海賊狩りと輸送船侵入
とりあえず海賊を手早く処理しよう。戦闘機はシオンが撃ち落としてくれた。
「いくぜリリー」
「はいさー!」
敵はまだ戦艦から出て拡散していく段階だ。リリーが素早く斬り込み、セイバータイプの集団を襲う。
『何だこいつ! うわああぁぁ!』
『速い! 落ち着いて対処しろ!』
敵がビームソードを構える瞬間には、もう機体の腕と胴体は切断されている。
圧倒的な速度と近接戦闘センスで2機撃破していた。
『近づかせるな! アーチャー部隊で潰せ!』
「そうはいかないぜ」
両手からビームを連射して宙域にばら撒く。敵が避けようとしているが無駄だ。撃ち終わったビームが敵に向けて全方位から迫る。
『避けられない! ぎゃあぁ!?』
『こんなことがっ……』
これにてアーチャー全機爆散。リリーを確認すると、二刀流のセイバータイプと戦っていた。
『なめるなよ連合!』
「連合じゃないんだけどねーっと」
『もう1本だとお!?』
二刀流で鍔迫り合いになったのは一瞬。残りの腕で背中のビーム刀を振り下ろし、敵の剣ごとまっぷたつに切断した。残りの敵も多腕タイプを想定していないのか、手が足りずに斬り裂かれるだけだ。
「はい終了ー。そっちどうですかー?」
「ブリッジは潰した。ドローンで情報を吸い出している」
シオンの的確な狙撃により、敵の船は航行不能になっている。面倒だから脱出口とブリッジも潰してある。あとはどれくらいダウンロードが長いかだが。
「終了しました。いつでも破壊してください」
「いつもながら仕事が早いな」
戦艦爆破して楽園に撤収。ここからは輸送船の監視と、海賊を派遣したアホの捜索を同時にやってもらう。俺にはできないからやってもらう。
「なるほど、地球連合内部に裏で金持ちと繋がっているものがいますね。そこから航路がばれているようです」
「まーたこのパターンだよ」
「人間はお金のために何でもしますねえ」
「貧乏なわけでもないのになぜでしょう? 不思議ですわね」
結局は貴族と金持ちの内ゲバだな。蓋を開ければこんなんばっかりさ。ぶっ壊すのに躊躇しなくていいから助かるけど。
「今回の犯人はワイルズスター財閥。地球に残った財閥のひとつであり、動物愛護団体を抱える傍ら、裏では希少動物の密輸で稼いでいます」
「シンプルにクズで草」
「今回の海賊は複数いるようです。到着までまだまだ襲撃がありそうですね」
「助けたくねえなあ。ラプターはいい。守りたい。乗っている人間が助かるのが気に入らない。いっそ動物だけパクって……いや飼えない動物は軽々に持ち帰りたくないし……海賊と同じことすんのもなんかやだ」
これがめんどい。財閥は絶対に潰すとして、輸送船の連中が助かるのがなんかやだ。何俺の目的に便乗してんだよ。
「落ち着いてくださいハヤテ様。はい、心が落ち着く紅茶です」
シオンがアールグレイを淹れてくれる。ゆっくり飲んで体を温めると、少しだけ冷静になる。
「別に難しく考えなくていいんじゃないですか? なんとなく好き放題やってアドリブかましましょーよ」
リリーが膝の上に乗ってくる。こいつなりに励まそうとしているのは伝わった。
「そうだな。もう少し肩の力抜くとするか」
「そうそう、そうですよー。シオン、わたしも紅茶飲みたい!」
「はいはい、お砂糖は入れる?」
「んー、ハヤテ様と一緒の! 一緒の味が飲みたい!」
もっと雑でいいか。なんなら適当に後で殺せばいいや。今はラプターを守ることだけ考えていこう。
「ノイジー、今日戦いそうな海賊は?」
「あと3ポイントに存在します。明日も5ポイントに点在しますね」
「多い多い多いバカか」
「雇いすぎでは? どこかで成功していたら他の海賊が無駄になりますよ?」
「もとより大した額ではないのでしょう。輸送船の特徴を教えておいて、やってきたら確保しろと伝えておけばいいのです。海賊の知能なら、何も考えずのこのこ集まるでしょう」
