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第八章 〜もういい〜

誰もが予期せぬミンス卿の登場に、真先に行動を起こしたのはアールマンだった。

──好機!

即座に袖口裏の隠しから硝子玉を取り出し、それを地面に叩き付けた。

硝子玉が割れる事で閉じ込められていた常人には聞こえ得ぬ音波が広がり渡り、設置されていた魔術を起動させる。

「ミンス!リィンを守れ!」

錬兵場の四隅から真白い砲弾が射出される。

砲弾はシロの頭上でぶつかり合って弾けた。その破片は液状に変わり雨滴となってシロへと降り注ぐ。

「む」

すぐさまシロは外套を深く被る。白い雨水はねっとりと外套にまとわりつきながらも、一滴すらシロに届きはしなかった。

「……とりもち?」

外套を振って落とそうとするが粘性が高く、妙な重量感が全身に負荷を掛ける。

そこへアールマンが二の矢を継ぐ。

「神槍の権能も万能ではない」

二つ目の硝子玉を割ると、端に置いてあった鉄材が動き出し、シロの周囲を囲うように地中深くに突き刺さっていく。

「その発動条件は魔力の有無に拠るところが大きい。結界のように魔力を流し続けなければならない物は破壊出来ても、魔術を介さない物に関しては物理的な性能しか持たない」

神槍は魔術によって操られる風や炎であれば、所持している限り絶対的な安全が確約されるが、魔術によって形作られた物質に関しては自然の法則に左右される。例えば魔術によって岩を作り出し襲わせたとすると、神槍は岩ごと魔術を破壊するが、元々存在する岩を動かすような魔術であった場合、神槍は岩を動かしている魔術は破壊しても自然物である岩にまでその権能が及ぶことは無い。

「いくらお前が人間離れしていても、流石に鉄は壊せないだろう」

「……」

鉄材に囲われたシロは無言で神槍の切先を鉄材に突き入れる。鐘を突いたような反響音と共に腕に振動が走る。神槍を地面に突き刺し、痺れを取るためか腕を振った。

「場を整え次第、話はしてやる。しばらくそこで大人しく」

「──『破門』」

アールマンの言葉が止むより前に、シロは粘つく外套を脱いで体勢を整え、渾身の拳を鉄材に叩き込んだ。

轟音を響かせ、波打つようにひしゃげた鉄材が傾いて倒れる。

「…………正気か」

呆然とアールマンが呟く。見れば鉄材を打ち抜いた拳からは血が滲み出ているし、その腕は痙攣しているようにも見える。

「腕が使い物にならなくなるぞ!」

「この程度じゃ壊れない。そのうち治る」

「っ!」

震える腕とは逆の手に神槍を携えたシロが駆ける。アールマンも剣を抜いて構えた。


二人が剣戟を交える中、ルリとミンス卿は離れた場所で睨み合っていた。

「助けんでええの?陛下が勝てる相手やないと思うけど」

「当の陛下に守れと言われたものでね。それに、俺にとってもお嬢は放っておけない存在なのだよ。そちらこそ、助けに行かなくていいのかな?負傷したのは利き腕に見えるが、あんな状態で優位を保てるほど俺の陛下は温くないぞ」

「そう言われて背を向けるようなら、今日まで生きておられへんよ。ミンスって呼ばれよったね。噂に聞く〝愚昧卿〟相手によそ見なんか出来ひんよ」

「知ってくれているとは嬉しいね。だが残念。俺は守りに関しては一家言持っているが、攻めに関してはからっきしなんだ。逃げる隠れるは得意だが、こんな正面切って戦うのは性にあわない」

