35 行き当たりばったり
ギルドで盗賊討伐の報酬を受け取ったあと依頼ボードを見たが、余り受けたい依頼もなく、何となくミレアの実を持ってない事を思い出し、セージ協会にミレアの実を買いに向かった。
ミレアの実を手に入れ、あの橋の下からバーチャルエリアに行き、ポーション作成をしようと思ったらポーションを入れる容器がない事に気付き、グローブスフィアで調べると、レワード川のラエスタより上流で硅砂が取れるポイントがあるようなので、ラエスタ付近でドアを開いて硅砂採掘ポイントへ向かうかと思っていたら、グローブスフィアで定めたポイントへ扉が開ける事が発覚し、取り敢えず硅砂採掘ポイントへのドアを開いた。
「何これ、出鱈目過ぎじゃなか?」
「行った事ない場所でもゼ◯リン地図上で指定すればええん確かに出鱈目じゃねぇ」
「便利は便利なんやけどさ、文句はなかけどさ、なんかモヤモヤする」
「転移した先が石の中だった、みたいなことはないんじゃけええじゃん。それを言い出したら、バーチャルエリアも大概出鱈目じゃけぇね」
「正論パンチの滅多打ちは勘弁せんね」
「口動かしとらんで早う硅砂の採掘しいや」
「アイアイマム」
硅砂採掘をしながらも干城の理屈っぽさは止まらない
「あの機械もなんちゅうかなぁ、硅砂ぶっ込んだらポーション容器がこんにちはするって、材料足らんやろう」
「深う考えたら負けじゃ、素直に受け入れんさい」
「そこで哲学を放棄したら、この世界の科学が発展せんっちゃなかかな?」
「干城はこの世界の科学者になりたいん?」
「嫌ば〜い、この世界の為になんかしゅうって気にはならんば〜い、そがんこつしたらオイはもう駄目ば〜い」
「ほうじゃろ?じゃったら深こう考えるのは止めようや」
「負けた〜、返す言葉もございませんです」
硅砂の採掘は無事に終わった。
バーチャルエリアのポーション工房で下級、中級ポーションもでき、容器に封入してインベントリに格納した。
「グローブスフィア見てたらさ、さっきの硅砂ポイントからちょっと遠いけど上流に滝がある見たいだから見に行ってみん?」
「そこまで一気に飛ぶん?」
「うんにゃ、硅砂ポイントから走ろうか、なんか発見があるかも知れんし」
「ええんじゃない?今日は仕事もせんのじゃけぇ」
二人は硅砂ポイントから川沿いに走り始める
「あれ?あんなとこに村?集落?がある」
「ほんまやね、えらい辺鄙なところにあるね」
「村に出入りする道が分からん、どうやって暮らしとるんやろう?」
「折角やし行ってみようや」
村に到着すると、鄙びた集落だった。
「畑で野菜が収穫できても、毎日収穫できるわけじゃないし、川で魚が取れたとしても、道がないのに塩とか生活物資はどうやって手に入れてるんやろう?」
「あれ?珍しい行商人さんかい?」
「こんにちは、タテキと言います」
「上流の滝を見に行こうと川沿いに走ってたら、この村を見かけたので寄ってみました」
「私はアルテスと言うんだ、そうか上流の滝と言うとベラノイアの滝だね」
「そうなんですね、あのつかぬ事をお伺いしますが、この村への道を見つけきれなかったんですが、生活物資はどうやって手に入れてるんでしょうか?」
「それは、月に一度行商人のエルマイヤさんが来てくれてるから何とかなってるんだよ」
「そうなんですね」
辺鄙な村とも集落ともつかん、道もない購買力も低そうな場所に行商に来ても幾らも儲からんやろう?村の命脈を保つ為に商売にならん商売をしてるのか?
「領主様にも商業ギルドにも見捨てられた貧乏な村だからね、買えるものも必要最低限だが、それでも村に物を運んでくれるエルマイヤさんには感謝してるんだよ」
「領主にも商業ギルドにも見捨てられてる?」
「ああ、大した税を払える訳でもない所に、金を使って村を助けてくれる訳でもない」
「商業ギルドも儲けにならない所に窓口を置いたりしない」
「あの、失礼ながら、街に移り住んだりはしないんですか?」
「それは無理だよ、村を棄てる事は死ぬのと同じだ、私達はここでしか行きていけないんだよ」
道もなか隔絶したこの村では、街さえも外国のようなもんなのか?この村の人達にとって、この村が世界の全てなのか?
「こんにちはアルテスさん」
「おお、エルマイヤさん、いつもありがとう」
「いえいえ、これが私の仕事ですから。そちらの方は?初めましてエルマイヤと申します、しがない行商人です」
「初めましてタテキと申します」
「こんにちはエルマイヤさん、ナツキと申します」
「はい、こんにちは、この村に訪れる人は珍しいですね」
「上流のベラノイア滝を見ようと川沿いに走ってたらこの村を見かけて、立ち寄ってみました」
「ああ、あの滝ですか、一度は見てみるのもいいですよ、もう少し上流に見えますから」
「そうなんですね、では私達は滝に向かってみます」
「はい、お気をつけて」
アルテスさんとエルマイヤにお礼をして、上流に向かって走り出す。
到着したベラノイア滝は高さが目測で40mくらいありそうな滝で、滝壺付近でミスト状の水を感じながら一休みしていた。
「そよ風とミスト状の水が涼しくて気持ちの良かね」
「景色もええし、水も透明度が高くて綺麗じゃねぇ」
「行き当たりばったりやったけど来て良かった」
「そうじゃね、最近のクサクサした気持ちも落ち着いた気がするわ」
「そう言えば葡萄?味と見た目は葡萄の果汁があったんだった、氷を入れて、はい」
「ありがとう、頂くわ」
「グダグダ休むんじゃなくて、こんな休みも偶には良いね」
「ほうじゃねぇ」
雲間から差す陽の光、滝から落ちる水の流れ、森から聞こえる鳥の鳴き声、そよ風と一緒に流れてくる涼しいミスト状の水と草の匂い、二人は1時間ほどその景色を楽しんだ。
「帰りはどがんしようか、バーチャルエリアから帰る?」
「折角やからラエスタまでは、ここに来たんとは違うルートで行こうや」
「そいが良かね、慌てて帰る理由もなかし」
「ほいじゃ、もうちょっと山に寄ったルートで行ってみようや」
「そいで行こうか、帰りはなんがあるかな」
「ウチちょっとワクワクしてきたわ」
「そしたら行こか」
「そうじゃね、行こか」
二人はラエスタに向かって走り出す、冒険をしているようなワクワクした高揚感を持って。




