甲斐防衛 陸ー力試しー
「そちらの方が、若の仰っていた理想の殿方ですか?」
無事に評定の間にやってきて無事に評定が始まった。
くーちゃんに聞いたところ、ここにいるのは北条家の人間の中でも氏康に陶酔している人たちなんだそうだ。氏康が「氏政のことを頼む!」と言って、自ら信頼でき者たちを集めたら、氏政を次期当主と仰ぐ人たちはほとんど外れてしまったらしい。
「そうだよ、すごいの連れてきたでしょ」
くーちゃんが胸を張って自慢げに言う。
立場的にはそれなりにすごくなってしまったが、俺個人の能力を考えればそんなにすごくない。
「すごい、とはどこがどのようにすごいのでしょう? 聞いた話によれば、この輩は若が先日城を抜け出した際に連れて帰ってきた輩だとか、いくら若の仰ることでもそのような素性の知れぬ輩を夫に迎えるのは反対でございます」
昨日会った内藤さんが、まずはもっともなことを言ってくる。
それとは関係ないが、北条家のこともちゃんと調べていて、それなりの知識はあるはずだが・・・内藤ってだれ? さっきから頭に浮かんできているのは内藤昌秀だ。でもそれが違うのは分かっているから今は出てこないでほしい。
「内藤康行、私は確かにそのことについて話し合うつもりだったけど・・・」
くーちゃんの声が、さっきの自慢げの声から一点してどすのきいた低い声が響く。
「お前なんかが、私の夫のことを「輩」なんて呼ぶんじゃない」
瞳孔がかなり開いている、普段眠たそうな顔をしていて目が半分程度しか開いていないが、今その眼は完全に開き恐ろしい眼で内藤康行さんのことをにらみ続けている。
「も・・・申し訳、ありません・・・」
内藤さんの顔からは大量の汗が滝のように流れている。きっと俺が内藤さんと立場を変わったら、すでに気を失っているに違いない。
「・・・他の者も、気をつけるように」
場の空気が軽くなったのが分かる。くーちゃんが再びいつもの調子で話し出す。
「でだ、祝言を挙げたいんだけど、みんなはどうしたら認めてくれる?」
勝手に自分の夫を連れてきて、あれだけ高圧的な態度をとりながらも、不満を取り除くことを忘れてはいない。やり方も言い方も残念だが、頭の中では自分のことを俺なんかよりもよっぽど分かっているみたいだ。
「若、それは簡単なことです」
声のした方に目を向けると、いかにも武闘派といった風貌の、頭に白い八巻をまいた女の子がいた・・・嫌な予感しかしない。
「認めさせたいのなら力を示せばよいのです! では早速表に出て私とお手合わせください!」
「ん~・・・康広か~。やれそう?」
くーちゃんが俺に聞いてくる。
「一応刀を振ったことくらいはあるが・・・まだ実戦で試したことは無い」
景虎に稽古をつけてもらってはいるが、まだまだ日が浅い。こんな俺が、どう見てもバリバリの武闘派の康広さんに勝てるとは思えない。
てか康広って小笠原康広のことだよな? あの人って評定衆じゃなかったっけ? 確かに武者奉行ではあったけど、それでもこんな武闘派ではないと思うのだが・・・。
「経験があるなら1回でも100回でも変わりません。さあ、早く表へ!」
「いやいや、そもそも力を示すって、武を示すってことじゃないだろ?」
「「え?」」
え、じゃないよくーちゃんと康広さん。なんですか、2人とも脳筋ですか? 迷惑なんですよ、でもそういう人好きなんですよ。
「こういう時は拳で語り合うものじゃないの? 私は嫌だけど」
「自分がされて嫌なことは基本的に人にしてはいけないよ」
くーちゃんは俺のことを理解者と呼んでいたくらいなんだから、俺が拳で語るのが好きじゃないことくらいわかっていそうなものだが。
「でもやってくれるんでしょ?」
嫌な笑顔だよ、これは俺が断れないことを分かってて言ってるよ。
