田中登場
謎でド派手な傭兵に絡まれ、映像通信の許可を求められている。
とりあえずここで通信に出ないで逃げるのも不自然だ。いつもの手段で3人とも顔は変えてあるし、通信に出てみよう。
『ハロー、こちら傭兵部隊トゥインクル。ボクが代表の田中正義。通称ジャスティスさ!』
「たなかまさよし……」
なんだこいつは……金髪碧眼のイケメンだ。おそらく長身で、髪が長く、筋肉もしっかりついている。だが全身がラメみたいなギラギラした服である。体のラインが出るタイプで、胸元がガッツリ空いている。バラエティ番組でも着ないぞこんなの。どういうセンスだ。
「こちらは民間船だ。協力感謝する」
『フフッ、半分くらいはそちらが倒していたけどね。安心して欲しい。今回はお金は取らないよ』
『よろしいのですかリーダー?』
田中とは別のモニターに、青い髪の優男が立っている。金色の目が少し困り気味に揺れていた。
『いいのさピエール。商売は正々堂々と明朗会計がうちのモットーだろう。さて、ここで君たちに商談だ。近くのコロニーまで護衛しよう。初回サービス価格でお安くするよ』
『見積もりを表示します』
それなりの額が提示される。別に払えないわけじゃないが、他人と一緒は気に入らない。俺たちは単独行動で、目立たずにいるべきだ。
『その価格はノンだピエール。彼らは強い。たどり着くだけならボクらは不要かもしれない。快適な道案内としての役割を果たすべきだ。よって相場から3割引く。この価格が妥当だよ』
「ノイジー」
「きっちり相場の3割引きですね」
嘘をつかなかった点は褒めてやろう。上げて落とすぼったくりも存在するからな。一応警戒してみたが、こいつ本当にただの傭兵なのか? 少し探りたい。
「ここから先はそんなに危険なのか?」
『それほどじゃないさ。けれどシャトルが1機で飛んでいれば目立つ。護衛なしの船なんて海賊からすれば餌に見えるだろう。土地勘があれば別だけど、孤立している船は不自然さ』
逆に目立つパターンか。別に撃退することは可能だが、何度も遭遇するのはだるい。だがこいつを信用するのも難しい。全身がもう怪しいんだよ。
「少し時間くれ。相談する」
『オーケイ。こちらの船を呼んでも?』
「いいけどぶつけるなよ? ドッキングもしない」
通信を切って3人で相談してみよう。ちょっと不確定要素が多すぎる。
「どうする?」
「怪しいですわ。すべてが怪しいですわ」
「でもちょっと面白そうですよ」
シオンは警戒。リリーは好奇心が強いな。俺はもちろん疑っている。
「面白いか? 変なやつだとは思うが」
ノイジーがあいつらのデータを調べてくれた。画面に評判や最近の活動なんかが並んでいく。
「傭兵部隊トゥインクル。星3,9」
「そこそこだな」
「腕はいいがBGMがうるさい。テンションがうざいなどの意見が多いですね」
「あれ毎回やってんのかよ。やっぱやめとくか?」
「あ、でもシャトルで毎回海賊倒してたら、有名になっちゃいません?」
「なるほど、シャトルごと有名になったら意味がないな」
リリーの言うことも一理ある。海賊狩りなどと噂されても不便だ。無駄なバトルを避けることもできるだろう。
「護衛させるだけなら大丈夫でしょうか……行動が読めない相手ですわ」
「うーむ……信用はしない。だが一度やり取りを経験しておくのも悪くないか」
「敵だったら倒しちゃえばいいですよ」
「よし、どうせなら面白そうな方に賭けるか。ノイジー、すぐパラドクスを転送できるようにしておけ。何が起きるかわからん」
「了解」
あちらに通信を繋げて、護衛を頼んでみる。金額は値引き交渉などせず、そのまま前金で半額払った。
同時にあっちの宇宙船が到着。こっちのシャトルを70mとして、倍以上のサイズだ。でなきゃ機体を格納できないしな。
『センキュウ! さあ仕事だよトゥインクルボーイズ! 出発進行だ!』
社員のことトゥインクルボーイズって呼んでるのか。いや本人たちが納得してるならいいけどさ。
そしてこちらも出発。あっちの宇宙船が先行するので、のんびりついていこう。猛スピードで進んだりもせず、航路もしっかり送られてきている。
