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最終章 軍神の休息――義に殉じ、愛に生きる

ハクザン国の建国から、三年の月日が流れた。

かつて魔族の影に怯えていた王都は、今や大陸全土から商人が集う物流の要衝へと変貌を遂げていた。ルーニーが導入した「兵糧攻め」の逆転の発想――「物流の独占と開放」による経済戦略は、周辺諸国をも屈服させ、魔族領の魔王ですらハクザン国の国力を恐れ、永劫の不可侵条約を結ぶに至った。

戦わずして、最大最強の敵を沈黙させる。

人々は、その智謀の王を畏敬の念を込めてこう呼ぶ。「再臨せし軍神」と。

王城・奥御殿の庭園。

柔らかな午後の陽光が降り注ぐ中、ルーニーは一人、咲き誇る花々を眺めていた。

「パパ、見て! お花が咲いたよ!」

小さな足音と共に駆け寄ってきたのは、アイリスとの間に授かった幼い愛娘だ。そのすぐ後ろでは、エヴァとテイラーが、それぞれルーニーの面影を残す赤子を抱き、穏やかな微笑みを浮かべて歩いてくる。

「こら、あまり走ると転んでしまいますよ」

アイリスが優しく娘をたしなめ、ルーニーの隣に腰を下ろした。

「……ルーニー様。本当に、夢のようですね。こんなに静かな午後が来るなんて」

アイリスの言葉に、エヴァが誇らしげに頷く。

「ハクザンの旗の下、誰一人として飢えず、誰一人として理不尽に怯えない。ルーニー様が築き上げた、誇り高き国ですもの」

「……ええ。私の計算でも、この平和は今後数百年は揺らぎませんわ」

テイラーが、少しだけ得意げに眼鏡の縁を上げた。

三人の妻と、愛おしい子供たち。

前世、大谷吉継として病に冒され、関ヶ原の霧の中で友のために散ったあの日。孤独と無念の中で閉じたはずの物語が、今、これほどまでに鮮やかな幸福の色で塗り替えられている。

「……ああ。……これ以上の報いはない」

ルーニーは愛する者たちの温もりを感じながら、遠い空を見上げた。

脳裏には、かつて共に夢を語った石田三成の、不器用な笑顔が浮かんでいる。

(……三成。俺は、やり遂げたぞ。……お前の分まで、この世界で、義を貫き、愛を育み、生き抜いてみせた)

そよ風が、ハクザンの白い旗を優しく揺らした。

軍神と呼ばれた男の、長きにわたる「戦記」はここで幕を閉じる。

だが、彼が刻んだ「義」の物語は、この国の歴史と共に、永遠に語り継がれていくことだろう。

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