財閥の結末と謎のロボ
楽園に帰還して自室でのんびりしていると、緊急ニュースが流れ出す。
モニターにはニュースキャスターと爆発の画像が表示されている。
『緊急速報をお伝えします。本日午後6時15分頃、地球・ワイルズスター財閥の本社ビルで原因不明の大規模爆発が発生しました。爆発規模は半径数キロメートルに及び、財閥本社を含む広大な敷地がほぼ全壊。死者・行方不明者は現在確認できているだけで数千名に上ると見られています』
上空から撮影された映像が出る。黒煙が立ち上る本社ビルの惨状は、生存者などいないことを簡潔に伝えている。
『衝撃的な情報が続々と入ってまいりました。爆発直後、SNSを中心に財閥の現総帥を含めた4名の遺体とみられる画像が大量に拡散されています。これらの画像は極めて残虐で、多数の銃創が確認されています。現在、警察および地球連合軍は画像の出所を全力で調査中ですが、拡散の勢いは止まらず、瞬く間に広がっています』
「ちゃんと伝わったみたいですねぇ」
「これで生存説は完全に消えたな」
『また、爆発とほぼ同時刻に、ワイルズスター財閥が長年表向きに支援してきた世界動物愛護団体を隠れ蓑に、希少動物の密猟・密輸を組織的に行っていたという内部告発資料が公開されました。資料には保護活動の名目で現地調査を行い、密猟ルートを使って希少種を高額で富裕層に売りさばいていた記録が、詳細な取引履歴とともに残されています。また、地球連合軍内部の関係者への賄賂記録まで含まれ、衝撃が広がっています』
こちらの伝えたい情報はほぼすべて伝わったようだ。あとはどんな推理と結論が出るか、楽しみに見ていようか。
専門家だのコメンテーターだのが映り、対談っぽいことをしている。
『これは単なる企業犯罪の域を超えています。動物愛護を装いながら、裏で絶滅危惧種を商品化していたわけです。しかもその利益で政治家や軍関係者にまで影響力を行使していた可能性が高いでしょう』
『この事件により、地球全体の希少動物保護政策の見直しが急務となっています。また、財閥の裏側で長年続いていた闇のネットワークが一気に明るみに出たことで、関連企業や政治家への波及も避けられないでしょう』
「動物さんが救われることを祈りますわ」
「ラプターかわいそうだったもんね。ちゃんと調査しろよー」
「しなければまたスパイごっこしてもいいかもな」
本当に頼むぞ。ここまでやって全部無駄になったらキレるからな。
「今度は一緒にやりたいです!」
「危ないからダメ」
「私たちが横でサポートできれば、負担も減ると思ったのですが……」
「どんな危険があるかわかったもんじゃない。お前たちは帰る場所でいてくれ。そうすりゃちゃんと生きて帰ろうって気持ちになる」
こいつらに危ない真似はさせたくない。超強いロボに乗せるくらいでギリ。楽園にいるか、安全で楽しい場所に行って遊ぶくらいでいいのだ。
『この事件について、引き続き緊急特番でお送りします』
『爆発の規模とタイミングが極めて計画的です。襲名式当日、家族が一堂に会した最上階で発生。しかも爆発と同時に内部資料が完璧に拡散されています。こんなことが可能なのでしょうか』
『私は軍事的な視点で言いますが、爆発規模から通常爆薬では説明がつきません。新型兵器の可能性すらあります。連合軍内部に協力者がいるのか、それとも外部の新興勢力か、ここが最大の謎です。犯行声明が一切ない。目的も不明。侵入経路も不明。4人を殺害し、遺体画像を完璧に拡散し、しかも財閥の闇を同時公開する。これは個人では絶対に不可能です。少なくとも国家レベルの情報機関、またはそれに匹敵する巨大組織が動いているとしか思えません』
『地球連合軍もコロニー同盟軍も、即座に自組織の犯行ではないと否定しています。ならば対立する財閥や貴族か。だとしてもここまで大胆かつ緻密な計画を立て実行できるものなのか。謎は深まるばかりです』
問題なさそうだ。俺たちのことは何もわかっていない。迫真の顔で語っているが、完全に的外れである。個人で利益もクソもなくぶっ潰すなんて想像できないわな。
「とりあえず問題なしとみなす。これでまた自由に予定を決められるな」
焦ることはない。適当にだらだら考えればいい。放送は財閥関係からコロニー同盟へと話題が変わっていく。しばらく寝ようかな。
「おぉー、これがわたしのオリジナルですか」
リリーの声で画面をよく見ると、ハルカが映っている。そういやこいつだったな。もう会うことはないだろうが、元気にやっているようだ。
「ふんふむ、なるほどなるほどー、ちょっと似てますねえ」
「似ている人がテレビに出ているのは、なんとも不思議な気分になりますわね」
「会いに行ったりはできないぞ」
「わかってますってー。絶対めんどくさいですからね。お話するほど興味もないかな。だったらもっと別のとこ行きたいです」
