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アラフォーおっさんのSF無双記~最強コロニーとロボットをもらったので全宇宙を自分と美少女クローンの遊び場とする~  作者: 白銀天城


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復讐と結末

 宇宙空間で行われる復讐劇は、アビスドラグーンが徐々に押していく。雷の出力も機動力も、ブラックアビスと同等だが、戦い続けてきた実績が後押しし始めている。


『終わりにするんだ、今日ここで!』


 カイニスの怒気を孕んだ操縦が冴えわたり、ロッドの精密なサポートがそれに噛み合っていた。胴体を刃に変え、雷を纏って斬りかかるたびに、黒い龍の装甲が削れていく。


『このまま押し切るぞ、カイニス!』


『ああ……父さん!』


 その瞬間だった。カイニスの呼吸が乱れた。アビスドラグーンの動きが、明確に鈍くなる。


『くっ……頭が……!』


『カイニス!?』


 画面に映るカイニスが苦しそうに呻く。長時間の高出力操縦が、限界を超えていたのだろう。人体実験の適合者とはいえ、生身の脳と神経がどこまで耐えられるかは別問題だ。激しい頭痛にカイニスが頭を抑える。そこへ追い打ちがかかった。


『保険はちゃんとかけてあるのよ。哀れな実験体』


 ミザリアの冷たい声が通信に乗る。同時に、ブラックアビスの頭部から異質な信号が放たれた。モニターに異常が検知される。


『ぐあああっ!? なんだこれ……頭が……割れる……!』


「ロッド、説明しろ」


『わしにもわからん! カイニス! しっかりするんだ!』


『オホホホホホ! こんなこともあろうかと、全実験体に停止信号を仕込んであるのさあ! 共鳴信号が鳴り続ける限り発動する! お前はもうまともに操縦することもできない!』


 アビスドラグーンが一瞬、完全に停止した。ロッドが即座に複座から操縦を引き継ごうとするが、実験体ではない彼では機体の真価を引き出せない。動きは明らかに鈍く、反応も遅れる。


『くっ……動かない! 大丈夫かカイニス! 気をしっかり持て!』


『と、父さん……うがああぁ!?』


『カイニス! おのれ息子によくも!』


 この隙を逃さなかったブラックアビスが、猛攻を仕掛ける。雷の奔流がアビスドラグーンの胴体を次々と捉え、爆破していく。


『ほらほらどうしたんだい? 頭痛が止まらないだろう? 暴れる実験体を無理やり大人しくさせるための装置だからねえ。前が見えているかも怪しいんじゃないかい? ハハハハ!』


『うあああぁぁ!?』


『卑怯な! どこまでも卑劣な女よミザリア!』


 アビスドラグーンの20あった胴体が、あっという間に半分まで減った。抵抗できず、じわじわとなぶり殺しにされていく。


『終わりよ、実験体。お前たちは最初から、私の手の中にいたのさ』


『それでも……それでも、お前と刺し違えてでも、この恨みは晴らす!』


『できっこないんだよ、下賤な実験体が! この私に逆らったことを、地獄で後悔しな!』


 カイニスとロッドの必死の操作も虚しく、アビスドラグーンはじりじりと後退していく。カイニスは頭痛に悶え、意識が飛びそうになっていた。ここで力尽きるのか。俺はソファーから身を起こした。


「…………つまらんな」


「ハヤテ様?」


 結局同じか。弱いやつは強いやつに食い物にされる。下民は上級国民には勝てず、抗えず、ただ毎日何をされてもやり過ごすことしかできない。今みたいに立ち向かっても潰されるだけ。同じだ。この世界も、前のクソカスみたいな世界と。復讐すらさせてもらえない。非道な人体実験を続けていたようなやつでさえ、金と権力によって守られる。かつての俺のように、底辺が何を言おうと、何も変わらない。


「パラドクスを出す。どうせ遮断方法くらいあるんだろ」


「両者の中間でビームエネルギーを拡散させてください。あとはこちらでやります」


「いい子だ」


 パラドクスに転送。俺はコクピットに乗り込むと、即座に戦場へ出た。


『コスモクラフト? なぜ1機でこんなところに』


「お仕置きの時間だ」


 俺は二人の龍の間に割り込み、両手を広げた。パラドクスの全身から極薄のビームの膜が、一瞬で宙域に広がる。ブラックアビスから放たれていた微細な共鳴信号を、根こそぎ遮断し、かき消した。カイニスの苦悶の声が、ふっと途切れる。


