4 あれ?なんでバレた?
ソフィアはノックしてギルドマスターの執務室入った、茶髪の細面なギルドマスターは報告で上がってきていたフリーランサーの業績や昇級に関する書類の確認をしていた、ソフィアは今フリーランサー登録をした12歳の二人の子供の事を話した。
「着ている服は質が良く、靴も汚れていない、高い教育と躾が行き届いた高位貴族の子供のようにも見えますけど、高位貴族の子供にありがちな傲慢さがありません、寧ろ落ち着いた大人のような雰囲気と佇まいで、礼儀正しく丁寧な話し方をする知性があります」
「なのにフリーランスギルドの事を知らなかったり、登録料の納付はEランクに昇級した時だと知らなかったり、登録器の事を知らなかったりと子供でも知ってるような常識を知らないチグハグさがあって、訳が分かりません」
「何か事情を抱えてる子だとは思いますが、その事情次第ではこのままギルド登録して良いのか分かりません」
フリーランスギルドは世界各国に支部を置きネットワークを構築して国と直接的な利害関係はない、国に対しても相応に影響力を持つ組織ではあるが、高位貴族が関わるとなると、わざわざ面倒にリソースを割く愚は避けたい、受付嬢の人を見る目にも一定の信頼は置いている。
「話の内容を纏めると、なるほど判らんな」
「それにです、あれほど見目の良い子なら貴族であれば、それこそ方々に自慢しているでしょうし、平民の子であっても何かしらの噂になってるでしょう、ですがそんな話や噂を聞いた事もない、あれほど目立つ子が突然王都に現れるとかおかしいですよ」
「たが登録器は使ったんだろう?犯罪歴があればその時点て判るし、他国の間者としてももっと上手いやり方があるだろう?」
「それはそうなんですけど、私ではもう判断がつきません、応接室に待たせてますのでギルドマスターが見極めて貰えませんか?」
「分かった、応接室に行こう」
ソフィアとギルドマスターは応接室に到着し、ドアを開けたソフィアに続いて入室したギルドマスターを見た干城と奈津希は、スッと立ち上がりギルドマスターに向って一礼した、ギルドマスターは一瞬面食らった、そんな反応をする子供もフリーランサーも見た事がなかった、ランクBフリーランサーが礼儀作法の教育に合格し、金貨5枚をフリーランスギルドに納めれば冒険者になれるが、この二人の子供は既にランクB冒険者以上の礼儀作法を身に着けている。
「私はギルドマスターのアズレスト・リシーデルだ、取り敢えず座ってお菓子を食べなさい、話は食べ終わってからにしよう」
干城が失礼しますと言って、二人はソファに座った。
ギルドマスターは直視しないように、そっと二人を観察した、ソファに浅く腰掛けて背筋を伸ばし、クッキーを一口大に割って口に運び、音を立てないようにお茶を飲む、その姿はなるほど躾の行き届いた高位貴族の子供かと思わせるが、二人は紅茶を飲む際カップのハンドルに指を通しているのだ、それは平民の持ち方だ、これだけの作法を身につけている子供に、躾をする教育係が矯正しないわけがない、ソフィアが訳が分からないと言う筈だと納得した、お菓子を食べ終わった二人に一拍の間を空けて、ギルドマスターは二人に尋ねた。
「君達は何者だい?」
干城は咄嗟に答える事ができなかったが、どうにか答える事ができたのは
「ギルドマスターの質問は含意が広くどう答えればいいのか分かりません」
ギルドマスターはこれが子供の答えか?貴族と腹の探りあいでもしているようだ、このままでは埒が明かないと思った。
「疑問を持った理由を話そう、君達が高位貴族の子供としても、12歳の子供にしては礼儀作法や言葉の端々に見える知性などは、その歳ではあり得ないと思える程だ、そして平民の子供でも知っているような常識を知らない、君達は気付かなかったんだろうが、先程の食事も厳しく躾けられた貴族の子のようだったが、カップを持つのにハンドルに指を通すのは平民の仕草だ、そんなチグハグさが君達は目立つんだよ」
「君達に何か深い事情があるのは察して余りある、悪いようにはしない、腹を割って話そう、君達が何者でどんな事情を抱えているか分からないと、こちらも動きようがない」
二人はギルドマスターが本気で手を差し伸べようとしているのは分かった、だが自分達の事情に巻き込んで良いのか分からなかった。
「お察しのとおり事情はあります、ですが、それに巻き込めばギルドマスターの身にも危険が及ぶかも知れません」
「これでもフリーランスギルドのギルドマスターだ、危険の対処法なら心得てるさ、相手が犯罪組織でも貴族でも国でもね」
二人はこの世界で生きて行く味方ができると、今日の事を話す事にした。
「今朝、召喚魔法で城に異世界から拐われました、こんな見た目ですが私は早坂干城57歳、こちらは佐倉奈津希55歳です」
「端的に言うと、多分王?に元の世界に戻せと要求しましたが王は拒否するばかりか、隷属の首環を使えと命じましたので、剣を向けてくる騎士から剣を奪い、隷属の首環を持った男を斬り、その後、王と王族と恐らく宰相、それに殺意や害意をこちらに向けた貴族と騎士を殺しました」
「その後、こちらに殺意や害意を向けなかった濃い茶髪に白髪のもみ上げをした意志の強そうな貴族に、今後も関わってくるなら殺すと警告して、城を出た後に、生きる為の食扶持を得る為にここへ来ました」
話を聞いたギルドマスターは片手で目を覆った、小康状態だった隣国との小競り合いを再開する為に、王が勇者召喚をするという噂は聞いた、余りの愚かさに実行はしないだろうと思っていたが、こんな結末になるとは、ギルドマスターは今後推察される事を伝える事にした。
「王の治世は限界だった、失政から目を逸らす為に隣国との小競り合いを再開し、勝利を確実にする為に勇者召喚を行うという噂はあった、恐らくそれで召喚されたんだろう」
「話を聞いた推察だか、生き残って話をした貴族は、特徴から恐らくは前宰相だろう、死んだ貴族は恐らく王派の貴族で、生き残った貴族は前宰相を初めとした第二王子派だ、追手がかかる心配はないだろう、それに体裁を整える時間も必要だ、少なくともその間は接触する余裕はないだろう」
そうか、そういう事だったのか、それならばこの世界の常識を知らない事や、態度や礼儀作法が身に付いてる事の辻褄が合う。
「ソフィア、二人のフリーランサー登録に問題はない、二人の事情を知る者は少ない方がいい、君は二人の常識相談役を勤めてくれ」
そう言ってギルドマスターは応接室を退室していった。
「えと、それではギルドについて説明しますね」
漸くギルドの説明が始まる。




