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金と黒の王国2  作者: 朔夜
彼女は試行錯誤を繰り返す
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41/47

第41話 彼女は招かれる①

早くしたいといいながら、遅くなって申し訳ないです。

 私が選択したのは『ジェラールに会いに行く』だったはずなのですが。

 ルーシェリカさんが薬剤院のドアノブに手を伸ばした瞬間、中からドアが開き、ゆったりと歩いてくる派手なカツラ男とばったり出くわしました。


「おお、救い主殿。こうしてまた出会えるなんて、なんたる偶然だろうか!」

「カミル様、こんにちは」


 顔を輝かせ、良く通るテノールを周囲に響き渡らせて、ただの挨拶を仰々しく言い放つカミルに対し、ルーシェリカさんはといいますと、あっさりさらっと流しました。

 投げかけた言葉をほとんどスルーされましたが、カミルは特に気にした様子もなく尋ねてきます。


「もしや救い主殿も薬剤院に用が?」

「はい。薬剤院そのものにではなく、薬師のジェラール様にですが」

「奇遇だね。私も我が友ジェラールに用があって、こちらまで出向いたのだよ」


 一足先に薬剤院に立ち寄ったカミル曰く。

 ジェラールは現在工房アトリエで調合中ということで、薬剤院には居ないとのこと。成り行きでカミルと一緒に向かうことになりました。


 状況的に、おそらくカミルは説明をしにきたのだと思います。

 ご主人様とミハイル王子の間で話がついているので、ことの真相を語るわけにはいきません。だから、そのまんまの内容は話さないでしょう。

 ま、王宮務めがそれなりに長いだけあって、ある程度説明が誤魔化されていたり省かれていたとしても、裏事情をジェラール自身察して追求しないような気がしますけど。


「救い主殿は我が友ジェラールに何の用かな?」


 カミルは、ごくごく自然な流れで聞いてきました。

 今のところ、ルーシェリカさんに対して警戒しているようなフシはありません。

 上手く隠している演技派なのか、それとも本当に警戒していないのか。

 カミルは芝居がかっているのが常態のようなので、もし今警戒していないフリをしていたとしても、ちょっと判別出来ませんね。


「お礼を申し上げに参りました」

「ふうん。お礼か……」


 工房アトリエ前に辿り着くと、カミルはノックすることもなく無遠慮にドアを開けました。

 調合中のジェラールがちょっとやそっとの物音では来客に気付かないということを熟知しているようで、ノックこそないものの、物騒な侵入者だと勘違いさせないためにか割と大きな物音をたてながら室内に上がり込みます。


「やあやあ、ジェラール。会いに来たよ」


 朗々と響き渡るカミルの声に、ジェラールの反応はまったくありません。


 それもそのはず。

 現在、ジェラールは巨大な大釜の前に立って、ぐつぐつと音を立てて沸騰している中味を掻き混ぜている真っ最中でした。


 薄ぼんやりと光を発する真っ赤な液体の水面に、拳の半分ほどの大きさの白い物体が幾つも浮いています。

 ジェラールが巨大なヘラっぽいもので掻き混ぜるたびに、少しずつその白が小さくなっていく様子が見えるのですが。

 彼が無表情かつ下方から光に照らされているという形なので、傍目から見ると結構不気味ですよ。


 で、その大釜の中でぷかぷか浮いている白い物体。

 小さくなればなるほど液体の赤が濃さと毒々しさを増していっているのですが、どれだけ赤の濃度が上がっていくのか気になりますね。

 だんだん、大量のトウガラシやハバネロ等の激辛刺激物を投入したように見えてきましたし。

 私、辛いモノ苦手なので、もし今日アレを『飲んでみる』的な選択肢が出たら絶対断りますよ。


「……ああ。これは全然聞こえていないね。仕方ないから、気付くまで待っていることにしよう。救い主殿は楽にしているといい」


 何度かジェラールに呼び掛けていたカミルでしたが、アメリカン風味に大きく肩をすくめてそう言うと、勝手知ったる場所とでも言いたげに工房アトリエ内をうろつきだしました。

