第45話 彼女は誘われる①
久々の更新!
昨日の探索成果はテルブ4匹、ルティンが3匹、チュラ藻が17個。
ついでに、戦利品を入れるバケツ(中)とアルレルン河水9(多分ℓ)げっと!
ジェラールからお裾分けされたキーレ貝と白いタミア貝は10個ずつ、シャインゴケのエキスは5(多分、1つ辺り10㏄)です。
昨日遭遇したモンスターの種類と数は、カットバニィ28匹、カウル9匹。そして、幼児が書いたような目と口のある巨大なラディッシュ――明らかにマンドラコラ同系統の新発見モンスター、マンドレイク3体であります。
マンドレイク3体はカットバニィが囲んで襲っていたところに遭遇して、半分漁夫の利でした。
戦利品のカットバニィの爪28個、バニィの肉28個、バニィの毛皮28個、カウルの羽毛9枚、カウルの尾羽9本、カウルの肉9個はそのまま無事げっと。
マンドレイクのカケラ、マンドレイクの葉、マンドレイクの根はジェラールの希望があり、入手に至らずでした。
やはり薬品の材料になりそうな戦利品は大量にある場合を除き、約束通りジェラールの総取りになりそうです。
……冒険者ギルドに運ぶため、バニィの毛皮を除いた昨日の入手品+倉庫にあったカットバニィの爪29個をせっせと背負い袋(大)に入れたら、袋がパンパンに。
そして、重量がエライことになりました。キラービィの針(30個)を超えるずっしり感です。
私は背負い袋(大)の重さによろめきそうになりながら、ドアに近づいて『街に向かう』を突っつきます。
選択したことによって、肉体の操作権がルーシェリカさんに移行。
いろいろと高スペックを持ち合わせているルーシェリカさんであっても、背負っている形だからまだマシとはいえ、相当荷物が重たいと感じているのでしょうね。
おまけに、バケツ(ほぼ9割まで物が入っている)なんて右手で持っているものですから、体の重心が普段よりも右に傾いていますよ。ふらついたりという程までにはなっていないですけど、普段と比較してその一歩一歩が遅いです。
ルーシェリカさんの足取りがいつもより重くても それだけでは爽やかな空気に満ちた朝の王都には何ら影響を及ぼすこともなく。
特に選択肢が浮かんだりせずに、冒険者ギルドに辿り着きました。
受付に向かう
掲示板に向かう
アレンに会いに行く
冒険者ギルドを出る
姿は見えないですけど、アレンさんはちゃんと冒険者ギルド内に居るようですね。
もちろん、アレンさんに会いに行くのは後回しです。最後ですよ、最後。今は少しでも荷物を軽くすることの方が優先されるのですよ。
と、いうわけで。
『受付に向かう』を突っつき、おはようございますとにこやかに挨拶をしてくれた馴染みの受付嬢サラさんに挨拶を返して、再び浮かび上がった文字の中から『提出/カットバニィの爪』を選択。
背負い袋の中から手早く目的のアイテムを出していくルーシェリカさんを、見ていたサラさんでしたが。
その数が20を超えたあたりで軽く目を見張り、30を超えた段階でパチパチと目を瞬かせ、全部出し切ると軽く口が開いていました。
……うん。
さすがに、ナイフみたいなごっつい爪が57個もカウンターに広がっているさまは、ちょっと驚く光景ですよね。しかも持ってきたのが、見た目戦闘とは縁がなさそうな清楚系美少女ですし。
少しの沈黙を挟んで、プロ意識から衝撃から立ち直ったらしいサラさんから、買い取りカウンターに行くよう指示されました。
背負い袋(大)の中身が半分以上減ったことで、足取りも軽やかにルーシェリカさんは移動。
無事、2850ギラーげっとです。
次に、アイテム依頼の掲示板の方へに移動しました。
私はじっくりと掲示板に目を走らせ、既知のアイテム名がないか探します。
「あっ! 見っけ!」
『マンドラコラ系統素材アイテム(個数問わず)
依頼者……リシル・フェライト
報酬……マンドラコラのカケラ(1個300ギラー)
マンドラコラの葉(1個300ギラー)
マンドラコラの根(1個850ギラー)
マンドレイクのカケラ(1個700ギラー)
マンドレイクの葉(1個700ギラー)
マンドレイクの根(1個1800ギラー)
アルラウネの素材アイテム、時価。応相談
期限……フレメイアの月、大地の35日まで』
『テルブ、3匹以上
依頼者……薬屋<春の海>
報酬……9000ギラー以上(1匹3000ギラー)
期限……フレメイアの月、混沌の43日まで』
死蔵状態だったドロップアイテムが、ようやく日の目を見ることに!
