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悪いのは

 目に映るのはたくさんの人、耳に届くのは町の中ならどこでも聞こえるような喧噪、鼻につくのは土や草の匂いだと思う、そして今俺がいるのは・・・春日山城の城下町だ。

 つい先ほど、本当に今さっき春日山城の城下町に帰って来た。

 初めてこの城下町を見て回った時にはこの背格好のせいで周りから随分と見られたものだが、今はそうでもない。

さすがに俺も国主の夫だと知られるようになってからは背が高いことはそこまで気にされることもなくなった。しかしながら、それと引き換えに話しかけてくる人は減ったし、接し方もかなり国主の夫に対する接し方に変わってきてしまったのは残念なところだ。まあいくらでも例外はいるのだが。

 着いてすぐの俺は、初めて俺が町歩きをした時の周りの人たちと同じようにちらちらとそこかしこをチラ見しまくった・・・らしい。

 理由は簡単・・・だったらしい。俺自身にはそもそもちらちら見ていると言う自覚自体がなかったから理由も何もなかったのだが、周りから見た俺はそれはそれは分かりやすく不審者だったようだ。

 そして周りが言うに、見ていた理由は「景虎を探していたから」とのことだ。

 そりゃ確かに会いたいが、何もこんな町中で会おうと思っていたわけではない。それにこんな人がごった返しているようなところで、たった一人の目的の人物を探し当てるのは簡単なことじゃない。どうせ会うとしたら春日山城ということになるだろう。

 そして結果として、俺のチラ見は何の成果もあげられはしなかった・・・が、意味はあったようだ。

 いつの間にか俺たちから離れていた段蔵が、あの日の茶屋で景虎が一人でお団子とお茶を冷やしているのを見つけてくれた。

 景虎に先触れを出したのは昨日、鮫ヶ尾城にいた時だ。

 結局旅の疲れからか思うように旅路を進むことができず、鮫ヶ尾城で一泊することになった。その時に鮫ヶ尾城から春日山城に先触れを飛ばしてもらったのだ。

 一応内容としては、「明日には着くと思うよ」と随分とあやふやなことを言ってしまったと思うのだが・・・まさか待っているのだろうか、あの茶屋で。

 嬉しいとは思いつつも、城で待ってろよと言う呆れも露にしながら、俺は皆と別れてあの日の茶屋に向かって走り出した。


 段蔵の報告によると景虎はここでお団子とお茶を冷やしているそうだ。

 とりあえずあの日の茶屋の前までやって来た。

 冷やしていると言うことは待っていると言うことだろうか、さらに言うと長時間待っていると言うことだろうか。

 俺は今日着くかもしれないと伝えたつもりだ、間違っても朝の内に着くとは言っていない。

 と言うか今は何時くらいなんだ? 太陽の位置が微妙すぎる、巳刻みのとき、10時くらいだろうか? だとしても10時って朝と昼どっちだよ。

 まあ今の時間なんてどうでもいいか、今考えているのは景虎がいったいいつから待っているんだろうかと言うことだ。

 俺が皆から離れてここに着くまでにかかった時間はよそ五分。

 段蔵はお団子とお茶を冷やしていると言っていた。

 そして今俺が店の中をのぞいてみたところ、確かに中には愛しの奥さん、長尾景虎の姿があり、その隣にはお茶とお団子があった。そんでもってあのお団子とお茶は間違いなく冷えている。

 んーどっちだろう、段蔵はお団子とお茶がすでに冷えているから冷やしていると言ったのか、それとも俺を待って冷ていってしまうから冷やしていると言ったのか、どっちだ?

 見ただけではどのくらいの温度なのかはわからないから、段蔵が来た時にはまだ出来立てで俺がここに来るまでに冷えたと言う可能性だってある。だから分からない。

 いや待て、そもそもあのお団子は最初の一本なのか?

 景虎のことだ、下手をしたら本当に朝っぱらから待っていたりして、すでにあのお団子が十本目とか言う事態も・・・さすがにないか、自惚れてるな。

 そしてそんなくだらないことを悩んでいたら気づくのが遅れました・・・さっきまで店の中の腰掛に座っていた景虎が、俺とくっつきそうなくらいの近さで正面に立っていた。

「・・・ただいま」

 さすがにちょっと驚いて言葉が出るのが遅れてしまった。

「・・・」

 何も言わずに景虎が店の中に戻っていき、さっきまでいた場所に腰を下ろす。

「・・・」

 恐らくは隣に来いと言っているのだろう、何も言わないししないしで正確なことは分からないが、なんとなく雰囲気でそんな感じがする。

 だからまあ俺も何も言わずに景虎の隣に座ったのだが・・・。

「・・・」

「・・・」

 何か反応してほしい、こっちから何か言うのもなんか違う気もするし・・・。

「ただいま」

 でもとりあえずこれだけ言っておこう、さっきも言ったけどもう一回ちゃんと言っておこう。

「・・・」

 しかし景虎からは特に何の反応も帰ってこない。労うでも喜ぶでも怒るでもなく無反応、これは困る。

「・・・あーーーー! がう!」

 何かわからないが景虎が突然吠えて、団子をいきなり全部口に押し込んだ。そして喉にでも詰まらせたのか急に苦しそうな表情を見せたが、俺が動くより早く自分でお茶を飲んで危機を脱していた。

