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割とどうでもいい世界で  作者: くまじ
32/40

32 面倒事の芽は早めに対処

少しペースを落として帰った二人は昼前頃ギルドに到着し、納品と買取りを出して、依頼終了報告をしていた。


「ソフィアさん、薬草採取依頼終了しました」

「お疲れさまです、あれ?でも早いですね、往復4日はかかる場所でしたが」

「頑張って走ってきたんよ」

常識相談役として専属受付嬢に近いソフィアは干城と奈津希に段々と慣れて、笑顔で対応していた


「そうなんですね、それではカードをお預かりします」

「はい、どうぞ」

「ソフィアさんどうぞ」

カードを受け取ったソフィアが端末に情報を打ち込もうとしたとき納品物と素材の査定結果がソフィアの元にきた。


「はい、納品物の薬草はどれも優良です、依頼完了として処理します」

「ありがとうございます」

………

「それで報酬ですが、薬草は全て2束づつの優良品で報酬は1.5倍の24レラ、トリントブグル2頭分の素材はどれも解体の手当てが良いと、角が480レラ、肉が1400レラ、合わせて2004レラです」

「肉が高価たかいんですね!」

「はい、トリントブグルは気性は荒いですが、草食で肉質も硬すぎず、非常に味が良いと少しお高めの肉なんですよ、それをまる2頭分ですから」

「そうなんですね、報酬は奈津希と半分づつ口座にお願いします」

「はい、承知しました、そのように」

……

「はい、依頼完了手続きと報酬の振り込み終わりました、カードをお返しします」

「ありがとうございました」

「ありがとうございます」

二人はカードを受け取り、ギルドの食堂で一休みして話し合う。


「これからどないするん?」

「訓練場で模擬戦ばしようか」

「あ〜…そうか…そうじゃね」

「面倒くさかけど、やらんともっと面倒になるやろうけんね」

「しゃあないね、ウチら稼ぎすぎみたいやし」

「ある意味単純で助かりはするんやっけど」


二人の来歴を知らない者には12歳の天使の様な容貌とヘイゼルの瞳を持った可愛らしい子供でしかない、たが中味は57歳と55歳の社会人だ。


二人は訓練場で木剣ではなく、刃引きしたロングソードを手にとってお互い打ち合う模擬戦を始めた。


ギルドで注目の二人の模擬戦、パラパラと集まった見学のフリーランサー達は子供が木剣ではなく重い模擬剣を手に取った事に違和を感じたが、二人が剣を交えた瞬間、訓練場の空気が一変した。ガギン、と重い金属音が響く。


身体強化による、素早い踏み込み。

初動が消えた刺突。

それを奈津希が平然と受け流し、干城の首元へ斬り返す。

干城はそれを弾き、バックステップと同時に無詠唱の火球を放って牽制する。


周囲の柵に集まりだしたフリーランサー達から驚愕の声が漏れる。


干城は素早く攻撃に転じる、奈津希は干城の斬撃を受け流しつつ、同時に水球による攻撃を行っていた。

回避し、そこへさらに斬りかかる。


攻撃した側は、次の瞬間には防御姿勢を取っている。

息の根を止めるかのような猛攻を、互いの呼吸、視線、重心、足運び、魔法、フェイクを読み合うことで、受ける、流す、回避する。

目まぐるしく移り変わる攻防。


二人は、そのまま1時間程の間、身体強化を維持した模擬戦を続けた。

やがて同時に剣を引き、残心の後に互いに礼をして息を整える二人。


決着はつかなかった。

だが、決着をつける事は目的ではない。

目的は自分たちの実力の一端を見せつける事だ。


二人はこれまで他のフリーランサーと仕事では合わないだろうと余り関わりを持たなかった。

昇級は早く、誰も受けないような割の悪い残り物の依頼で普通以上の稼ぎを出している。


これまでは直接的な嫌がらせこそなかったものの、周囲からの嫉妬や値踏みするような視線は感じていた。

放っておいても、問題ないかもしれない。


だが、二人は人生経験則で知っていた、このまま放置しても、口で言っても、この手の手合いは絶対に解決しないと。

ここはフリーランスギルド、実力主義で、暴力を生業にした人間たちの集まりだ、必要以上の能力の秘匿はむしろ下策。


なら話は早い。自分たちの暴力を見せつけ、無言で黙らせる。売られた喧嘩は買うが、無駄な喧嘩の芽は事前に摘む。それが干城と奈津希が出した答えだった。


身体強化を維持し続け激しい剣戟を交えながら、無詠唱の魔法で牽制や攻撃を織り交ぜる二人の子供の攻防に、見ていたフリーランサー達は戦慄した。


二人は模擬剣を元の位置に戻しながら話をする


「良い感じに体動かしたけん、汗掻いたし風呂屋行こか」

「そうじゃね、その後服買いに行こうか」

「あ〜、大分すり減ったもんね」

「そうじゃ、繕うにも限度はあるんよ」

「久し振りにリスニラ食べたい」

「それも美味しいけど、ウチはお好み焼き食べたい」

平和そうな話をしながら二人は訓練場を出ていく。


そんな二人をこの場のフリーランサーは誰一人言葉もなく見送った。



風呂を堪能しエントランスで休憩しながら二人は話し合う


「風呂上がりは牛乳が欲しゅうなるけど、家で風呂上がりに牛乳欲しゅうはならんとよね」

「風呂言うか銭湯上がりの牛乳は様式美やろ」

「銭湯っていうか、壁に彫刻があって、湯船の角に柱がある風呂は銭湯っていうか、テルマエって気いするとばってん」

「でも牛乳欲しがるんは銭湯じゃないん」

「!……負けた〜、ぐうの根も出ん」

「じゃったら通りの食堂でリスニラ食べて、その後服買いに行こか」

「アイアイマム」

「アンタ、ソッチ系読んどったん?」

「うんにゃ、どっちかと言うとスローライフ系?」

「農業無双みたいな?」

「まぁ、そんなんもやっけど、農業がそんな楽しい、素晴らしいんだったら、嫁の来ても後継者不足にも悩まさるっかと思いながら読んでた」

「歪んどるね〜ラノベは素直に楽しみや、てか、アンタやっぱりベテラン妖精なんじゃないん?」

「ちっ…ちゃうわ、それよりご飯食べ行こか」

「ふ〜ん…まぁええけど」

久し振りのリスニラは美味しかった。


「こっちの服結構すり減るから、多めに買うで」

「三着じゃ着回し結構大変やったからね」

「そおなんよ、だから今回は幾つかの店を回って十着くらい買おう思うとるんよ」

「買えるか買えないかで言えば、貴族や裕福な商人の服でも買えるっちゃなかと?」

「あんなん動きにくいだけじゃ」

「前行った高級料理店に行くときに着る服とか」

「なるほどじゃね、そういうのを持っとくんも必要か、そういう服屋にも行こか」


その後数軒の店をまわり、奈津希が男物のズボンを履いて白系のシャツにリボンを付けて、サスペンダーでスボンを吊った姿に、店員さんが新たな発見みたいな顔をしていた、ドレスコード用の服は買ったが奈津希は余りお気に召さなかった。











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