「よう言いはるわ」

助太刀出来るようなら、シロが閉じ込められた時に向かっている。それをさせなかったのが眼前の耳長族だった。

アールマンに指示を受けたミンス卿は、術が途切れて倒れたリィンを背に結界を敷いた。ルリが起き上がった頃には、幾重にも張り重ねられた堅牢な防御体勢を築いていたのだ。ルリも『赤潮の錫』が無くともそれなりの攻撃魔術は扱えるが、大した水場の無い場所でこの防壁を突破出来るほどの魔術は扱えない。放置しようとも考えはしたが、ミンス卿のやけに余裕のある表情を見過ごすことが出来ずに睨み合うしか無くなったのだ。

アロットでの経験上、こういう得体の知れない者から目を離せば手痛い目に遭うことをルリは知っている。

「そういえば、お前は陛下の事を『陛下』と呼ぶんだな」

睨み合っているといった自覚も無いのか、雑談を持ちかけるような、緊張感の伴わない声色でそんなことを言う。

「……おかしな事ないと思うけど?」

ルリが否定するとミンス卿は口角を持ち上げて、視線を剣戟の鳴る方へと向けた。

「そうかね?あの少年は不敬だが、お前はまだ分をわきまえているように見える。陛下に喧嘩を売っている者の態度とは思えないな」

「敵対しているつもりは無いからね」

「ふむ──む?」

頷いたミンス卿がアールマン達の方を凝視する。釣られてルリも視線をそちらへと向けた。

──その一瞬、目端に残したミンス卿の口が薄く弧を描いたのが見えた。

「ひ、やぁっ」

突然、ルリの下の地面が抜けた。えも言われぬ浮遊感に小さく悲鳴をこぼし、ルリは出現した穴に直立したまま嵌った。剣を交える2人からは、ルリの首から上だけが地面から生えるように見えるだろう。

「いやまさか、こんな子供の悪戯のような罠に引っかかるとは。ああ、状況が呑み込めないだろうから解説してやろうか。簡単に言うと、俺の後ろから穴を掘ってお前の足下に繋げただけだよ。こっちを警戒して動きもしないから大した手間もない。どうやって掘ったかって?単純な物質移動の魔術だとも。そこからじゃ見えないだろうが、俺の後ろには人一人分の土が積んである。これだけの量を先に掘り出しておけば、あとは楕円を描くよう、蚯蚓のように穴を埋めつつお前の足下まで空間を掘り進めるだけだ。折を見て開通すればそれその通りというわけだ。……しまった、お嬢の体が土に埋まってしまっているな。まあ構うまい。必要な犠牲だ」

仕方ないと首を振るミンス卿に、ルリは瞠目する。自分はずっと、掌の上で転がされていたのだ。

ルリの注目を誘うように余裕振った表情を作り、会話で引き止めつつ警戒を煽り、ルリも気にせざるを得ない二人へと視線を向けることで僅かな隙を作り出して穴に落とした。それだけではない。ルリの感知を欺く隠蔽能力、目視せず対話しながらも魔術を行使し続けた精密性は並大抵の術師の業では無い。

「さて、と」

リィンに被さっている盛土に触れて簡単に詠唱を済ませると、ミンス卿は土を蛇のようにうねらせてルリの嵌った穴へと潜り込ませた。

「真意はどうあれ、お前が陛下に牙向きお嬢に危害を加えた事実に変わりはない。沙汰を下すのは俺の役目ではないが、御心の深い陛下ならば躾くらいはお許しくださるだろう」

穴の中で土蛇はルリの手足を固めて土へと戻り、空間全体を埋め始めて全身を圧迫していく。呼吸も苦しくなるほどの密度になると、残った土が首から上にまでまとわりついてきた。

