地球連合のコロニーへ行こう
戦闘が終わって3日後。アイドルはサンライトガーデンに向けて移動中。護衛の戦艦とワルキューレ部隊は緊張感が漂っている。出せる機体は全部出しているんじゃないかというほど、暗黒の空間に白い機体が飛んでいた。
「龍は来なかったな」
あれから龍は来ていない。ネクサスは一時的にエネルギー不足になったが、今は復旧し始めている。犠牲者も少ないらしい。ハイパーカイザーネクサスは修理に入る。ちなみに田中の機体も損傷が激しく、自分の宇宙船内で修理しながら、サンライトガーデン側についてきていた。
「破片を調査しましたが、少し硬いくらいでした。パラドクスのような自己修復機能はないと考えられます」
「もっとかき回してくれると期待したんだがな……まあいい、今日の昼飯は?」
「今日は炒飯と餃子でーす!」
チャイナ服を来たリリーが立っていた。足の出るタイプで、アニメとかでよく見る服だ。指さすテーブルにはできたての料理が並んでいる。
「ふはははは! リリーちゃんは何を着ても似合うぞー!」
「否定はしない」
「ちっがーう! 褒めるんですー。どうかわいいですかー?」
「かわいい前提かい。元気な感じがよく出てるよ。似合ってる」
「よーし! ほらシオンもすみっこにいないで出てくるの!」
シオンも同じように足が出るチャイナ服だ。恥ずかしいのか壁際でもじもじしている。かわいそうだからフォローしてやろう。
「きれいだぞシオン。よく似合っている。嫌なら着替えていいからな」
「ありがとうございます。これはちょっとはしたないですわ」
「えー、似合うからいいじゃん! ハヤテ様も似合うって言ってくれたよ」
「お前は少し恥じらいを覚えろ」
飯が冷めるので食卓につく。炒飯がパラパラでとてもうまい。具は肉と卵とネギか。シンプルだからこそ力量がわかる。
「うまいなこれ」
「でしょー? シオンと一緒に作りました!」
「ほほう、やるじゃないか」
「ふふっ、リリーが一緒に作りたいって言うものですから、頑張りましたわ」
「よくやった。完全にプロだな」
餃子もノーマルと野菜餃子がある。どちらも実にうまい。焼き加減もばっちりだ。
「はいあーん!」
「はいはい」
リリーから餃子を食わせてもらう。酢コショウつけるとか通な食い方してやがるな。とてもうまいぞ。
「はい次シオン!」
「し、失礼いたします」
シオンは少し緊張しながらそっと出してくる。餃子ふーふーしてから出してくる。こういう動作だけでも個性が出るようになったか。
「うむ、うまい。よくこれだけ作れたな」
「結構大変でしたよー。まあ楽しかったんですけどね」
「できることが増えるのはいいぞ。財産になる」
「ハヤテ様も、今度は一緒にやりましょうね」
「わかった。何作るか考えておこう」
そんなこんなでランチタイム終了。しばらくベッドでごろごろしながら次のイベントを待つ。
「ネクサスとサンライトガーデンに打診がありました。同盟と連合が加盟国にすることを企んでいるようです」
「手が早いねえ」
どちらも部隊の損傷が激しい。中立コロニーとして武力を維持できなくなれば危険だ。だからこそ連合や同盟は自陣に引き入れるチャンスと見たのだろう。
「受けたりはせんだろ」
「既に断ったようです。これでさらにピンチになりましたね。イベントが起きる可能性が上がりましたよ」
「そいつはいい。そろそろ進展が欲しかったところだ」
「最新の情報です。予選会場が決まりました。各地の会場で、四組が順番にライブをします。サンライトガーデンの他は3組とも地球連合。ネクサスは3組ともコロニー同盟のアイドルです」
「詰みやん」
間違いなくたどり着くまでに死ぬ。ハイパーネクサスがいるぶんだけまだあっちはマシだが、サンライトガーデンは詰みに近いだろう。
「どうするつもりなんですかねぇ。ワルキューレだけじゃ無理なんじゃないですかー?」
「新型スーパーロボットが開発中です。当日までに間に合わせるつもりのようですね。次の行動をどうぞ、オーナー」
「ここまできてアイドルが死んで終わりもつまらんな」
「こっそり護衛してあげましょうよ」
「同盟や連合が勝つよりは面白そうですわね」
というわけでサンライトガーデンと戦う地球連合のアイドルを調べる。まあまあ質がいいらしい。
「3組のうちのリーダー格がこいつらか」
「2位まで勝ち抜けらしいですよ。これは組んできますねぇ」
「つまらんなあ……ん? ほほう、男の影か」
ノイジーの集めた情報を見ていくと、リーダー格に彼氏疑惑があるらしい。巧妙に隠し続けているらしいが、俺たちなら暴き出せる。