「・・・遅い!」

 何が? こっち見て行ったのなら俺が帰ってくるのが遅いってことで確定なんだけど、目の前の壁を見ながら言うものだからいまいち意味が・・・そんなことはないな、俺が帰ってくるのが遅いって言いたいんだろうな。

 まあなんとなくの想像だが間違ってはいないだろう、景虎が団子が出てくるのが遅いとかそんなことで腹を立てることもないだろうし。

仮に腹を立てたら叫ぶ前に出て行ってると思う。

「言うことは!」

 今度はこっちを見て言ってきた。

 さっきすでにただいまは言ったから他の言葉だよな? 何だろうか?

「会いたかった」

「・・・ぅ~・・・違う!」

 違ったみたいだ、だけど俺の言葉に納得していないながらも、若干の嬉しさを隠しきれていないからこれが可愛く見えてしまって仕方がない。

「えっと・・・ご」

「遅くなったの一言くらい言えないの!」

 だから今ごめんって言おうとしたんだよ、悩んで言うのが遅れてごめんなさいでした!

 でも遅れてごめんじゃなくて意味が分からないですごめんなさいって意味だったから結局変わらないけどね。

「遅くなってごめん、ちょっと・・・いや、今回の旅のこと、ものすごく甘く考えてた。こっちの基準で考えなきゃいけなかった。誰よりも、大切な奥さんたちのことを考えて行動するべきだった。一個人として、夫として、本当にごめん」

「分かれば・・・いいのよ」

 そう言って景虎がこっちを見ずにお団子を差し出してくる。

 だからお手も何も言わずに団子を食べる。

「美味しい」

 とも思ったが美味しいものは美味しいのだ、仕方がない。

 さて、次は俺の番。

 そう思ってお団子の乗っていた皿に目を移したのだが、そこにお団子はなかった。

「・・・ほら」

 お団子はまだ景虎の手にあった、そして先ほどと同じように俺に差し出されている。

 ちょっといつもと違う流れに戸惑ってしまったが、景虎がそうしたいのならそれでいいだろう。

 と言うわけでとりあえず二つ目を食べた、美味しいです。

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「何か言いなさいよ!」

 ええ怒られた⁉

 いやまあ確かに何か言うべきだったのかもしれないけど・・・。

「うがーー!」

 そしてまた景虎が串に残っていたお団子を口に押し込んだ。

 これはやけ食いと判断してよいのだろうか? 何に対してやけを起こしているのかが分からないからいまいち対処できないのが困ることろだ。俺が原因であることは間違いないと思うのだが。

 にしてもやけ食いか、もし俺のいない間にも景虎がこんな感じでやけ食いしていたら・・・そうじゃなくても、この先の各国の往復の間に景虎がやけ食いのせいで・・・。

 とか何とかちょっと悩んでみようかとも思ったがそんな心配はないだろう。だって景虎だ、やけ食いするくらいなら刀の一振りでもするだろう。その一振りがどこに振り下ろされるのかはわからないが。

 と言うか景虎にしても晴信にしても俺からしたら少しばかり痩せすぎていると思うわけだ。何ももっと肉をつけろとかそんなことは言わないが、別にここから多少・・・そうだな、5kgくらい太ってもたぶんより健康的に見えるくらいで、間違っても太って見えるなんてことはないからむしろもう少し肉をつけてもいいかもしれない。

もちろん俺は今の景虎や晴信のことが好きで夫婦になったのだから今のままでも全然かまわないどころかこのままで変わらないでほしいくらいではあるのだが。

 そして気がつけば無言で俺たちの間に新しいお団子を置いていくおばちゃんが。

 くそう、あの人も忍びだったとは! 絶対に忍だ、間違いない、あんなふうに人の目の前に立って用を済ませるまで目の前の人間に一切感づかれないとか普通のおばちゃんにできるわけがない!

