6 お金の話と新たな発見
ソフィアさんの説明を一通り聞いた頃には、依頼を受けても達成できる時間じゃないなと思い、この際通貨価値や物価、平均的な収入を聞いてみる事にした。
「引っ張って申し訳ないですけど、通貨単位や物価を教えてもらって良いですか?」
「勿論いいですよ、お金は大事ですし、その為に働くんですから、ですがお茶を準備して良いですか?」
「そうやね、ソフィアさんも喋りっ放しやもんね」
「お二人の分も準備しますよ、少し待って下さいね」
「ソフィアさんありがとう、ごめんね」
ふぅ〜っと溜め息のように息を吐きながら、ソファに深く座り全く0から生活基盤を作っていくって大変だなと思った。
「色々大変そうやけど、生きる為には頑張らんといけんね〜」
「ほんと、それ」
とか言っていたらソフィアさんが紅茶を用意して部屋に入ってきて、お茶を差し出した、一口お茶を飲んで、あぁ〜って言いたい気分だった。
ソフィアも一口お茶飲んで、テーブルに硬貨を並べ始めた、十進数らしく小銅貨10枚で銅貨1枚、以降10枚おきに白銅貨、銀貨、金貨となり、更に大金貨、白金貨らしいが大金貨と白金貨はまず市井では見ないらしい。
小銅貨と銅貨の単位はリギル、白銅貨からの単位はネラと言うらしい、白銅貨1枚銅貨2枚小銅貨3枚なら1ネラ23リギルだ、相場としては風呂屋2リギル、串焼き3リギル、黒パン4リギル、エール1杯5リギル、食堂の黒パンと野菜スープのセット(ニスニラ)8リギル(平民の安い定番飯らしい)木賃宿10リギル、ギルド周辺の宿一人部屋素泊り20リギル朝食付き30リギル、二人部屋32リギル朝食二人分付き52リギル、平民が働き始めた初任給は28ネラくらいが相場らしい。
さて、物価と金銭感覚の擦り合わせだが、単純に小銅貨1枚の1リギルを1円と考えると、串焼き3円は安すぎるし、市井に出回る金貨は1万円、最大硬貨の白金貨は100万円になる、それはそれで経済規模や物価から考えてハイパーインフレの金額だろう?と思えてどうもシックリこない。
奈津希がふと言った「リギルは銭で、ネラは円、物価は大正元年くらいじゃないん?」
そうなのか?その時代警察官の初任給が27円くらいだったか?物価は釣り合いそうだ、そうすると金貨は100円か。
「ソフィアさん、F依頼で報酬ってどのくらいですか?」
「F依頼は20から80リギルで、平均は50リギルです」
1日1人分の最低必要な生活費は?3食ニスニラで24リギル、木賃宿で10リギル、風呂に入って2リギルで合計36リギル、最低報酬の依頼じゃ話にならん、平均報酬の依頼をひとつ熟せば食っては行けるけど、正直カツカツだ。
「1か月は何日ですか?」
「1か月は30日です」
それだと50リギルの30日で150リギル、これ再任用よりキツくないか?平均初任給くらい稼ごうと思ったら1日二つは依頼を熟さないといけない、結構キツそうだな。
窓の外を見ると陽の傾きは夕方くらいか?これ以上ソフィアさんを拘束するのも気が引ける、そろそろ御暇しょう。
ソフィアさんにお礼を言ってギルドをあとにする。
現状無一文は変わらないので行き先の選択肢はないに等しい。
「奈津希、今夜どがんしよう、あの橋の下で夜露を凌ぐしか思い付かん」
「そうよねぇ、選択肢なんかないもんね。そうするしかないかぁ」
「さっきギルドで王都の地図を見たらルートは二つ、近いのは街の中を通るルート、近いし本来安全なルートなんやけど、屋台の前ば歩くけん暴力的な匂いがある意味危険なルート」
「もういっちょは、街外れを遠回りするルート、こっちは破落戸が危険」