マンドレイクの方がレベルが上な分入手しにくいだけあって、高価です。まあ、あいにくジェラールが回収していったので現物がない今は関係ないですけど。
一旦王城に戻って取りに行くか、明日に回すか。
う~ん……<青い鳥>で鮮度が関係あるアイテム売ったら、荷物もさらに軽くなりますから、しいて戻る理由はないんですよね。
期限まで、まだまだ時間ありますし。
こっちは明日でいいでしょう。依頼票だけもらっていきます。
テルブの方は、さすがジェラールおすすめ素材だけあって、単価が高いですね。
さくっと全部売りましょう。
再び受付に行って達成印をもらい、買い取りカウンターへ。特に査定額を減らされることもなく、12000ギラーげっと。
「――おはようございます、アレン殿」
「ああ、おはよう。ルーシェリカちゃん」
『アレンに会いに行く』を選択して、ルーシェリカさんがギルド内をうろつきだして、ほどなく。アレンさんを掲示板のすぐ近くで発見しました。
何かの作業中だったようで、手に十数枚の紙束を持っています。
……ギルド長が雑用しているってことは、暇なんですね。
アレンと世間話をする
アレンに同行を頼む
挨拶して、その場を去る
今日は同行可能っと。
やっぱり暇だったようですよ。
少し迷いましたが、『同行してもらう』をタッチします。
明日は風の日なので、アレンさんが確実に同行出来ない日。
アレンさんの立場的に、暇な時と忙しい時の落差が激しいでしょう。この機会を逃したら次に同行出来るのが何時になるか、分かりません。
「分かった。今日は特に忙しくないし、一緒に行くよ。んで? 今日は何処に行く予定なんだ?」
「特に予定は立てていないのです」
そうなんですよね。
アイテム依頼は受けましたけど、自室に帰れば達成に必要なアイテムはそろっていますし。
討伐クエストの方に至っては、現在引き受けているものがありません。
「へぇー。じゃ、ちょうどいいな。コレ、受ける気ない?」
そういって、アレンさんは片手に持ったままだった紙束の中から1枚抜き出し、ルーシェリカさんに見えやすいよう掲げました。
『急募!
討伐依頼ランクc
討伐希望数10体
それ以上は1体ごとに追加報酬あり
カットバニィの異常繁殖の影響により、ヴィア草原に生息するブラックゴートの群れが餌場を求め、移動しているとの報告が入っています。
街道まで移動されてしまうと流通の混乱が予想されますので、一刻も早い殲滅を目標としています』
ブラックゴート――黒ヤギですね。
『さん』をつければ、手紙を読まずに食べた文通ループの元凶として有名な存在に早変わり。
めぇめぇと鳴き声を上げながら移動する黒ヤギの群れを思い浮かべてみると、実に牧歌的でちょっと和みましたが、ここではモンスター扱いされているのです。
大人しい家畜と同じにしていいような平和な存在ではないでしょう。
この依頼を受ける
受けない
ヴィア草原って行ったことないですけど、アレンさんはルーシェリカさんなら達成出来るだろうと考えて薦めているんでしょうし、引き受けても大丈夫そうですね。
『この依頼を受ける』をつんつん。
「分かりました、引き受けます」
「よし。あ、ちょっと俺出かけるから、これよろしくなー」
アレンさんは、通りすがりのギルド職員に紙束を軽い口調で押し付けました。
ギルド職員はちょっと嫌そうな顔をしましたが、相手が上司だからか特に何も言わずに紙束を受け取ります。
「じゃ、さっそく行こうか? ルーシェリカちゃん」
「はい。よろしくお願いします」
アレンさんはいたって自然にルーシェリカさんの右手のバケツを受け取ると、歩き出します。
すぐにでも討伐モンスターのもとに向かいそうな空気ですが、私は敢えてその空気をスルー。
<青い鳥>へ行って、闇神殿に行ってから王都の外に向かいます。
お弁当持っていませんし、アイテム売って、ステータスUPしないと。
そんなわけでやってきました、<青い鳥>。
店内に入ると、珍しいことに看板娘のグレーテルさんの姿はなく、がっしりとした黒髪の男性がカウンター内に立っていました。
