表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/31

第5話:北の秘湯と悪徳貴族

 数日の道中旅を経て、二人はついに目的地の「北の秘湯街」へと到着した。しかし、そこは想像していたような風情ある温泉街ではなかった。建物の壁は崩れかけ、道行く人々は皆一様に暗い顔をして俯いている。活気など微塵もなく、まるでゴーストタウンのような有様だった。


「どういうこと? ここ、有名な温泉地のはずよね?」

 訝しむビビアンたちが宿を探していると、街角から怒声が聞こえてきた。

「頼む、待ってくれ! 湯治客が激減して、今月の税はこれだけしか……!」

「うるさい! 領主様が決めた『温泉利用税』が払えないなら、この宿は没収だ!」

 見れば、武装した私兵たちが、みすぼらしい宿屋の主人を足蹴にしている。


「……ちょっと、あんたたち! 寄ってたかって何してるのよ!」

 正義感の強いビビアンが割って入る。

「ああん? なんだお前ら、よそ者か。ここは『バレンティン子爵』の治める領地だ。逆らう奴は容赦しねぇぞ!」

「バレンティン……子爵?」

 その名を聞いた瞬間、ビビアンとシルヴィアの顔色が変わった。それは、かつて自分たちの母を見捨て、屋敷から姉妹を追い出した実の父親の名前だった。


「……なるほどね。あのクソ親父、こんな北の田舎に左遷されて、領民から金を搾り取ってたってわけね」

 ビビアンの拳がギリッと鳴る。


 そこへ、私兵たちをかき分けるようにして、一人の派手なドレスを着た中年女が現れた。

「騒々しいわね。一体何の騒ぎ……あら?」

 女はビビアンたちを見るなり、その顔を醜く歪ませた。子爵の正妻——かつて姉妹を迫害した張本人だった。


「どこかで見た顔だと思えば……あの泥棒猫の娘たちじゃない! なぜこんな所にいるの! 目障りだわ、私兵たち、この薄汚い平民を街から叩き出しなさい!」


 ヒステリックに叫ぶ正妻。私兵たちが武器を構えて迫る。ビビアンは背中の大剣に手を伸ばしかけたが、ふと、隣に立つ妹の様子がおかしいことに気づいた。

 シルヴィアは、俯いたまま、小刻みに震えていた。


「……お母さんを、侮辱した? 私たちから、全てを奪っておいて……まだ、足りないんですか?」

「シルヴィア、ダメよ! 街の中でその魔法を使ったら、温泉街ごと吹き飛んじゃう!」

 ビビアンが慌てて妹を抱きしめる。姉の温もりに触れ、シルヴィアの暴走しかけた魔力はギリギリのところで収まった。

「……ッ、今日は引いてあげるわ。だけど、覚えときなさいよ!」

 ビビアンはシルヴィアを連れて、その場を素早く離脱した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