「生き埋めというのは大層苦しいらしい。身動きも出来ないほどの土の重さに加え、五感を封じられる恐怖。ああ、案ずる必要は無いぞ。耳と呼吸の孔は残してやるとも」

圧迫され続け、呼吸だけで精一杯なルリには何を言う事も出来ない。足掻こうにも四肢はより強固に固められ、指先を揺らすことすら出来ずに土蛇に飲まれていく。

そうして蒼海のような髪も土色に染まり、視界も暗闇に覆われていく。

「陛下、ああ陛下。人材を愛する貴方はこの者に厳罰を与えることは無いでしょう。だから代わりに貴方に不忠を為す愚か者は俺が矯正してみせます。貴方の尊さを、美しさを、誇り高さを、万感の言葉をもって説き語ればこの者もきっと理解する。その愚行の罪深さを。そして叛意など忘れ、あなたに付き従うことを喜びと感じるようになる。ええ、きっとお嬢にも引けを取らない忠義者になりますとも。無論俺には及ばないでしょうけども」

半死半生の中、ルリは初めて死の予感を超える恐怖と出会った。


下から振り上げられる穂先をアールマンが剣で外側へと逸らす。その外に向いた力に反発せず、シロは体ごと黒槍を振り回して叩きつけるように振り下ろした。

「ちっ」

舌打ちして剣を斜めに構え、重量のある一撃をどうにか地面へと逃がした。

「──」

シロは地面に沈んだ切っ先を自らに押し込み、跳躍する。中空で縦方向に回転しつつ神槍を引き抜き、そのままアールマンへと叩き付けた。

これは流石にいなせないと判断したアールマンは射程外へと跳び退く。

「無茶苦茶なやつだな……!俺もそれなりに使えるつもりだったが、自信を無くすぞ。まったく」

「随分余裕があるんだな」

柄を短く持ったシロが距離を詰めるために踏み込む。

「余裕なんてあるものかよ!」

取り出した魔法石に魔力を流し、シロとの直線上に放り投げる。魔法石は地面に当たって爆発し、突っ込んできたシロに土砂を浴びせかけ視界を奪った。

シロの動きが弱まった隙に一言詠唱し、彼の足元へと光弾を放つ。しかし光弾は地面に当たる前にシロが横薙ぎにした神槍に阻まれて霧散した。

「ここまで防戦一方なのは初めてだとも……!」

突き出された切っ先を受け流しつつ後退する。

アールマンが攻めきれないのには理由がある。現在アールマンは魔術によって身体強化を行っており、他にもいくつもの加護を全身に付与している。もし神槍がかすりでもすれば、それらがまとめて破壊されることになる。そうなればまさしく万事休す。強化を失ったアールマンでは万全ではないシロの攻撃も受け切ることは出来ない。

さらにもう一つ、シロへ有効打を放てない理由があった。

くるりくるりと神槍が回る。回転によって力を蓄えた穂先がアールマンを狙って迫り来る。

剣を振り上げて柄を打ち上げ、自身は地面に向かって仰向けに倒れるように膝を折った。

受身を取りつつ転がりながら距離を取る。追撃に備えての事だったが、意外なことにシロは神槍を脇に収めてじっとアールマンを見つめていた。

「分からないな」

そう言ったシロは視線を鉄材の檻に脱ぎ捨てた外套へと向けた。

「あんたは僕の殺し方が分かっている。何故そうしない」

何者にも負けない、軍にも優る個として作られたシロではあるが、完全無欠の無敵の存在という訳では無い。一般的に致死毒と言われるような猛毒ならば常人と同じように死ぬだろうし、炎に巻かれ続ければ酸欠にもなる。魔術から守られるという神槍があってもアールマンの魔術によって打ち出された液体は防げなかったし、もしあれが人体を害する類のもの、もしくは気体に変わるものであったならば、こうして立っていられたかは怪しい。極端な話、シロの感知し得ない超長距離から狙撃すればそれだけでシロは死ぬ。

交戦の最中、アールマンは直接シロを狙わず地面に当てて間接的に動きを阻害するなど、常に牽制としては正しい行動を取っていた。それが意味するところはつまり、アールマンはとうにシロを処理する方法に勘づいているが、その気が無いということになる。

