3 取り敢えずお約束を信じてみよう
干城と奈津希は今後の方針を話し合った、干城もラノベは偶に読んでいたが、奈津希は暇潰しにラノベをボチボチ読んでたらしく、異世界ならお約束の冒険者ギルドを探してみよう、有っても登録料が要るなら詰むが、無いならないでここに居て物乞いするより、街を出て森なり何なりで食料を探そうと決めた。
橋の下を出たら六人の不審な男達が居た、小汚いと言う程でもない身形だが、上物だとか騒いでいるので、破落戸かと干城と奈津希はこんなお約束は要らんのにと溜息を吐いた。
破落戸は二人を囲むように広がりながら、二人の男が干城と奈津希を捕まえようと手を伸ばしてしたので、その手を取って手首を捻り、前のめりに体勢を崩したところを一本背負いのように地面に叩き付けた、なぜか身体が自然に動いた。
その時通りがった五人組の内の男三人が残りの破落戸を制圧し始め、二人の女性は庇うように干城と奈津希の前に立った。
制圧が終わり、破落戸を後ろ手に縛り付けて、二人の女性は干城と奈津希の無事を確認し、破落戸を叩き付けていた事に感心していた、干城と奈津希はお礼を言って頭を下げた。
「助けて頂いてありがとうございます、私はタテキと申します、こちらはナツキです」
子供と思えない佇まいと言葉遣い、礼儀正しさに驚きながら、五人も自己紹介した。
五人は荒鷲というパーティでランクBの冒険者であるらしい。
こげ茶の髪をした男は「リーダーで片手剣士のロイデラだ、ロイドと呼んでくれ」
青髪の男は「長剣士のレーベンティールだ、レーベと呼んでくれ」
金髪で短髪の男は「盾士のアドルグラートだグラートと呼んでくれ」
肩ほどの長さの亜麻色の髪の女は「魔術士のレタレヴィよレヴィと呼んでね」
腰ほどの長い茶色の髪の女は「弓士兼治癒士のエレファーレよエレと呼んでね」
ロイドはなんでこんな街外れに居たんだ?と聞くので
街に住む所も身寄りも居ないので、ここに居たと答えた、当面の活動方針の為に、街の事を聞いておこう。
「冒険者ギルドはどこにあるでしょう?」
「?フリーランスギルドか?俺達もこれから向かうから、破落戸達を街の警備隊に突き出してから行こう」
ロイドは、この見目の良い子供は、高い教育と厳しい躾を受けた高位貴族の子だろうとあたりをつけた、服装は薄いアイボリーのシャツにネクタイとリボン、濃い蒼のズボンとスカートにブーツ、質素だが生地はよさそうだ、だが平民の子でも知っているフリーランスギルドを知らず、自分達は冒険者と名乗ったがなんの反応も示さなかった、知性を感じさせるのに常識を知らないチグハグさに違和を感じていたが、何か訳ありなのだろうと深く追求しなかった。
道中レヴィとエレに可愛いと頭を撫でられ、男達三人はそれをホッコリと眺めながら警備隊に向かった。
破落戸を警備隊に預け、現場の情報などを教えてるようで、このあと警備隊はあの橋付近の見回りをするらしい。
警備隊を出て街中を歩いていると、屋台のいい匂いがしてきた、気にしない風に努めたが、食べて行こうと言われた看破られたらしい、お金はありませんと言ったが子供が気にするなと串焼き3本づつと果汁を用意してくれた。
お礼を言って食べ始めた、串焼きの肉は少し硬かったが美味しかった、干城は肉の硬さが歯の負担にならない事で、転生で歯が健康になった事に気付いた、食べ終わって美味しかったと伝えお礼を言った、礼儀正しい子達だと言われた。
フリーランスギルドに到着した、ギルドは街門の近くに立地していた。
荒鷲のメンバーにお礼を言って受付に向かった、ギルド登録をしたい事とタテキとナツキと自己紹介した。
肩ほどの赤毛の受付嬢はソフィアと名乗った。
ソフィアも他の受付嬢も二人の見目の良さに目を奪われた。
「今お金はないんですけど、登録料は幾らですか?」
「登録料は今は必要ありません、ランクEに昇級した時に登録料白銅貨1枚を納めて頂きます」
干城と奈津希はこれで登録ができ、身分証が出に入ると思った。
「こちらの登録器のここに血を一滴落として、こちらの水晶に手を当てて下さい」
「何か記入しなくてもいいんですか?」
「?はい、筆記が必要なものはありません、血を取るのは指先にこちらの針を使って下さい」
奈津希は感心しながら「登録に筆記が要らんって進んでるのか、遅れてるのか判らん世界やね」
「ギルドカードの職業はどうしますか?コンバートする事もあるので、空欄にして後で記載する事もできますが?」
「空欄でお願いします」
千城はどうするべきか判断がつかなかったので保留する事にした。
ソフィアはヘッドアップディスプレイの様なモニターに端末で情報を打ち込んでいき、登録器から出力されたギルドカードを二人に手渡した。
フリーランスギルド
ナツキ・サクラ
フリーランサーランクF
職業
と記載されたギルドカードを見た奈津希はボソリと言った
「そう言えば、冒険者ギルドじゃないんやね?」
「はい?フリーランスギルドです、ランクBになりましたら、ギルドに金貨5枚を納めて冒険者の資格を得られます」
干城と奈津希はふ~んそうなんだ~という感じだった。
ソフィアはこの二人の子供に所々違和を感じていた、先ず見目の良さ、落ち着いた佇まいで、大人の様な話し方、教育と躾の行き届いた高位貴族の子に見えなくもないが、高位貴族の子にありがちな傲慢さがない、それに高い知性を感じさせながら、平民の子供でも知っているような常識を知らなそうなところがポツポツあった、なにより高位貴族の子がフリーランサー登録などする筈がない、考えれば考える程チグハグな子供だった、このまま登録してしまって良いのか?今なら取り消しもできる。
ソフィアはこの子達の事はギルドマスターに投げようと思い、休憩中の受付嬢に受付を埋めるよう頼み、ギルドの仕組みを説明すると応接室に二人を案内し、説明の準備をするので、それまでお茶とお菓子を食べて暫く待つよう言って応接室を後にした。
干城と奈津希は自分達のチグハグさを全く認識していなかった。




