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N.M.― 起源分岐戦争  作者: ブラックななこ
死神(過去編)

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冬を越えるために

モンゴルの広大な草原が続く大地。

その西の地平線へと太陽が沈んでいくと、キャンプ地は夜を迎える。


襲われない奇跡のキャンプ地は真っ暗となり、頭上には細い弓のような月が浮かんでいた。

東の空から星空が明るく浮かび上がっていく。


時折、草原の風でゲルがたなびき、中からの光が足元にだけ伸びる。


ザワザワと騒がしいゲルがキャンプ地の中央にあった。

キャンプ地を仕切る長たちがぞろぞろとゲルへと入っていく。


キャンプ地が大きくなり、仕切られたエリア毎に長を決め、そのエリアを管理するようになっていた。

その為、一か月前は9人で仕切っていたが、今は17人まで増えていた。

ゲルの中に円卓のように、あぐらをかいて座り話し合いをしていた。


「これ以上、人が増えるとまずいですよ。」


ある長が現在の問題点を語りだす。


「毎日のようにやってくる避難民の数が多すぎて、キャンプ地がどんどん肥大化しています。

遊牧民の避難民なら、動物が増えますが、民間人の避難民が多すぎます。

このままだと、人の密度が上がり、動物の割り振りが難しくなっていきますよ。」


「だからと言って、どうするんだ? 避難民を拒否するのか?」


別の長が聞いた。


「それもやむを得ないのでは? 維持できないキャンプ地になっては、本末転倒でしょう。」


答えの出ない問答を繰り返すだけだった。

それをキャンプ地のリーダーであるエルデネが静止させる。


「敵は避難民じゃない。 NOBUNAGAだぞ。

お前たちは何を勘違いしておるんだ?」


ゲル内がシンと静まる。


「密度が上がるなら、新しい何かを考えだすのが、我々の仕事であろう?

それを間違えるんじゃないぞ。」


エルデネは会議に出席している長たちに圧をかけ、続けた。


「バト、食料の備蓄の方はどうだ?」


食料を管理しているバトを見る。


「減っていますね。

肉は狩猟に出れるんで、なんとかなりますが、野菜が日々減っていってます。

どこかで野菜を仕入れないとダメでしょうね。」


「ふむ・・・誰か、この件に対策案はあるか?」


長の一人が手を上げて答える。


「小麦粉などの食料は、どこかの町の倉庫へ取りに行くのがいいのでは?」


「確かにそれはありだな。 どこかには残ってるだろう。」


他の長がそう言って賛成する。


「だが、誰が行くかが問題だろ?」


「・・・・・・。」


その問いに、ゲル内が沈黙した。


「小麦粉だけではだめだ。

それだけじゃ栄養が足りん。」


沈黙する中、バトが口を開く。


「できれば、ジャガイモやニンジン、玉ねぎなど保存可能な根菜を手に入れたい。」


「そうなると、どこかで交換しないとならんな・・・」

「交換品は肉などの保存食だろうな。」

「この辺りの農村なんかあったか?」


再びゲル内がザワザワと騒ぎ始める。


「あたしが知っている農村は農地を放って逃げ出してたよ。」


みんながその声の方を見る。

腕を組んでゲルの隅に立っているスフレンだった。


「それは?」


「ここから南へ20キロぐらいの所にある農村、いや個人経営の農家だったか・・・

巨大な畑で耕作していたが、収穫しないまま逃げ出していた。

あそこなら、手に入るかもしれないが・・・自分達で収穫しなくちゃならないけどね。」


南の方角に顎を差し出して説明する。


「それは時間がかかるな・・・だが、手に入れる場所があるのはありがたいな。」


誰かがそう言った。

それを聞いたバトが口を開く。


「いや、それはそれでマズいぞ。」


全員がバトを見る。


「それはどういうことだ?」


エルデネが尋ねる。


「遊牧民の皆は知らないかもしれないが、農作物は9月初旬までだったはず、

今は10月中旬だ・・・きっともう枯れている。


地面の下がどうなっているか・・・掘ってみないと分からない。

しかも、時間制限付きになる。」


そう言って、あぐらをかいた足を両手でパンと叩いて続けた。


「この寒さだ。時期に雪も降る・・・急がないと収穫なんてできない・・・」


少しの沈黙が落ちた。

だが、解決案を探す為に、誰かが口を開く。


「・・・・・・ならば、人数がいるな。」

「避難民に農家だったやつがいるんじゃないか?」

「だが、馬やラクダには乗れんだろ?」


エルドナが手を広げて前に出す。

それを見て、しゃべっていた長たちの口が閉じた。


「スフレン。 その農家までは整備された道があるんじゃないか?」


「あるにはあるが、遠回りになるよ。

道で行くと、60キロぐらいになるんじゃないか?」


スフレンの答えに、エルドナの顔が厳しくなる。


「遠くはなるが、馬車が使えるってことだな。


至急、元農家や現状の農家を探し出せ!

グループを作って、収穫作業させるのが一番いいだろう。」


「おお、それならただ食うだけの連中に仕事させられるな。」


エルドナが再び手を広げた。


「いいか、これは強制ではない。

働かない避難民を無理やり働かせる意図ではないのだからな。


その辺を注意して行えよ。」


ゲル内にいる長がコクリと頷いた。

エルデネがそれを見て続けて尋ねる。


「あと、粉物などの保存食の捜索についてだが、ここから一番近い町はどこだ?」


「おい、誰か地図を出せ!」


ゲルの中の収納棚から地図を出して全員の中央に広げた。

全員が膝立ちとなり、体を乗り出して地図を見る。


一人の男が地図を読んでいく。


「今、この辺りで・・・町は・・・ここにエルデネサント・・・ここがダシンチレン・・・ここからだと100キロ以上・・・そうなると一番近いのはアルタンブラグです。」


「ウランバートル近郊に行くのか?

危険すぎるだろ!?」


ガンバヤルが手を挙げた。


「エルデネサント・・・あそこは幹線道路が近く大きな町だ。

農作物が手に入るかもしれん。

スフレンの知っている農家での農作業と合わせれば、

量もかなり確保できるかもしれない。」


「おお、なるほど・・・」


ゲル内の緊張が少し解けた。

エルデネが口を開く。


「では、その方向性で行こう。

二方面で食料を集めよることにする。

エルデネサントへ向かうグループと、農作業するグループを早急に作るように。」


エルデネがそう言って、立ち上がる。


「冬が近い。 とにかく急げ。

雪が降り始めたら、キャンプは春まで動けないぞ。」


全員が立ち上がる。

そして、長同士で何か話会いながら、ゲルからぞろぞろと出て行った。


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