 でまあそんな与太話は置いておいて、こっちも気がつけば目の前にお団子を差し出している景虎さんが。

「・・・」

 この調子でいくと景虎がお団子を差し出す、俺が食べる、おばちゃんがお団子を補充する、ということを周回してしまいそうな気がするから言葉を挟もう。

「いつまで続ける気だ」

「・・・私が満足するまでよ」

「そんなことしていたら日が暮れるぞ」

「あんたどんだけ食べるつもりなのよ!」

「お前が満足するまでだろ?」

「あんたがお腹いっぱいになって歩けなくなったらおぶって帰ってやろうと思ってたのよ!」

「いやーそれはー・・・俺がおぶるならともかく、おぶられるのはちょっとごめんだなー」

「うっさい! あんたは黙って言うこと聞いてればいいのよ! 私のために尽くしていればいいのよ!」

「・・・今日は随分と積極的だな」

 ちょっと景虎の剣幕に驚いた。まさか景虎が自分から「私のために尽くしていればいい」とか自分の願望丸出しのことを言ってくるとは思っていなかった。

「・・・あんたが・・・悪いのよ」

 そんな寂しそうに言わないでくれ。

「あんたが、私を一人にしたからいけないのよ」

 そんな寂しそうな顔でそんな苦しいことを言わないでくれ。

 まさかこんな風に言われるとは、想像もしていなかった。

 景虎がこんなにも弱々しい面を見せてくれたことは嬉しくもあるのだが、それよりも、やっぱり奥さんにこんな思いをさせてしまったと言う自責の念が強い。何か・・・。

「何か言いなさいよ!」

 怒られたー!

 え、ここは神妙な空気になるところだったんじゃないの? すぐに返すべきところだったの?

「いや、えっと・・・」

「ほら・・・食べなさいよ」

 そして今さっきの剣幕は何処へやら、また急にしおらしくなってしまった。もちろんお団子は俺の口の前に差し出されている。

「・・・美味しい」

 さっき何も言わなかったら怒られたのでこれだけでも返しておく。

 と言うかこれが素直な気持ちだからこれ以外に言うこともない。

 強いて何か言うとしたら「幸せだ」とこれに尽きるだろう。

「いい、何度も言うけど、悪いのは私じゃないのよ? 悪いのはあなたなんだからね?」

「はいはい分かりました分かりました、悪いのは俺ですね、分かったからもう言わなくていいから」

 もう何でもいい、これで景虎が満足するのなら、ついでに俺も大満足なのだからこれでいいのだ。

「うっさいわね、あんたは黙ってなさい」

 黙っていたら怒ったくせに。

 目の前にあるのはお団子、そのお団子の串を持っているのは俺ではない。

 お団子から串へ、串からその串を持っている手、そして腕をたどって俺の目の前にお団子を差し出している人物を見る。

 高貴さや気高さを表すような長く艶やかな白銀の髪。意志の強さ、己の存在を誇示しているような真紅の瞳。俺の持つ貧相な語彙力ではこの程度しか表すことができないのが悔しいと本気で思える美しさ、可愛らしさ。

 可愛い人、美しい人ならいくらでもいるだろう。しかしその中でも頭一つどころか二つ三つと飛び出しているような人はそうはいない。

 だが幸運なことに、俺はそんな頭二つ三つくらいなら余裕で飛び出しているような女の子に何人も出会うことができた。

 その一人、甲斐国主・武田晴信。信長が最も恐れたと言われる人物で、分国法の制定など内政にも優れており、諸豪族がひしめき合っていた信濃を統一し戦国最強の騎馬軍団を作り上げ将軍足利義昭の要請を受け上洛を開始、三方ヶ原の戦いで松平家康こと後の徳川家康を破った、稀代の名将だ。

 またその一人、相模国主・北条氏政。一度は敵国に本拠地である相模の小田原城にまで攻め込まれるがこれに耐えきり、そののちに奪われていた領土を取り戻すだけでなく関東一円を支配下に置き北条家の最盛期を築き上げた、こちらもまた稀代の名将だ。

 そしてこれは幸運なんて言葉では済ませられない、いまだに夢ではないか、気がつけば消えてしまっているのではないかと思えるこの状況。先に名前を挙げた二人は、俺の奥さんだ。

 この二人と夫婦になれた、この一事の前には困難や障害と呼べるようなことは一つと無しに得ることができた幸せ。どうかこの幸せが、俺一人のものではなく二人のも感じられるものであれば幸いだ。

 そして、目の前で俺にお団子を差し出している女の子、この子もまたその一人、越後国主・長尾景虎だ。

 村上義清や上杉憲政などの外部からの要請に応え十三度にわたる関東への出兵、敵である武田の窮地に塩を送るなどの義を重んじつつも、生涯約七十ほどの戦を行いながら負けたのはたったの一度、手取川の戦いで織田方の柴田勝家を破り信長に「謙信公御上洛に尽きては、この信長が扇一本腰に差し京へ案内いたしましょう。信長は西国、謙信公は東国を治めることにしてはいかがでしょう」と言わせた、こちらもまた稀代の名将である。

