10 暗世
10 暗世
「はい、ではまず【魔物】、とは何なのか、説明していきたいと思います。」
古びた教室に坂本のかん高い声が響き渡る。
昨日突然手紙でこの教室に集められた生徒たちは、昨日坂本に言われたとおり午後4時に集まっていた。
そして、坂本は教室に来るなり、いきなりしゃべりだした。
「皆さんはパワレルワールドというものを知っていますか?」
坂本の問いかけに最前列にいた男子生徒が応える。
昨日も坂本に質問していた生徒だった。
「あの並行世界とかっていう…?」
「そうです!この世界と並行して存在するもうひとつの世界、それがパワレルワールドです。
では、《暗世》という言葉を知っていまか?」
教室に沈黙がおりる。
誰も知っている者はいないようだった。
「暗世とは、もうひとつの世界のせことを指す言葉です。そして、その場合、この世界のことを現世、と呼びます。
暗世は、パワレルワールドとよく似ているのですが、少し、違います。
パワレルワールドとは、世界と並行して存在するものですが、暗世とは、現世と二つで一つで世界なのです。」
瀬奈は、黙って坂本の話を聞いていた。
なんだか、ファンタジックな話に進んでいて、よく分からなかった。他の生徒も瀬奈と同様に困惑した表情を浮かべていた。
そんな、生徒たちのことを見て、坂本は後ろの黒板にチョークで何か
かいた。
そこには円が二つ、書かれている。
「これが、パワレルワールドと世界だとすると」
チョークで一つの円にパワレルワールドと書き足す。その隣の円には、世界、とかく。
さらに、坂本はその二つの円の少し離れた場所に、ある程度の長さがある横線を引いた。
横線の上に現世、下に暗世と書く。
「これが暗世です。」
坂本は横線の上に現世、下に暗世と書いた文字が円の内側に入るようにぐるっとチョークで一周し、円を描いた。
そして、その円に世界と書く。
「まぁ、こんな感じです。現世があって、暗世がある、暗世があり、現世もあって世界が成り立つ。
ここまで、わかりますか?」
皆、難しい表情でとなりの生徒やらと話している。
話が突飛すぎてついていけないのだろう。
「暗世なんて本当に存在するの?なんか、信じられないんだけど」
皆の声を代弁するかのように女子生徒の声が上がる。
その声は瀬奈の隣に座る、ツグミから発せられた。
「はい。本当にあります、まぁ、信じられないでしょうけどね。でも、実際あるんです。あなた達を悩ませている、魔物は、この暗世から来ているんですよ。」
教室内にざわめきが広がる。
そんなこと、気にもしていないように坂本はそのまま続けた。
「暗世と、現世には、両方を行き来する《扉》があるのですが、そこを通り、魔物が現世に来ていると考えられます。
なぜそのようなことが起こるのか、詳しいことはわかっていません。
何しろ、魔物について、我々にもわからないことだらけですので。」
そこまで坂本は言い終えると、突然表情を変え、にっこり笑う。
「ま、とりあえず、暗世については後日、専門家の先生に来てもらうとして。」
坂本の笑みが深くなる。
「何よりもまず、魔物を倒す方法をあなた達に教えましょう。」




