表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
割とどうでもいい世界で  作者: くまじ
34/40

34 この世界の不条理

「止め」

ディグモンドの宣言で止まっていた時間が戻ったように訓練場にざわめきが戻ってきた。


「タテキ、ナツキ、一旦事務所に戻ろう」

事務所に戻ったディグモンドは二人に話し出す。


「実力は見せて貰った、確かにあれじゃウチの奴らじゃ実力は見せられねぇ、しかも1時間身体強化を維持してあの立ち回りで息も切らしてねぇ」

「正直お前さん達をどう使えば良いのか分からねぇよ」

「如何様にもお使い下さい、奈津希と二人で吶喊して、皆さんで包囲して貰って討ち漏らしを処理して頂いても構いません」


ディグモンドは面白い案だと思った、二人の実力なら不可能ではない、60人の傭兵団でも戦闘に40人、包囲に20人、毎回討ち漏らしが出る、5人一組で50人を包囲に回せば討ち漏らしもないだろう、ディグモンドは干城の案に乗る事にした。


「盗賊は80人は居るぞ、それでも良いいんだったら、その案を採用するが?」

「構いません」

「分かった、二人は休んでくれ、部屋は別が良いか?」

「同じ部屋で構いません」

「そうか、出発は明日の朝だ、部屋は三階の階段を上がって右奥の部屋を使ってくれ」

「分かりました、では失礼します」


二人が一礼して退室したあと、エコバルを呼んでディグモンドは明日の作戦を話し合った。


翌日盗賊がアジトに使っている洞窟の前に来た、裏に抜け穴がある事はディグモンドも把握していた、奈津希は洞窟入り口から薄く魔力を纏った微風を洞窟に送り、内部の通路を把握し、更に二箇所の抜け穴がある事を見つけ、ディグモンドへ地図上に抜け穴の位置を知らせ包囲網を一部修正させた、短時間で発見したその手腕にディグモンドとエコバルは舌を巻いた。


「ディグモンド団長配置はいいですね」

「ああ、作戦開始だ」

「じゃっ、奈津希行こかね」

「ウチは洞窟入って、右の行き止まりを見て奥に行くわ」

「それでヨロ〜」

気楽な散歩のような会話をして、身体強化で一気に洞窟に迫り、見張りの三人をあっという間に声も出させず殺して洞窟に侵入した。


木の陰から様子を見ていたディグモンドとエコバル以下19名の配下は、暗殺者のような手際に唖然とした。


洞窟に入り魔力探知で奥に10人近い反応が一塊になっている場所を見つけた、疎らだったり集まっていたりマチマチだが、奥は人質か何かでその他が盗賊だろうとあたりをつけた。


奈津希が見に行った右奥の部屋は盗賊が戦利品として奪った金品や宝石類が置いてある部屋で、人は居ないので後回しにして、干城と合流に向かった。


纏った人数は盗賊であると確認し真空の魔法で声も音も立てさせずに窒息させた。


途中出会う盗賊は殺していった、奥に居た5人の男達が首領と主要構成員のようで、加減したサンダーで気絶させ生け捕りにした。


最奥の場所は人質ではなく、捕まって盗賊の商品にされた女達だった、魔法の残酷さを初めて知った。手足をもがれて台座に埋め込まれた、生きながら剥製のようにされた者。笑顔を絶やさず、しかし意志を感じさせない目をした者。ただご主人様と呼ぶ洗脳されたらしき者。健常者と呼べる者は一人も居らず、それを見た干城と奈津希は理解する事を脳が拒絶していた、身体は吐きそうになった。


生きて捕らえた者と殺した者の総数は83人で、作戦は完了したとディグモンドの元に向かい、戦利品庫と奥の女達の事を併せて報告した。


「そうか、お前さん達は盗賊の商品を知らずに見ちまったか」

「商品?」

「そうだ」

「なんで人をあないにするんじゃ、何の需要があるんじゃ」

「需要か…貴族の中にはな、そりゃあ嗜好が歪んだ奴が一定数いてな、そいつらに需要があるんだよ、噂じゃ神殿の神官にも一部居るらしいが真相は分からん、あくまで噂だ」

「貴族……貴族…」

「また、あのクソどもか、心底腹ん立つ」


「あの女の人達はどうなるん?」

「見てみないと分からないが、恐らく毒で苦しまないよう安楽死だ」

「そんな、助けられんの?」

「助けるか……どんな状態なら助けたと言えるかだな、体は魔法で治す事はできるだろう、だが心は魔法でも治せない、体を治しても自殺するか、一生その記憶に苦しむかだ、望まない生よりも死の安らぎの方が慈悲なんだよ」


奈津希と干城は何も言えなかった、ディグモンドの言う事が理解できた、できてしまった。だが、理解できる事と納得できる事は別だ。だからと言って今の自分に何が出来る、心の安らぎとは記憶を消すことだ、自身の失った一部の記憶を思うと、悪い記憶を失うのは良いだろう、だか、それに伴って忘れてはいけない記憶まで失ったら?二人は自問自答せずにいられなかった。


「何にしろお前さん達は合格以上だ」

「お前さん達は少し休め、片付けは俺達がやる」

「分かりました、そうします」

二人はその場に木を背にして座り込んだ。


ディグモンドはエコバルにアジトの捜索と周辺に待機している団員に集合するよう指示を出した。


ディグモンドは苦々しそうな顔で座り込む二人を見ながら、2人だけで83人の盗賊を相手にし、主だった者だけを生け捕りにして壊滅させる、圧倒的な武力と制圧力がありながら、自分達の力に溺れず、凄惨な場を見ても心の安定と理性的な判断を保ち、不条理に憤り、不条理に死ぬ者に想いを寄せられる子供らしからぬ12歳の子供。この歳でどんな生い立ちで、どんな修羅場を潜り抜けたらこうなるのかと思った。


レブテニィ傭兵団が用意した数台の荷馬車に盗賊と商品にされた女達、盗賊が溜め込んだ金品を積んで、拠点へ帰投した。


干城と奈津希はディグモンドの書簡を持ってフリーランスギルドへ到着した。


ソフィアに書簡を渡し、盗賊討伐の内容を話し商品とされた女達を思い出して、盗賊や貴族に憤りを感じずにはいられなかった。


その日は何もやる気にならず宿で休む事にした、翌日も仕事をする気にはならなかったが、奈津希と二人で盗賊は見つけたら逃さず殲滅すると心に決めた。


更に翌日漸く二人はギルドに出向いた、ソフィアから盗賊討伐の報酬としてレブテニィ傭兵団から金貨5枚づつの報酬が届いていると言われた、かなり破格の報酬らしく、あの盗賊はかなり溜め込んでいたらしい、大きい金額の筈なのに少しも嬉しさはなかった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