コロニー対抗、スターダストロード開幕
カイニスたちと別れて数日後。適当にドラグーンとか色々について調べてみた。今まであいつらが襲っていた連合のコロニーは、どれも軍事色が強く、一般人が住むようなものじゃなかったみたいだ。中立コロニーはほぼ襲っていない。本当に復讐のために動いていたんだなあ。
「復讐は終わり。見届けた俺たちも暇になる、か。さてどうするかね」
連合の人体実験をリークしてみたが、どこもニュースにするだけで、ミームにはなっていない。つまらん。
「アイドルライブが決勝戦らしいですよー」
「まだやってたのか。誰が残ってる?」
「インフィニットフラワー、ステラリンクは通過していますわね。同盟軍のアイドルと、中立コロニーのグループが存在するようですわ。ここから会場コロニーまでレース形式で移動し、その模様を生中継するとか」
全チームが同じ場所からスタート。スタート地点から会場コロニーまでのルートは複数用意されている。途中でチェックポイントがあり、到着順やパフォーマンスでポイント加算。とのこと。
「あんまアイドル関係なくね」
「チェックポイントでライブしたりするみたいですよぅ。ずっと配信するみたいですし、とにかく忙しそうですねー」
「これで莫大な賞品がどうなるのか、見ものですわね」
色々もらえるが、新品コロニーとその宙域の権利はでかすぎるからな。そりゃ躍起にもなるだろう。面白い。3人でモニターの前に座る。開会式がもうすぐ終わりそうだ。ホログラムに巨大なカウントダウンが表示される。宇宙空間に浮かぶ4隻の宇宙船が、スタート位置に整列していた。
『イエー! それじゃ、コロニー対抗アイドル選手権・準決勝進出チームによるスターダストロードを開始すんぜえ! スタートまであと10秒! 9! 8!』
「実況のテンションがうぜえ」
「あまり馴染みがなくて新鮮ですわ」
「わたしもー。こういうノリなんですねぇ」
『3! 2! 1! スタート!!』
信号とともに、4隻の宇宙船が一斉に加速した。推進器から青白い光が噴き出し、静かな宙域を切り裂いていく。
『先頭はステラリンク! 次いでインフィニットフラワー! その後ろを同盟代表ブレイズノヴァと、注目のダークホース、ツクヨミが追いかける! 最初に仕掛けるのはどいつだ!』
モニターには、各船の現在位置がリアルタイムで表示されていた。序盤はほぼ横並びだ。
「意外と差がつかないな」
「スタートダッシュで無理をすると、後で燃料や機体に負担がかかるのでしょう。まだ序盤ですし、相手の出方を見ているのでは?」
「つまんなそー。もっと飛ばせばいいのにー」
リリーがふんぞり返りながらポテチを頬張る。シオンは優雅に紅茶を傾ける。俺はソファに深く沈み込み、画面を眺めた。しばらくは特に何も起きない。普通の宙域を、4隻が一定の間隔を保ちながら進んでいくだけだ。小惑星帯もなければ、敵影もない。ただ静かに、星々を背景に航行している。
『現在、各チームとも安定した航行を続けてるな。最初のチェックポイントまで、あと約2時間。なーんか起きたりしねえのかい?』
「平和すぎて逆に不安になるな」
「妨害は中盤以降でしょうね。序盤から壊されては配信が成り立ちませんもの」
「なるほど。視聴者を引きつけてから派手にやるわけか」
俺はあくびを噛み殺しながら、グラスの氷を鳴らしてコーラを飲み干した。しばらくはこのまま、のんびり観戦できそうだが、平和がいつまで続くのか、楽しみにしておこう。
「ノイジー、同盟とブレイズノヴァとツクヨミの情報は?」
「同盟軍選出アイドル、ブレイズノヴァ。3人組で活動歴5年。歌唱力に定評があり、アニメやドラマのテーマ曲多数。ツクヨミは中立コロニー出身ですが、プロフィールの多くが不明。2人で活動しているようです。表舞台に立つこと自体が少なく、配信メインで活動していますね」