「そんなん選択肢がないようなもんじゃん。いい匂いにつられて、うっかり物欲しそうな顔して他人様に迷惑かけるくらいなら、破落戸シバいた方がマシよ」「ですよね〜、そしたら遠回りルートで行こか」
破落戸に気を配りながら、暗くなる前には橋の下に到着できた。
「あ〜、子供の足じゃからそこそこ歩いた気がするけど、肩も腰も全然疲れとらんわ。転生して新しい身体になったんじゃねぇって実感が湧くね」
「分かる、串肉ご馳走んなった時、味は良かけど肉が少し硬いなって思うとったら、歯に触らんから歯と歯茎が健康になっとるって気付いたっさ」
「言われてみれば確かにそうじゃわ!」
「それで、平均報酬をひとつ熟せば食っては行けるけど、正直カツカツやったね」
「そうじゃねぇ。平均報酬の仕事をひと月休みなく働いて、やっと二つ熟して、それでようやく平均初任給くらいじゃもんね」
「結構キツかね」
「ん〜、でも達成ポイントそんなに高うないし、案外早めに昇級できるんじゃない?昇級したら多少は実入りも良くなるじゃろうし、この身体ならなんとかなりそうな気がするんよね」
「あ〜、そう言われればそうか、F依頼固定で考えとった」
「そういうわけじゃから、ウチらに何ができるか考えてみようや」
「何が出来るか?」
「そうそう、魔法がある世界なんじゃから、魔法が使えんか試してみるとかさ」
「魔法?ステータスにはなかったけど?それに魔法の使い方がさっぱり分からんし」
「ラノベじゃ魔法は『考えるんじゃない、感じるんだ』のノリよ。身体の中の魔力を感じ取って……ライト!」
奈津希が差し出した掌の上に光る玉が出現した。
「えっ?嘘じゃん…!」
「は?本当に魔法が出来た」
「ウチ、ステータス確認してみるわ。干城も試してみて!」
「身体の中の魔力を感じ取って…どいが魔力か分からんばってんライト」
干城が差し出した掌の上に光る玉が出現した。
「はっ…はははっできた」
「どうやら生活魔法みたいじゃね。とりあえず火、水、風、色々試してみようやぁ」
奈津希のラノベ知識で二人は色々試してみた、奈津希は魔法が使えた事で興奮覚めやらぬ感じだったが、クリーンはないんかと愚痴ってた。この際魔法も試してみる。
「火魔法は火事が怖かけん川に向って」
「火魔法は威力に気をつけてね。暴発させて『なんかやっちゃいました?』みたいなベタなオチは要らんけぇね」
ベタなオチにはならずに済んだ。
「身体強化系ば試してみよっか?」
橋を上がって身体強化のイメージをして軽く走ったつもりが、オリンピックで金メダルは確実そうなダッシュが出来た、その頃橋の下では奈津希が雄叫びをあげていた、だがこれでできる仕事の幅は広がりそうだ。
「インベントリ、ヨッシャー、チートキター」
ピョンピョン飛び跳ねて喜ぶ姿は、見た目も相まって実に可愛らしい、しかしだ、オイも人の事を言えた義理じゃなかばってん、中味55歳だよな?
奈津希は鑑定、鑑定と言っていたが
「周りはすっかり真っ暗やし、明日もあるから今日は寝ようか」
「そうじゃね、魔力切れも怖いしそうしよっか。んふふ〜っ」
結局魔法は、四元素、聖属性、光魔法、闇属性、多分全属性に適性があった、四元素、聖魔法、光魔法は初級魔法は使えた、闇属性はインベントリが使えた(インベントリって闇属性なんだ?)
土手の斜面に寝転がる、草と硬すぎない地面で身体が痛くならなそうだ。
「寒うなくて良かったねぇ」
言われてみればそうだ、真冬じゃなくて良かった。
時折吹く風が肌を優しくなでる、草の匂いを感じる、近くに人の気配は感じない、今日は寝よう。
夜は更けてゆく




