18.【閑話】喫茶村役場メニュー:手作りメンマ(裏メニュー)
その後もエリは狸の妖怪、穴野むじなと一緒にタケノコ掘りに出かけた。
その日、むじなは竹林で周囲を見回し、がっくりと肩を落とした。
「もう竹が随分育ちました。タケノコの季節は終わりです」
むじなの言う通り、タケノコはほとんど見つからない。
採りそびれた『竹の子』はぐんぐん成長し、『幼竹』となっていた。
「そうだね。でも竹も美味しいよ」
エリがそう言うと、むじなは首を横に振る。
「エリさん、お言葉ですが、竹は硬いです。タケノコの方がずっと美味しいですよ」
そんなむじなにエリは質問した。
「むじなさんはラーメン好き?」
「らぁめんですか? わっし、食べたことないです」
「じゃあ今度作るから食べてみない? ラーメンの具にメンマっていうのがあって、メンマは竹から作るんだよー」
むじなは目を丸くした。
「ふぁあ、そうなんですか?」
それからエリとむじなはメンマの材料になる竹を取った。
メンマの材料は竹なら『何でもいい』という訳ではない。
一メートルからせいぜい二メートルまでの『幼竹』が適している。それ以上はむじなが言う通り、硬くて煮ても焼いても食べられない。
作業の間に数個だけだがタケノコも見付けて、二人は今年最後のタケノコ掘りを無事終えた。
タケノコは瓶詰めにすると一年保つ。
これで一年間いつでも美味しいタケノコが食べられる。
家に帰ると早速メンマ作り開始だ。
竹もタケノコ同様、すぐにえぐみが出てしまう。
そのため早く調理しないといけないのだ。
まず硬い外皮を剥ぎ取り、食感が悪いイボも丁寧に取り除く。
食べやすいサイズに切ってから、大鍋で煮る。
エリが祖母から教えてもらったやり方だと、この時米ぬかは使用しない。
また米ぬかを使うと米ぬかの菌が付着してしまうのでこの後の発酵が上手くいかない時があるという。
煮る時間は大体四十五分くらい。
柔らかくなり、色が変わるまで煮るのだが、あまり煮すぎるのも良くない。旨味が抜けてしまうのだ。
茹で上がった竹は水気を切って、漬物樽で塩漬けする。
都会の一般家庭ではほぼ見かけないが、お祖母ちゃんがいる田舎の家には必ずあるヤツ。もちろんエリの家にもある。
二週間から一ヶ月漬け込んだら発酵完了。
食べる時は一晩塩抜きした上、天日で半日ほど干して水気を切った後、短冊切りにし、まずごま油で炒める。全体的に油が回ったら砂糖、汁気が足りなそうなら鶏ガラスープと水を少々、みりん、醤油、オイスターソース、唐辛子とともに弱火で煮詰める。
「ふー」
竹の処理を終えて、エリはむじなに言った。
「ラーメンの話をしたらラーメン食べたくなったね。タケノコでもメンマは作れるから、ラーメンにしようか? インスタントの袋麺しかないけど、それでいい?」
むじなは目をキラキラさせてエリに言った。
「わっし、ラーメン、すごく食べてみたいです」
ということでエリはラーメンを作ることにした。
具はチャーシューに刻みネギ、ほうれん草、海苔。本当は味付け卵がいいが、ないのでただのゆで卵。
そして短冊切りにしたタケノコを砂糖、みりん、醤油、唐辛子を入れて炒め煮にした出来たてメンマをたっぷり入れて出来上がり。
「いっただきまーす」
早速、エリは熱々、むじなはぬるめのラーメンを食べた。
一口ラーメンをすすったむじなは尻尾をピンと立てて感動している。
「おっ、美味しいです! エリさん」
「良かった。メンマ結構美味しく出来たね」
竹で作るとシャキシャキのコリコリの食感。発酵もしているので独特の酸味が加わり、味に奥深さが出る。
タケノコで作ると柔らかめで野菜の甘みを感じる出来上がりになる。
ちょっと違いはあるが、どちらも美味しい。
「はい。最高です。わっし、毎日これがいいです」
むじなはラーメンがかなり気に入ったようだ。
「脂質が多いからお腹弱い人は毎日食べちゃ駄目だよー」
とエリは止めた。
「残念です。味わって食べるです……」
むじなはガッカリしたが、気を取り直し、ラーメンの麺を大事に啜った。
それを見てエリは笑った。
「むじなさんが気に入ったんなら、また作ろうね。今日は醤油だったげと、コーンを入れた味噌味のラーメンも美味しいよ」
「わっし、それ、食べてみたいです!」