「彼氏の噂事態は存在していますが、証拠があがっていない状態ですね。こちらの調査では、芸能活動以前から付き合っている彼氏がいるはずです」
「アイドルやる前から男がいたってことか。クソやん。潰そうぜ」
客を舐めやがって。どの面下げてアイドルやり始めたんだよ。そういう舐め腐った女は潰そう。当日に情報開示を狙って行動開始。
「所属コロニーはライブ開催地の近くです。調査に行くならちょうどいいですね」
「楽園ごと移動する。現地へ急げ」
「了解。30分でつきます」
そしてやってきました連合コロニー。周辺宙域はバトルフレームが見張り、コロニー内部は連合関係会社の製品で固められた、まさに連合の街である。
「普通っちゃ普通なんだろうなこれ」
観光がてら3人で来てみた。今回は全員日本人風の顔と髪色である。いつものように極薄のナノマシンフェイスマスクによって姿を変えている。油断はしないのだ。
「治安も悪くありませんわね。ゴミも落ちていないし、喧嘩も見ないですわ」
「だがアイドルはクソと。まあ女なんざそんなもんだろう。作戦よろしく」
「アイドルの携帯端末に接近してください。ハッキングします。ちょうど野外ライブがあります。潜り込んでください」
「ほいほい」
こっちの端末でどこでもフリーパスだ。会場に潜入。アイドルの楽屋付近に行く。
「ダウンロード完了まで10秒」
近くをアイドルが通り過ぎていく。警備は厳重で、何人ものガードが一緒だ。彼氏もちの護衛ご苦労様。
「ダウンロード完了。いつでも撤退してください」
「ライブ見て行くか?」
「あんまり好きじゃないからいいでーす」
「私もあまり」
俺も好みじゃないので撤収。なんか私アイドルじゃなくてアーティストですけど? みたいな曲が気に入らん。客の求めているものを出せ。
「おいあんたら! 勝手に入ってこないでくれ!」
反射的に声のした方向を見ると、スーツを着た連中が数人いた。声をかけられたのは、俺たちじゃないみたいだ。
「サブロウ・ミシマ中佐だ。監察に来たと言って伝わるな?」
「こ、これは失礼を……なにか不手際でも?」
偉そうだった男は急にぺこぺこしだした。中佐ってことは軍人か。アイドルの護衛にでも来たのだろうか。
「あいつの端末もいただく」
「了解。そのまま30秒停止してください」
だがじっとしていてくれない。大人数用の楽屋みたいな場所に入っていく。扉の前で待つしかない。集音マイクで音声を拾ってみよう。
「必ず1位通過するようにとのお達しだ」
「それはもう、審査員も半数はそのつもりでいます」
「ぬかるなよ。軍はこんなことでも同盟に遅れを取るわけにはいかんのだ」
「はい、成功の際はぜひうちをよろしくお願いいたします」
審査員買収済みかよ。だが半分か。まだやれることはあるな。むしろクリーンな組織じゃ脅迫できなくてめんどい。
「ねえねえ、ここ芸能人も多いでしょうし、根こそぎ情報いただいちゃいません?」
「いい案だが時間がかかるぞ」
「既にめぼしい人物の端末はハッキング済みです」
「まあなんて優れたAIだろうねえ。俺の仕事が減って助かるわあ」
「ハッキング完了。アイドルもライブの時間でしょう。不審者に間違われたくなければ撤退をおすすめします」
「はーい撤収」
監視カメラから人のいない通路を選んで撤収。さてさて適当な喫茶店のテーブル席でございます。そう、成果確認の儀である。なんかテンションおかしいな俺。
「アイドルと彼氏とのメッセージはすべてコピー済みです。さらに数人の芸能関係者の弱みと、当日の審査員のうち誰が金と権力で動いたのか判明しました」
「ご苦労。素晴らしい成果だ」
「うわぁ……芸能界って薄汚ーい」
「これは夢も覚めますわね」
これは視聴者にはお見せできないねえ。まあ人間なんて所詮こんなもんよ。誰もが権力や暴力に抵抗できるほど強くはない。強くてもクズはいる。つまり人間なんぞにかかわった時点で負けなのである。
「これサンライトガーデン勝てるのか?」
「旗色は悪いように思えますわ。ここまで露骨に不利では、行動も制限されて萎縮してしまうものです」
「だからこそ引っ掻き回すと楽しいんじゃないですかー」
「まさにそのとおりだ。というわけでぐっちゃぐちゃにしてやろうぜ」
「ふふっ、とても楽しそうなお顔ですわ」
ライブ前日まで準備を続けよう。楽園に帰還して、ホログラムモニターの前に座る。あらゆる情報と敵アイドルの歌。そして通話記録。その他とにかく調べていく。
「よし、音MADでいこう」
地獄の編集作業が始まった。