「負けても知らんからな」
「大丈夫だよ、なんだかんだやっても、最後は私の力で絶対に祝言を認めさせるから」
だったらどうしてこんなことをしているのだろうか。
「若、そんなことは認めませぬぞ。そのような暴挙に出たときは、こちらにも考えがありますぞ」
内藤さんが目を鋭くして言ってくる。北条氏政の決定を覆せるほどのこととなれば・・・北条氏康に訴えるってところだろう、ここにいるのは氏康大好きな人達で、氏康も信頼して送り出しているような人たちだ、ここにいる人たちがそろって氏康に申し出ればいくら北条氏政の決めたことでもひっくり返ることがあるかもしれない。
「まあその時はその時だよ、私は夫の格好いい姿が見られれば満足だからね。これでだめでも、また別の方法を考えるさ」
格好いい姿を見たいとか言われてしまうと、こっちとしては頑張らざるを得ないんだが。
「話がまとまったなら早く表へ! 早く始めましょう!」
康広さんはもう立ち上がっている。
「そうだね、さあみんな、中庭に行こうか」
「槍ですか、マジですか」
中庭に移動して、貸してもらった刀を素振りしていると、ながーい槍を抱えた康広さんがやってきた。
槍とかやめてほしい、こっちは刀なんだぞ? 素人なんだぞ? そんな俺に向かって槍で来るとか、鬼畜だとしか思えない。いや、脳筋か。
達人たちなら知らないが、刀を扱うものの実力が槍を扱うものの実力よりも明らかに勝っていなければ、攻撃範囲の広い槍の方が有利だ。そして俺の実力は間違いなく康広さんよりも劣っている、俺では、槍の攻撃をさばいて相手の懐に入り込むなんてことはできない。
康広さんが持っているのは普通の素槍だ。穂の部分が棒状で特に目立った装飾もない。穂から石突まで少々太めかもしれないが、いたって普通の槍だ。
たまに勘違いしている人がいるが、槍は、穂の部分で刺したり切り付けたりするよりも、穂から槍を握っている柄の部分の少し上に付いている蕪巻という敵の血が柄まで流れてこないように麻を巻き糊で固め漆や金箔を塗った部位までを指す太刀打の部分でたたく方が攻撃手段としては多く用いられる。敵味方入り乱れた戦場であの長い槍の穂の部分で敵を切りつけてなどなどいられない。
また、敵が後ろからきたり懐に入り込まれた時には、槍の穂の反対側についている石突で殴打することができる。
最終的に言いたいのは・・・俺では勝てません!
「さあ始めましょう! いつでもどこからでもかかってきてください!」
元気だなーこの人は。
俺は脳筋の仲間ではないからついていけないのだが。
ちらりと視線をくーちゃんとその他の家臣の方々に向けてみる。
家臣の方々の考えはよくわからない、どうでもよさそうな感じに見える、恐らく俺が康広さんに勝てるとは思っていないのだろう。それだけ康広さんが強いということだ。
そしてくーちゃんだが・・・目がキラキラしている、体全体で「おらワクワクしてきたぞ!」とか言いそうなくらいにワクワクを表現している。
俺もとりあえず刀を構える。
「・・・」
「・・・」
互いに獲物を構えた姿勢のまま動かない。
康広さんは俺が打って出るのを待ってくれているのだろう、その証拠にさっきからずっと笑顔のままだ。
対して俺が動かないのは、康広さんの隙を窺っているわけでも、逆に康広さんが動くのを待っているわけでもない。
ただの時間稼ぎだ。
誰かが時間がもったいないからとか言って止めてくれれば御の字だ。
格下が格上に勝とうなどと考えてもうまくいくことはまずない。それは景虎との鍛錬で嫌というほど学んだ。
だから俺は勝とうとはしない、負けないようにする。
尾張出身だから、オレ流だから。守っていれば負けない、負けなければ勝つのです。
「・・・」
「・・・」