 カミルがすぐ傍を通って棚の一つを開けて中身を漁っても、やはりジェラールは気付きません。

 前から知ってはいましたけど、なんという集中力。


「……あれ? 2人とも、来ていたんですか」


 カミルの発掘品であるジェラール特製ハーブティを、違和感ありまくりでしたがカミルが淹れて。ルーシェリカさんにも振る舞い、それを飲み終わりかけて、すっかりくつろいでいた頃に。

 ようやくジェラールがこちらの存在を認識しました。


「――こんばんは、ジェラール先生。先日の件、上手く運びました。ご協力いただき、厚くお礼を申し上げます」

「ああ。上手く行ったんですね。それは何より」


 即座にお礼を言うルーシェリカさん。

 ジェラールは一瞬何の意味なのか考えるように虚空へ目線を向けましたが、すぐに思い至ったようで、にこやかに微笑んで頷きました。

 ジェラールはその微笑みを保ったまま、カミルの方に顔を向けます。


「――で? カミル。今日は何の用です?」


 表情の変化こそありませんが、ジェラールの声音がルーシェリカさんに向けたものと違って、あからさまにひんやりとして聞こえます。

 ぞっと背筋が冷たくなるようなものでも、とがった氷のように刺さるような鋭さもないですけど、何となく微妙に突き放しているように感じられる口振りですね。


 あれぇ?

 カミルいわく『我が友』だったので、私としてはもっと気安い感じだとを予想していたのですけど。

 もしかして、カミルによる一方通行の友情なのでしょうか?

 まぁ、カミルのオーバーな言動がウザったいからなのかもしれないですけど。


「何って……それはだな」


 ジェラールのこの反応は、どうやらカミルにとってはいつものことのようで。特に気に留めた様子はありません。

 ただ、カミルはルーシェリカさんに一瞬だけですが、ちらりと目線を向けてきました。


「私が今、手掛けている作品がね。何となく物足りない印象がぬぐえないのだよ。きちんと納得いくモノを作り出すには、普段とは違った刺激が必要だ。

 何ともちょうどいいことに、明日は大地の日で、王都の外に君が採取しに行く日だろう? これぞ、我が女神ガイルテイアのお導き。是非とも同行させてもらえないかと思ってね」


 これ、単にルーシェリカさんが居合わせているから、当事者以外には話せない本題を隠すためにそう言っているのか、それとも前の周でも提案自体はあったものの、ジェラールが却下したかのどちらかでしょう。

 前の周で、カミル同行なんてありませんでしたし。


「ボクの採取の邪魔をしないと誓うのなら、同行するくらい別に構いません」

「そうか! さすがは我が友! 寛大な君に感謝するよ!」


 ぱぁぁ! と、喜色を露わにするカミル。


「ルーシェリカ。そういうことですので、もし明日の採取に同行するつもりでいるのなら、カミルが居るものと思って覚悟してきてください」

「分かりました」


 覚悟って何の?

 私はジェラールの発言を聞き咎めたかったのですが、ルーシェリカさんは気にならなかったのか、了承するだけで突っ込みをいれません。


「それと、カミル。ちょっと話したいことがあります。時間を取ってくれますね?」

「もちろんだとも。私も別件で君に話したいことがあるから、構わない」

「……それでは、ジェラール先生、カミル様。私はこれで失礼いたします」


 ルーシェリカさんは空気を読んでそう言うと、2人に一礼して工房アトリエを後にしました。


 カミルって、単なる同行なのかPTインするのか、どっちなんでしょうね?

 PTインなら、どんな武器で戦うかが微妙に気になります。

 職業画家ですけど、さすがに商売道具のブラシとかキャンバスとかは使わないと思いますから、ナイフ辺りでしょうか?