「侮っているのか、この身を。不殺をもって制することが出来ると」

「……」

アールマンは答えない。侮っているつもりは無いが、殺さずに捕らえようとしているのは事実だ。相対して改めて思う。獣人族が持て余した神槍を使いこなしている事といい単純な戦闘力といい、シロは手放すには惜しい逸材だ。今後必ず必要になる。そう思うからこそ、最後の一線を越える訳にはいかない。

そんなことよりも、突然生まれたこの一時を無駄にすることこそが許されない。頭の中で術式を全速力で組み上げる。

「……なんだろうな、この感覚。体の芯が震えるような」

それは恐らく『怒り』。戦闘に支障をきたすことのないよう、喜怒哀楽を仕込まれることなく育てられたシロにとって珍しくも発現出来た感情である。

「あんたが不殺の意思で挑むというなら好きにすればいい」

刺突が迫る。体を横に動かすと同時に剣の腹で叩いて逸らす。引っ込められた槍が再び刺突を繰り返し、それを同じようにいなす。三度、四度、五度、六度と、アールマンは描いた術式を崩さないよう集中を保ちながら攻撃を躱していく。

「でも僕を止めたいのなら必死の覚悟で挑むべきだ。いくら壊れようとも僕は敵に食らいつく」

と、そう言った後でシロは驚いたように顔を上げて動きを止めた。

「……敵?」

自分の言葉に一瞬首を傾げ、そしてすぐに頷いた。

「ああ、うん。そうか。なるほど」

シロが槍を引いて大きく飛び退る。十分な距離を置いたところで神槍を地面に突き刺した。

「魔王。どうやら僕はあんたを敵と認識しているらしい。敵を相手に問答は必要無い」

半身になったシロは傷ついた腕で神槍を引き抜いて前傾姿勢になり、柄を長く持った穂先を腰よりも下に向けてもう片手を添えた。

「柳の奥義は常に必殺。生き残りたければ相応の覚悟を決めろ」

「…………」

アールマンは答えない。答えている余裕がないと言ってもいい。一瞬でも気を抜けば術式が崩れる。次の一手で殺すと宣言している相手を前に、長々と詠唱している余裕はない。今編んでいる術で戦闘を終わらせなければ生き残れる保証はない。

「『柳薙ぐ雪の路』──参る」

突進。

歩数少なく急速に距離を縮める様は駆けているというより跳んでいると言った方が正しい。

「────」

シロが動き出すのを見てアールマンが言葉を紡ぐ。短縮詠唱。編んだ術式を足下から展開し、地面に魔力を叩き込む。一手違えば黒槍がその身を貫く。

地を蹴ったはずのシロの足が地面に沈んだ。体勢を崩したシロが感じたのは、まるで沼に踏み込んだような緩やかな落下。一瞬の後、地面がシロの片足を飲み込んだまま硬さを取り戻した。

よし、とアールマンは拳を握った。

アールマンが行使したのは軟化の魔術。それも神槍の影響を受けないようシロの踏み込む地面の表面だけを取り残すように、繊細な操作を加えていた。強く踏み込まれた足場は緩んだ地面に沈み込み、シロの足を纏ったところで神槍の権能によって魔術による変質を解かれる。もしかすると軟化した一瞬では突進の勢いを殺しきれずにシロの足に何らかの痛手を残す可能性もあったが、足の一本であれば治せないことは無い。結果的にシロの機動力は削げ、あとは再び粘液で固めれば戦闘は終わる。

しかし、その目論見は半ばまでしか成功しない。

あくまでもシロを捕縛する事を優先したアールマンだったが、それでもシロは止まらなかった。

片足を固定されたシロは、残った足で固まった地面を強く踏みしめることで崩れた体勢を無理矢理建て直し、アールマンを強く見据えて神槍を投擲した。

「なっ……ぐっ」

予測していなかった反撃に回避は間に合わず、神槍はアールマンの左腕を掠めて全ての魔術を破壊する。

「言っただろ……。相応の覚悟を決めろって……」

埋まった足を無理矢理引き抜き、靴も脱げて傷にまみれた足で地面を踏みしめながらシロはアールマンに歩み寄る。

「……不味いな」

神槍をその身に受けた影響か、魔力が操作できない。ようやくシロが神槍を手放したというのに、扱えるのは手元にある剣一本のみ。横目でミンス卿を見るが、彼はアールマンの不調に気付いていないのか土塊と化したルリに何事か吹き込むことに執心している。