だからまたこの状態である。
互いに動かない。
康広さんはあくまで俺に先攻を譲るつもりなのか、一向に攻めてくる気配はない。俺が感じ取れていないだけかもしれないけど。
そして俺はとにかく守る。こちらから攻めようとは微塵も考えていない。
「ははは、面白いな。お兄さん」
康広さんが構えは一切変えずに話しかけてくる。
「隙を見せてもかかってこないし、攻める気配を出しても動じない、どうしたら動いてくれるんだい?」
「・・・」
勝つ気がないからだと正直に答えてもいいのだが、それで隙なんかができたらあほらしいので喋らない。ただ守る。
「仕方ない、こっちから行くよ!」
康広さんが鋭い突きを放ってくる。
俺は体を左へずらしてそれを避ける。突きを刀で止めるのは難しい。かと言って横薙ぎの一撃が来ても刀で受けるなり流すなりするつもりはない、避けられるならとにかく避ける。敵の攻撃を受けたら力で押し切られるかもしれない、受け流そうとしたら刀を持っていかれるかもしれない。
素手で槍に相対するのは俺には不可能だ、だから避けられるのなら避ける。刀は避けられなかったときに最後の手段で用いる甲冑の役割だ、攻撃するために使うことは考えてはいない。
「ふっ!」
俺の隣で止まっていた穂がそのまま俺の体に迫ってくる。
避けるのがあまりにもギリギリだったのでこれを避けている余裕はない。
「くっ」
仕方がないので刀を体と槍の間に割り込ませて、逆に体を当てに行く。
近すぎて避けられなかったが、逆に近すぎたからそれほど力は入っていない。だから初動の段階で止めておく。
「甘い!」
右側にあった槍が消えた。康広さんが槍の中ほどを握っている手を支点にして槍を回転させる。穂が俺の右側から消え、新たに左側から石突が迫ってくる。
これはしっかりと勢いの乗った攻撃だ、受けるのは得策ではない。
しかし避けようにも体が右に流れているので後ろへは飛べない。
俺は左手で刀の鞘を持ち上げて先ほどと同じ要領で槍と体の間に割り込ませて、槍が当たったところでそれにあわせて右へ低く滑るように飛ぶ。
「ぐ!」
腹に鈍い衝撃が走る。
うまく飛んで衝撃を逃がしたと思ったが、康広さんの力が予想よりも強かったようだ。
だが痛いとか言っている場合ではない。次に備えなくてはいけない。
俺はすぐに体勢を立て直し、再び康広さんを見据えて構える。
「・・・」
「・・・」
しかし康広さんは攻めてこない、このまま攻めて攻めて攻めまくって押し切りそうな気がしたが、康広さんは攻めてはこず、また最初と同じように2人とも動かずに様子見に入ってしまう。
「満足だ!」
このまましばらく様子見かと思っていた矢先に、康広さんが大きな声を上げて構えを解く。
「お兄さんが弱くないのはよくわかった、私はそれで十分だ」
康広さんは、槍を肩に担いでさわやかに笑う。
「おー! すぐにぼこぼこにやられてお終いだと思っていたから驚いたよ!」
くーちゃんがかなり興奮しえいる。出会った時の眠たそうな目はどこに消えたのか、それはもうキラキラしている。康広さんとやりあう前よりもキラキラしている。
「では次に移りましょう」
くーちゃんが俺に飛びつこうとしたところで内藤さんが俺の前に進み出る。
「次は礼法を試させていただきます。北条家の一員となるならば、それなりの礼法は介していないと困ります」
礼法・・・いい思い出がない。義清さんと向日葵に叩き込まれたあの礼法。
やっぱりなんだかんだで身につけておいてよかった・・・とはなぜか思えない。役には立っているが、礼法のことを考えるとどうしてもあの2人との稽古の日々を思い出してしまい、憂鬱になる。
結局、内藤さんに文句を言われない程度には俺の礼法はきちんとしていた、ありがとう義清さん、向日葵・・・とは、やっぱり素直に思えない。
