最初の町1
なんとか年明けまでに1章突入。今回は導入みたいな感じなのでかるーく読みとばしてください。
永遠に続くのではと思われるような森のなかをおよそ三日歩き、ようやく人里にたどり着いた。
「やっと着いた。さすがに疲れたな。」
「そもそも町と町の間を歩きで移動することは滅多にありませんしね。」
「まあそれは状況が状況だったし仕方ないだろ。それにしても、思ったよりちゃんとした町だな。」
僕たちが最初に着いた町(ゼルクの町というらしい)は案外都市的だった。家は木造だがしっかりした構造だし、道も整備が行き届いている。僕はもう少し田舎風な町をイメージしていたのだが。
「王都に一番近い町ですからね。辺境に行けばもっと牧歌的な町もありますよ。」
ルリの説明を聞きながらアーチ状の入り口から町に入る。入り口に門番はいるにはいたのだがこちらをチラッと見ただけで特になにも言われなかった。町の周囲は柵で囲ってあるだけでこっそり入ろうと思えば余裕で侵入できそうだ。
「王都に比べて随分守りが緩いな。」
「こう言っては何ですが所詮ただの町ですから。王都のように高い外壁で囲うお金はありませんからね。一応役所に駐屯騎士はいまし教会のエクソシストもいますけどすけど、彼らの仕事は主に街の中の安全管理ですね。基本的には町の周辺の安全の確保はギルドに所属してる冒険者の仕事ですね。」
先程から僕がなにか疑問に思う度にすかさずルリは答えてくれる。知識が不正確とか言ってたが案内人として充分有能だ。
「さて、これからどうする?」
「一先ず冒険者ギルドに行くのはどうでしょう?このあたりの地図と当面の資金を確保するための依頼。今必要なものがだいたい揃います。」
なるほど。確かに大まかな地形は把握してるが町一つ一つの細かい構造まではしらないし、王国から支給されたお小遣いが多少あるとはいえそれだけでは旅をするには心もとない。この町でいくらか稼ぐ必要がある。他に案があるわけでもないのでルリの言う通りギルドに向かう。
ルリ曰くギルドとはいわゆるなんでも屋である。普段の生活でなにか困ったことがあれば一度ここに依頼されそれからギルドの職員やその他冒険者などに仲介される仕組みだ。定期的に街の役所から来る魔獣の退治の依頼や街と街の間を移動する馬車の手配とその護衛、探し物等依頼できる仕事内容は多岐にわたる。仕事の質や信頼性に疑問はあるが料金が格安のため庶民には好んで利用される。
当然冒険者を本職にしているものはギルドの依頼だけでは収入が少ないので、ある程度名がしれたら直接依頼を受けたり、あるいは遺跡の探索などで一攫千金を狙うものが多い。
町のなかを歩いてみると王都に比べて人々の格好が質素な感じがした。王城での外行き用とはいえさほど派手ではない僕はあまり浮かなかったが、聖剣降臨の儀での立派なドレスのままのルリはものすごく場違いな気がする。後でいくつか服を買ってやるべきだな。
しばらく歩いて町の中心部にある一際大きな建物に入った。これがギルドだ。
ご自由にお取りくださいの町の地図を取り、一般公募の依頼が張り出された掲示板を見る。ギルドで依頼を受けるときはここに張り出された中から好きな依頼の紙をとって受け付けに持っていき専用の書類にサインすることで契約成立となる。依頼にはそれぞれ難易度があり猫探しや子守りなど誰でもできるEランクから凶悪な魔獣の討伐のように命の危険が伴うAランクまである。当然、難度が上がれば報酬も上がる。
早急に金が必要というわけではないのでCランクかDランク依頼を中心に選ぶ。Eランクにしないのは簡単だけど時間がかかる系が多いからだ。それに対しCランクかDランクの依頼は要領よくこなせば短時間で終わる。必要資金を稼ぐならこのくらいがちょうどいい。
「やあ、見ない顔だな。新人かい?」
掲示板に向かって歩いてる途中で僕と同年代くらいの男が声をかけてきた。同年代でも僕は身長が低いのと男の身長が高いので対面すると見上げる形になってしまう。無骨な印象を受ける人間が多い冒険者の中で細身かつ清潔感のあるこの男は少し浮いていた。
栗色の髪にエメラルドの瞳。舞台役者のようなきれいな顔立ちと澄んだ声は自然と目を惹き付ける。そして何よりもその格好。他のものは武骨な鎧兜か機能性の高い革素材の服を着ているのに対しこの男は白を基調とした仕立ての良さそうな生地のスーツのようなものを着ている。装備も見えるだけでは腰に提げたレイピアだけ。一応上着で隠してベルトにダガーを引っ掻けてるようだがそれでも軽装だ。
「いや、冒険者だ。まだまだ駆け出しだけどな。」
「へえ、俺と同い年の冒険者がこの辺にいたのか。その年ならまだまだ家の手伝いで忙しいだろうに。さては抜け出してきたな。悪いやつだ。」
「あ、ああ、そんな感じだ。」
嘘は言ってない。本来の仕事がいやで家から抜け出してきたのだから。ちょっとスケールが違うだけだ。
「まあ、俺も人のこと言えないけどな。あっ、まだ名乗ってなかったな。俺はロビン。よろしくな。」
「如月悠一だ。こちらこそよろしく。」
ここまで会話して分かったことがある。こいつ、強い。
人当たりのいい笑みと少年めいた声音で分かりにくかったが所作の端々にその事がにじみ出ている。だがテオングさんのような歴戦の風格というわけではない。言うなれば才能。生まれった物が他とは違う。そういったある種の気品が所作に滲み出ている。
油断していたらやれかねない。恐怖に似た感覚から僕は反射的に獣を発動してしまった。
「あっ、やばい。」
獣を使うとどうしても闘気や覇気のようなものが漏れ出してしまう。野良犬くらいな追い払える程度に。さすが荒ごとをこなすこともあるだけあってそういった闘気に敏感なようだ。ギルド内の視線が全てこちらに向いた。ロビンもまた僕の闘気に当てられて僅かに目を細めた。
「ふーん。初見で俺を侮らなかったのはお前が初めてだよ。」
そういうロビンも最初から全く油断していなかった。不本意ながら僕はこの童顔と矮躯のせいで弱く見られがちなのだが、こいつは見かけに騙されず力量を測れるだけの眼を持ってる。そこら辺のごろつきとは違う。本物だ。そんなやつに先制で威嚇しちゃったよ。
しばらく僕とロビンのにらみ合いは続き、ギルド内に異様な緊張が生じた。しかしその緊迫はすぐに途切れた。突然ものすごい勢いでギルドに飛び込んできた二十代半ばの青年によって。
「た、大変です!」
お読み下さりありがとうございました。
今回は最初の町1ということで序章のプロローグのように何話か続けてゼルクの町を舞台に話を進めて行こうと思います。果たして吸血鬼を相手にするまで何話かかるのか?なるべく早く進めていくので最後までお付きあいください。
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