──使えないやつめ。

心中で毒吐きつつシロの動きに注視する。

想定以下ではあっても脚力を削る事には成功した。しかしこれまでの挙動を見る限り、シロは傷を負っていようとも動かす事に躊躇いがない。満身創痍に見えても無理を通して攻め寄せてくるだろう。

「──『鬼灯』」

シロの姿がぶれる。一瞬見失いかけるが、常よりも動きが鈍くなんとかその行方を追うことが出来た。持っていた剣を逆袈裟に振り上げて牽制する。しかし、

「未だ侮るのか……!」

苛立つように呟いたシロが振り上げられた剣先を片腕で弾き、空いた拳でアールマンの腹部を殴打した。

「く、はっ」

こみ上げる気配に息を吐く。反射的に体を折り曲げたアールマンの腹部をシロが膝で蹴り上げる。

堪えきれずに吐瀉するアールマンを後目に、シロは転がっていた神槍を拾い上げる。

「魔王、僕はあんたが嫌いだ」

アールマンの横腹を蹴り上げ、仰向けに倒れたアールマンの胸を踏みつけて眼前に神槍を突き付けた。

「人を騙すし、嘘を吐く。最後までこの身を侮った。好きになれる要素がひとつも無い。姉さんに関しては義理があるけど、もういい。仇は自分で探す。あんたは、もういい」

荒く息を吐きながら、アールマンは見上げる黒色の切先に死の影を幻視する。

死ぬのか?ここで?道半ばで?何も為していないというのに?無為に、残して、死ぬ?

──良いの?

良いわけがあるか。まだ死ねない。死ぬ訳にはいかない。死んでなるものか。

胸の内に巣食う粘性のある感情が鎌首をもたげる。何の為に今日まで生きてきた。何の為に多くを巻き込んで戦ってきた。何の為に大事なものに嘘をついてきた。こんなところで死ぬ為か?断じて否だ。

──どうする?

考えるまでもない。手は尽くした。ならば、もう手段を選ぶ必要は無い。

──呼べばいい。命じればいい。そうすれば、助けてあげる。

「繋げぇ!エヴァァ──!」


「仕事の時間だ。起きなよ──『眼』」


アールマンが叫ぶと、胸元の隠しから溢れ出した銀糸がシロを巻き込んで二人を包み隠すような繭を作った。そして時が逆戻るかのように解けていき、最後にはシロもアールマンも何も残さずに消え去った。


銀繭から吐き出され丘陵を転がったシロが見たのは、奇妙な空間だった。冬が終わるまで今しばらくかかるというのに春のような陽気に満ち、地面には草原を思わせる草花が絨毯のようであった。見上げればここが洞窟かそれに類するものであろうことは分かったが、それよりも気になるものが空間の中心部にあった。

そびえ立ち空間を照らすように光る大樹の前で、見覚えの無い女がシロを見つめていた。

「エヴァは見てた。アールマンはね、本当に頑張ったんだよ。お前を殺さずに手元に置いておくために頑張ってた。可哀想なアールマン。その思いは伝わらず、結局こうなった」

背後から、ぎぎぎぃと鉄を擦り合わせるような音がした。

「もういいは、お前の方。大人しくアールマンの差し出した手を取っておけばよかったんだよ」

振り返ると、シロの身の丈よりも大きな銀色の球体にくっついたとんがり帽子が、明滅する紅点をシロに向けていた。

「アールマンが目覚めたらまた煩いしさ。今のうちに死んでね」

女の言葉に呼応するように、紅点が輝いた。

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