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第一章 ~竜翁、来る~

漁村から本城に帰還したアールマンは、すぐに軍議を開いた。

集められた諸官は、これからの国庫運営の話だろうと思っていたのだが、アールマンから議題を発表されて皆一様に唖然とした。

「近い内にハイビスと戦争になる。なにか意見はあるか」

前置きもなくそう言われて、即座に答えられるわけがない。

しかし隣同士で顔を見合せて困惑する面々の中に二人、挙手し発言を求める者がいた。

一人は軍部最高司令官であるリィン。

もう一人は、イーヴィス内外の政の顔であるファルン卿だ。

二人は互いに視線を交わし、年功序列を意識してかリィンが手を降ろしてファルン卿に発言を譲った。

「ファルン、何かあるか?」

「恐れながら陛下。唐突にハイビスと戦うと仰られましても、皆が皆経緯を知っているわけではございません。説明を賜りたく存じます」

もっともな意見に、大多数が頷いた。それを見てアールマンも頷き、馬車の中でプーシ卿とシロにした話を簡単に説明した。

先に『戦』という言葉を出したことで全員が緊張感を持って説明を聞き終え、すぐに議論が始まった。

「陛下の仰る通りならば。ハイビスが力を蓄えていることは明白。いずれは二十年前と同様に、グランへと攻め入ってくるぞ」

「しかし、表向きには何も起こっていない内に、好戦的になるのは如何かと。まずはハイビスとの話し合いの場を設けては」

「何を言う。奴等が話が通じる相手だと思っているのか?二十年前の戦を知らないからそんなことが言えるのだ」

「だが時は流れた。ハイビスの者も大人しくなっているやもしれん」

「二十年もの間、エンピスの魔力を奪っていたのだぞ?牙を研ぐという言葉を知らんのか」

「馬鹿にするでないわ。そもそも、エンピスの魔力がハイビスに流れているというのは事実なのですかな?」

「貴様、陛下を疑うつもりか!」

「穿った様な見方をするな!可能性の話だ!」

次第に熱を帯びていく軍議の間に冷や水を浴びせるように、リィンが拳で机を叩き、そのまま挙手した。

「どうした、リィン」

アールマンも傍観をやめてリィンに発言を促す。

「はい。ハイビスと戦になったとしても、我が国とハイビスの間にはウルク湖とセペレ山脈があります。戦の為にウルク湖を渡ろうとすれば、イスカを刺激することになりかねません。セペレ山脈を越えるにも、我が国からの山越えは事実上不可能ですので、グランを経由する必要があります」