モニターに続々とプロフィールや、この大会を通して何をしていたのかが表示される。
「独自に戦闘記録と活動宙域を調べておきました」
「よくやった」
するとシオンが何かに気づいたようだ。
「ツクヨミのこれは……アイドルというより、妨害で上り詰めたようですわ」
戦闘記録がかなり多いな。ツクヨミ自体の人気もあるんだろうが、ライバルを戦艦で倒してのし上がっているように見える。
「おぉ、配信始まりましたよ」
4チームの配信がそれぞれ始まる。インフィニットフラワーは相変わらず、元気なセンターをおしとやかな子がフォローしつつ、金髪の年長者が引き締めて進行していく。今は配信ルームのソファーからお届けされていた。
『というわけでレースだよレース! ここまで来たら絶対勝とうね!』
元気だねえ。俺も若い頃は……いやあんなテンション高くはなかったな。
『ふふっ、スタートから全力では、後半もちませんよ』
『まだまだ先は長いわ。体調管理だけはしっかりしていきましょう』
ファンのコメントも安定しているみたいだし、ここは問題も起きないだろう。
『はーい! じゃあさっそく歌っちゃいますか!』
『急がないでと言ったばかりでしょう。もっとのんびりトークしていましょうね』
『のちほど歌のコーナーもあるから、みんな期待していてね。それじゃあ最初のトークテーマは……』
普通すぎるので違う配信へ。ステラリンクを見てみる。5人でテーブルを囲み、座って何やら話している。
『……さてなんとか決勝まで残れたけれど、ここからはさらに厳しくなる。勝ち抜くために私たちに欠けているものはそう、団結力よ!』
『そうね、みんなソロで一定の人気と実力を持っていた。歌・ダンス・表現力・曲構成ができていたわ』
『反面、結成期間が短いため、メンバー間の深い絆やファンとの積み重ねた関係性は薄い。ソロの寄せ集めという感想を抱きやすい』
『そこで! みんなで色々やって、ステラリンクとして完成すべし! わー!』
5人の前に鍋セットが設置されていく。鍋を食べながらトークしていく流れらしい。しかし豪華なセットだ。こっちも晩飯は鍋にしようかな。
「なるほど、弱点を理解していたか」
「まあ寄せ集めじゃ優勝は厳しいですよねー」
「仲良くなる過程まで見せるとは、思い切りましたわね。中々の戦略ですわ」
コメント欄はそれぞれのファンが、好きな相手にコメントしている。中にはこれまでのステラリンクの活動からか、配信内でのお約束っぽいものも見られる。つまり完成はしていないのだ。
「完成が間に合うかどうかが鍵だな」
他2チームは早速歌っていたり、今回のレースについて話している。まだまだ妨害は起きないだろうし、しばらく寝るか。
「なんか起きたら起こせ。寝る」
「おやすみなさいませ」
「こっちで見ときますねー」
仮眠を取って数時間。ついに何か起きたようだ。
「どうした?」
「なんかキラキラした場所に入っていきますよ」
『さーあ最初の難関。光の迷宮だあ! この宙域は光が乱反射し続ける、厄介な環境だ。特殊な鉱物の影響で光やセンサー波が鏡みてえに反射するぞ。目視が当てにならない。しょぼいセンサーじゃ一部誤作動を起こす。自分たちの位置すら正確に把握しにくくなるぜー! けどそれでも動画映えを狙ってくのがアイドルだ! このキラキラを利用してもっと輝いてみせやがれ!』
大小様々な流星群と小惑星が漂っている。非常にゆっくりだが、動いているようで、光を反射して輝いていた。うっすらと、オーロラや蜃気楼のように、宇宙船が浮かび上がったりしている。
「ほほう、面白いな。ノイジー」
「問題ありません。楽園の科学力なら、すべてを追跡可能です」
「よし、こっそり移動してついていくぞ」
さて最初は誰がどう出る? 楽しみだ。




