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N.M.― 起源分岐戦争  作者: ブラックななこ
死神(過去編)

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孤立した集落

早朝に出発したエルデネサント隊はいくつかのなだらかな山を越え、正午近くにブレンという集落が草原のうねりが尽きるあたりに確認できた。


ハサルは隊を止めて、地図を確認する。


「・・・ブレンに間違いなさそうだな・・・」


ハサルは双眼鏡を取り出して、集落を確認する。


木柵が規則的に並んだ、モンゴル特有の集落があった。

家族単位で家畜のための木柵で区切り、その中に真新しいカラフルな家がある。

人影はなく、ゲルも見当たらない。


「人影が見えないな・・・ゲルがないってことは、逃げ出したのか?」


ハサルは双眼鏡を下ろし、周囲を確認する。


「ドローンの姿は見えんな・・・・・・よし、行こう!」


ハサルは馬車の御者に指示を出す。

御者はコクリと頷き、手綱を小さく上下させ、馬車を再び進めた。


集落の傍までやってくると、集落の全体像が確認できた。

双眼鏡で見た時は確認できなかったが、ゲルは中心部に集められていた。

その寄り添うように集まったゲルを大きく囲むように木柵が作り変えられ、その中に家畜が放たれていた。


馬車や馬の音に気づいた集落の人々が顔を出す。


「おーい!」


木柵の向こうから、男が手を振って声をかけてきた。

ハサルは隊を止めると、馬に乗ったまま男の方へ近寄った。


「あんたら、どこから来たんだ?」


ハサルに男が尋ねた。


「避難民が集まるキャンプ地からだ!」


「避難民・・・?」


「ああ、ウランバートルの民間人やロシアからの避難民が集まっているキャンプ地だ。

最初は遊牧民が集まってたんだが、ここ2カ月で大量の民間人が集まって巨大なキャンプ地になっている。」


「そんなキャンプ地が・・・あるのか・・・」


「ここでは被害は出てないのか?」


ハサルの問いに男の顔が曇る。


「被害は出た・・・7月に若い連中が車で外出した際にやられた・・・」


男が西の方を指さす。

ハサルが指さす方を見ると、遠くに赤茶けた車の外殻がいくつかあった。


「そうか・・・車は使えない。

車だとドローンが攻撃してくる。」


「ああ・・・わかっている。

ラジオで聞いて、それから車は使ってない。」


「なら、いい。

馬やラクダで移動すれば襲われない。」


男は唇を噛むように、小さく何度も頷く。


「それで、あんたたちはどこへ?」


「エルデネサントへ食料を調達に行く途中だ。

キャンプ地に大量に人が集まって、食料が足らないんだ。


ここでの食料は大丈夫なのか?」


「次の冬は大丈夫だ。 来年は・・・作付けができれば・・・やっていけるはずだ。」


「そうか・・・何かあればキャンプ地を尋ねるといい。」


「わかった・・・そっちもエルデネサントまで気を付けて・・・」


ハサルは馬の向きを変えて男と、後ろで離れて見ている人々に手を振って隊へと戻る。

隊ではガナがハサルのポジションで待っていた。


「どうだった?」


「ん? ああ・・・対策を知らない時期に被害はあったようだ・・・

今は家畜を使ってうまく対処しているようだ。」


「放ってていいのか?」


「一応、何かあればキャンプ地を頼れとは伝えた。

だが、人が多そうだ・・・車主体の集落みたいで、馬が少ない・・・

合流は厳しいだろうな・・・」


ハサルは、集落の方を見つめて眉を顰めた。


「さあ、今日はもう少し進むぞ。」


「わかった。」


ガナは馬をくるりと回し、一番後ろの馬車へと戻っていく。

ハサルは先頭の馬車の御者に手を上げて合図を送る。


隊は再び動き始めた。


―――


隊はブレンの位置から西へと進行方向を変えた。

午前中抜けてきた低い山並みを右側に、左側は広大な荒野が広がっている。


地表には、いくつもの踏み跡が重なり合っていた。

どれも細く、乾いた土を浅く削っただけの道で、

誰が最初に通ったのか分からないまま、

ただ同じ方向へ向かう線が増えていったように見える。


草はまばらで、地面の色がそのまま露出している。

薄い茶色と灰色が混ざり、ところどころに濃い影のような湿地が沈んでいた。


場所を示す文字が岩に白いペンキで書かれている。


「でべすぎん・ふぃれ・・・?」


ガンバヤルが、その文字を読む。


「デベスギン・フィレは、左側の荒野の名前だ。」


ガナが、ガンバヤルに見える位置へまで下がり、荒野を指さす。

ガンバヤルはその方向を見つめる。


地形は緩やかに波打ち、遠くの丘の影が薄く伸びている。


「静かだね・・・風の音しかしない・・・」


―――


集落を出発して3時間ほど進んだところで、隊は湿地の傍で停止した。

ハサルは湿地を確認する。


湖の縁は乾き始めていたが、中心部にはまだ黒い水が残っていた。

風が止むと、表面にわずかな光が揺れる。


馬をぐるりと回転させて周囲を確認する。


湖の中心部はまだ柔らかいが、周囲の高くなった場所は十分に乾いている。

視界が開けていて、夜間の見張りにも向いていた。


ハサルは時計を見て確認する。


「16時か・・・これ以上進むのは、時間的に難しいな・・・」


再び湿地を見てから、隊の後方が見えるように馬を回転させる。


「今日は、ここでキャンプする!

馬やラクダを順番に水を飲ませろ!

ただし、数頭ずつだ。

守りが弱まると、襲われる可能性があるからな!」


隊がバラバラと動き出し、昨日と同じように配置していく。

ただ、隊は半分になったので、サイズは縮小していた。


「ハサル隊長!」


隊の一人がハサルの名を呼ぶ。

その声に荷物を馬車から降ろしていた作業を止めて見る。


「なんだ?」


「何頭ずつ水は飲ませます?」


「そうだな、3~4頭で頼む。」


「分かりました。」


その男は、そう言うと円を描くように配置される馬を間隔を空けて、4頭分の手綱を外すと、地面に印を描き、どの馬を連れていったかを分かるようにする。

もう一人を呼び、2頭ずつに分けると、季節湖へと馬を引いていった。


キャンプの準備が終わり、食事が配られる頃には、西の空に金星が明るく光っていた。




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