セペレ山脈は海からウルク湖にまで連なっている。イーヴィスとハイビスの間は特に勾配が急で危険も多く、数多の山を制覇した登山家でも避けると言われているほどだ。

セペレ山脈を越えるには、山道のあるグラン側から向かうしか方法はない。

ちなみに海路について誰も触れないのは、グラン公国沖の海は暗礁が多く、軍隊を運ぶような大型の船の航行は無理だからだ。

「確かに。同盟国とはいえ、無断で通るわけにはいかないな」

なるほど、とわざとらしく頷くアールマンに、リィンが更に進言する。

「これはイーヴィス一国で方針を決めていい案件ではありません。同盟三国での会合の場を設けてはいかがでしょうか」

「……ふむ。ファルンはどう思う?」

思案する素振りを見せ、ファルン卿へと話を振る。意見を求められるだろうことは分かっていたのか、ファルン卿は悩む様子もなく頷いた。

「私も将軍の意見に賛成致します」

「そうか。他に意見のある者はいるか?」

声をかけるが、手を挙げる者はいない。全員賛成と判断し、アールマンはファルン卿に指示を出す。

「ファルン、エンピスとグランに使者を出せ。出来るだけ早く会合を開けるよう尽力しろ」

「はい」

恭しく頭を下げるファルンに頷き、続いてリィンへと顔を向ける。

「リィンは戦の支度を整えろ。ハイビスに悟られないよう、慎重にだ」

「はっ」

「他の者も二人に協力しつつ、己の役目をこなせ。解散だ」

大雑把に出された指示をこなすため、リィンとファルン卿が数人に声をかけて軍議の間から出ていく。

アールマンは瞑目して部屋から人気が去るのを待ち、他に誰も居なくなったのを確認すると長息を吐いた。

「ここからだ……。やっと、ここから……」

半年を忍び待ち、さらに行動を起こしてさらに半年を費やした。

ハイビスを相手にするには問題ない程度には、国力も回復している。ウルク湖の汚染という想定外の事件もあったが、代わりに得難い人材を引き入れられた。

今の状況は悪くはない。

「………………」

気にかかるのは、ハイビスと交戦状態になった後のイスカとアロットの動きと、禁域に踏み込んだ魔術師の存在くらいか。

アロットは中立主義だから積極的に関わってくることはないだろうが、イスカは請われればハイビスに味方するかもしれない。ラピス大陸で唯一の内陸国であるイスカにとって、ハイビスは大事な交易相手だ。彼の国が落ちれば、イスカは塩などの重要な海産資源を得る手段を失うことになる。それはなんとしても避けたいはずだ。

魔術師に関しては、全く情報を得られていない。

禁術に侵された魔物の遺体は下手に手をつけると瘴気が噴き出すため、迂闊に解呪作業を進められずにいるのだ。実験内容に目星はつけているものの、調査が進まなければ特定は難しい。

「イスカが傍観を選び、魔術師がハイビスに在籍していれば楽なんだろうがな」

そう上手くはいかないかと一人苦笑する。

少なくとも、イスカが動きを見せないということは考えられない。

交易の事情もあるが、それに加えてハイビスをイーヴィスが制圧したなら、イスカはイーヴィス勢力に西南を押さえられることになり、そうなればいざ戦となった場合、劣勢を強いられることになる。