鍛冶屋にでも勤めていそうなムキムキした風貌ですが、よく見ると顔立ちがグレーテルさんに似ているので、兄弟なのかもしれません。
「――いらっしゃいませ」
新顔の店員さんの掛け声に一瞬遅れ、選択肢が浮かび上がります。
商品を見る
取引する
店から出る
とりあえず、グレーテルさんでなくても取引は通常に出来るもよう。
問題ないなら、さっさと売ってしまいましょう。
鮮度の関係ないアイテムは一応、売らずに持ち帰りますよ。後々アイテム依頼で出たらショックですし。
ルティンが3匹360ギラーで、チュラ藻が17個1700ギラー。
アルレルン河水9(多分ℓ)は99ギラー、キーレ貝とタミア貝は同額の10個800ギラー(計1600ギラー)、バニィの肉28個で280ギラー、カウルの肉9個は900ギラー。
合計で4939ギラーになりました。
お弁当を購入して、用事は済んだので『店から出る』を突っつきます。
ルーシェリカさんの少し前を歩く、空のバケツを手にしたアレンさんがドアノブに手を伸ばした瞬間――爆発音と、足下に軽い震動が発生しました。
すわ地震か!? と、一瞬私は考えましたが、爆発音が一緒に響いたので違うようです。
震動はルーシェリカさん達だけではなく、<青い鳥>全体を襲ったようで。
棚に陳列されていた商品の一部が、床に放り出されていきます。
ガラス瓶などはそれなりに重さがあるおかげなのか、落下の憂き目を逃れていますけど、一部とはいえ量が多いですから片付けが大変そうですね。
「……あ~。あいつ、久しぶりだからって、またやらかしたな……」
私が同情を向けた先であるマッチョな店員さんは、疲れたようにそう呟きました。
がっくりと両肩を落とすそのさまは、哀愁が漂っています。
「おい? 今の、なんなんだ?」
明らかに先程の現象の理由を知っていそうな店員さんに、アレンさんが当然の質問を投げかけました。
店員さんは、とっくに2人が店から出て行ったと思っていたようで、ちょっと驚いたように目を見張りましたが、ぺこりと頭を下げます。
「お客様。お騒がせして、大変申し訳ありません。実は――」
店員さんが事情を説明しようとしたその時、彼の背後にあるドアが勢いよく開き、何かが飛び出してきました。
「兄さん! 商品は大丈夫!?」
何か――それは、見慣れた看板娘であるグレーテルさんでした。
掃除でもしていたのでしょうか?
いつもとは違うスウェットの上下のような、だぼっとした動きやすい服を着ているのですが、全体的に黒く煤けていて、疲労感漂う様子です。
「……見ての通りだ」
「いやああああああ! やっぱり、落ちてる~!」
真っ青になって両頬を手で押さえて叫んでから、第三者の姿が目に入ったのでしょう。ムンクの叫び状態のグレーテルさんの顔から、さらに血の気が引いていきます。
「も、申し訳ありません、お客様!!」
「謝罪はいいです。それよりも、いったい何が起こったのですか?」
やっぱりルーシェリカさんも気になっていたようで、そう尋ねました。
グレーテルさんは頬から手を放し、ズレ落ちてきた眼鏡を正しい位置に戻すと、深々と頭を下げました。
「――実は私、錬金術を嗜んでいるんです。ここの商品の一部は、私が錬金術で作りました。自分が休みの日に、更なる高みへと錬金術の研究や実験を行っているのですけど、まだまだ未熟なために失敗することがありまして……」
「ははあ。なるほどな~」
グレーテルさんは加護持ちですから、魔法技能は持っていると想定していましたけど、錬金術スキルも持っていたんですね。
商品に更なる付加価値をつけられて高く売れるようになるんですから、生家が商店を営んでいれば、錬金術を取得することは当然の判断と言えるでしょう。
アレンさんも納得しているように、錬金術の失敗でさっきのような現象が発生したもよう。
ジェラールも言ってましたもんね。
失敗するとわけのわかんない現象が起こるって。
「お騒がせして大変申し訳ありません」
前のがうんともすんとも言わなくなったので、おニューのノーパソに買い換えました。




