コロニー対抗ライブ開始
いつものように俺の部屋で会議。敵は無事殲滅。ワルキューレ部隊もあまり被害は出ていない。アイドルも無事。上等と言えるだろう。
「敵戦艦にアイドルは乗っていなかった模様です」
「だろうな。乗っける意味がない」
戦闘で死んだらアホみたいだしな。とりあえずワルキューレ部隊の力もなんとなく把握できた。ノーマル以上スーパーロボット未満だな。
「まさかロボットの戦闘があるとは思いませんでしたわ」
「あれでしょ、コロニーの強さアピールのために組み込んだんでしょー?」
「いい勘をしていますね。軍事力を見せつける名目もあります」
「アイドルのイベントでやんなや。アホなのか」
「より戦闘させて、停滞した技術向上を図りたい企業の思惑が一致したのでしょうね。どうあってもパラドクスレベルの機体は作れないのでご安心を」
だとするならまた襲ってくるだろう。コロニー自体が古いなら、付け入る隙くらい存在するはずだ。女に興味なんざないが、でかい大会を好き勝手に引っ掻き回すのは気分がいい。少し遊び場としてとどまるとしよう。
「ハヤテ様、アイドルが生存報告の配信やってますよ」
「見てみるか」
シオンがケーキを切り分け、紅茶と一緒に配ってくれる。鑑賞タイム開始だ。
『みんなー、心配かけてごめんねー! わたしたちは大丈夫だよー!』
『コロニーの被害も軽微とのことで、安心しました』
『流石はワルキューレ部隊ね!』
アイドル衣装のまま、どこかの部屋で放送している。商魂たくましいやつらだ。コメントも大量についている。そのまま1曲歌ってモノマネしたり質問に答えたり、アイドルの配信っぽいものを続けていた。
『これからもがんばるから、応援してね! ばいばーい!』
『次はコラボで会いましょう!』
「コラボ?」
「別のコロニーとの合同ライブや特別配信も企画中とのことです。おそらく全世界に放送される番組がなく、知名度と宣伝力で勝てないなりの苦肉の策でしょう」
ホログラムに予定表が出てくる。結構な過密スケジュールなんだな。個別の配信まで含めると休みが少ないだろ。追う方も大変だな。
「でもさー、それって敵に狙われる機会が増えない? 危ないよ?」
放送が終わってナチュラルに俺の膝枕で寝転ぶリリー。それを見たシオンはそっと俺の横に座った。
「危険は承知でしょう。警備は厳重にするはずです。オーナーが入り込むなら調べておきます」
「あまり接触はしたくないが……そうだ、今回の戦闘で俺たちの戦闘は見られたよな? どうなった?」
「反応は様々ですが、ビームフィールドにより記録には残っておりません。あくまで現場の証言のみ。ノーマルタイプ3機が突然現れて去っていったという情報が共有されるにとどまります」
問題なしだな。これからもこの手段は使っていこう。気分よくコーラを飲み干し、次の予定を立てる。
「次の脅威を調べよう。必要なら排除する。戦艦は陽動の可能性もある」
「本命は暗殺。工作員が潜んでいるという可能性も捨てきれませんわね」
「えー! そんなのつまんなーい!」
リリーがベッドでじたばたしている。俺もつまらんからそんな終わりは認めない。
「軍が守っているのなら、そうそう遅れは取らないだろう」
「インフィニットフラワーのコラボ予定は明日の午後2時。相手コロニーからは軍艦15が帯同。狙うならその時ですね。ライブ中以外は軍が守りを固めています」
アイドルの護衛に軍艦が大量に出るか。滑稽すぎて愉快だな。これは見ものだぞ。だがそれも死なれてはつまらん。
「適当に相手のアイドルの特徴とか調べておくかね」
「コロニー同盟の一部が用意した、20歳前後の5人組です。スペックは悪くありませんが、公共放送などにおけるゴリ押しが少々評判を悪い方に向けさせています」
当然だが俺の心は動かない。歌もおしゃれ系だな。金がかかっているのは事実だろう。衣装だのステージだのが豪華だ。
「普通にやりゃ勝てそうだな」
「なら攻撃してきそうですねぇ。また出番かな?」
「だと面白いんだが……まあ当日に期待だな」