言い方は悪いが、ハイビスには盾となってもらわなければ都合が悪いのだ。

「となると、今回は拙速に事を運ぶべきか」

イスカは〝鳥の国〟という名が示す通り、翼を持ち飛行能力を備えた者が多い。獣の如く地を駆ける獣人族と対峙しながら相手をするには、いささか面倒な手合いである。

イスカが態勢を整えて介入するよりも早く、ハイビスと決着をつける必要がある。

「さて、先手を打ちきれるかな」

最後にそう呟き、アールマンは打てる手を打つべく軍議の間を後にした。

エンピスとグランに使者を送った七日後、アールマンは執務室にて、使者が持ち帰ったエンピス国王ブランからの返書を手にしたまま、額に青筋を立てていた。

「…………あの昼行灯め」

頬を小さく痙攣させながら書状を握りしめる。

しわくちゃになった書状の内容を要約すると、こうだ。

『事情は分かった。細かいことは任せる。名代としてシアンを向かわせるから、好きに使ってくれ』

丸投げである。これを受け取ったのがアールマンでなくとも、地平線の向こう側の相手を罵りたくもなるだろう。

「馬鹿かあいつは。三ヵ国会議だと言っているだろうが。代表が集まらないでどうする。お前が出なければエンピスが侮られることになるぞ。本当に、馬鹿なのかあいつは!」

しまいには書状を机に叩き付けて、荒く息を吐く。

今からでも、もう一度使者を立てるべきかと頭を悩ませるアールマンの元に、グランへと赴いていた使者が更なる頭痛の種を運んできた。

執務室へ迎え入れた使者から話を聞いたアールマンは、使者を下がらせて瞑目し、深く、それはもう深く深呼吸をした。

「どいつも、こいつも……」

腹の底から怒鳴り散らしたい気持ちをなんとか押さえ込み、アールマンは執務室を出た。

急ぎ足で階段を下り、中層階にある応接間への扉を開く。

「アルク公!」

応接間へ入るなり名を呼ぶアールマンに、侍女と雑談に興じていた巨岩を彷彿とさせる老人が視線を向けて手を挙げる。

「おう、邪魔しとるぞ」

「邪魔しとるぞ、じゃないだろう!どうしてここにいる!」

「煩いのぅ。お前が呼んだんじゃろうが」

「まだ呼んでいない!都合の良い日取りを伺っただけだ!」

「同じじゃろ。そもそも、書簡のやり取りなぞ面倒なだけじゃい。直に話した方が早かろうよ」

「だから、その為の予定を……、ああ、もういい」

「かっかっか」

既に来てしまったのだから言うだけ無駄だと、肩を落とすアールマンを見て呵呵と笑う老人の名はアルク・アンブル。

細く横に伸ばした髭が特徴的なこの老人こそ、〝竜の国〟グラン公国の主にして〝竜翁〟とも称される竜人族の長老である。

齢七十を越えてもなお衰えぬ肉体は、数百年を生き抜いた大木のような存在感があり、一度大公として玉座に座ったならば、その佇まいだけで見るものを圧倒する……のだが。

「いや、それにしても。イーヴィスは良い女中衆を雇っておるのぉ。眼福じゃ眼福じゃ」

今現在の、苦笑いを見せる侍女に目尻を垂らす姿には、威厳の欠片も見当たらない。

「…………下がっていいぞ」

「は、はい」

アールマンが許可を出すと、侍女はそそくさと応接間から出ていった。

「おお……」

名残惜しそうに情けない声を出すアルクを、アールマンが半目で見ながら対面の椅子に腰掛けた。

「年を考えろ。そんな感じだから、ユウリから『やらしい』と言われるんだぞ?」

「儂、愛娘からそんな風に見られておったのか?」

「日頃の行いのせいだろう。……はあ」

心外とでも言うつもりか、目を丸くするアルクにアールマンは嘆息した。そして応接間に、アルクの他に誰もいないことに気付く。

「そういえば、娘を一人同行させていると聞いていたんだが?」

「フウリならユウリの顔を見に行ったぞ。ユウリのやつ、自分から顔を見せに帰ってこんからな」

フウリというのは、アルクの三人娘の長女だ。末妹であるユウリとは親子ほどに年が離れているが、姉妹仲は良いらしい。

フウリは元は長子であった長男の補佐官として働いていたが、二十年前の戦でその長男が戦死してからは父の側で働いている。

四十を越えてもなお若々しさを保っており、二人いる息子も武官として活躍していると聞く。

「なんだ、次女は置いてきたのか」

「流石に誰かは残っておらんとな。そもそもアイリは二人目が生まれたばかりじゃ。遠出は難しかろうて」

次女のアイリも、姉であるフウリと同じくアルクの補佐官である。

彼女はグラン公国の財政を取り仕切っているため、取引相手であるアールマンともよく顔を合わせていた。

ちなみに年は二十六と姉とも妹とも離れており、家族の中では一番穏やかな性格をしている。

「なんじゃお前。ユウリに手を出さんと思っておったら、アイリの方が好みじゃったのか?そういうことはもっと早く言わんか」

「なぜそういう話になる。そうじゃなくて、あんたや長女より次女の方が話が通じやすいんだよ」

今みたいにな、と心の中で付け足す。

アイリは年がそう離れてもいないことから、幼い時分にはよく遊んでもらっていた。だからといって尊敬はしていても恋愛感情を抱くようなことにはならず、今でも茶飲み仲間程度の良き付き合いをしている。