 その長尾景虎こそが、俺の人生初の奥さんだ。

 そんな俺なんかでは隣に立つことはおろか、目にすることさえも許されないような人たちこそが、今では俺の自慢の奥さんたちだ。

「ほら、口開けなさい」

 少々ぶっきらぼうな物言い。これが照れ隠しだと分かっていると可愛くて仕方がないから不思議なものだ。

「好きあってる男と女だったら、こういう時は「あーん」って言いうものだぞ」

「うっさい、嫌ならやめるわよ」

 やめるつもりなんてないくせに。

 ちょっと調子に乗ってみたらこれだった、普通に可愛い景虎も見たいものなのだが。

「はいはいごめんなさい、俺が悪かったよ、やってほしくてたまらないからどうかお願いします」

 でもこう言っておけば、景虎が喜ぶことは分かっているから俺はこう答える。

「ほら無駄口叩いてないで、ほら」

 こんのやろう、人がお前の質問に答えてやったっているのに・・・まあ可愛いから許しちゃうんだけど。

 だって見て見ろって、景虎の顔赤くなってるんだよ、これはたぶんだけど自分でやっていることが恥ずかしいんだ。

 前にも言ったが顔を赤くしている女の子は可愛い。だけど景虎や晴信は自信があるからか何なのか、なかなか顔を赤くするようなことはない。だけど今目の前でそんな景虎が顔を赤くしてるんだぜ? 言いなりでも何でも、もっと見ていたいじゃないか。

「・・・美味しい?」

「ああ美味しいよ、景虎が食べさせてくれてるからとっても美味しいよ」

「うっさい馬鹿」

 そんな風に悪態をつきつつも俺の口の中が空になったと見るやすかさずお団子を食べやすい位置に持ってくる景虎、可愛い。

 いつかの茶屋でいつかと同じことをする、これが俺と景虎にとっての幸せ。

 何も特別なことはしない、普通に生活できている人たちなら普通に味わうことができる日常の一場面。

 これを聞いたら、世の人々は言うかもしれない、「くだらない」だの「わびしい」だのと。だけど俺たちはこれでいい、幸せなんて人それぞれなんだ、そう言う人にはその人なりの違った幸せがあるのだろう。

「・・・どっちがいい」

「何がだ?」

 景虎が急に何かしら選択を求めてきた。内容は分からないが、その拗ねたような表情から景虎にとってどっち選択をしても楽しいことにはならないのだろう。

「まあまずは選択肢を聞こうじゃないか」

 何にしても、どんな選択肢があるのかを知らないことには考えようもない。

「・・・選択肢を聞かないっていう選択肢もあるのよ」

 おお、それが許される状況なのですか? て言うかそんなことは考えていなかった。

「でもそう言うってことは、もうどうしてほしいのかとどうしたいのかは決まっているんだろ? 二つの選択肢を聞いて、見事景虎の考えと一致したら景虎は嬉しいんじゃないのか」

 ちょっと自惚れていると思いはするが、合っている自身があるから言ってみた。

「・・・もういいわ、そこまで分かっているのなら聞いたりしないわよ」

 そう言って景虎はさっさと出口に向かって歩き始めてしまった。

「おいおい、まだしてほしいこととしたいことが本当に当たるかもわからないし、俺がどっちを選ぶのかもわからないのにいいのか?」

 この問いかけをしたことは正しかったのかどうかは分からない、でもこの問いかけのおかげで・・・せいで? 久々に見ることができた。

「あら、まさか当てる自信がないなんて言わないでしょうね、夫なのに」

「・・・」

「まさか、私がしてほしいこととしたいこと、どっちを選んでほしいのかが分からないだなんてこと言わないわよね、夫なんだから」

「・・・好きにしろ」

「最初からそのつもりだし、あんたもそのつもりなんでしょ」

 俺には景虎の考えていることは分からない、だが景虎には俺の考えなど丸わかりなのだろう、嬉しいような嬉しくないような。

「ほら、さっさと来なさい。お代は景綱もちなんだから」

「はい、春日山城に行けば詳しいことは誰かが教えてくれると思いますので、さっさと行っちゃってください」

 いつの間にかお代の支払いを始めている景綱さんが店の入り口に立っている。真後ろとかではなかったから怖くはなかったが、やっぱり突然現れるのはやめてほしい。

「ほら、早くしなさい!」

 焦れた景虎が俺の前まで戻ってきて腕を掴み上げた。

「おい、分かったから! 自分で走るから!」

 無理やり立たされてバランスが悪い上に、残念なことにそもそも景虎の方が俺よりも足が速いという事実がバランスを整える時間を与えてくれない。

「せいぜい頑張りなさい」

 くそ、笑顔で言いやがって。

 結局憎たらしいとは思いつつも、俺の言葉はその憎らしくも可愛い景虎の笑顔に抑え込まれてしまって口を突いて出なかった。

俺は必死になって景虎について行く。

 景虎に手を引かれながら。


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