいった気がする。
「お前とは案外相性がいいのかもしれないな。」
「奇遇だな。僕も同じことを考えていた。」
お互いの実力を認めあった僕らはどちらからともなく固い握手を交わした。
お読み下さりありがとうございます。
今回は新キャラロビンの戦闘シーン。ということで雑魚のようにあっさり倒されてしまった魔竜。魔竜はけっして弱くありません。彼らが強すぎるんです。今後も噛ませみたいな役割で登場することになるでしょうが一応最強の魔獣です。
後、分かりづらかったかもしれないので一応補足。昇り竜は低い体勢から剣を振り上げる技です。今回はそれをロビンの跳躍強化というかたちで利用しました。それと魔竜について解説したのはルリです。
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