8 なんの為の目標?
翌日ギルドへ向かい昨日と同じ程度の報酬を得られる依頼を選び…そんな日々を繰り返す事8日目、毎日2件の依頼を優良評価で熟し、街の人にも多少顔を覚えて貰い、依頼達成ポイントが32ポイント、達成率100%で昇格条件を満たしたので、ギルドに1ネラを納付してランクEとなり名実共にフリーランサーとなった、貯金はまだ15ネラ程しかないから生活水準は変えられないが、目に見える成果は嬉しいものだと思った。
ランクEになったギルドカードを受け取り、ソフィアさんから外に出る依頼が受けられるようになるので、武器や防具を揃えた方が良いと勧めらられ、鍛冶工房兼武器屋への紹介状を貰い店に向かった。
店に着いて並んでいる武器を見て回り、売値に金貨が付くものは魔法付与が施され、見た目もこれ聖剣かなんかですか?という感じだった、自分達が買えるのは白銅貨くらいのもので、店の主人に駆け出しはそんなもんだといわれ、そりゃそうだと納得した。
「それでどんな武器を買うん?」
「解体用ナイフは決定として、武器はなぁ…」
「どしたん?」
「使いきれるか使いきれんかで言えば、ロングソードも使い熟せると思うよ、実際いっぱい斬ったし」
「あ〜…うん、そうじゃね」
「ただ、この身体でロングソードを腰に下げても引き摺るだけやから、無難に短剣かなぁって、そっちの方が安いし」
「そうやね、ウチら魔法も使えるし」
「あと防具は皮の胸当てと前腕をカバーするくらいかな」
「その候補で、総額幾らになるん?」
「目を付けたもので行くと、短剣5ネラ、解体ナイフ1ネラ、胸当て2ネラ、腕カバー1ネラで合計9ネラ、貯金の7割くらいになる」
「確かにちょっと迷う金額じゃね。じゃけど『買わん理由が値段なら買え、買う理由が値段なら買うな』って言葉もあるし、どうせ必要でいつかは買わんといけんのんじゃったら、今買えるうちに買っといてええんじゃない?使ったお金はまたこれから稼げばええんじゃし!」
二人は目を付けた商品を持ってカウンターに向かった。
「おっ!纏め買いか?見た事ないが、ランクEってとこか?これだけ払えるって事は長いのか?」
「さっきランクEになりました」
「は?さっき?ずっとランクFを続けてきたのか?」
「登録して8日目ですが?」
「最短じゃねぇか!それなら紹介状を持ってるんじゃないのか?」
「そう言えば、貰いました」
「ソフィアちゃんの紹介状か……二人とも優秀なんだな、良し、セットで5ネラで良いぞ」
「約半額!良いんですか?儲けがないでしょう?」
「儲けはないが気にするな、受付嬢の紹介状が貰える期待の新人を後押しするのも、ここら辺で商売する俺達の役目だ」
「そういうものなんですね、ありがとうございます」
そう言って頭を下げて礼をする二人
「礼儀正しいな、そこら辺も評価されたんだろう、道具はちゃんとメンテナンスに持ってくるんだぞ」
二人は代金を払って店をあとにする、二人を見送った店主は二人を二度と忘れないだろうと思った、二人の見目の良さもあるが、最短日数でランクEに昇級し、即日武器防具を買い揃える資金を用意できる金銭感覚と資金管理、そして礼儀正しさ、なるほど受付嬢から紹介状を貰える期待の新人だなと思った。
二人は再びギルドに向かい、ソフィアさんに紹介状のお礼を言い、半額近い値引きをして貰えたと話した。
「えっ?9ネラを5ネラに?流石にそれは紹介状だけではなく、二人のお人柄もあるでしょう?」
「そうですか?ですが紹介状が原因なのは事実です」
「ソフィアさんありがとな」
干城は奈津希をギルドの食堂に誘い、紅茶を注文して明日の事で相談する。
「明日は仕事を休んで街の外に出てみんね?」
「ん?どゆこと?」
「うん、取り敢えず武器も防具も買ったし、魔法の練習も兼ねて、魔法と短剣でどんな事ができるのか試しとこうと思って」
と言ったところで紅茶が届く
奈津希は一口紅茶を飲んで「それもそうじゃね、考えてみると拉致られてから王都の外に出た事もないし、魔物も見た事ない、依頼受けて何も知らん外に出てポシャるよりそうするべきじゃね」
「んじゃ、そういう事でよか?」
「いいんじゃない?賛成や」
「それじゃ、今日は風呂屋に行って夕食にしよう」
「あ〜…うん、今日は昇級祝って事でニスニラ以外にしよか?」
「ニスニラ以外に?ああ、でもそうか」
干城は自分の頭の硬さに思い至った、F依頼で収入計算した時もそうだ、ひと月ランクFの前提で計算した、それを案外早く昇級するんじゃない?と訂正したのも奈津希だった、実際8日目で昇級している、確かに目標とする貯金額には程遠い、目標に向かって邁進するのも正しい姿ではあるだろう、だがなんの為の目標か?目的を見失い目標に囚われていたら視野が狭くなり、心の余裕を失う事にもなりかねない、目標金額はあるが、目的はフリーランサーとして活動する為の余裕をもった運転資金というだけだ、今は食い詰めている状況でもない、たまの贅沢も許されるだろう、硬直しがちな思考、奈津希はそれをそっと訂正してくれる。
「そうだね、そがんしよう、夕食を何にするかは風呂上がりに決めよう」
「お!それでええんね」
「それで良いんじゃない」
「奈津希」
「ん?何?」
「奈津希はいい女だよ」
「は?急に何を言いよるん?」
「取り敢えず風呂に行こうか」
風呂で汗を流し、風呂上がりの休憩をしたあとに訪れた食堂、夜空の兎亭の料理にスパゲッティがあった、名前はリザングと言うらしいが、二人にとってはスパゲッティだ、挽肉が盛り付けてあり、チーズで溶いたソースは全体に挽肉の味を行き渡らせ、一緒に盛り付けられた香草で香りも纏っているように感じた、黒パンとスープが付いて30リギル
「奈津希の提案に乗って良かった、美味い飯は明日への活力やね」
「この料理食べる為に、また頑張ろうって気になるわ」
今の二人に1食30リギルは大きいが、それでもここに来て良かった、そう思えた食事だった