アールマンの話を聞いているのかいないのか、アルクは思い出したように膝を叩いた。

「そうじゃ、ユウリじゃ。なぁぜにあやつに手をつけんのだ。親の欲目ではないが、あれはいい女になるぞ?今でも結構な上玉じゃろうに」

「あれに手を出したら、俺はいろんな意味で終わる気がするんだが」

「何を言うか。昔はあれくらいの年で輿入れするのが当然だったのだぞ?」

「昔は当然でも今では異常なんだよ。いや、異常とまでは言わないが」

王族の血筋を守るため、幼くして婚姻の契りを結ぶことはよくあることではある。しかし、だからといって起伏に乏しい少女に手をつけるというのは、どうにも抵抗がある。

「まあよい。据え膳に手をつけぬというなら、膳自らが口に飛び込むまでのことよ」

「……何をするつもりだ」

怪しげな物言いにアールマンが睨むと、アルクは素知らぬ顔で「それにしても今日は天気がよいのー」と窓に顔を向けた。

アールマンはまた嘆息する。

「はあ……。……あんたがグランを俺に預けようとしているのは分かっている。だが俺にそのつもりはない。竜人族の土地は竜人族が治めるべきだろう」

アールマンの様子にふざけるのも終わりと見たのか、アルクも大きく息を吐いた。

「儂には三人の娘がおり、さらに孫は四人にもなった。しかし、そのどれもが補佐には向いておるが国を治める器ではない。儂の眼鏡に叶ったのは、お前しかおらんのだ」

「まだ望みはあるだろう」

生まれたばかりのアイリの子は男児と聞いている。その赤子に期待を掛けてもいいのではないか。

「儂とて不死身ではない。先代の魔王夫妻に人間族の王が、この一年ほどの間に世継ぎに後事を託す前に没しておる。儂の息子も、子を成す前に戦場に倒れた。儂もいつ、どこで死するか分からん」