 そんな風なことを私がつらつらと考えている間に、ルーシェリカさんは夕食と入浴を手早く済ませていました。

 気がついたら、寝間着に着替えておやすみなさい。

 

 睡眠であるブラックアウトが終わって、14日目になりました。

 もちろん、今日の選択肢は迷うことなく『ジェラールと出かける』ですよ。


 薬剤院に向かうと、その手前の道にリュックと矢筒を背負った人物が直立不動で佇んでいました。


 スポーツ刈りを連想する短い枯葉色の髪に優しい茶色の瞳、色白でルーシェリカさんよりは背丈がありますけど、小柄な男性です。

 いわゆる美形ではありませんが、好感の持てる優しそうな顔立ちで、肌の様子からまだ若いのは分かりますけど、ちょっと年齢が予測しにくいですよ。

 折り返してある両袖の色は白ですが、詰襟の上着の前を止めるのがボタンではなく紐で、一見カンフー映画で見るような形の暗青色の衣装を身につけています。

 腰にベルトを巻き、短剣とクロスボウと銀色に光る銃を腰の左右に下げていますね。


 この世界にも銃はあるんだなと私が考えていると、ルーシェリカさんが男性に軽く会釈をしました。


「おはようございます、カミル様。良いお天気で何よりですね」


 はい?

 カミルですって?


「ああ、おはよう。救い主殿。確かに良い天気だ。絶好の散策日和だね。私達の旅路を、今日の世界の安寧を司る大地の女神フレメイアが祝福してくれたに違いない。

 貴女のお仕着せではない姿は初めて目にするけど、良く似合っている。貴女の可憐さが一段と引き立たされているよ」


 男性は笑顔で頷くと、良く響くテノールで唄うようにそう言いました。

 ……確かに。この声といい、大袈裟な台詞といい、カミルで間違いないようです。


 外出するからでしょう。

 自分のトレードマークであるモーツァルト風味のカツラを外し、自毛をさらしている状態ですね。服装も品質は良いですが、いたって地味です。

 なので、一見して別人。

 私はルーシェリカさんが挨拶するまで、カミルだと全然分かりませんでした。


 ロール付きの長い白金の髪が、カツラによる蒸れ防止のためか、枯葉色のスポーツ刈りに変貌しているのです。

 色彩とボリュームの違いもあって、ギャップが凄い。

 一目で看破出来たルーシェリカさんの観察眼のレベルの高さに感心しましたよ。

 以前にも人混みに紛れたエドガー様(変装中)を探しだした実績がありましたし、レベル高いのは分かってましたけど。


 ジェラールが現れたのは、それから間もなくのことでした。


「2人とも、おはようございます」

「おはようございます、ジェラール先生」

「やあ、ジェラール。やっと来たね。待ちかねたよ」

「ああ。ちゃんと身軽な格好出来たようで、なによりです。カミル。じつのところ、前みたいに普段の格好でついて来ようとしたら、問答無用で置いていこうかと思ってました」

「――そういうことは、是非とも先に言っておいてくれ! 置き去りにしようなんて、酷いじゃないか!」


 そんな風に。

 和気藹々(?)と言葉を交わしながら、王城を出て王都に向かいます。

 あ。

 カミルも歩行速度上昇の装備をしているようで、ごく普通にジェラールとルーシェリカさんと同等の速さで高速移動していますよ。


「――ルーシェリカ。今日の採取で、希望している場所はありますか?」


  今日もジェラールの希望に任せる

  カミルの意見を聞いてみる

  またノウェル丘陵に行きたい


 王都の門のところで、ジェラールが行き先の希望を尋ねてきました。

 カミルに聞かないのは、採取にかける重要度合いが違うからでしょう。


 さてさて。

 どうしましょうか?


 ジェラールの希望を選択したら、2週目と同じくアルレルン河でしょう。

 カミルの希望は聞いてみないと分かりませんけど、多分言ったことのない場所になると思われます。


 未探索地に心が惹かれないと言ったらウソになりますが、ジェラールの好意で同行を許されているという形。

 そこはかとなく、カミルに聞いたらジェラールの好感度が下がって、カミルの好感度が上がりそうな気がしなくもないです。


 うーん……

 やっぱり博打要素は避けますか。

 カミルの希望する場所のモンスターがやたらに強かったら困りますし。


「ジェラール先生の希望先で構いません」

「そうですか。では、今日はアルレルン河に行きましょう。カミルもそれで構いませんね?」

「ああ。私もそれでいいよ」


 そして。

 ジェラールとカミルのステータスが浮かび上がりました。


  ジェラール・ステア・ラル(27)

