艦隊大戦争
パラドクスでステルスモードオン。コロニー同盟軍の大艦隊に近づいていく。これだけの数を近くで見るのは初めてかもな。通り過ぎる機体に見つからないように、そーっと離れて移動し続けよう。
「戦艦は動きませんが、コスモクラフトにぶつからないようにご注意を」
「了解。このへんか?」
適当な戦艦に近づいたら、あとはノイジーが判断する。
「周辺に反応無し。次のポイントを出します」
『みんなどうだったかな? これからも応援してね!』
『ここからはトークタイムよ』
ナビに従って進み、さらに2度外れる。めんどくさくなってきたぞ。おそらく残り時間も少ない。このまま終わるのはつまらん。
「信号をキャッチしました。戦艦の中腹ですね。マップに出します。ビームで撃ち抜けば装置の持ち主ごと消えるはずです」
「ナイスだ」
図面を見ながら該当箇所に移動。手のひらにエネルギーを集中し、放たれたビームソードが戦艦を貫通した。
「よし撤収」
『敵襲!? どこからだ!』
すぐに消して急速旋回。高速移動で離脱しよう。戦艦は沈んでいない。誰がどこから攻撃したのかわからず、コスモクラフトがウロウロするばかりだ。
『故障か攻撃かはっきりしろ! 被害報告早く!』
「まだアイドルたちに動きなし。自爆は避けられたな」
「同盟側に多少の混乱は見られますが、全体に広がってはいません。局所攻撃が1回だけというところが、船の故障なのか攻撃なのか不明だからでしょう」
「包囲網を突破して、無意味に見える一箇所だけを攻撃する理由がわからんからな」
だがここから戦闘の流れになれば別だ。大乱戦になるだろうし、それは見たい。だがアイドルが死ぬとゲームオーバーなのがめんどいんだよなあ。
「ハヤテ様、なんか両陣営がごちゃごちゃ言い出してますよー」
通信を広域傍受に切り替える。なんか言い合いしているな。会話をまとめてみる。
『いきなり攻撃されたがお前か? アイドルではなく武力で決着つけたいんだな?』
『知らん一歩も動いてない。どこだよ?』
『うちの◯◯っていうポイントだよ。攻撃されたぞ』
『そんなとこどうやって攻撃すんだ言いがかりやめろ』
とのこと。ごもっともだ。混乱しているようで何より。アイドルもそそくさと機体に乗って帰ろうとしていく。
『何をしている! 起爆装置はどうした!』
『装置と管理者に反応無し。おそらく攻撃された場所にいたものと……』
『ありえん! やつらに情報が流れているというのか!』
爆破は止められたらしい。はっはっは、ざまあみやがれ。俺の楽しみを奪うやつらは損をするのさ。
「次の指示をどうぞ」
「このまま見ていよう。双方帰るならよし。戦闘始めるなら台無しにしてやる」
「実にオーナーらしくていい案だと思います」
パラドクスで待機していると、さらに焦ったような会話を傍受する。
『アイドルが逃げるぞ! こうなればあの船ごと沈めろ!』
『ですが放送されて……』
『こちらは攻撃されたのだ。大義名分はこちらにある! そういうことにしろ!』
『了解! 主砲チャージ!』
「やめろアホが!」
チャージ中の主砲にビームを叩き込む。すると大爆発を起こし、戦艦の前半分がぶっ壊れる。
『攻撃を受けたぞ!』
『ええい、やはり敵の攻撃だったか! 撃て撃て!』
尋常じゃない量のコスモクラフトが発進していく。200はいるぞ。一斉に飛び立ち、ワルキューレ部隊と儀礼艦を狙って進み始めた。
「結局戦闘になりましたね」
「どうしろっつうんだよ」
両軍の攻撃が始まり、宇宙を銃弾とビームの雨が交差する。最早嵐のようだ。
『おのれ突然攻撃してくるとは……ワルキューレ部隊、やつらを止めろ!』
『了解! ライブを台無しにする悪党め、成敗してやる!』
ノーマルタイプとワルキューレが入り乱れていく。機体が破損し、爆散し、それでも止まることなく銃弾の嵐は続く。マシンガンやバズーカも飛んでいる。ビームが完全な主力兵器ではないのだろう。それがコスト的な問題か、技術的な問題かは知らん。とにかく多種多様だ。
「しょうがない、多少援護してやる。今回は味方信号を出すな」
「了解。お好きに暴れてください」
「ハヤテ様、わたしたちもいきます!」
「わかった。必ず2人で動け。敵陣の背後からバレないように落とし続けろ。俺は中央で暴れる」
「了解しました。どうかお気をつけて」
敵も完全に背後を取られるとは思っていないだろう。レーダーに何も映っていないのだから。それでも2人が心配だ。援護させるか。
「ノイジー、砲撃であいつら付近の戦艦落とせ。5個くらい」
「了解です。ホーミングレーザー200門発射」
レーザーの群れが美しい曲線を描いて進み、戦艦を串刺しにしていく。集中砲火を受けた戦艦は逃げることもできずに撃墜された。
『なんだ!? どこからの攻撃だ!』
『こんなにあっさりと……ありえん!』
敵はさらに混乱している。俺は戦艦の主砲を破壊しては次に行く。
『そこの機体、止まれ!』
「邪魔なんだよ!」
マシンガンの弾を横に回転して避けると同時に急加速。すれ違いざまに敵の胴を切り払う。
『バカなあぁ!?』