そうなる前にと、焦る気持ちを説くアルクに、アールマンは首を横に振る。

「それでも出来ない。俺にはやることがある。グランの面倒までは見きれない」

「その『やること』に関しては、やはり何も言わぬのか」

「……」

無言で頷いたアールマンに「そうか」と息を吐いて、アルクは腕を組んだ。

「まあよい。お前が何を企んでいようとも、儂はお前の味方じゃ。信用に足る証は既に渡してあるしの」

「企むとは人聞きの悪い、と言えない辺り、耳が痛いな」

頭を掻くアールマンを見て、アルクは口を大きく開けて笑った。

「かっかっか。──ともあれ、ユウリのことは頼んだからの」

「頼むって、問答無用に押し付けられたんだが」

「なんの気兼ねもなく手を出せるようにと、気を使ったんじゃろうが。なのにお前ときたら」

呆れてみせるアルクに苦笑し、アールマンは肩をすくめて図星であろう言葉を放つ。

「そうやって既成事実を作らせて、あわよくばそのまま俺にグランを押し付けようと考えていたんだろ?」

「……そんなことは、ないぞ?」

アルクがわざとらしく顔を背けるのとほぼ同時に、事前の声かけもなしに応接間の扉が開かれた。

「失礼するわよ」

入室してからそう言ったのは、先も話題に上がっていたアルクの長女、フウリだった。

三つ編みにした白銀色の髪を揺らしながら、フウリは不機嫌そうに眉を歪ませながらアルクの元まで歩み寄り、座っている父を見下ろした。

「お父様、ユウリを政治の道具になさったの?」

「お前、挨拶はちゃんとせぬか。というか、立ち聞きしておったな?」

「入ろうとしたら聞こえただけよ。それで、どうなの?」

悪びれもせずに質問を重ねるフウリに、アルクはため息を吐いて首を振った。

「そういう思惑も無かったとは言わん。だがな、儂はユウリの気持ちも慮って──」

最後まで喋ることは叶わず、アルクは座っていた椅子ごと張り倒された。

「最っ低!女にだらしないとは思っていたけど、まさか道具程度に思っていただなんて!」

金切り声をあげるフウリに、起き上がったアルクも声を荒らげる。

「お前は、話は最後まで聞けと何度言えばわかる!いきなり手を出す奴があるか!」

「お父様のせいでしょう!?」

「儂のせいにするな!儂の若い時分でも、お前よりは堪え性があったわい!」

「何よ、その言い方!この好色爺!」

「お、親に向かってその口の聞き方はなんだ!」

「娘の尻触る親がまともに扱われるなんて思わないでよ!」

力比べをするように両手を組み、顔を突き合わせて口喧嘩を始めた親子に、アールマンは盛大にため息を吐いた。

アールマンが長女を不得手とする理由が、これである。

フウリは昔から、人の話をよく聞かずに早とちりを起こし、結果的にこうしてアルクと喧嘩している。

丁寧に説明すれば理解を示してくれるのだが、少しでも言葉を間違えると暴走を始めるのだ。

しかし彼女は人材の育成には秀でており、早とちりという短所さえ除けば、それなりに優秀な官吏である。

……短所さえ、なければ。

「はぁ……」

もう一度嘆息し、アールマンはこの口喧嘩をどう終わらせるか模索し始めた。

四半刻ほどかかったものの、二人をどうにか落ち着かせ、席に着かせた。

「お見苦しい所をお見せ致しました」

「かまわない。いつものことだ」

頭を下げるフウリの謝罪を聞き流し、アールマンは二人が揃ったことで丁度いいと、ブランの欠席について知らせた。

「ふむ、まあよいのではないか?」

「というと?」

「エンピスが動かぬとなれば、イスカも背後を警戒して迂闊に動けなくなる。新米坊主にしてはいい牽制の仕方じゃと思うがの」

アルクの見解を聞き、一度はアールマンも頷く。しかし、それとこれとは話が別だろうと反論する。

「今回は事前の打ち合わせのようなものだ。イーヴィスとグランの代表が既に集っているというのに、エンピスだけとなると」

「身内が侮らなければ問題なかろう。それに、名代として将軍一人を差し出すと言うておるのじゃ。不足はなかろう。──そもそも、これは密談に近いものじゃろうに」

「……それはそうだが」

言葉に詰まるアールマンに、フウリが小さく息を吐く。

「魔王陛下、友の身を案じるのは悪いことではありませんが、此度は無理に引っ張り出すよりも相手の言を聞き入れ、事を迅速に運ぶべきだと思いますわ」

その通りだとアルクも頷き、アールマンも仕方なく首を縦に振った。

「ふう、そうしよう。すぐに使者を送る。二人には客間を用意させよう」

「うむ。……ああ、先に言っておくが、ハイビスに何かしらの動きが見られたら、グランから使いが来る手筈になっておるからな」

「わかった。通達を出しておく」

「しばらくの間、よろしく頼みますわね」


その夜、アールマンにとってこの日最大の危機が訪れた。

アールマンが床に就こうと寝台に入ろうとした頃になって、いつもより少し遅くにユウリが部屋に入ってきた。そしてそのまま寝台に寝転がり、布団の中で丸くなった。

そこまでは毎日のように繰り返されたことなのだが、この日に限ってはその先があった。

アールマンが寝台に入って明かりを消すと、すぐ側でもぞもぞと動き出す気配がある。寝心地でも悪いのかと大して気にも止めなかったのだが、すぐに左腕に違和感を覚えた。

布団をめくってみると、アールマンの左腕にユウリが抱き着き、体を擦り付けるように軽く上下運動していた。

「………………おい」

「ん?」

「何をしている」

そういえば昼間の会話で怪しげな文言があった気がするな、と思い返しながら、首を傾げるユウリに訊ねる。

すると案の定、ユウリの口から予想していた人物に近しい名前が飛び出した。

「姉様が、こうやって女の体を意識させたら男は興奮するって」

「……真に受けるなよ。寝づらいから離れろ」

左腕を揺り動かしてユウリを引き剥がす。

ユウリは想定外とでも言うように首を傾げていたが、彼女は一つ重大な問題を失念している。

まだ『女』と呼ぶには時を要するような体を擦り付けられても、男はそこまで興奮しない。

アールマンは明日の朝にでもフウリに苦情を言いに行こうと決意しつつ、目蓋を下ろした。

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