  レベル19

  称号 レイニドール王宮付き薬師

  HP 847/847

  MP 4688/4688

  状態・健康

  属性・大地

  所持金 ????ギラー


  戦闘スキル 棒術A(MAX)

        短剣C

        大地魔法B(MAX)

        錬金術A

        高速詠唱C

        範囲攻撃C

        隠密行動A(MAX)

        幸運S(MAX)

        緊急離脱D

  一般スキル 薬師S

        調合S

        採取S

        錬金術師A

        薬学知識S

        植物知識A

        錬金術知識A

        医学知識C

  スキルポイント 残り20P


  装備 ミスリル製の棍+3

    (攻撃力75%UP)

     ミスリルナイフ+3

    (魔法攻撃力75%UP)

     巨大女王蜘蛛の糸で織ったクローク+3

    (異常状態/暗黒・麻痺・石化無効)

     モノクル+2

    (ステータス・エネミーサーチ)

     火鼠の毛皮製の手袋+3

    (器用度50%UP・火属性攻撃効果軽減)

     鉄板入り軍用ブーツ+3

    (俊敏25%UP・歩行速度上昇・疲労軽減)

  所持品 魔法のリュック+3

     (内部超拡張・重量軽減・指定アイテム取り出し)



  カミル・シーヴィク(23)

  レベル3

  HP65/65

  MP ――

  称号 レイニドール王国宮廷画家

  状態・健康

  属性・水

  所持金 ???ギラー


  戦闘スキル 弓A

        銃C

        短剣B

        狙撃B

        急所攻撃C

        投擲D

        悪運B

        誘引C

        緊急離脱C 

  一般スキル 画家S

        鑑定士A

        目利きA

        採取C

        植物知識B

  スキルポイント 残り0P


  装備 クロスボウ

     シルバーホーク

     鋼のナイフ+2     

    (攻撃力50%UP)

     クローク+2

    (防御力50%UP)

     革の手袋

     タリスマン

     革のブーツ+2

    (移動速度上昇・疲労軽減)

  持ち物 携帯画材道具一式

      矢筒/鉄の矢20

      銃弾30

      リュックサック(中)

      弁当1


 カミルは見るからに文官系統のもやし体格だったので、私の想像通りと言っていいです。

 カミルを中心に会いに行っていた場合、ルーシェリカさんのレベルが低いうちにPTイン条件を満たせていたとしたら、実にちょうどいい感じだったと思いますね。

 むしろ、ジェラールのレベルが高過ぎるんですよ。


 ところで、『悪運』と『誘引』ってどういうスキルなんでしょう?

 『悪運』の方はある程度想像付きますけど、両方見てみることにします。突っつきますよ。


『悪運。

 所有者とその周囲にトラブルを引き寄せる代わりに、持ち主の生存率が跳ね上がる。通常攻撃を受けた場合、一定確率で自動回避に成功。回避HPが0になるダメージを受けた場合、一定確率で瀕死状態に留まる。

 Dが20%、Cが40%、Bが60%、Aが80%、Sが100%。持ち主の幸運値が高ければ高いほど成功率と残りHPの数値が高まる』


 うわぁ……

 これはジェラールの『幸運』とは正反対の、周囲に優しくないスキルのもようです。


『誘引。

 半径50メートル以内のモンスターに発見されやすくなる』


 こっちはどうやら、エンカウント率UPスキルのもよう。

 討伐モンスターを探している時には役に立ちそうですけど、やっぱり周囲には優しくないスキルですね。

 昨日ジェラールが言っていた覚悟って、多分これのせいでしょう。


パソコンが寿命っぽいです。

ノーパソなんで、5年も使っていたら仕方がないことですが。

立ちあげるとしばらくJ連打になりますし、キーを打っている途中でかながいきなり英数に変化したり、ローマ字入力がかなになったりします。

しかも自分ではJが打てないので、Zを使ってますけど、やりにくいったら。

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