見事爆散。続いて近くの主砲を撃ち抜いていく。とにかく儀礼艦が撤退するまで被弾させないようにするのだ。
「ビームソードハリケーン!」
両手から極太のビームソードを出して、回転しながら敵の群れを突っ切る。細かいビームをばらまくことも忘れない。
『うわああぁ!?』
『があっ!?』
「ちっ、思ったより数が多いな」
俺だけで戦っていいなら楽勝だが、儀礼艦がまだ撤退しきっていない。近づこうとするコスモクラフトを迎撃し、ワルキューレ部隊を無視しながら飛び回るのは面倒だ。乱戦の場合、片方だけを狙うのもひと苦労なんだよ。
『そこの機体、同盟軍じゃないな。落ちろ!』
「気づくのが遅いんだよ」
機体を左右に振って敵部隊の銃撃を回避。するとミサイルの群れが俺につきまとってくる。ブーストを全開にして速度で差をつけ、そのまま敵陣の真ん中へ突っ込んでいく。
『こちらに来るぞ!』
『回避だ!』
「ビームウォール!」
敵部隊の四方に巨大なビームの壁を作る。俺だけがすり抜けながら射撃を繰り返すと、敵は壁か味方にぶつかってしまう。そこにミサイルが直撃していく。
『やめろ、こっちに来るな! ぎゃあぁ!!』
『どけ! このままじゃうわああぁ!?』
「閉じろ!」
壁を一気に接近させる。敵は空いている場所を目指して一斉に群がるので、あとは両手からビームの渦をぶちまければいい。
『逃げ場がない! こんなバカな!』
『どうにもできない!? ちくしょおおぉぉ!』
これで20機くらいは倒せたはずだが、まだまだいるな。手間のかかる。
「援護いたします」
「お手伝いにきましたよー」
シオンとリリーがこちらに来た。ここからは3人で動こう。
「よし、前線でワルキューレの少ない場所をカバーする。ついてこい!」
「了解でーす!」
俺とリリーが二刀流で突っ込む。斬り刻めない範囲を、シオンの射撃でカバーしつつ飛び回ろう。
『何だ? またノーマルタイプ?』
『前の戦場にいた奴らか!』
おっと、覚えているやつもいるようだ。大暴れは控えるとしようかね。
『応答しろ。貴様らの目的と所属を言え』
「無視しておけ」
「はーい」
「謎は謎のまま、ですわね」
どっちからの通信も無視。10機20機と落とし続ける。前線の戦艦も少なくなってきた。さくさくいくぞ。シオンが戦艦のブリッジを撃ち抜き、リリーが3枚におろす。俺が両手に収束させたビームで破壊する。これを接近から離脱までに行う。
「そろそろ撤退するべきだと思うがね」
「しぶといですねえ。まだ100機くらいいますよあいつら」
「わたしたちが全滅させては、こちらが撤退する時間が減りますし……困りましたわね。あら、この曲は……」
この宙域全体にド派手な音楽が鳴り始めた。アイドルの曲かと思ったが違う。この最近体験した強引でうるさい展開はまさか。
『そこまでだよ君たち! アイドルのライブで撃ち合いなんてノーだ!』
田中だ。あのミラーボールみたいな機体でやってきた。
『おいなんだあいつ』
『うるせえ! 曲を止めろ!』
『バトル中止だ! アイドルのパッションとソウルを汚しているよ! こんなの悲しいだけじゃないか! ミュージックはエンジョイするためにあるものだ!』
なんか戦闘を止めに来たらしい。曲がうるさい。映像も流れてきた。キラキラした派手な服で踊りながら戦闘を止めろとうるさい。
「撤収。あれとかかわりたくない」
儀礼艦は逃げ切った。アイドルも無事。ならもういいや。3機ともステルスモードで楽園へと帰還する。あとは好きにしやがれ。
『どうか聞いて欲しい。君たちは心からアイドルを愛しているんじゃないのかい? 彼女たちが悲しむことはノーだ』
『うるせえ消えろ!』
ノーマル機が田中へと攻撃を始める。それを踊るように回避して反撃に移った。
『パッションキッス!』
各部位から出るショットガンのようなビームで、敵の四肢が破壊される。
『どわああぁ!?』
『よくわからねえが調子に乗るなよ!』
『シャイニングブーメラン!』
さらにブーメランで遠くの敵の右腕がもぎ取られていく。どうやら無力化するだけで、殺すつもりはないらしい。
『気をつけろ! 無駄に強いぞ!』
『アイドルは避難した。これ以上のバトルは無意味だよ! 無駄死にしてどうするんだい!』
両陣営が冷めていくのを感じる。無駄死にという言葉に反応したのか、前線で突っ込む機体が減り、銃撃も少なくなっていく。コロニー同盟側は後方が撤退を開始しているのもあってか、ワルキューレ側も無理して追うつもりはないようだ。
「妙な終わり方したもんだな」
「音楽は派手なのに、気分は盛り上がりませんねぇ」
「目的がわかりませんわ」
完全に無関係なのに乱入したのか? アホやん。アホの思考は理解できん。
『そこの機体、武装解除してこちらへ来い。ゆっくりとだ』
『オーウ、アイドルとのコラボ依頼かな? オーケー、レッツゴウ!』
『ゆっくりつっただろ! 音楽を止めろ!』
「連れて行かれましたよあいつ」
「そのまま処刑されてしまえ」
こうして戦闘はぐだぐだで終わった。ここからは俺の部屋で監視に戻るとしよう。