『頭が……軽い……?』


『カイニス! 無事か!』


「もう動けるだろ」


『ありえん! 停止装置は動き続けているのに! おのれお前のせいかコスモクラフト! 邪魔するんじゃないよ!』


 ブラックアビスの胴体と尻尾の部分がブレードになり、パラドクスへ迫る。俺は両手にビームの刃を創造。交差して解き放つ。


「ビームブレイド、クロス!!」


 巨大なビームの刃が回転しながら敵の胴体を切り刻む。抵抗すらなく刻まれていく。これで尻尾と胴体5個は減ったな。


『バカな!? ブラックアビスの装甲を!?』


 続けざまに、両手に極太のビームを収束させる。


「消えちまいなあ!!」


 まっすぐ放たれた光の渦は、ブラックアビスの胴体パーツの大半を一瞬で消し飛ばした。黒い龍はバランスを失い、大きくのけぞる。


『うあああああ!? なっ……えっ、何だ今の光は……ありえん! そんなちっぽけな機体から出せる火力じゃない! 何なんだよお前はああぁぁ!!』


「とどめは譲ってやる。行け」


『すまない! 出力全開!』


『チャージ完了! 今なら行けるぞカイニス!』


 カイニスが気力を振り絞った。残った胴体すべてに雷を纏わせ、全身を青白い光で包み込む。


『お前を……倒すまで……オレは生きるっ! ライトニングウウウゥゥ! クラアアァァッシュ!!』


 アビスドラグーンが特攻を開始した。雷を帯びた巨体が、一直線にブラックアビスへ突き進む。ミザリアが慌てて回避姿勢を取ろうとするが、もう遅い。


『こんな……こんなことが……この私が! 私の実験が!』


『消えろミザリア。うおおおおぉぉ!!』


 激突。次の瞬間、宇宙空間に凄まじい爆発が広がった。黒と青の光が混じり合い、衝撃波が残骸を吹き飛ばしていく。


『私は、私は負けていない! 負けるはずが……うわあああぁぁ!?』


 ブラックアビスの頭部が完全に消し飛び、爆発の光が収まった。そこには半壊したアビスドラグーンだけが、静かに浮かんでいた。


『……やったのか』


 ロッドの掠れた声が聞こえる。


『ああ……やったよ、父さん』


 カイニスの声には、深い疲労と、確かな達成感が混じっていた。俺はパラドクスのアームを軽く振った。


「お疲れ。復讐達成だな」


 これでいい。俺が見たかったのは、こういう終わり方だった。


『終わった、終わったんだ。やった、やったぞ!』


『ようやく悲願が叶ったか。無理をさせたなカイニス』


『何を言うんだ。父さんがいなければ、オレはここにいないさ』


『そうか、そう言ってくれるか……』


 そしてドラグーンは、移動を続けていた彼らの基地へと帰った。意外と近くまで来ており、収納してすぐ自動修理装置が働いていく。そしてすべてを終えたカイニスとロッドが出てきた。俺はネオの仮面をつけて出迎える。


「まずはおめでとうと言っておこうか」


「礼を言うのはこちらの方だ。本当にありがとうネオ」


「何から何まで世話になった。ご期待には添えたかな?」


「ああ、概ね満足だ。いい復讐だったぞ」


 少し介入しすぎたかもしれんが、見たいものは見れた。ならこのくらいでいいのだろう。龍のバトルは見応えあったぞ。


「あまりにも無能でつまらなければ始末することも考えたが、満足したので不問とする。好きに生きていけ。もう会うことはない」


「そうか。協力してくれたが、味方というわけではないものな」


「味方など増やせば邪魔だからな。俺について口外することは禁ずる。既にこの基地にあったデータからも消した。お前たちとは最初から出会っていない」


「わかった。それが君の意志なら従おう。ありがとうネオ」


「改めて感謝を。さらばだ、ネオ」


「ああ、達者でな」


 2人に軽く手を振って、マントを翻して帰る。これでいい。さあ次はどんな楽しみが待っているかな。

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