「最後に、内政に関する能力を見せていただきたい」
また評定の間に戻ってきている俺たち。
正直言ってもう疲れたから寝たい、でもそんな弱音を吐いてはいられない・・・と、わかってはいるが、内政なんてやったことがないからどうしようもないのだが・・・。
「でも、いったいどうやって内政の能力を見るんだい?」
くーちゃんが疑問を投げかける。
「では、ちょうど今飢饉で関東一帯の民は貧困にあえいでおりまする。それについて、北条家の一員となったつもりでご意見を聞かせていただきたい」
あーそういえば今は永禄元年、永禄の飢饉のことか。しかしこのことなら、こと北条家に関しては有名な出来事がある。
北条氏康から北条氏政へ名目上家督が譲られた。
これは永禄飢饉救済のため徳政令を施行するために、代が変わったというお祝いごとにする狙いがあったとされている。
だからそれを言えばいい・・・と思ったが、北条家の一員になったつもりで意見しろと言われてはいても、「徳政令出したいから娘に家督を譲れ」とはとても言えない。
北条氏康といえば相模の獅子と呼ばれる稀代の名君だ。まあ稀代とは言ったが、俺としては北条家は早雲も氏綱も氏政もみんな名君だと思っているから稀代っていうのは無くてもいいかもしれない。
検地・税制改革・目安箱等の民政に長けていたし、小田原城を拠点に関東管領の山内上杉家の上杉憲政らと争って関東に覇を唱えんとした。
そしてその優秀な北条氏康様はまだご健勝で、何かしら問題を起こしたわけではない。
氏康本人が言ったならともかく、俺なんかが言ったら不忠者として首ちょんぱだ、打ち首だ。
で、家督は譲れない。だから、他で何かお祝い事を作ればいいわけだ。
「まず俺と氏政様との祝言を挙げます、そしてそれに合わせて徳政令を出すのはどうでしょう」
歴史的に見ても、氏康が氏政に家督を譲ったのは徳政令を出すためであって、何かしでかしたわけでも隠居しようとしたわけではない。実際に氏康は家督を譲った後も政治・軍事ともに実権を掌握し続けていたから「二御屋形」とか「御両殿」とか言われていたくらいだ。
だから徳政令を出せるようなお祝い事があれば何でもいいわけだ。
そこで俺とくーちゃんの祝言の話を使う。
これで徳政令の話で内政の能力を示せたらよし、さらにくーちゃんとの祝言を挙げることの有用性も示せて一石二鳥というわけだ・・・が。
「ふむ」
内藤さんが髭をなでながら少し思案する。
しかし、俺としてはこれで褒められても嬉しくはない。まして家臣の身分でこの策を思案し、さらには認めようものなら・・・。
俺の内心を知ってか知らずか、残念ながら笑顔で話し始める。
「良い考えですな。これなら内政の方も・・・」
「この・・・!」
俺が切れて声を荒げそうになったが、そうはならなかった。
「内藤」
部屋の空気が、凍り付く。内藤さんの笑顔は一瞬で恐怖に塗りつぶされ、俺の怒りの炎は跡形もなく消えてしまった。
「内藤、君は今の提案が何を意味しているのか分かっているのかい? なにやら少し思案していたみたいだけど、わざわざ時間を使って何を考えていたんだい?」
くーちゃんが・・・いや、北条氏政が、怒っている。
部屋にいる多くの家臣たちが、そろって氏政のことを見ている。しかしそれは皆が見ているのではなく、氏政に見ることを強制されている感じだ。
今この空間を氏政が支配している。
氏政が望めば部屋の温度は上がるに違いない、下げようと思えば下げることもできるだろう。人を殺したければ、死ね、と念じるだけで殺せるに違いない。
そんなことができるわけがない、それは分かってはいる。しかし、今の氏政にはそう思わせるのに十分な迫力があった。
「・・・」
