時告げ石と、初恋の記憶
『羅来国の民族は、人間、様々な獣人族、犬のようなコボルト族、手先の器用なドワーフ族、魔法に長けたエルフ族がいる。
寿命は普通の羅来国人が100歳前後、転移者は120歳前後、獣人族は300歳程度、コボルト族は350歳程度、ドワーフ族は500歳前後、エルフ族は1000年以上生きると言われている』
凄い…エルフって、1000年以上生き続けるんだ。転移者の寿命が120歳前後っていうのも、地味に驚くけど。
月白さんは獣人だから、平均すると三百歳くらいまで生きるのね。平均すると、人間の約三倍くらい生きるのね。
『羅来国は建国500年。五勇士と呼ばれる強い武士とエルフが作ったと言われている。羅来国の歴史書に詳しく載っているので、興味があるときは書籍を読む』
歴史書かあ。私あまり日本にいた時は興味なかったけど、羅来国の歴史はちょっと知りたいかも。江戸風であって現代の技術…下手したらそれ以上の技術を持つ国、羅来国。
建国したのに五勇士とエルフが関わっているというのも気になる。まだ建国から五百年しか経っていないなら、建国に携わったエルフ生きてる可能性もあるし。
『歴史や算数、羅来国の言葉や、礼儀作法等を教える寺子屋があり、五歳~十五歳まで通う習わしがある。尚、種族を選ばないため、獣人やコボルト等の人間以外の種族も通える』
五歳から十五歳まで学校に行くのね。しかも人間以外も通えるなんて凄い。日本の学校に外国人が通っているのとは、また違う驚きだ。
『羅来国では、人間以外も差別せず、同等に扱うことが徹底されている。逆に差別する者こそ差別される』
羅来国って凄い…。人種差別だ~!とかいうことがないのね。日本の偉い人たちにも聞かせてあげたいわ。
『ただし、昔は男女差別あった模様。歴史書を参考のこと』
こればかりはどこでもあるのね…。色々ぶっ飛んでる羅来国でも男女差別はあったのか。
『武士は羅来国の種族を問わず、誰でも国家試験に合格すればなることができる。医療に関わる医師や看護師、火薬を扱う火薬師も、国家試験に合格することで資格を得られる。
国家試験は年に一回行われ、実技試験と、その資格に必要な知識を問う筆記試験の二種類に合格して、ようやく資格者となる』
武士って国家資格なんだ!お医者さんとか看護師、火薬師も国家資格なのね…。種族を問わずってところが、羅来国らしい。
(……ってことは、コボルトの武士とか、エルフのお医者さんがいてもおかしくないのね。面白い!)
半之助さんは侍で、志乃さんからはお役人扱いされてるから……やっぱり武士になるのかな。
国家資格を持っているってことは、頭も良くて、ちゃんと技術もあるってことよね。
…半之助さんらしい。真面目で無表情な半之助さんにとって、武士って似合うもんね。結婚したら、将来安泰って感じかな。
(…って、何考えてるの、私!!)
少し知識を詰め込み過ぎた…。一気に知識を詰め込むと、大事なこと忘れてしまうかもしれないから、今日はこの辺で止めておこう。
今は、とりあえず時告げ石の使い方だけ覚えておこう。志乃さんからもらった小さな石。これで時間がわからないってことはない。
私は今の時間が知りたくて時告げ石に聞く。
「今の時間は?」
「朝九つ半」
日本で言えば、朝九時ってことよね。午後に出かけるみたいだから、まだ時間があるな。
そう言えば、何着ていけばいいんだろう。日本みたいにスーツとかないし。和服がスーツ代わりになるのかな?本には、何か書いてあるのかな。私は、『転移者のための読本』を読む。けれど、服装に関しての記述がない。
服装って特に決まってないのかな…?日本には冠婚葬祭とか着ていくものが決まっていたけれど。
『羅来国の結婚は男女とも18歳以上で可能。異種族間でも可能。同性婚は認められていない。重婚禁止。離婚も可能。結婚式は転移神社以外の神社ならどこでも可能。結婚した者は転移者の屋敷を出ていかなくてはならない』
冠婚葬祭の服装探してたのに、こんな記載を見つけてしまった。
私は22歳だから、いつでも結婚できる年齢ってことね。
…結婚かあ。神社でやるのね。
結婚の前に、そういう相手を見つけなきゃだけど!
私、いつこのお屋敷出ていくのかな…。
素敵な恋愛をして、素敵な家庭を築く。…日本でも憧れていたけれど。
私、恋愛経験はないけれど、好きになった人は居た。…初恋の人。
幼馴染で、同じ歳の松本千秋君。
幼稚園も小学校も一緒で、仲が良かった。運動が得意で、背の低い男の子だった。遊戯王カードとか、よく一緒に集めてたな。
小学六年生の時、千秋君は行方不明になってしまった。それっきり、彼の消息はわからない。
千秋君のお父さんとお母さんは、懸賞金をかけて今でも彼を探している。
学校では、事件に巻き込まれて死んでしまったんじゃないか――なんて噂も流れていた。
でも、私はそれを信じていなかった。
あの千秋君に限って、そんなことはないって。……今もそう思ってる。
千秋君はどこかで生きてるって…。
もし千秋君が、私と同じように羅来国へ転移してきていたら……会いたいな。
そしたら千秋君、私の姿見てどう思うかな。あの頃と同じように私と話してくれるかな。
…千秋君…。
(やだ、私。なんでこんな時に千秋君のこと思い出しちゃうの……。もう会えない人かもしれないのに)