ならいいか。ハルカの地位が高いので、クローンなど親族に知られたら絶対にうざい。どれだけ面倒事が重なるか、どれだけ殺さなきゃいけないのかわからん。
「行きたい場所があれば言ってくれ。どうせ暇だ」
「犬カフェ! 犬カフェっていうのに行きたいです!」
リリーが目を輝かせながら迫る。ジョナサンとラプターで動物への興味が刺激されたのだろうか。
「犬カフェ、私も聞いています。わんちゃんがいっぱいいると」
シオンも興味があるようだ。動物と触れ合うのは教育によさそうだし、俺も久しぶりに行きたい。
「いいな。こっちの世界の犬カフェがどうなっているのか興味がある。行くか」
「やったー!」
「ありがとうございます!」
「どんなのがいい?」
「大きい犬が見たいです! ふわふわしてるやつ!」
「かわいいわんちゃんを撫でたいです」
早速ノイジーに近くで有名な店を探してもらう。少し離れたコロニーにあるらしいので、急いで現地へ行こう。
「まだ距離はありますが、宇宙船も増えてきます。シャトルで向かうことを提案します。機体はいつでも転送できるよう準備しておきますね」
楽園がでっかいため、交通の多い場所でステルスしているとぶつかる。よって離れてシャトルで行く方がいいらしい。3人で乗り込んで出発。宇宙を飛ぶ。
「んふふ~、犬をわしゃわしゃしてやりますよー」
「乱暴にしてはだめよ?」
「わかってるってー」
「オーナー、前方の宇宙船よりコスモクラフト3機出撃。こちらを狙っている可能性あり」
モニターに映るのは、軍のものとは思えない船と機体。まだ距離があるが、まあいい予感はしないな。
「海賊か。適当にぶっ殺そう」
『止まれ。ここから先は通行料が必要だ。おとなしく……なんだあ?』
オープンチャンネルで音楽が流れているらしい。全回線に強引に割り込んでいるのか、バカみたいな音量で変な曲が流れてきた。
「こういうのなんて言うんだったかな。派手でノリのいい、多分クラブとかでかかるやつだよな?」
「聞いたことないでーす」
「私もわかりません」
全員わからん。クラブとか行ったことないし。とにかくそういう曲だよ。
『ストーップ! 待ちたまえ海賊くん!』
『なっ、なんだありゃあ!?』
海賊が驚くのも無理はない。謎のメタリックでギラギラしたロボットが接近してくる。たとえるなら全身ミラーボール。光が当たるたびに虹色や金色・銀色にキラキラ反射して輝き、ライトで発光しているロボがすっ飛んでくるのだ。もう意味わからん。
『オッケーイ! 間に合ったね。そこのシャトル、ピンチかい? ピンチだね! そんなあなたに傭兵が駆けつけたよ! 今ならお安くしておくけれど、いかがかな?』
男の質問の意味を理解するのに少し時間がかかった。つまり傭兵の営業なのか。
「なんか変なのが来ましたよー」
「面倒な……」
『どうかな? まあ助けないという選択肢はないんだけどね』
「必要ない」
シャトルのダブルビームカノンを発射。1機撃墜して急発進からの急旋回。ミサイルの連打でもう1機も落とす。
『ヒュウ! こいつは余計なお世話だったかな? けど助太刀するさ! 目の前の命を見捨てない! スパークリング・ジャスティス、戦闘開始だ!』
いいからBGMを止めろ。謎のロボは結構なスピードで敵に迫り、腰についているビームセイバーを取り出し切り裂いた。敵との対比でわかるが、パラドクスよりだいぶデカい。全長80mはあるな。
『うぎゃばあ!?』
『こんなバカなあ!?』
『くそっ、全員出ろ! 戦闘機も全部出せ! あんなふざけたやつに負けんじゃねえ!』
『ノン! ボクは大真面目さ!』
「それもどうなんだよ」
こっちはこっちでバルカンで牽制して、ミサイルで戦闘機を撃破していく。はっきり言って敵じゃない。数が増えようと同じだ。
『近くの仲間全員に声かけろ! こんなことで死んでたまるか!』
『カモォーン! ガトリングキャノン!』
両腕が体内に格納され、眩しく光るガトリングガンが出てきた。弾はビームらしい。おびただしい量の攻撃が敵を襲う。
『ぎゃあぁあ!?』
『こんなやつに、こんなやつに全滅だと!?』
『フィナーレだ』
スパークリングジャスティスと呼ばれたロボの手足が格納され、マジでミラーボールから顔だけ出ているみたいな形状になった。そして球状のボディの真ん中に穴が空き、でかい砲台が出てきた。
『パッショネイトフラッシュ!!』
『こんなの、認めるかあああぁぁ!!』
海賊の宇宙船は丸ごとビームの渦に消えていった。強い。強さだけなら間違いなく本物だ。BGMクッソうるさいけど。
『フウ、お疲れ様。よかったらお話できるかな? そちらの声が聞きたいね』
さてどうしたもんかね。
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