内藤さんは何も答えない。怯えた表情のまま黙って氏政を見ているだけだ。
「どうしたんだい、内藤。私はお前に聞いているんだ、早く答えろ」
氏政の言葉が強くなっている。低く、重たく感じる声で内藤さんに答えるように命令する。
「・・・」
内藤さんは答えない、答えられない。
内藤さんは恐怖におびえている、体は震え、唇は紫色になっている。
「まあいい、お前の頭では分かっていないようだから教えておこう。お前が良い考えだと評価した考えは、私のことを、北条のことを軽んじている」
そう、これこそ俺がこの考えを内藤が肯定した時に怒った理由だ。
俺の考えの中心は、徳政令を出すことだ。そして俺はそのために、氏政との祝言を使っている。
そう、使っているのだ。俺は氏政との祝言を、徳政令を出すための道具として使っているのだ。それはつまりその相手である氏政のことを利用しているのだ。
俺は北条家の一員としてこの考えを述べた。本来ならこんな考えは、ここにいる北条家の家臣は、俺が発言した段階で否定していないとおかしい。
しかし内藤は否定しないどころか、考え、そして良いという評価を下した。
「あまり調子に乗るなよ、内藤。今日のところは許してやるが・・・次に北条を軽んじるような発言をしたら、容赦なく首をはねるからな」
夏の暑い空気が感じられる、どこからか鳥の鳴く声も聞こえてきた。
「さて、私はこの程度のことも判断できない輩に、貴久が夫にふさわしいかどうかを判断してもらうつもりはない。相模に帰り次第父上にもお話しする。貴様らはもう下がれ」
北条氏政がくーちゃんに戻っていた。
「お、おおお待ちください!」
しかし内藤さんが必死の形相でくーちゃんを呼び止める。
「内藤、私は下がれと言った」
くーちゃんがまた冷たい視線を内藤さんに向ける。
「今・・・こちらの御仁のことを、なななんと・・・お呼びになられましたか」
「内藤、君はすでに一度話しているのに、そんなことも知らなかったのか? 知らずにあんな態度で話していたのか?」
くーちゃんが楽しそうにしている。
「彼の名前は加藤貴久。越後国主長尾景虎と甲斐国主武田晴信の夫だ」
部屋の中がざわつく。俺の正体を聞いてみんなが動揺している。
「な、ならばなおさらです! 若と加藤殿の祝言など認めることはできません! この者は先程北条を軽んじる発言を・・・!」
「その程度のこともわからないのか」
内藤さんの発言をくーちゃんが遮る。すでにやる気がないのか、雰囲気はくーちゃんのままだ。
「貴久は北条と長尾、武田の関係が悪化することを懸念している。私との祝言には賛成しているが、今このまま祝言となれば、どう見ても北条が貴久を捕らえた様にしか見えない。後になって北条が叫んでも相手は聞く耳を持たないだろう、貴久がどれだけ言って聞かせても脅されているようにしか見えない。だから貴久は小笠原康広に勝たなかった、北条を軽んじる発言をした、そうやって追い出されることで一度甲斐に帰ろうとしたんだ。小笠原の件は仕方がないとしても、内藤があの考えを良しとしたのは想定外だったから、何か叫ぼうとしていたね」
くーちゃんが嬉しそうに俺を見て話している。
・・・ごめん、くーちゃん。俺そんなに深く考えてない! 内藤さんの件はおおよそその通りだけど、小笠原さんの件に関してはそんなこと考えてないです、気のせいです勘違いです。
「そこまで考えて・・・」
くーちゃんの話を聞いて内藤さんがうなだれる。
「それじゃあ貴久、部屋に戻ろう」
くーちゃんが上機嫌に俺の腕をつかんで早く行こうと引っ張ってくる。
「わかったわかった! わかったから引っ張るな!」
くーちゃんが低い位置で引っ張ってくるからうまく立てず、そのまま変な体制のまま引きずられるようにして部屋を後にした。