「隕石群と海賊のいる場所を避けていますね。安全を重視したルートと判断します」
「ほほう、仕事の形にはしているわけか」
警戒はするが、こちらはシャトルの中だ。やることもないし、3人でベッドでごろごろしている。このままコロニーについてしまえ。
『やあ、退屈かい? しばらくダンスでも見ておくれ。ミュージックスタート!』
勝手に回線に割り込んで、大音量で音楽を流して踊り始めた。あっちはブリッジがライトアップされ、そのまま踊れるスペースがあるようだ。アホだな。
「うるさいからやめろ」
『ソーリー、そっちの音量だけ切っておくよ』
会話しながら変なポーズ取るのやめて欲しい。気が散る。
「まさか全域に流しっぱなしか?」
『もちろん』
何がもちろんか一切わからん。こいつの思考は読めない。敵じゃないことを祈る。
『物事には長所と短所があるのさ。この音楽を流すと、ボクらを知っている海賊は近づかないんだ。そして何よりテンションが上がる』
「実際に海賊と思われる船が撤退している模様。遠ざかる反応が見られます」
「マジかい」
とりあえず放置でいいか。踊りに興味を示し始めたリリーを止めつつ、3人でコーラ飲んで頭を冷やす。このままコロニーに到着できればそれでよしとしよう。
「未確認部隊接近中。こちらを狙っているようです」
「通信を拾え」
敵っぽい連中の通信を拾ってみると、おっさんっぽい荒っぽい声がした。
『見つけたぞ。てめえだな仲間をやったのは。そのでっけえ音楽ですぐにわかったぜ!』
「長所と短所があるらしいな。やっぱお前らグルなのか?」
『ノン! 下がっていてくれたまえ。全員出撃だ!』
スパークリング・ジャスティスとかいう、ミラーボールの擬人化みたいなロボットが出る。同時に3機の黒いコスモクラフトが出撃していた。全部ノーマルタイプのようだな。
「ブーストフェザーなしか」
「まだ市販されるほど普及していないのでしょう。宇宙での運用なら問題はありません。海賊に負けるならそれまでですね」
『ヒュウ! レッツバトル!』
先陣切って突っ込んでいく田中。敵はコスモクラフトが8機。マシンガンやバズーカで武装している。それらを巧みに避けて懐に入り、両手足に仕込まれたビームソードで細切れにしていく。
『シャイニングブーメラン!』
『ぎゃああ!』
『こんなやつにぃ!?』
ギラギラした光るパーツを外し、ビームの刃を発動させてぶん投げる。見ている文には綺麗だが、あれで死ぬ敵はたまったもんじゃないな。
『リーダーに続くぞ』
部下は派手さがない。地道に射撃で敵を追い込んでいく。先行しすぎている田中を援護するように、さりげなく妨害を入れて隙を作る。撃破より田中のサポートに徹しているイメージだ。
「黒子みたいだな」
「くろこ?」
「舞台でいないものとして扱われるサポート役さ」
『パッションキッス!』
光り輝いてポーズを取りながら、備え付けのビーム砲を乱射している。いや乱射じゃないな。敵の全身に当たるように撃っている。ショットガンによる狙い撃ちみたいなもんか。意外と攻撃手段が豊富だなこいつ。
『セクシービーム!!』
両手でハートを作り、胸の部分のハート型のビームを撃ち出す。
『やめろおお!?』
『こんなのにやられたくないぃ!』
「だろうな」
「屈辱ですわね」
「あははは、おもしろーい!」
敵はどんどん数が減る。宇宙を爆破で彩りながら、田中の意味わからん雄叫びが響いていく。地獄か。
『ヒュウ! 盛り上がってるかい! レッツゴウ! カモンベイベー!』
「うるせえ。ひたすらうるせえ」
『フィニッシュだ! パッショネイトフラッシュ!』
またミラーボールから頭だけ出ている状態になり、極太のビームで敵戦艦をぶっ壊した。
『バカな……こんなバカみたいなやつにいいぃぃ!!』
こうしてあっさりと敵海賊は散った。
『オッケーイ! お疲れ様みんな。そちらに被害はないかな?』
「ない。そこは褒めよう」
そこからは驚くほどあっさり進み、無事コロニー付近までやってきた。うるさいけど腕は良いの評判通りだったな。今回のことは犬カフェで癒されて忘れてしまおう。