そして当日。ステルスモードの楽園からこっそり観察しよう。同盟軍の軍艦とコスモクラフト部隊が大量に列をなして進んでいる。宇宙をロボットと戦艦の光が彩っていくのは、なかなか壮観じゃないか。
「こんなに多くのロボットを見るのは初めてですわ」
「いい光景だ。これで始まるのがライブじゃなくて戦闘なら最高なんだが」
「そうなっちゃいそうですけどねー。わたしはライブも見たいです!」
「サンライトガーデン側の戦艦は30。ワルキューレ部隊200機以上。本気の警備ですね。各種ジャミングと通信の傍受、準備完了です」
ワルキューレから離れて儀礼艦が中央に出る。そこに両軍から機体が飛ぶ。中にいるのがアイドルだろう。甲板に設置されたドーム型のライブ会場には、豪華絢爛な装飾が施されている。着地するとそれぞれのアイドルがパイロットに先導されて部隊中央へ。
「番組も始まるな。よし、どうなるのか見てやろう」
特別生放送が開始され、インフィニットフラワーと相手のアイドルが登場。自己紹介からオープニングトークへとスムーズに続く。
『みーんなー! 今日も最高のライブにするからねー!』
『どうか私たちのこと、永遠に忘れないように刻みつけてくださいね』
『それじゃあまずはインフィニットフラワーから、新曲、ワルキューレブーケ!!』
歌がうまいのはなんとなく理解できる。だからといって女に金を使うほど入れ込むつもりはないし、今回の件が終わったらもう見ないだろうな。
「ふんふん、コロニー代表戦を突破しただけのことはありますなぁ」
「不思議ですわ。コロニーごとにアイドルがいて、選抜戦までできるなんて」
「……飽きてきた。ノイジー、軍艦に面白い情報ないか?」
「ちょうど見つけました。コロニー同盟側の内部に切り替えます」
会議室かな。おっさんが5人。そこそこの立場だろう。秘密の会議か。
『そうか、で爆弾は?』
『3号機に』
『ライブが終わり次第点火だ』
「爆弾?」
「前後の会話から、アイドルを送り届けた機体に爆弾が仕掛けられているようです。サンライトガーデンのように単一の中立コロニーではないので、自分のアイドルが多少巻き添えで死んだとしても代わりがいるのでしょう。異常なスピードで繁殖するのが人間の特徴ですから」
なるほどねえ。はじめから自爆特攻させて両成敗か。正攻法で勝てない相手には有効か? いや効率悪くね。つまりあいつら死んでもいいレベルなのかな。
「えー、そんなの通用するの? アイドルが拒否りそうじゃん!」
「伝えていないのでしょう。なんなら相手側のせいにして士気を上げる作戦かもしれません」
「そして疑う能力も、詳細を調べる能力もない。大衆なんてそんなもんさ」
「助けるのも難しそうですわ。気取られると、その時点で自爆しそうですもの」
これは少し難しいな。狙撃して破壊しても、爆弾の威力によっては厳しい。だがパラドクスで近づけばバレる。避難させるようなイベントが起きたらスイッチ押すだろうなあ。
「爆弾がどういうものか調べてくれ。アナログじゃないなら止められる」
「既に調べてあります。起爆装置を持っている人間が戦艦の1つに存在します。それを奪うか、戦艦ごと消してしまえばクリアですね」
「なら潜入作戦か?」
「成功確率は低いかと。作戦中は誰も通さないでしょう」
インフィニットフラワーの歌は終わり、対抗アイドルの曲が始まる。
『歌が終わればエンドトークが始まります。両方のアイドルが中央で立ち止まりますので、タイミングを見計らい、遠隔操作で爆破します』
『なるべくあのなんとかというアイドルどもに近づけろよ。パイロットもアイドルも、こちらにはいくらでもいる』
『了解』
「最先端AIよ、なんかいい作戦ないのかい?」
「パラドクスのステルスモードで戦艦に近づいてください。特殊な電波を探知します。あとは電波の出ている戦艦の一部をビームで破壊すれば、ミッションコンプリートです」
「採用。パラドクスにガワ被せたままだな? 出るぞ」
アイドルの応援ってのは手間かかるもんだな。世のドルオタどもはどうしてんだか。代わりに爆弾見つけてくれたりしないもんかねえ。などと考えながらパラドクスに乗り込んだ。