アホを数日待機させておけばいいわけか。何もなく金だけ入るならそれもよしと。悪いやり方ではないんだろうけれど、絶対かち合って殺し合いになるだろ。
「めっちゃだるい……」
「全部倒すのはちょっと……」
「輸送船に航路変えるように言うのはどうです?」
「信じるか微妙だな。下手に警戒されると、今度は何が起きるかわからんし」
しばらく考えて、逆に海賊に偽情報流せばいいじゃんと結論づけた。
まず集めた情報から財閥の連絡手段を特定。同じ名前で匿名の連絡を送る。海賊全員に同じ指示を出す。すると全員同じ場所に来るので、まとめて潰せる。
「輸送船が進路変更したとでも書いておけ。他の海賊が失敗したとかなんとかな」
「なるほど、海賊の知能ならば食いつくでしょう。メッセージを送りました」
こうしてわずかに引っかからなかった海賊を消し、情報を手に入れつつ進む。宇宙はどこまでも静かできれいで、それを汚す海賊はいないほうがいいなと思いました。小学生の感想文みたいだな。
「いかん、無駄なこと考えてる」
「そろそろ集合場所に付きます。出撃しますか?」
「飽きてきた……コロニーの見たことない武器シリーズいこう」
「では次元連結交差砲を使います」
副砲数機の前に丸く巨大なワープゲートが現れる。同じものが海賊のいる宙域に無数に出現している。そしてそこにぶっといビーム砲が撃ち込まれた。
「ほほう?」
すると主砲のビームがゲートからゲートへと通って、縦横無尽に駆け抜けていく。距離も角度も違うが、驚異的な速度で飛び続けるうちに、大量のビームの線が交差していく。無限の光の網になって敵を焼き続けるのみ。
「おおー、なんかきれいですねぇ」
ビームの光と敵陣の爆風で宇宙が彩られていく。どこから来るかわからない極太ビームというのはきつい。しかも1回運よくかわせても、まったく予測できない場所から飛んでくるのだ。避け続けるのは無理だろう。
「とても美しい光景でした」
「あとは輸送船が無事に到着することを祈ろう」
半日ほど監視しながらゲームしたりアニメ見たりしていたが異常なし。このまま到着予定のコロニーまで暇かなと思っていたら。
「輸送船が進路を変えていきます」
「祈りが届かないかー」
「内部の通信傍受に成功。クルーに偽装した特殊部隊が混ざっていた模様。輸送船内部で対立が起きています」
「そうきたか……ラプターがいる以上、船ごとふっ飛ばすわけにもいかんな」
このままどこかに持ち去られるわけにはいかない。どうせろくなことにはならないだろうし、それならまだ研究所のほうが安全だ。
だがどうするか。外から制圧するのは難しい。下手に壊せばラプターが危険だ。
「俺が直接侵入することは可能か?」
「緊急用ハッチをハッキングして入ることは可能です」
「危険です! 何が起きるかわかりません!」
「そんな無理しなくてもいいんじゃないですか? 逆に敵の拠点に行ってくれるかもしれませんよ?」
「確かにな。だが敵の拠点から盗み出すのはもっと難しい。あと潜入ミッションがやってみたい」
結局は面白さと効率を考慮していく。両立させた最善案がこれである。
「危なくなったらすぐ逃げてくださいね」
「ハヤテ様がいなくなったら困るんですよー」
「任せろ。ノイジー、シャトルと宇宙服の用意だ」
「了解。よい旅を」
いつものように顔を変え、シャトルをステルスモードにして接近し、輸送船のハッチをハッキングして侵入する。そーっと周囲を見渡すと、まだ誰もいない。近くの端末に接続して、ノイジーが完全にシステムに入り込むまで待つ。
「お待たせしました。これで監視カメラを欺きつつ、電子ロックを解除できます」
「よくやった。それじゃあスニーキングミッションいってみよう」
ちょっと楽しくなってきたぜ。何が起きているのか調べていこう。




