39 時雨?
ベステノーアに到着したがギルドがない?ダンジョンがある地にフリーランスギルドがないなんて事はないだろう。街門の警備隊の人に聞いてみると、フリーランスギルドは西門にあるらしい、西側にダンジョンがあるので、そちらにフリーランスギルドがあるという事だ、理由を知ると合理的だと思った。
西側に行ってみるとフリーランスギルド区画として凸型に出っ張っていて、この出っ張った部分がフリーランスギルド区画らしく、ダンジョンがある街はフリーランサーの出入りが多く、この形が多いらしい、フリーランスギルド区画とは言ってるが、街門の警備は警備隊が行なっているし、この区画の中に警備隊駐在所もあって、あくまで街の一部であると領主が主張する為の措置らしい。
やっとギルドに到着し、ダンジョンの情報などを聞いたので、宿を探しに行く。
「ダンジョン目当てだし、宿はこの区画の宿で良かかな」
「そうじゃねぇ、ダンジョンに入ったら数日潜る事になるやろうし、それでええんじゃない?」
取り敢えず宿は一泊だけにして、明日からダンジョンに潜る事にする。
翌朝、宿を出て、辿り着いたダンジョン出入り口付近に、ダンジョン入場のチェックがあった、ダンジョンの中に誰が何日入っているかなどの把握の為だそうだ、入場記入していよいよダンジョンだ。
「いよいよダンジョンじゃねぇ、ラノベの夢じゃけぇ」
奈津希は張り切っていた。
山も谷もなく5階層に辿り着いた、出てくる敵が弱すぎたゴブリンとかフォレストドックとかコボルトとかランクEでも対処出来るし、食い物にもならん奴ばっかり。
「なんか段々と作業になっとらん?」
「しゃないよ、ランクDが入れるダンジョンじゃから、潜れば段々と敵も強うなってくるやろ」
結局その日に15層まで進んだ、10層までは数が増えただけで顔ぶれは変わらなかったからだ、11層から段々と顔ぶれが代わり、11層に現れたデカい芋虫デッシュニールはキモかった、12層からは黒い羊のオベルハが出始め、13層からはデッシュニールとオベルハがタッグだった、14層ではリベルグリズリーが出始め、15層ではグルゼリエってトカゲが出てきた。
到着したセーフエリアには数組のパーティも居た、余り目立たないように、こっそりインベントリからスープを出して黒パンとベーコンで食事を済ませた、周りを見るとテントは使わずに毛布で済ませているようなので、それに倣って毛布を敷いてその上に毛布で包まって寝る事にする。
16層に降りるとフィールド型ダンジョンだった。
「こっからはフィールド型になったか」
「10層までは一本道、そっから15層までは格子型、ダンジョンも色々と工夫しとるんじゃねぇ」
「こっちの方が圧迫感がなくて良かかな、空に太陽まで見えるし、どがんなっとるんやろうね?科学は死んだ」
「ワクワクするねぇ、ラノベの夢じゃけぇ」
ダンジョンの中ではグローブスフィアもロケーターも機能しなかった、多分ダンジョンを楽しめって事なんをだろう。
「そういやさ、ゴブリンは居るのにオークはまだ見とらんね」
「そういや、そうじゃね」
「オークは食える魔物が定番やっけど、正直豚とはいえ二足歩行を食うのは抵抗あるなと思ってた」
「そりゃあ今まで考えた事なかったね、でも今迄に食堂とかで食べとったかもしれんよ」
「そりゃそう、って何か来た、トリントブグルかな?あの肉は美味しかった」
討伐したトリントブグルはいつものようにインベントリに格納した。
ダンジョン攻略は順調に進んだ、初見の魔物もおった、だが問題にならんかった、数が多くても魔法で形が付いた。
「ここラスボスよね?」
「そうじゃねぇ」
「簡単すぎん?」
「ウチらにDランクダンジョンは温いって事じゃね」
「あ〜…まぁ、ランクDが終着点とは思っとらんからね」
ラスボス部屋へ行きサッサと終わらず事にする、ここで出ました黒いオーク12体とふた周りくらいデカいオーク、オークは黒豚だった、魔法を使ってくる個体もないがリフレクトで自滅させた、全体として大して問題にならなかった、作業のようにボス戦が終わった。
宝箱はマジックバッグだった、多分当たりだろう、転送陣があったので、そこからダンジョンを出た、ダンジョン出入り口の近くだった、ダンジョンを出て街に戻る事にした。
入場チェックの場所へ行き、ダンジョンを出た事を報告する。
「昨日入ってもう出てきたのか、何層まで行ったんだ?」
「ボスのオークまで、終わりました」
「この時間でか?じゃあ実力はBはあるんだな、見た所Cグレにはならなそうだな」
「時雨?」
「Cグレだ、知らないか?そうだな、あっちで話そう」
チェック所裏の休憩場所だった。
「俺はギルド職員のエランって言うんだ」
「タテキです、初めまして」
「ナツキです」
「二人とも12歳なら、フリーランサーになって間も無いのにランクDになってて、しっかり挨拶も出来るから、将来は冒険者になるだろう」
「ランクBってのは一つの壁でな」
「普段の態度や礼儀作法が出来なさそうって奴は、昇級査定で弾かれるんだ」
「どういう事なんですか?」
「ランクBからは貴族依頼を受ける事になる」
「依頼達成ポイントや実績、実力はランクBを満たしていても、貴族の前に出せるだけの礼儀作法が身についてなきゃ、ランクBにはできないのさ」
「腕節だけではランクC止まりって事だ」
「そうなんですね、それで先ほどのCグレとは?」
「ああ、ダンジョンってのは依頼達成ポイントは付かないが、比較的短期間で稼げる、ランクBやA並みに稼げる事だってある」
「ランクBに上がる事を諦めた奴らは、稼ぎを求めてダンジョンに群がって来る」
「腕節自慢でガラも悪いから、そういう奴らはCグレって呼ばれてるんだ」
「稼げると言っても、通常依頼よりダンジョンは危険なんじゃないですか?」
「そのとおりだ、だからCグレ達は体力の衰えに気付いて引退するか、気付かずにダンジョンで死ぬかだ」
「ギルドで礼儀作法の教育は行わないんですか?」
「そもそも奴らに勉強しようとする意志がない、フリーランサーは出自も学も問わない、条件は年齢が12歳以上だけだ」
「スラムなんかの街の低層生まれの奴らは勉強する機会なんてなかった、実力でランクCまで這い上がってきても、それ以上は社会の壁が阻むのさ」
「そうですか、礼儀作法の教育とはそれ程難しいのでしょうか?」
「そんな事はない、ギルドもフリーランサーに宮廷言葉を求めている訳じゃない」
「精々、敬語を覚えて、相手を尊重して敬語で話せ、キョロキョロせずに相手を見て話せ」
「食事の時になるべく音を立てるな、手掴みで食うな、皿を舐めるなくらいさ」
「それでしたら、勉強というより少し意識を変えるだけでもよさそうですが」
「そうさ、そもそも選民意識の強い貴族は、使用人に任せて俺達平民の前に姿は現さないさ、俺達の前に立つ貴族はある程度は織り込み済みで、そう細かい事は言わん。だから俺達もあいつらに意識を変えて欲しい、だが奴らには奴らの流儀やプライドがあるのさ」
転生前の社会経験がある干城と奈津希は、この国の社会問題じゃないのかと思った。




